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血余(けつよ)とは

日本では血の余(血余)という言葉を初めて耳にする方が多いかもしれません。
中国の約2000年前の最古の医学著書「黄帝内経」に記載されており、中医学では非常にポピュラーな言葉として認識されています。
血余の【血】は中医学の概念で、西洋医学の【血液】より広義で機能も含みます。


血余

という言葉は、中医学では“髪”との関係で有名ですが、実は髪だけでなく、身体全体と深い関わりをもち、血の量が充実しているか、血によって身体にしっかりと栄養分を運べているかなどの指標ともなります。

女性は毎月の生理のためにも血余が大切で特に産後は消耗しやすいため、産前にしっかりと血を貯めておけるかどうかでその後の母体の状態がかわってきます。


血が不足する原因

食事からの栄養不足、過労、ストレス、睡眠不足、目の使いすぎ、過度の運動・筋トレ、過度のダイエット、生理、出産、授乳など


血余は女性の宝、妊活の秘訣

血は女性の身体を支える基礎物質。
血が十分にある【血余】の状態が妊娠しやすい身体作りの基本であり、妊活・妊娠・出産から産褥期まですべてが血余に支えられています。

妊活中

  • 月経周期を整える
  • 経血の量や質
  • 生理痛
  • 排卵
  • 着床

妊娠中

  • 精神状態の安定
  • 胎児の健やかな発育
  • 乳房の発達
  • コラーゲンの生成(妊娠線の予防)
  • 目のかすみや乾燥
  • 睡眠の質

出産から産褥期

  • 産後の出血調整
  • 母乳の出方
  • 子宮復古を促す
  • 抜け毛を防ぐ
  • シミやたるみを防ぐ




血余と女性


◆血余とドライアイ

中医学では、目の栄養分は血とされています。
血が充実している【血余】の状態は、視力減退、ドライアイ、かすみ目、老眼といった症状が出にくくなります。




◆血余と抜け毛

血が充実していれば、たくさん髪の毛が生え、美しくツヤとハリのある髪の毛になります。
抜け毛、髪のパサつき、髪がまとまらない、白髪といった症状が出にくくなります。




◆血余と爪

中医学では、爪の栄養分は血とされ、爪の状態を診ることが【血余】の判断材料の一つとなります。
血が充実していれば、健康的な爪(血色や強度など)を維持することが出来ます。




◆血余と不眠

血には身体を滋養するだけでなく、精神を安定させる働きがあります。
【血余】であれば、気持ちが安定し、リラックスでき、結果快眠につながります。




◆血余と母乳

母乳は“白い血液”と呼ばれるように、血(けつ)を材料として作られています。
お母さんの体調の良し悪しがそのまま母乳の出に繋がるため、産前からしっかり血を貯めて血余の状態を維持していきましょう。




◆血余と子宮復古不全

子宮は産後、4~6週間かけて元の大きさに戻りますが、子宮筋の収縮がうまくいかないと子宮復古不全となり、子宮の戻りが悪くなって出血が止まりにくくなるとともに回復が遅れます。
中医学において、筋の栄養分は血であり、【血余】であれば子宮筋の回復がスムーズになります。もともと血の量が十分ではない場合は、出産による血の消耗により子宮復古不全になる可能性が高まります。産前からしっかり血を貯めるようにしましょう。




◆血余と産後うつ

血には身体を滋養するだけでなく、精神を安定させる働きがあります。
【血余】であれば、出産の際の出血や、授乳、睡眠不足でも、気持ちが安定し、産後うつになりにくくなります。






中医学で考える「血余」


2000年以上前の「黄帝内経」という中国の最も古い医学書において既に【血余】という言葉が使われています。

『黄帝内経』:“肝蔵血,发为血之余;肾藏精,其华在发”

肝という臓が血を貯蔵し、血量をコントロールし、血余(血に余裕)があればたくさん髪の毛が生え、またツヤとハリとツヤもあると表されています。
一方、血が足りない場合(中医学では血虚)、髪の毛が薄く、肌はカサつき、つややハリがなく、脱毛など起こすと言われます。



『灵枢。决气』:“中焦受气取汁,变化面赤,是谓血。血者,水谷之精也,生化于脾”
『灵枢。邪客』:“营气者,泌其津液,注之于脉,化以为血”

中医学では、血は心、肺、脾、肝、腎の5つの臓と深い関係にあります。まず、脾胃が食べ物を消化吸収し営気と津液などの栄養物質に変化させます。できた栄養物質は経脈という通り道を経て、肺に集められ、肺の呼吸の働きにより血となります。血は肺から心に送られ、心の働きにより全身を循環し、余った血は肝臓に貯蓄されます。

『侣山堂类辨·辨血』:“肾为水脏,主藏精而化血”
『诸病源候论·虚劳精血出候』:“肾藏精,精者,血之所成也”
『张氏医通·诸血门』:“精不泄,归精于肝而化清血”

これら中医学の古い書籍によれば、血の源には脾胃が生成する営気と津液以外に腎精もあります。そのため、血と関係のある疾患の臨床において、全身から捉える整体観で考えます。

『難経・二十二難』:“血主濡之”
血は濡養する働きを持っています。

『金匮钩玄·血属阴难成易亏论』:“目得之而能视,耳得之而能听,手得之而能摄,掌得之而能握,足得之而能步,脏得之而能液,腑得之而能气。是以出人升降,濡润宣通者,由此使然也”
全身の組織(五臓六腑、五官、九窍、四肢、百骸)の栄養は全て血から提供されています。
例えば、血の濡養により目が見え;耳が聞こえ;手でものを取れ;掌が握れ;足で歩け;五臓六腑の出入昇降の働きが正常に運営できます。




血が足りない場合には体に様々な不調を引き起こすことがよく知られますが、血が充実している【 血余 】の場合はどうでしょうか?

女性は「女子以血為本(女性は血をもって本となる)」と言われ、血と関係が深く、一番影響を受けやすいと考えます。

血が充実している【 血余 】の場合

血を貯蔵する肝と、精を貯蔵する腎が両方とも元気で腎精が充実していると・・・

 女性は14歳前後には初潮がある
 経血の量がしっかりあり、鮮やかな血の色、塊も少なく腹痛も軽い
 美しくツヤとハリのある髪の毛がたくさん生える
 大人になると生殖機能を持ち、妊娠出産ができる

血が充実していれば五臓六腑が正常に稼働し・・・

 目が見える
 耳が聞こえる
 手でものを取ることができる
 掌を握ることができる
 足で歩くことができる

出産後も肝に血の余裕があれば・・・

 母乳がしっかり出る
 産後鬱になりづらい
 子育て中に体も疲れにくく、回復も早い

脈に血が満たされていると・・・

 体が暖かく全身の肌が潤い、体の内面から美しさが溢れる

血の潤いで・・・

 精神的にも安定、夜も快眠になる

血余と腎精が十分であれば・・・

 更年期障害を引き起こしにくく、老化のスピードを遅らせることが出来る



全身の血(けつ)の量・質ともに十分に余力があると、年齢や環境にともなう身体の変化にも対応できるようになります。

養生をして、“血余貯金”をしっかり貯めていくようにしましょう。




気になる症状があり、なかなか改善されないときは漢方が有効です。是非ご相談下さい。


 

鄭先生

監修

中医学アドバイザー・医学博士
鄭 冬梅先生

順天堂大学大学院医学研究科消火器内科学博士課程医学博士取得
北京中医薬大学卒/中医師(中国)/登録販売者