薬草辞典-な行

 

射干やかん

やかん

[基原]アヤメ科ヒオウギの根茎。

[別名]烏扇うせん偏竹へんちく

[性・味]寒・苦

[帰経]肺

[用法]5~15g。妊婦には使用しない。

祛痰きょたん作用を有する降火解毒薬こうかげどくやく痰熱証たんねつしょうに多用される。清熱利咽せいねつりいん作用は山豆根さんずこんより劣るが,化痰かたん作用は優れる。

清肺祛痰

肺火を冷まし降ろし痰を去り,肺気を降ろして止咳し呼吸困難を緩和(平喘)する。痰熱が盛んな病態によく適する。
(1)肺熱の黄色多痰・咳嗽や痰熱による呼吸困難・呼吸促迫などに使用される。前胡・杏仁・瓜萎根・貝母・桑白皮・黄芩などと用いる。
(2)温肺祛痰薬を配合して,寒性の痰(寒痰壅肺)にも使用される。咳嗽・喘鳴・ 呼吸困難・白色多痰など。麻黄・細辛・款冬花・紫苑・半夏などと用いる。〔代表方剤:射干麻黄湯〕。

利咽消腫

咽頭炎の常用薬。咽頭の熱毒を緩和する。風熱邪や痰熱・肺熱などの咽頭炎・扁桃腺炎,熱性の多痰による咽頭痞塞などに使用される。桔梗・馬勃・玄参・升麻・甘草などと用いる。

[注意点]下痢を起こすこともある。

(管理No.01-171)

 

益智仁やくちにん

やくちにん

[基原]ショウガ科ヤクチの成熟果実。

[性・味]温・辛

[帰経]脾・腎

[用法]3~10g。砕いて使用。丸・散剤も可。

温脾おんぴ作用に優れた補腎固摂薬ほじんこせつやく補骨脂ほこつしに比べ補腎ほじん作用は弱いが,温脾固摂おんぴこせつ作用に優れる。

補腎固摂

腎陽を温めるとともに収斂作用があり,便・尿・唾液などの津液流失を緩和する(固摂作用)。
(1)腎陽虚による頻尿・尿失禁・遺精などに使用される。特に尿失禁などの改善に優れる。菟絲子・覆盆子・山薬・烏薬などと用いる。〔代表方剤:縮泉丸〕。
(2)虚寒性の不正出血や血性帯下に使用される。

暖脾補腎・
止瀉

脾を温め脾機能を活発にする。脾陽虚による下痢・腹部冷痛・水様性唾液過多・腹部脹満・食欲不振などに使用される。
①腹痛・下痢には, 砂仁・乾姜・白朮などと用いる。
②一般の脾虚や小児の唾液分泌過多には,人参・党参・白朮・陳皮などと用いる。

[注意点]燥性と熱性が強く,陰虚火旺・熱証には禁忌。

(管理No.01-172)

 

益母草やくもそう

やくもそう

[基原]シソ科ホソバメハジキやメハジキの全草。

[別名]莞蔚じゅうい

[性・味]微寒・辛・苦

[帰経]心・肝・膀胱

[用法]10~30g。外用も可。

利水りすい作用を有する活血薬かっけつやく。婦人科の常用薬。寒性であり,沢蘭たくらんに比べ活血かっけつ利水りすい作用に優れる。

活血通経

血を巡らせ,経絡の流通を良好にする(通経)。軽度の補血作用もあり,活血するも血を消耗させない。そこより”瘀血を行〈めぐ〉らせ,新血を生ず 《本草蒙筌》“といわれる。微寒性であり,熱性瘀血証に適する。月経痛・閉経・産後の腹痛や悪露排泄不全,産後子宮収縮不全による出血・腹痛などの月経諸病や産後の諸症状に多用される。浮腫・外傷などにも使用される。単味の使用も可。
①当帰・川芎・赤芍薬・丹参などと用いる。〔代表方剤:芎帰調血飲,益母丸〕。
②外傷打撲には,当帰 ・紅花・三七などと用いる。新鮮品の汁を塗布してもよい。

利水消腫

活血するとともに水分をも巡らせる。全身の浮腫,特に月経時や産後の浮腫に適する。近年では高血圧や腎炎・狭心症などにも使用される。茅根 ・茯苓・車前子・桑白皮などと用いる。

清熱解毒

消熱解毒作用があり,湿熱による皮膚化膿症や湿疹などに使用される。外用も可。

[注意点]陰虚証には使用しない。

(管理No.01-173)

 

夜交藤やこうとう

やこうとう

[基原]タデ科ツルドクダミの蔓茎。

[性・味]平・甘

[帰経]心・肝

[用法]15~30g。外用も可。

血虚陰虚けっきょいんきょによる心神不安しんしんふあん治療薬。酸棗仁さんそうにん柏子仁はくしにんとともによく配合される。祛風安神きょふうあんじん作用のある養心安神薬ようしんあんじんやく

養心安神

心血を補い心神を安定させ,止汗する。心血虚の心神不安によ る不眠・多夢・多汗・動悸,陰虚の盗汗などに使用される。特に不眠に多用される。心神不安には柏子仁・酸棗仁・竜歯・真珠などと用いる。〔代表方剤:甲乙帰臓湯〕。

祛風通絡

風邪を去り経絡を通じさせる。行痺や血虚による筋肉関節痛やだるさなどに使用される。当帰・羗活・独活などと用いる。

皮膚瘙痒・湿疹などに使用される。煎液で外洗してよい。

(管理No.01-174)