漢方薬辞典-は行

 

麦門冬湯ばくもんどうとう

効能効果

痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支喘息

配合生薬

麦門冬(バクモンドウ)、半夏(ハンゲ)、大棗(タイソウ)、人参(ニンジン)、甘草(カンゾウ)、粳米(コウベイ)

出典

《金匱要略》肺痿,肺癰,咳嗽篇に「大逆上気して咽喉が利せないもの(顔を赤くして大いに気が上逆しのどがすっきりしないもの)。逆を止め,気を下す(上逆を止めて気を降ろす)」とある。

方意と構成

痰はあまりなく、あっても切れにくく、激しい空咳が出て、のどが詰まって呼吸ができないものに用いる。

主薬は麦門冬で、肺と胃の液を補い炎症を抑え咳を止める。人参・大棗・粳米は、胃の気を補うことで肺の不足を補い麦門冬を補佐する。半夏を加えるのは、麦門冬の粘滞性を除くとともに、気を降ろす働きによって咳や嘔吐を止めるからである。

(管理No.02-171)

 

八味地黄丸はちみじおうがん

効能効果

下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ

配合生薬

地黄(ジオウ)、山茱萸(サンシュユ)、山薬(サンヤク)、沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)、牡丹皮(ボタンピ)、桂皮(ケイヒ)、炮附子(ホウブシ)

出典

《金匱要略》に「崔氏八味丸,脚気上り少腹に入り不仁するを治す(下腿のむくみや歩行困難が見られ,上半身に気が上り,下腹部の知覚が鈍麻しているものを治す)」,「虚労腰痛(心身の疲労衰弱や腰痛があり),少腹拘急(下腹部がひきつり),小便不利者,八味腎気丸主之」とある。

方意と構成

本方は、下半身の衰弱を養い腎の陽気をつよめる。「六味地黄丸」に温熱で温める力がつよい炮附子、温めて気を巡らせ血行を促す桂皮を加えている。

(管理No.02-172)

 

半夏厚朴湯はんげこうぼくとう

効能効果

不安神経症、神経性胃炎、つわり、咳、しわがれ声

配合生薬

半夏(ハンゲ)、茯苓(ブクリョウ)、厚朴(コウボク)、蘇葉(ソヨウ)、生姜(ショウキョウ)

出典

《金匱要略》には「婦人の咽中,炙臠あるがごとき(のどに炙った肉のようなものがある)は,半夏厚朴湯これを主る」とある。

方意と構成

本方は気剤の代表的処方である。

痰を取り去り気を降ろす半夏が主薬で、胃の働きを良くして悪心・嘔吐を止める。厚朴は腹満を除き、筋肉の痙攣を緩め、気の停滞を解消する。これに気を巡らせ肝の機能を高める紫蘇葉、余分な水湿を排出する茯苓、脾胃(胃腸)を調整して嘔吐を止める生姜が加えられている。

(管理No.02-174)

 

半夏瀉心湯はんげしゃしんとう

効能効果

急・慢性胃腸カタル、発酵性下痢、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔い、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症

配合生薬

半夏(ハンゲ)、黄芩(オウゴン)、乾姜(カンキョウ)、人参(ニンジン)、甘草(カンゾウ)、大棗(タイソウ)、黄連(オウレン)

出典

《金匱要略》嘔吐病篇に「嘔して腸鳴り(嘔吐・腹鳴し),心下痞(心下部の痞え)するもの,半夏瀉心湯これを主る」とある。

方意と構成

脾胃(胃腸)の気機の昇降(気の昇り降りをする運動)が心下で結し、痞えが見られるものに用いる。

“辛味”の性味である半夏・乾姜は中焦(胃腸)を温め、胃と心下の水を除き、冷えを取り去って嘔吐を止める。“苦味”の性味である黄芩・黄連は消炎・解熱し、心下の熱と湿を除いて胃のつかえを治す。この辛開苦降の働きにより胃を開き、内容物を下に降ろすことができる。人参・炙甘草・大棗は脾胃を補い脾の昇清(気を補い下の墜ちたものを上に挙げる)を高める。

(管理No.02-175)

 

半夏白朮天麻湯はんげびゃくじゅつてんまとう

効能効果

胃腸虚弱で下肢が冷え、めまい、頭痛などがあるもの

配合生薬

半夏(ハンゲ)、白朮(ビャクジュツ)、蒼朮(ソウジュツ)、陳皮(チンピ)、茯苓(ブクリョウ)、麦芽(バクガ)、天麻(テンマ)、生姜(ショウキョウ)、神曲(シンギク)、黄耆(オウギ)、人参(ニンジン)、沢瀉(タクシャ)、黄柏(オウバク)、乾姜(カンキョウ)

出典

《医学心梧》に「湿痰壅遏のもの(痰湿でふさがれているもの)あり,書に云う,頭旋眼花(頭がグルグルした眩暈が起こるもの)は,天麻・半夏にあらざれば除かずこれなり,半夏白朮天麻湯これを主る」とある。

方意と構成

(管理No.02-176)

 

白虎加人参湯びゃっこかにんじんとう

効能効果

のどの渇き、ほてり、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ

配合生薬

知母(チモ)、石膏(セッコウ)、甘草(カンゾウ)、人参(ニンジン)、粳米(コウベイ)

出典

《傷寒論」》太陽下篇に「傷寒(急性熱性病)で吐かせたり,下したりの治法をした後,7~8日も緩解しないのは裏(病邪が体内)にあって固着しているからである。表も裏も(体表も体内も)熱し,常に悪風し,甚だしく口渇して舌上が乾燥してカラカラになり大量の水を飲みたがるものは白虎加人参湯の主治」である。

方意と構成

本方は「白虎湯」に人参を加えたものである。白虎湯の熱で津液(体液)が枯渇したものを、人参を加え滋潤する。煩渇や口舌の乾燥が甚だしく、水をたくさん飲むような口渇と疲労が加わったものに用いる。

(管理No.02-177)

 

白虎湯びゃっことう

効能効果

のどの渇き、ほてり、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ

配合生薬

知母(チモ)、石膏(セッコウ)、甘草(カンゾウ)、粳米(コウベイ)

出典

《傷寒論》陽明篇に「三陽(太陽・少陽・陽明)の合病,腹満して身重く,もって転側しがたく(寝返りしにくく),口不仁(口舌が乾燥し味覚・運動障害があること),面垢づき(顔面に垢がついて),譫言(うわごと)し,遺尿(失禁)す。(中略)もし自ら汗出づるものは白虎湯これを主る」とある。

方意と構成

発熱し汗が出て煩渇する条件下の風邪・熱中症・急性熱性伝染病・麻疹・皮膚炎・糖尿病・ぜんそく・歯痛・眼疾・夜尿・精神病などで用いられる。

石膏は肺と胃の経絡に入り炎症をとるとともに、気分の高熱(熱邪が体内へと入り闘いが盛んで炎症が強い状態)を除き、消炎・解熱・滋潤する知母がこれを補佐する。これに胃と肺を潤す炙甘草、脾胃(胃腸)を助け渇きをとる粳米が配合されている。

(管理No.02-178)

 

茯苓沢瀉湯ぶくりょうたくしゃとう

効能効果

胃炎、胃アトニー

配合生薬

茯苓(ブクリョウ)、沢瀉(タクシャ)、白朮(ビャクジュツ)、桂皮(ケイヒ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)

出典

《金匱要略》に「胃反(胃気の下に降ろす働きが失調して上逆する状態),吐して渇し,水を飲まんと欲するもの,茯苓沢瀉湯これを主る」とある。

方意と構成

心下部の水湿の停滞を除く「苓桂朮甘湯」に、胃内の水を除く沢瀉、吐き気を抑える生姜が配合されている。

(管理No.02-179)

 

附子理中湯ぶしりちゅうとう

効能効果

胃腸虚弱、下痢、嘔吐、胃痛、腹痛、急・慢性胃炎

配合生薬

人参(ニンジン)、炮附子(ホウブシ)、乾姜(カンキョウ)、甘草(カンゾウ)、白朮(ビャクジュツ)

出典

《勿誤薬室方函口訣》に「理中は専ら中焦を主とする故(理中とはもっぱら脾胃衰弱に効果があり),霍乱吐瀉(嘔吐下痢)の症にて,四肢厥冷するものは四逆湯より反て此の方が速やかに応ずるなり(四肢が冷え、冷えが肘や膝に達するものは四逆湯より附子理中丸の方が速やかに効果が出る)」とある。

方意と構成

脾胃(胃腸)の陽気を補い冷えを除く「人参湯」に、温熱で温める力がつよい炮附子を加えたものである。人参湯証で手足の冷え甚だしく、悪寒し、脈微弱のものに用いる。

(管理No.02-180)

 

分消湯ぶんしょうとう実脾飲じっぴいん

効能効果

むくみ、排尿困難、腹部膨満感

配合生薬

蒼朮(ソウジュツ)、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、陳皮(チンピ)、厚朴(コウボク)、香附子(コウブシ)、猪苓(チョレイ)、沢瀉(タクシャ)、枳実(キジツ)、大腹皮(ダイフクヒ)、縮砂(シュクシャ)、木香(モッコウ)、生姜(ショウキョウ)、灯心草(トウシンソウ)

出典

《万病回春》に「腹脹というのは肚腹が腫れあがり,中が空なので鼓のように鳴ることである。分消湯は中満(腹中脹満)して鼓腸となったものを治す」とある。

方意と構成

圧迫した凹みがすぐ元に戻りやすい実証の浮腫に用いる。

胃内の飲食の滞りや水分の停滞を解消する「胃苓湯」から桂枝を除き、気を巡らせる枳実・縮砂・木香・香附子、水を排出する大腹皮・灯心草を加えたものである。

(管理No.02-181)

 

茯苓飲ぶくりょういん

効能効果

胃炎、胃アトニ―、溜飲

配合生薬

茯苓(ブクリョウ)、白朮(ビャクジュツ)、人参(ニンジン)、生姜(ショウキョウ)、陳皮(チンピ)、枳実(キジツ)

出典

《金匱要略》に「心胸中(胸部・胃部に)停飲宿水(水の停滞)あり,自ら水を吐き出して後,心胸間虚し(胸部が虚し),気満(ガスがいっぱいになる)食することあたわざる(食事ができない)を治し,痰気を消し,よく食せしむ(痰気を消して食欲を回復させる)」とある。

方意と構成

胃液を吐き出す溜飲があり、胃にガスが充満して食べられないものに用いる。

気を降ろし心下部の痞えをとる枳実・陳皮・生姜、胃内停水を去る茯苓・白朮、脾胃(胃腸)の機能を高める人参が配合されている。

(管理No.02-186)

 

茯苓飲合半夏厚朴湯ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう

効能効果

不安神経症、神経性胃炎、つわり、溜飲、胃炎

配合生薬

茯苓(ブクリョウ)、白朮(ビャクジュツ)、人参(ニンジン)、生姜(ショウキョウ)、陳皮(チンピ)、枳実(キジツ)、半夏(ハンゲ)、厚朴(コウボク)、蘇葉(ソヨウ)

出典

《金匱要略》の茯苓飲と半夏厚朴湯の合方である。

方意と構成

水飲の実邪を除く「茯苓飲」に、「半夏厚朴湯」を合方している。痰飲の上逆による悪心・嘔吐・腹満が甚だしい場合に適用する。

(管理No.02-187)

 

平胃散へいいさん

効能効果

急・慢性胃カタル、胃アトニー、消化不良、食欲不振

配合生薬

蒼朮(ソウジュツ)、厚朴(コウボク)、陳皮(チンピ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)

出典

《和剤局方》に「脾胃が不和で(胃腸の働きに不調和があり)飲食を思わず(食べたくなく),心腹胸助が脹満刺痛し(腹部や胸部が脹って刺すような痛みがあり),口苦無味(口が苦く味がしない),胸満短気(胸の張り・息切れ),嘔噦(嘔吐)悪心,噯気呑酸(げっぷ・胸やけ),面色萎黄(顔色は艶がなく黄色で),肌体痩弱(体は痩せて),怠惰嗜臥(なまけて横になっていたくて),体重節痛(体の節々が傷み),常多自利(小便が出すぎる),あるいは霍乱(嘔吐下痢)を発し,五噎八痞(むせて飲み込めず痞えて塞がっていること)に及び膈気翻胃(飲食物が下に降りず、朝食べたものを夕方吐いたり夕方に食べたものを翌朝吐いたりするもの)す。並びにこれを服すべし」とある。

方意と構成

本方は宿食を消化して胃内停水を去るもので、胃に水が溜まり、消化が悪くなって心下部が脹り、食欲が衰え、食べればグルグルと腹が鳴るようなときに用いる健胃薬である。

胃内停水を除く蒼朮が主薬で、大量に使用して水湿を除き脾胃の運化機能(胃腸の動き)を高める。厚朴は気の停滞を散じ、陳皮は痰湿を化し胃を温めて蒼朮を補助する。甘草・生姜・大棗は胃の気を降ろし、脾胃を調和する。

(管理No.02-182)

 

防已黄耆湯ぼういおうぎとう

効能効果

肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水太り)、関節痛、むくみ

配合生薬

防已(ボウイ)、黄耆(オウギ)、白朮(ビャクジュツ)、生姜(ショウキョウ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)

出典

《金匱要略》に「風湿(風邪と湿邪が合わさった病邪)で脈浮(脈が浮き),身重く,汗出,悪風するもの(汗が出て風に当たると寒気がするもの),防己黄耆湯これを主る」とある。

方意と構成

色白の肉が軟らかく水ぶとりの体質で、疲れやすく多汗症があり、関節がむくんで腫れ、痛みを伴うものに用いられる。

風邪を除き水を巡らせる防已に、気を補い体表を固め、むくみを解消する黄耆を配合することで利尿が促進され、水を排出する力がつよまる。これに脾胃(胃腸)を助け水を代謝する白朮、営衛(血中で全身を滋養する営気と体表で体温調整や防御をする衛気)を調和する甘草・生姜・大棗が加わっている。

(管理No.02-183)

 

防風通聖散ぼうふうつうしょうさん

効能効果

高血圧や肥満に伴う動悸、肩こり、のぼせ、むくみ、便秘、蓄膿症、湿疹、皮膚炎、ふきでもの(ニキビ)、肥満症

配合生薬

当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、川芎(センキュウ)、山梔子(サンシシ)、連翹(レンギョウ)、薄荷(ハッカ)、生姜(ショウキョウ)、荊芥(ケイガイ)、防風(ボウフウ)、麻黄(マオウ)、大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)、白朮(ビャクジュツ)、桔梗(キキョウ)、黄芩(オウゴン)、甘草(カンゾウ)、石膏(セッコウ)、滑石(カッセキ)

出典

《黄帝素問宣明論方》に「中風(卒中発作),一切の風熱(風邪と熱邪が合わさった病),大便閉結(便秘)し,小便赤渋(尿が赤色で渋る),顔面に瘡(できもの)を生じ,眼目赤痛(目が充血)し,或は熱は風を生じ(熱により内風が生まれ),舌強ばり,口噤し(口が開きずらい),或は鼻に紫赤の風棘癮しん(紫赤色の酒さ鼻の発疹)を生じ,しかして肺風(気管支炎)となり,或は癘風(らい病)となり,或は腸風(痔疾患)あって痔瘻となり,或は陽鬱して(陽気が鬱して)諸熱となり,譫妄驚狂(うわごとや精神異常)する等の症を治す」とある。

方意と構成

本方は一貫堂処方の臓毒症体質改善薬として有名で、発汗・利尿・通便などによって諸毒を排泄し解毒する作用がある。

風邪を汗として除く防風・荊芥・麻黄・薄荷、通便により熱を除く大黄・芒硝、肺と胃の熱を除く石膏・黄芩・連翹・桔梗、熱邪を小便で排泄する山梔子・滑石により体内の炎症を解する。血を養い巡らせる当帰・芍薬・川芎、脾胃を助ける白朮・甘草は体の正気(病邪に対抗する力)を守るように働く。

(管理No.02-184)

 

補中益気湯ほちゅうえっきとう

効能効果

虚弱体質、病後の衰弱、食欲不振、ねあせ

配合生薬

人参(ニンジン)、白朮(ビャクジュツ)、黄耆(オウギ)、当帰(トウキ)、陳皮(チンピ)、大棗(タイソウ)、柴胡(サイコ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)、升麻(ショウマ)、

出典

《内外傷弁惑論》に「内傷脾胃は,すなわちその気を傷り(内傷脾胃は気を傷め),外感風寒は,すなわちその形を傷る(外感風寒は体を傷める)。その外を傷るは有余たり,有余はこれを瀉す(体の外を傷めるのは余計なものが多いからであり瀉す)。その内を傷るは不足たり,不足はこれを補う(体の内を傷めるのは足りないからであり補う)。内傷不足の病,いやしくも誤認し外感有余の病と作して反ってこれを瀉せば,そのうちその虚を虚するなり(内傷による不足の病を誤って外感による病として瀉せば、虚をさらに虚することになる)」「ただまさに辛甘温の剤をもって(辛甘温の性質をもつ薬で),その中を補い(脾胃を補い),その陽を昇らせ(陽気を昇らせ),甘寒をもってその火を瀉せばすなわち癒ゆ(甘寒の性質の薬で火を瀉せば治る)」とある。

方意と構成

病後の疲労、高齢者や虚弱者の感冒、夏痩せ、腹膜炎、脱肛などに用いられる。

黄耆が主薬で、大量に使い肺や脾胃(胃腸)の気を養う。人参・白朮・炙甘草は脾胃の運化(胃腸の働き)を高め黄耆を補助しており、気を巡らせる陳皮を加えることで補剤による滞りを防止する。柴胡・升麻は気の上昇作用をつよめ、黄耆の昇発(気を補い上に挙げる)を補助する。生姜・大棗は諸薬を調和する。

(管理No.02-185)

 

補気建中湯ほきけんちゅうとう

効能効果

腹部膨満感、むくみ

配合生薬

白朮(ビャクジュツ)、蒼朮(ソウジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、陳皮(チンピ)、人参(ニンジン)、黄芩(オウゴン)、厚朴(コウボク)、沢瀉(タクシャ)、麦門冬(バクモンドウ)

出典

《済生方》に「鼓脹(腹脹)を治す。元気,脾胃,虚損,宜しく中を補い(脾胃の気が虚損しているものに中焦を養い),湿を行らし,小便を利すべし(湿を巡らせ小便を出す)。切に下すべからず(便で下してはいけない)」とある。

方意と構成

体質が虚弱なものや病気が慢性となり、鼓脹・腹水・圧迫した凹みがなかなか元に戻らない浮腫があるものに用いる。柴苓湯・分消湯・五苓散・木防已湯などが適用しない虚証で元気が衰えたものに使用する。

気を補い胃腸機能を高める「四君子湯」と宿食を消化して胃内停水を去る「平胃散」を合方して甘草を去り、炎症をとる黄芩、水湿を排出する沢瀉、滋潤する麦門冬を加えたものである。

(管理No.02-188)

 

補陽還五湯ほようかんごとう

効能効果

しびれ、筋力低下、頻尿、軽い尿漏れ

配合生薬

黄耆(オウギ)、当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、地竜(ジリュウ)、川芎(センキュウ)、桃仁(トウニン)、紅花(コウカ)

出典

《医林改錯》に記載がある。「半身不随,口眼歪斜(顔面神経麻痺),言語蹇渋(発語障害),口角流涎(口角から唾や涎が流れ出る),大便乾燥,小便頻数(頻尿),遺尿失禁(尿失禁)するを治す」とある。

方意と構成

脳卒中による半身不随、顔面麻痺、言語障害、膀胱直腸障害などで、血行不良(瘀血)があり気虚(エネルギ―不足)を呈するものに用いる。

主薬は大量の生黄耆で、気を補うことで血の滞りをとる効がある。当帰・川芎・赤芍・桃仁・紅花が血を巡らせ、地竜は経絡を通じ血脈を行らせる。

(管理No.02-189)