下痢・慢性便秘
便秘とは?
便秘とは、一般に3~4日以上便通がないものを指します。 現在、女性の半数以上が便秘に悩んでいるといわれます。
その種類としては、大腸の筋力が弱ったために起こる「弛緩性便秘」、ストレスが腸の運動を引きつらせ、便の通りが悪くなる「痙攣性便秘」、そして、加齢によって直腸の神経反射と収縮力が弱くなる「直腸性便秘」の3タイプがあります。 ちなみに女性が悩んでいるのは弛緩性便秘が多いようです。 その他、痔があり排便時に肛門痛が起こるために便意を抑えている人、下剤を長く用いていたために排便反射がよわくなっている人などにも便秘が起きます。
下痢とは?
下痢とは、便内の水分が多く含まれ、排便の量や回数が増加する状態のことを指します。 季節としては夏と冬に下痢をする人がたくさんいます。 夏の下痢は寝冷え、消化の悪いものの食べすぎ、飲みすぎなどによって起こります。 一方、冬の下痢は、急性で発熱を伴う細菌感染による下痢が多いのです。 発熱がなくしばしば繰り返す下痢は、原因となる疾患がなければストレスなどで起こる心因性の過敏性腸症候群と考えられます。
中医学の考え方と漢方薬
便 秘 | |
---|---|
胃や腸に熱がこもり、津液(体液)が消耗することによる便秘 | |
症状の特徴 | 便が乾燥して硬く、腹痛、 お腹が張りガスが多い。発熱やのどが渇き冷たいものが欲しくなったり、尿が濃くなるなどの症状がある。 |
原因 | 辛いもの、油っこいものの過食や、陽盛体質、熱性の疾病などで胃腸や体内に熱がたまり津液(体液)が減少、補うために大腸内の陰液(水分)が吸収され、不足すると大腸内が乾燥して滋潤作用が失われて便秘になる。 |
漢方薬 | 『桃核承気湯』『防風通聖散』『大黄甘草湯』など |
大腸の気の動きが滞りによる便秘 | |
症状の特徴 | 特に憂鬱、イライラして怒りっぽくなるなど、また便が細く少量ですっきりせす゜腹痛、腹満、ガスやけっぷが多い等の症状が伴い、女性では月経前に傾向が強くなる。 |
原因 | 精神的ストレス、緊張、不安、また運動不足などでで肝気が鬱結して肝の疎泄機能が低下し、気機(体内の気の昇・降・出・入)がスムーズに行えず、大腸の気の動きも滞り、蠕動機能失調をきたして便秘になる。 |
漢方薬 | 『加味逍遙散』『大柴胡湯』など |
陰血(血液、体液)不足による便秘 | |
症状の特徴 | ころころとした硬い便になり、唇や皮膚が乾燥し、顔色につやがないなどの症状が伴う。 |
原因 | 多汗、多尿による体液の消耗、また、産後、慢性病、熱性病の回復期、さまざまな原因による多量の出血や老化、過労などによる陰精不足から陰血不足を招き、腸が滋養を失い腸管液の分泌不足から腸内が乾燥して、便が硬くなり便秘となる。 |
漢方薬 | 『麻子仁丸』『潤腸湯』など |
脾腎陽虚(脾、腎の陽気不足)による便秘 | |
症状の特徴 | 乾燥便または軟便でも排便が困難、尿はうすく多い。手足や背中、腰が冷えて寒く、顔が青白く元気がなく、温めると軽減。また、一般的な下剤はかえって腸管の運動を弱らせ、便秘を悪化させてしまう。 |
原因 | 体質が陽虚(虚弱体質)、また、老化や慢性疾患による腎陽虚弱、また冷たい物の飲食から脾陽を損ね、脾腎陽気が不足して”気虚””陽虚”をまねき、腸の働きは弱く、また温養されないために蠕動機能失調し、便秘になる。 |
漢方薬 | 『人参湯』『桂枝加芍薬大黄湯』など |
下 痢 | |
---|---|
寒湿による下痢 | |
症状の特徴 | 水のような便、未消化物が混ざる便、排便後は痛みが軽減する、お腹がゴロゴロと鳴り痛みを伴う、食欲はない、風邪の症状が伴う、舌の苔が白く粘り気がある。 |
原因 | ビールやジュース、生ものや油っぽいものなどの取りすぎや冷房によって体を冷やしたことが原因で、胃腸の機能が低下して、水分代謝が滞り、下痢になる。 |
漢方薬 | 『かっ香正気散』など |
湿熱による下痢 | |
症状の特徴 | 急な下痢、腹痛と下痢が交互に起こる、排便後もすっきりしない、悪臭を伴う便、肛門の熱感や痛み、発熱や口の渇き。 |
原因 | 暴飲暴食や食あたりや、細菌やウイルスの体への侵入により、消化不良をおこし、熱性の下痢を招いたもの。 |
漢方薬 | 『黄連解毒湯』など |
脾気虚による下痢 | |
症状の特徴 | 下痢(泥状便),顔色が悪くなり、疲れやすくいつもだるい、食後すぐ眠くなる、食後お腹が張りやすい、ゲッフ゜がでやすい、胃下垂、子宮下垂、脱肛など。 |
原因 | 過労や心身のストレスや、生活の不摂生や、虚弱体質などが原因で、気のエネルギーが不足して、胃腸機能が低下して、下痢するもの |
漢方薬 | 『補中益気湯』『香砂六君子湯』『平胃散』 など |
脾腎陽虚による下痢 | |
症状の特徴 | 下痢(水様性の便、シャーと出てしまう便)、みぞおちあたりが痛む、むくみやすい、尿がでにくい、尿の色がうすい又は透明で多量に出るなど。 |
原因 | 脾気虚の長期化や、毎日、アイスクリームを食べたり、加齢による「腎」の機能低下によって体が冷えて、下痢するもの。 |
漢方薬 | 『真武湯』『人参湯』『参馬補腎丸』など |
ワンポイントアドバイス
便秘
つねに便秘気味の人は、排便あるなしにかかわらず1日1回はトイレに行く習慣をつけ、適度な運動を行う。 イモ、豆、プルーン、ゴボウなど食物繊維を多く含んだものを食べる。 コロコロした乾燥便の出る人は、腸を潤す黒ゴマ(すったもの)やハチミツ、クルミを食べる。 起き抜け一杯の牛乳や水を飲む。
下痢
一過性のひどい下痢のときは、水分補給に気をつけながら消化のよいものを食べる。冷たいものは厳禁。
慢性の下痢の人は、水分のとり過ぎや冷たいものに注意。繊維のかたいタケノコやゴボウ、お腹の中でガスを発生させやすいカボチャ・イモ・豆類をひかえる。
神経過敏で下痢をよく起こす人は、ストレスをためないように注意。