生理不順(月経不順)
まずは正常な「生理」を知ることから
生理は女性にとって身体の状態を知るためにも大切なもの。中医学では、生理は体調や身体の状態を示す大切なバロメーターと考えています。不妊症や婦人科のトラブルはもちろんのこと、他の症状や病気がある場合も、生理に何かしらのシグナルが現れることも多いのです。「そういえば今月はまだだった。」「だいたい2~3ヶ月に1回かな。」と思っていたら要注意です。まずは、自分の身体がどんな状態なのか是非確認してみましょう。
知っておきたい『生理のキホン』
また他にもこんなことをチェックしておきましょう。
排卵期に下腹部のハリや排卵による痛みがない。
排卵期におりものがある。
子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科系の疾患がない。
つけていますか?『基礎体温』
女性の身体はホルモンの影響を受け特有のリズムを刻みます。そのリズム(周期)を把握することは、自分の体を知るうえでとても重要です。そのために、ぜひ是非実践していただきたいのが「基礎体温」を測ること。基礎体温表をみるとさまざまなことがわかってきます。お医者さまにかかったり、漢方相談をお考えの時には、基礎体温表をお持ちください。
<基礎体温の計り方>
生理不順のメカニズム
通常、月経期になると脳の視床下部から脳下垂体に卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されます。これにより卵巣内で約14日間かけて卵胞が育ち、その卵胞から卵胞ホルモン(エストロゲン)というホルモンが分泌されて子宮内膜を増殖し、受精卵の為のベッド作りをします。卵胞が完全に成熟すると、卵胞から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に増加し、脳下垂体から大量の黄体化ホルモン(LH)が分泌され、卵子が排卵します。その抜け殻となった卵胞が黄体となり、約14日間かけて黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)を分泌し、ベッドである子宮内膜にふかふかの布団を敷きます。受精卵が着床すると妊娠が成立し、受精しなかったり着床しなかった場合は、黄体は衰退して白体となり黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)が減少して、不要になったベッドが壊れます。そしてそれらを子宮の外へ排出する月経が起こります。
月経不順の方は、ストレス、疲れ、栄養の偏り、睡眠不足、無理なダイエット、ホルモンバランスの乱れ、婦人科疾患などが原因で、このサイクルが正常に機能しない状態にあります。
あなたの生理周期はどのタイプ?
頻発月経(月経周期が短い:25日以内)
卵胞が未熟なまま早く排卵してしまったり、未熟な卵胞のために黄体の機能も低下して黄体ホルモンの分泌が伸び悩み、高温期を維持できずに高温期が短くなることが多くみられます。また、卵胞が未熟なため排卵が上手く出来ずに無排卵となり、黄体が作られず消退出血になる場合も考えられます。
→生理周期が短い状態が続くと、正常な方よりも生理の回数が増え、身体の消耗が増えてしまうため、卵子の成長が上手くいかない・・・という悪循環になることがあります。排卵回数が多くなり、早く閉経を迎えることになる可能性も。そうすると、いずれは妊娠をご希望される方は、いざという時になかなか良い卵子が育たずにチャンスを逃しやすくなる可能性もあります。また、ホルモンバランスが乱れやすくなる為に、更年期障害の心配も出てきます。
稀発月経(月経周期が長い:39日以上)
卵子がなかなか育たず、低温期が長くなり排卵が起こりにくくなっている可能性があります。特に以前と比べて周期が長くなっている場合には注意が必要です。ホルモンバランスの乱れ以外にも、多嚢胞性卵巣症候群や神経性食欲不振症、クッシング症候群、先天性副腎過形成症、下垂体腺腫などの病気に関連して稀発月経が引き起こされることもあります。
→排卵はしているが低温期が長いという場合は、卵胞を育てるのに通常よりも時間がかかっているということです。卵胞が排卵できるまで成長するためには、血流にのってホルモンや栄養などが十分に届けられる必要があります。そのため、血流や栄養状態、ホルモンバランスなどが影響します。ホルモンの乱れは、過度なダイエットや運動、食生活の乱れ、ストレスなどによって引き越こされることがあります。また、生理周期が長い状態が続くと、卵胞を育てきれずに、無排卵の生理となってしまう場合も出てきます。このような状態が続くと、卵巣に十分な栄養がいきわたっていない状態が続くことになり、卵巣機能がさらに低下し、無月経になる可能性も出てきます。稀発月経は、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が少なくなりやすいということなので、お肌の乾燥、肌荒れ、しわ、抜け毛、白髪、骨密度の低下、高脂血症、動脈硬化、などのリスクが上がってしまいます。
(生理周期がバラバラ)
生理周期が1~2日ずれる程度は異常ではありませんが、月によって早まったり遅れたりして、いつ生理がくるかわからない場合は、ストレス、不規則な生活、寝不足などが原因となり、生理周期のコントロール機能が乱れている状態だと考えられます。
→ストレスや生活習慣の不摂生により女性ホルモンが乱れているため、冷え、肌荒れ、体調不良、女性らしい体型を作りづらい、イライラ・うつうつしやすい、などの症状が出てきやすくなり、妊娠をご希望の場合は排卵日が分かりづらいということもあります。
生理不順のための漢方・養生法
生理の悩みには「腎」の働きをサポートすることが大切です。中医学的に「腎」は成長・生殖などの働きを司り、子宮・卵巣の力、ホルモンと深く関わっていると考えられています。生理不順が長期間続いている方は、生理周期を整えると同時に「腎」の力を付けていくことをおすすめします。
漢方では、亀鹿二仙丸、参茸補血丸、参馬補腎丸、海馬補腎丸、輝精水、馴鹿丹などがおすすめです。
月経期 |
月経期は、要らなくなった子宮内膜をリセットする時期です。充分な睡眠をとり、激しい運動は避けて「気」「血」の消耗を防ぎましょう。体を冷やさない様に冷たい飲みものや食べものは控え、温かいものを積極的に摂りましょう。
≪おすすめ食材≫
身体を温めてくれる温野菜のスープ、シナモンティー、生姜湯。
女性ホルモンの分泌を活性化する「腎」を強くする黒砂糖、黒豆、黒きくらげ、黒ゴマなどの黒い食べ物。
生理により消耗する「気」「血」を補うナツメ、鶏肉、卵など。
≪おすすめ漢方≫
芎帰調血飲第一加減、田七人参、冠元顆粒、血府逐瘀丸、逍遥散などです。 |
卵胞期
(低温期) |
生理が終わったら、卵胞期(低温期)となり、卵胞を育て、子宮内膜を育てていく時期です。女性ホルモンが高まるため、一番この時期が心身ともに調子がよいと実感しやすい時期です。しかし、調子が良い時期だからといって、無理は禁物です。できれば22時までに、少なくとも24時までには眠りに入るようにし、更に女性ホルモンを高めましょう
。
≪おすすめ食材≫
卵胞と子宮内膜の原料になる「血」を増やしてくれる豆類、卵、赤みの肉などの良性の蛋白質。
女性ホルモンの分泌を活性化する「腎」を強くする黒砂糖、黒豆、黒きくらげ、黒ゴマなどの黒い食べ物。
≪おすすめ漢方≫
六味地黄丸、杞菊地黄丸、十全大補湯、帰脾湯、参茸補血丸、亀鹿二仙丸、卵宝源などです。 |
黄体期 (高温期) |
排卵後から次の生理までの黄体期(高温期)は、子宮内膜を厚くフカフカにして受精卵を着床・発育しやすくなるように子宮環境を整える時期です。体を温め、リラックスして過ごしましょう。妊娠の可能性がある場合は、激しい運動は避けましょう。
≪おすすめ食材≫
イライラを鎮めてくれるレモン、グレープフルーツなどの柑橘類、お酢。
気分をリフレッシュしてくれる紫蘇、三つ葉、セロリなどの香味野菜。気持ちをリラックスしてくれるハーブティーなど。
身体を温めるシナモン、生姜、黒砂糖など。
≪おすすめ漢方≫
八味地黄丸、牛車腎気丸、芎帰調血飲、十全大補湯、加味逍遥散、馴鹿丹、亀鹿二仙丸などです。 |
生理は、女性の身体の健康バロメーターです。
もし何か不調がでたら、ここ1~2ケ月の自分の生活がどうだったか、ストレスや過労など無理はなかったか、振り返ってみましょう。生理とは関係ないと思っていた心や身体の不調が、実は生理周期と関係していたというのは、よくあることです。
生理前はイライラしたり落ち込んだりしやすいから、「あまり忙しくしない」とか、「機嫌よく過ごす工夫をする」など、心と身体を労わるようにすることが大切です。また、排卵期はだるくなりやすいので、予定を詰め込まずにゆったりとした時間を持つなど心がけることが、女性の身体のメカニズムを知り、不調を予測して対処するための「養生」ポイント。ご自分の身体のリズムを把握して、養生や漢方で女性ホルモンを味方につけ、より美しく、元気にすごして頂きたいと思います。
※漢方は自分の体質に合ったものを飲んで初めて効果が発揮されます。 服用の際には、必ず中医学アドバイザーにご相談の上ご服用ください。