「気象病」を体質で考える
更新日:2024.2.16
気象病とは?
天候や気温、気圧、湿度などの変動によって起こる身体の不調のことを気象病と言います。
季節の変わり目、気圧が低下する雨や曇りの天候時、梅雨や台風の多い時期などに起こりやすく、特に気圧の変化による影響が大きいと言われています。
気象病は正式な病名ではありませんが、気候の変化による身体の不調を表すものとして近年認知されるようになりました。
気象病に悩まされている方は1,000万人にのぼると言われており、特に月経のある女性の割合が高くなっています。
代表的な症状
- 頭痛
- 倦怠感
- 眠気
- めまい
- 吐き気
- 耳鳴り
- 関節痛
- 肩こり
- しびれ
- 古傷の痛み
- 喘息発作
- 気分の浮き沈み
- 腹痛
- 下痢
気象病チェックリスト
以下の項目が5個以上当てはまると気象病の可能性が高くなります。
気象病の症状の強い方は該当項目が多くなる傾向にあります。
①内耳の敏感度チェック
- もうすぐ雨が降りそうなど、天気の変化をなんとなく予測できる
- 新幹線や飛行機に乗った時に耳の詰まりや耳の痛みを感じやすい
- 乗り物酔いをしやすい
- 耳抜きが苦手
- よく耳鳴りがする
②天候変化への敏感度チェック
- 天気が変わるときに体の不調やメンタルの不調がある
- 雨の降る数日前から直前、雨の降っているときに体調が悪くなる
- 天候が悪いとやたらと眠くなる
- 雨の降る前に、頭痛やめまいが起こることがある
- 雨が降る前に関節や古傷に痛みを感じることがある
- 湿度が高いと胃腸の調子が悪くなる
③気象病のなりやすさチェック
- 頭痛が起こりやすい
- 首がこりやすい
- 耳鳴りやめまいが起こりやすい
- 日常的にストレスやプレッシャーを感じている
- 歯のくいしばり、歯ぎしりを指摘されている
- デスクワークが多い
- エアコンが効いている環境にいることが多い
- 首を痛めたことがある
- 過去に大きなケガをしたことがある
西洋医学的治療方法
気象病に対しての西洋学的治療法は確立されていませんが、内耳や脳の血流を改善する薬、抗めまい薬、乗り物酔いの薬などが使用されることが一般的です。
中医学で考える気象病の原因と対策
中医学では気象病のような気候による体調の変化を体質を把握する上でとても大切にしています。
その思想の中に「整体観」というものがあり、「人間の臓腑経絡は一つの整体であり、人間と自然界は一つの整体である」と考えます。
つまり人体を構成する全てのものは互いに影響し合っており、さらに地理、季節、気候、生活習慣など人間を取り巻く全てのものともつながりがあり、調和することで健康を保っていると考えています。
・身体の外側からの影響
気象病は人間の身体と外的環境の調和が乱れた場合に起こります。
身体に対する刺激が過剰となり悪さをした場合、その刺激を「外邪」とよんでいます。
外邪は以下の6つに分けられ、その種類に合わせて対策を取っていきます。
風邪、
寒邪、
湿邪
熱邪・
火邪、
暑邪、
燥邪
気象病においては「湿邪」が原因となる場合が多いです。
▶ 外邪について
・身体の内側からの影響
身体を構成する要素として、中医学では以下の3つが挙げられます。
気 |
エネルギー。身体を温める力、代謝力、免疫力、血液・体液・内臓をあるべき場所に保持したり動かしたりする力 |
血 |
血液。全身を栄養して、精神活動を支えるものです。 |
津液 |
血液以外の体液。身体を潤すものです。 |
これらの流れの停滞、または過不足により外的刺激を受けやすくなることが気象病の原因となります。
どこに問題があるかを見極め、漢方薬や鍼灸による対策を行います。
気象病でよくみられる体質と漢方やツボの対策
以下に、気象病における代表的な3つの体質と症状のパターンを挙げました。
下のいずれかにぴったりと当てはまるとは限りません。
漢方や鍼灸の専門家と相談すると、バランスの崩れ方と、ご自身が気になっている症状を軸に対策を取っていくことができますので、お気軽にご相談ください。
①津液の滞りタイプ <<痰湿阻滞>>
- むくみやすい
- めまいが起こりやすい
- 身体、手足、頭が重い
- 胃が重い、食欲がわかない、吐き気がする
- 軟便や下痢になりやすい
- おりものが多い
- 痰がネバネバする
- 汗がジトジトする
- 便がベトベトして便器を汚す
- 雨の日や梅雨時期などの湿気の多い日に症状が悪化する
身体の状態
胃腸虚弱、甘い物・味の濃い物・脂っこい物・冷たいもの・生ものなどの摂取過多による胃腸機能の低下などにより、日頃から身体に余分な水分が溜まっている状態です。
この様な方は、湿度の高い季節、湿度の高い環境、また発汗後に濡れた服を着用し続ける、海やプールに長時間入る、雨に濡れるなどの影響を受けやすく、その影響は湿邪となって気象病を発症しやすくなります。
治療方法
身体に溜まっている余分な水分を排出する「健脾化痰除湿
」の治療を行います。
漢方薬
五苓散、胃苓湯、藿香正気散、羗活、防風、蒼朮、独活、石菖蒲など。
ツボ
陰陵泉・豊隆・(お腹をカイロなどで温めるのもよい)
②気と血の滞りタイプ <<気滞血瘀>>
- 肩こり、腰痛、頭痛、関節痛など身体に凝りや痛みを感じる
- 顔色が黒っぽい
- 唇・歯茎が暗い赤色をしている
- シミができやすい
- アザができやすい
- ため息がでやすい
- のどや胸が詰まった感じがする
- 脇腹やお腹がハリやすい
- ゲップやガスがでやすい
- 気温や気圧が急に変化すると体調が悪化する
身体の状態
精神的緊張やストレス、プレッシャー、食べすぎ、飲みすぎ、運動不足などにより、日頃から気の巡りが停滞しています。
気の血を動かす作用は低下し、血の巡りも滞っている状態です。
この様な方は、気温や気圧の変化による血液の流れの変化に身体が適応できず、気象病を発症しやすくなります。
治療方法
滞っている気と血の巡りを改善する「理気活血」の治療を行います。
漢方薬
血府逐瘀湯、川芎茶調散、柴胡、香附子、烏薬、牛膝、延胡索など。
ツボ
合谷・太衝・三陰交
③気の不足タイプ <<気虚>>
- 疲れやすい
- 元気がわかない
- 風邪をひきやすい
- アレルギーがある
- 息切れしやすい
- 少し動いただけなのに汗が出る
- 食後に眠気がでやすい
- 集中力が持続しない
- 食欲がわかない
- 足腰に力が入りにくい
身体の状態
生まれつきの虚弱体質、飲食の偏りや栄養不足、胃腸虚弱、過労、慢性病などにより、身体のエネルギーである気が不足している状態です。
気には外的要因から身体を守る働きがありますが、気が不足していると外的要因を受けやすくなるため、気象病を発症しやすくなります。
治療方法
不足している気を補い、外的要因から身体を守る働きを高める「補気
」の治療を行います。
漢方薬
補中益気湯、玉屏風散、黄耆、人参、白朮、大棗、党参など。
ツボ
足三里・陰陵泉・脾兪
暮らしのアドバイス
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・睡眠は7時間を目安に早寝早起きを心掛け規則正しい生活をしましょう。
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・ウォーキング、ストレッチ、ヨガ、ピラティス、水泳など定期的な運動を取り入れましょう。
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・水分の摂りすぎに注意しましょう。一回にガブガブと水分を摂るのではなく、こまめに少しずつ水分を摂りましょう。
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・水分代謝を悪くする甘い物・脂っこい食べ物は控え、水分代謝を整える小豆・大豆・黒豆・枝豆・そら豆などの豆類、わかめ・こんぶ・海苔などの海藻類、あさり・しじみ・ハマグリなどの貝類、ハト麦・とうもろこし・玄米・雑穀などの穀物、冬瓜・ゴーヤ・キュウリなどの瓜類などを積極的に取り入れるようにしましょう。
日本全国よりご相談を頂いております。
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