体質で考える「不妊症」

更新日:2023.11.13

 

 

不妊症とは?

体質で考える「不妊症」

体質で考える「不妊症」

妊娠を希望するご夫婦が避妊をせず夫婦生活をとっていても、1年以内に妊娠に至らない状態のことを不妊症と呼んでいます。以前は2年とされていましたが、2015年に世界保健機構(WHO)や欧米諸国に習い1年へと変更され、より早期から適切に不妊治療をスタートできるようになりました。

 

不妊で悩むカップルは以前は10組に1組と言われていましたが、今や2.9組に1組のご夫婦が不妊を心配し、5.5組に1組のご夫婦は不妊治療を受けていると言われています。これには、女性の社会進出や男女ともに晩婚化の影響があると考えられています。

不妊治療においては近年飛躍的な進歩を遂げた西洋医学に加えて、漢方や鍼灸による中医学でも大きな成果を上げており、特に海外においては、西洋医学と中医学を合わせた中西結合医療が注目されています。

 

 
 
体質で考える「不妊症」

ご夫婦で取り組む妊活~不妊の原因~

体質で考える「不妊症」

通常、1回の排卵における妊娠率は平均20~25%とされており、避妊をせずに夫婦生活を行えば1年で80%、2年で90%のカップルが妊娠するとされています。

不妊の原因として、女性で約6割(男女ともにを含め65%)、男性で約5割(男女ともにを含め48%)と、原因は男女ともにほぼ半分となっており、女性だけ、男性だけの原因とせずに、ご夫婦で取り組むことが大切です。

 

<女性の不妊の原因>

・卵管因子:クラミジア、淋菌感染、子宮内膜症など

・卵巣因子:卵胞の発育不良、早発卵巣不全 (POF) など

・子宮因子:奇形、子宮筋腫、内膜症、ポリープ、黄体機能不全など

・排卵因子:ストレス、ダイエット、高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS) など

・頸管因子:頸管粘液分泌不良、フーナーテスト不適合など

・免疫因子:抗核抗体、抗リン脂質抗体など

 

<男性の不妊の原因>

・造精機能障害:5~7割は原因不明、精索静脈瘤、年齢、肥満、喫煙、薬剤、発熱、過労、ストレスなど

・性機能障害:勃起障害 (ED) 、射精障害

・精路通過障害

 

 
体質で考える「不妊症」

妊娠成立までの流れと女性ホルモン

体質で考える「不妊症」

妊娠には、女性側の卵子と男性側の精子が出会う必要があります。

 

まず女性側を見ていきましょう。

卵子は新しく作り出されるわけではなく、胎児のときに作られた原子卵胞を卵巣に蓄えて、排卵に向けて約半年ほどかけて育てていき、現在の周期で排卵する胞状卵胞という状態になります。通常、生理が来てから、胞状卵胞は14日程度かけて成熟していき、十分に成熟してから排卵します。この卵胞が成熟する過程で出てくるホルモンが女性ホルモンのエストラジオール(E2)です。

卵子が排卵すると、卵管の先にある卵管采(らんかんさい)と呼ばれるイソギンチャクのようになっている部分に取り込まれます。排卵後は卵胞の殻が黄体に変化し、黄体から黄体ホルモン(P4)が分泌されます。妊娠すれば、黄体は維持され、妊娠しなければ白体となりホルモンが減少し、生理が始まります。

 

エストラジオール(E2)

子宮内膜を厚くする

頸管粘液(おりもの)を増やす

黄体ホルモン(P4)

基礎体温を上げる

子宮内膜の分泌物を増やし着床しやすい環境に整える

 

次に男性側を見ていきましょう。

精子は、卵子と異なり、日々新しい精子を作ることができます。精巣の精細管の中で、おおよそ70日間かけて作られ、その後、精巣上体へ移動。ここで受精のための能力を備え射精される状態までに約14日間かかるとされています。合わせると精子生成から射精まで約3か月がかかります。

射精された精子は膣より子宮内を遡上していきます。はじめ数千万~数億匹いると言われますが、卵管入口に辿り着くころには1000匹程度、卵管膨大部においては100匹程度と減るようになります。

 

卵子と精子の受精~着床まで

卵管采にて卵子と精子が出会い、受精した後は、分割をしながら卵管から子宮へ移動して、着床をすれば妊娠成立です。

授精卵の卵割においては、スピードが大切で、3日目で8分割(初期胚)、5-6日目で胚盤胞となり、孵化した後着床します。この着床のタイミングはいつでもいいわけではなく、排卵後約1週間程度で子宮に着床の窓と呼ばれるピノポードが現れ着床に最適な構造となるので、この時までに卵割が進んでいることが必要です。

卵割のエネルギーは卵子由来ですが、精子には①先体反応を起こし卵子へ侵入する、②卵子を活性化して卵割のスターターとなる、③精子中心体による卵割の推進という役割があるため、受精や卵割において、卵子の質とともに精子の質も大変重要視されます。

 

 
体質で考える「不妊症」

西洋医学の不妊治療と漢方・鍼灸での不妊相談の特徴

体質で考える「不妊症」

西洋医学の不妊治療の特徴

西洋医学の不妊治療では近年新しい検査方法や技術が開発され飛躍的に発展を遂げています。各病院でも新しい治療方法や設備を取り入れて、専門医の先生はもちろんのこと、胚培養士、看護師、体外受精コーディネーターなどといった専門家が連携して治療にあたられています。

 

<病院でできることの特徴>

*1回に排卵する卵子の数を増やすことができます

通常の生理周期では1~2個の卵胞が育ちますが、排卵誘発剤やホルモン注射によって多くの卵胞を育てることができます。

*精子と卵子の出会いの場を作ることができます

夫婦生活のタイミングが合わなかったり、卵管が閉じていたり、子宮内膜症などの炎症やピックアップ障害など卵子と精子が上手く出会えていない場合に有効です。また受精障害がある場合、顕微授精によって授精の手助けができます。

*子宮内膜を厚くすることができます

ホルモン剤などの投与により、子宮内膜を厚くすることができます

 

漢方・鍼灸での不妊相談の特徴

一方、漢方薬や鍼灸施術など中医学での取り組みも年々進化を重ねています。漢方や鍼灸といった伝統医学は歴史の積み重ねもあり、古いものと捉えられがちですが、常に最新の研究がされ、海外では西洋医学と合わせた不妊治療の取り組みも進んでいます。そのため、漢方や鍼灸の知識だけではなく、西洋医学の知識も兼ね備えた中医学の専門家に相談されることをお勧めします。

 

<漢方・鍼灸など中医学でできること>

*卵子や精子の質をよくする

骨盤内の血流量を増やし、卵巣や精巣に安定的に栄養が届くようにサポートしたり、卵子や精子の栄養となる「気」「血」「精」といった栄養物質を補います。

*子宮内膜を元気にする

質のよい子宮内膜にするために、子宮の血流を安定的に維持し、子宮内膜の発育や着床のための変化をサポートします。

*年齢に伴う機能低下を改善する

妊活する年齢層が上がっている状況において、加齢による体の変化をサポートすることが大変重要です。中医学では生殖機能である「腎」という臓腑の働きを助ける「補腎」という方法を使って、加齢による機能低下を支えていきます。