育児ケア
夜泣き

「【泣く】というのは赤ちゃんにとって唯一できる伝達手段です。」

お腹がすいた・オムツがぬれている・寒い・熱い・かゆい・うるさい…
様々な不快感や不調を泣くことで必死に伝えようとしています。
でも夜中に赤ちゃんが泣く「夜泣き」では、赤ちゃんにとってもお母さんにとっても貴重な睡眠時間が削られることになり、とてもつらいものですよね。
何をしても泣き止まず、原因が分からない夜泣きでも、中医学でみると対策をとることができるかもしれません。

中医学では夜泣きの原因を大きく3つのタイプに分けます。それぞれの特徴・なぜ泣くのか?・小児推拿しょうにすいなでの治療と予防法をご紹介します。

① 冷えタイプ(脾寒ひかん

赤ちゃんに表れる特徴

うつ伏せ
  • うつぶせで寝たがる
  • 腰を曲げて泣く
  • 真夜中に特に泣く
  • 泣き声が低く弱い
  • 顔色が青白い
  • 手足が冷えていて、温めると落ち着く
  • 食が細くうんちがゆるい
  • おしっこが多い


  • なぜ?

    お腹が冷えて働かないので、食べ物のエネルギーを全身に巡らせることができていない状態です。夜は「陰陽いんよう」のうち「いん」の時間帯です。「陰」は「冷え」に関係が深く、夜になると「陰」が強くなり、冷えやすくなります。その中でも特にお腹が冷えて夜泣きをすると考えられています。



    小児推拿

    小児推拿

    1. 補脾経ほ・ひけい 300回
    親指の爪の外側、第一関節までを指先から手のひらに向けて指でさすります。
    お腹の働きを良くして消化を助けます。

    2. 摩腹ま・ふく 300回
    手のひらをつかっておなか全体を円を描くように反時計回りに撫でます。
    お腹を温めて消化を助けます。

    3. 揉一窩風じゅう・いっかふう 200回
    手の甲のすぐ下、手首のシワの真ん中を親指で優しく揉みます。
    お腹の痛みを和らげます。

    4. 掐揉小天心こうじゅう・しょうてんしん 100回
    手のひらの下方、親指と小指の根元のふくらみの間に爪を少し立てて優しく揉みます。
    心を落ち着かせます。

    ② 熱タイプ(心熱しんねつ

    赤ちゃんに表れる特徴

    あおむけ
  • あおむけで寝たがる
  • 明かり(照明)をつけると悪化する
  • 不安そうに落ち着かない様子で泣く
  • 1回のおしっこの量が少なく色が濃い、または、うんちが固く便秘がち
  • 顔が赤っぽい


  • なぜ?

    中医学で考えるいんようがスムーズに入れ替わることができない状態です。中医学では、すべてのものが陰か陽に分類され、バランスをとっていると考えていて、昼間は「陽」で、夜は「陰」に分類されます。ところが、夜になり弱まるはずの「陽」が夜になっても強いままになってしまうと、赤ちゃんの精神はまだまだ未熟で不安定なため影響を受けやすくなります。
    中医学で考える五臓のうち「しん」は精神を司り睡眠にも深く関係します。この「心」が「陽」の影響を受けると、興奮し眠れなくなります。



    小児推拿

    小児推拿

    1. 清心経せい・しんけい 200回
    中指の手のひら側を指の付け根から指先に向かって素早く撫でます。
    モヤモヤした心の熱を取り除きます。

    2. 清肝経せい・かんけい 200回
    人差し指の手のひら側を指の付け根から指先に向かって素早く撫でます。
    胸の熱を冷まして、心を落ち着かせます。

    3. 揉内労宮じゅう・うちろうきゅう 100回
    手のひらの中央。中指と薬指の骨の間を親指で優しく揉みます。
    心にたまっている熱を冷まします。

    4. 揉総筋じゅう・そうきん 100回
    手のひら側、手首のシワの真ん中を親指で優しく揉みます。
    心にたまっている熱を冷まします。

    ③ びっくりタイプ(惊恐りょうきょう

    赤ちゃんに表れる特徴

    あおむけ
  • 寝ている最中に急に驚き怖がって泣く
  • 唇や顔色が悪い(青白い)
  • お母さんの胸にしがみつく
  • 抱っこされたがる
  • 便の異常は特に無い


  • なぜ?

    赤ちゃんは、精神を司る「しん」という臓腑が不安定で、初めて見るもの、聞く音などにびっくりすると、この「心」が揺らいで、落ち着いて眠ることができません。
    心熱しんねつ」と似ていますが、顔の赤みや便の異常はなく、精神的な不安定が目立ちます。



    小児推拿

    小児推拿

    1. 清心経せい・しんけい 200回
    中指の手のひら側を指の付け根から指先に向かって素早く撫でます。
    心を落ち着かせます。

    2. 搗小天心とう・しょうてんしん 200回
    親指と小指のふくらみの中間。
    行う人の中指or人差し指の指先を付けたままリズミカルに折り曲げたり伸ばしたりします。心を落ち着かせます。

    3. 清肝経せい・かんけい 100回
    人差し指の手のひら側を指の付け根から指先に向かって素早く撫でます。
    揺らいだ精神を安定させます。

    4. 運内八卦うん・うちはっけ 100回
    手のひらに親指で円を描きます。
    お腹の調子を整えます。食べたものをエネルギーに変える力を助けます。



    「夜泣きが見られた時の心持ちやポイントをアドバイス」

    お母さんや育児をする方の心持ち

    大人は、どうしても赤ちゃんが泣く理由を考えてしまいがちですが、分からない時は理由を追及しすぎないことも大切です。「泣きたい気持ちなんだなぁ~」と、その時の赤ちゃんの気持ちを受け止めてあげましょう。
    なぜなら、赤ちゃんは産まれるまで、お母さんのおなかの中で、昼夜の区別なく10か月もの期間、過ごしていました。赤ちゃんが夜中に目覚めてしまうのは、大人の時差ボケのようなものだと考えましょう。


    ポイント

    育児をする方の心身も大事にしましょう

    漢方では母子同治ぼしどうちまたは母子同服ぼしどうふくという考え方があります。子供の不調だけれども、お母さんも一緒に同じ薬を飲んで治すという考え方です。お母さんの体調が良くなると、相乗して子供の体調も良くなります。

    赤ちゃんは「寝られないが、他の体調は問題ない」場合、一時的なものも多いため、病気として問題視されることはあまりありません。しかし一日中育児をする側の負担は計り知れません。漢方相談では赤ちゃんの体調だけでなく、「育児に対して、どれだけ負担に感じているか・お母さんや育児にかかわっている方の身体にどのような影響が出ているか」を聞き、一緒にケアします。育児されている方の身体も同時に整えていくことが赤ちゃんの心の安定につながり、結果的に夜泣きの改善につながります。


    情報は適度に

    「夜泣き・寝ない」でインターネット検索すると、たくさんの予防法・対処法が出てきて、何をしたらよいのか分からなくなってしまいますね。

    たくさんの手段があるということは、今までにたくさんの人が同じように夜泣きに悩んできたという証拠です。見かたを変えて「こんなに沢山の手段から選べるんだ!」と思うようにしてみましょう。

    一回で全てを試すのではなく、「今日はこれとこれを試してみよう」くらいの気持ちで取り入れてみましょう。



    例えば

  • 今日はお出かけして色んなものを見たな。きっと精神的に不安定になりやすいから、寝る前にはテレビを消して静かにして、抱っこする時間を長めにつくろう。
  • 俯せになりたがっているな、触ってみると手足が少し冷えているな。お腹が冷えているかもしれないから、新しい離乳食のステップアップはやめておこう。寝るときはお腹にタオルケットをしっかり掛けておこう。
  • などなど。


    必要以上に自分を責めず、必要に応じて病院や専門家をうまく利用しましょう。せっかく家族になってくれた赤ちゃんとより心身ともに健康で過ごせるよう、ぜひお手伝いさせてください。





    公開日:2022-09-03
    更新日:2023-12-06

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