薬草辞典-ら行

 

竜眼肉 りゅうがんにく

りゅうがんにく

[基原]ムクロジ科リュウガンの果肉。

[別名]桂圓肉 けいえんにく

[性・味]温・甘

[帰経]心・脾

[用法]10~15g。大量(~30g) の使用も可。飲用・軟膏・酒剤・丸剤にも使用可。

心脾 しんぴ を補う温和な補血薬 ほけつやく

補益心脾

よく心血を補い脾気の力を高める。薬性は温和。
(1)心脾両虚証をはじめ,産後・病後・老人の諸症状など一切の気血両虚証に使用される。全身倦怠感・息切れ・顔色不良・自汗などに用いられる。人参・黄耆・白朮・生姜などと用いる。〔代表方剤:玉霊膏〕
(2)止痢作用もあり,脾虚の下痢に使用される。白朮・山薬・薏苡仁などと用いる。

養血安神

心血を補い心神を安定させる。思慮過度による心血虚や心脾両虚証の動悸・不眠・健忘・全身倦怠感などに使用される。人参・黄耆・当帰・酸棗仁などと用いる。〔代表方剤:帰脾湯〕

[注意点]熱証・痰湿が強い証などには使用しない。

(管理No.01-181)

 

竜骨 りゅうこつ

りゅうこつ

[基原]古代の大型哺乳動物の骨の化石。

[性・味]平・甘・澁

[帰経]心・肝・腎

[用法]15~30g。先煎。外用も可。煅竜骨は収斂固澁作用に優れる。

毒性はなく良好な作用を有する常用鎮心安神 ちんしんあんじん 平肝潜陽薬 へいかんせんようやく

鎮心安神

心神を静める。心神不安による不眠多夢・動悸・健忘・癲狂などに使用される。
①遠志・石菖蒲・磁石・柴胡・牡蛎などと用いる。〔代表方剤:柴胡加竜骨牡蛎湯〕。
②心血虚証の動悸・めまい・不眠・健忘などには,酸棗仁・柏子仁・遠志などと用いる。
③心気虚証には,人参・茯神・遠志などと用いる。〔代表方剤:安神定志丸〕 。

平肝潜陽

浮陽を降ろし内風を静める。肝陽上亢による,めまい・煩躁・焦燥感・四肢や顔面の痙攣やマヒ・耳嗚などに使用される。牡蛎・代赭石・白芍などと用いる。〔代表方剤:鎮肝熄風湯〕。

収斂固澁

比較的良好な収斂固澁作用を有する。 自汗や盗汗・遺精・崩漏 (不正性器出血や過多月経)・下痢・頻尿・尿失禁・化膿傷の修復などに使用される。
①遺精・頻尿・尿失禁には,芡実・牡蛎・桑螵蛸・山茱萸などと用いる。〔代表方剤:金鎖固精丸,桂枝加竜骨牡蛎湯〕。
②気虚の自汗・盗汗には,黄耆・牡蛎・五味子・浮小麦などと用いる。〔代表方剤:参附湯加竜骨牡蛎〕。
③陽虚の自汗盗汗には,黄耆・白朮・附子などと用いる。〔代表方剤:二加竜骨牡蛎湯〕 。
④亡陽には人参・附子・牡蛎などと用いる。 〔代表方剤:救逆湯〕。⑤帯下や崩漏には, 白朮・牡蛎・海螵蛸・続断・阿膠などと用いる。〔代表方剤:固衝湯〕。

[注意点]収斂作用が比較的強いため,湿熱鬱滞証には慎重に使用する 。

(管理No.01-182)

 

竜胆 りゅうたん

りゅうたん

[基原]リンドウ科トウリンドウの根。

[別名]竜胆草 りゅうたんそう

[性・味]寒・苦

[帰経]肝・胆・胃

[用法]3~6g。

肝胆の火を降ろし下焦 げしょう 湿熱 しつねつ を除く。主に実熱証 じつねつしょう に使用される。山梔子 さんしし 竜胆 りゅうたん 夏枯草 かごそう の三薬中,最も瀉火 しゃか 作用が強い。

瀉肝胆実火

肝胆の実火を強力に冷まし引き降ろし,かつ燥湿する 。
(1)肝胆実火や肝火上炎による頭痛・眼球結膜充血・眼痛・めまい,さらには季肋部痛・耳鳴・難聴などに使用される。菊花・柴胡・白芍薬・黄芩・生地黄・木通などと用いる。〔代表方剤:竜胆瀉肝湯〕
(2)肝熱が高じ内風が生じた(熱極生風)ための高熱・痙攣・躁状態・焦燥感などに使用される。釣藤鈎・白僵蚕・牛黄・黄連・石決明などと用いる。〔代表方剤:涼驚丸〕
(3)湿熱黄疸にも用いられる。大黄・黄柏・苦参などと用いる。

清熱燥湿

下焦の湿熱を冷まし除く。下焦湿熱証による熱淋や陰嚢腫瘍疼痛・湿熱の湿疹(特に下半身)・白色帯下・陰部瘙痒感・黄疸などに使用される。
①熱淋には,木通・滑石・車前子などと用いる。
②帯下・陰部瘙痒感には,苦参・沢瀉・黄柏などと用いる。〔代表方剤:竜胆瀉肝湯 〕

[注意点]苦寒性が強く,胃の障害を防ぐために多量には使用しない。脾胃虚寒証・肝陰不足による肝陽上亢証には禁忌。

(管理No.01-183)

 

良姜 りょうきょう

りょうきょう

[基原]ショウガ科高良姜の根茎。

[別名]高良姜 こうりょうきょう

[性・味]熱・辛

[帰経]脾・胃

[用法]3~10g。

温胃 おんい 作用に優れた温中散寒薬 おんちゅうさんかんやく

温中止痛

寒邪による腹部冷痛 ・嘔吐 ・下痢などに使用される。特に胃の寒邪を散じる作用に優れ,胃寒性の嘔吐に多用される。
①胃寒疼痛には,乾姜などと用いる。〔代表方剤:二姜丸〕。
②胃寒気滞の冷痛・胸部痞塞不快感・薄い唾液などには,香附子などと用いる。〔代表方剤:良附丸〕。
③胃寒嘔吐には,半夏・生姜などと用いる。
④寒性下痢には肉桂・木香などと用いる。

[注意点]胃熱の胃痛,熱性の下痢には禁忌。

(管理No.01-184)

 

霊芝 れいし

れいし

[基原]サルノコシカケ科マンネンタケの子実体。

[性・味]微温・甘・微苦

[帰経]心・肺・腎

[用法]3~15g。粉末の服用(1.5~3g/回)も可。

養心安神 ようしんあんじん 平喘 へいぜん 作用を有する補気薬 ほきやく

益気・
養心安神

心気を補い,心神を安定させ,見識力や認識力を高める。薬性は温和。心虚証や気血両虚証・心脾両虚証による動悸・不眠・健忘・倦怠感・食欲不振などに使用される。一切の虚証虚労にも使用可能。単味の服用も可。当帰・酸棗仁・白芍薬・竜眼肉などと用いる。

止咳平喘

肺気を補い,納気を高め,化痰止咳・平喘する。肺虚証や肺腎両虚証などの慢性の咳嗽・喘息・白色多痰などに使用される。特に虚寒性や痰湿証に適する。人参・五味子・乾姜などと用いる。

(管理No.01-185)

 

連翹 れんぎょう

れんぎょう

[基原]モクセイ科レンギョウなどの果実。

[性・味]寒・苦

[帰経]心・胆・肺

[用法]5~15g。

心火 しんか を冷まし,外表風熱 がいひょうふうねつ を散じ,結熱 けつねつ を除く。金銀花 きんぎんか に比べ,清裏熱 せいりねつ 作用に優れ,清心火 せいしんか ・利尿作用を有する。

清熱解毒
・清心火

軽く浮き上がる性質があり,外表部の風熱を発散する。また裏熱を冷ます作用もある。特に上焦(肺・心)の清熱作用に優れる。温病初期や気分,営分の各証に使用される。また血分証にも用いられる。
(1)温病の初期(衛分)や肺衛分証の発熱・咽頭痛・ロ渇・咳嗽などに使用される。
①温病の初期(衛分)には,金銀花・荊芥・薄荷・牛蒡子などと用いる。〔代表方剤:銀翹散〕。
②風温や軽度肺燥の咳嗽には,桑葉・菊花・桔梗・杏仁などと用いる。〔代表方剤:桑菊飲〕。
(2)温病気分証の壮熱・煩渇・脈洪大などに使用される。金銀花・石膏・知母などと用いる。〔代表方剤:銀翹石膏湯〕。
(3)心の熱邪を冷ます。
①熱邪が心包に入り,身熱・煩躁・譫語・意識障害・斑疹などに使用する。連翹心が多用される。犀角・牛黄・黄連・玄参などと用いる。〔代表方剤:清榮湯,牛黄清心丸〕。
②心火上炎による口内炎・舌炎にも使用される。赤芍薬・生地黄・玄参などと用いる。

解毒消瘡
・消癰散結

清熱し熱毒による結節を除き排膿する。”瘡家の聖薬”とも いわれ,熱毒による皮膚化膿症の全期・瘰癧・咽頭発紅腫脹などに使用される。また血熱の湿疹や紫斑にも用いられる。
①皮膚化膿症の膿腫形成期には,防風・羗活・荊芥・柴胡などと用いる。〔代表方剤:治頭瘡一方,十味敗毒湯〕。
②皮膚化膿症の膿瘍極期には,金銀花・野菊花・天花粉・蒲公英・黄芩・山梔子などと用いる。〔代表方剤:清上防風湯〕。
③慢性化した皮膚化膿症には,当帰・白芍・枳実などと用いる。〔代表方剤:荊芥連翹湯 〕。
④瘰癧には, 夏枯草・貝母・玄参などと用いる。
⑤咽頭発紅腫脹には,山豆根・桔梗・甘草などと用いる。

瀉火利尿

利尿作用もあり,熱淋・血淋などに使用される。

食積の熱(食積化熱)を冷ます。〔代表方剤:保和丸〕。

(管理No.01-186)

 

蓮子 れんし

れんにく

[基原]スイレン科ハスの緑色の芯を除いた種子。

[別名]蓮子肉 れんしにく 蓮肉 れんにく

[性・味]平・甘・澁

[帰経]脾・腎・心

[用法]10~15g。砕いて使用する。

健脾補益 けんぴほえき 作用のある固精 こせい 止瀉 ししゃ 薬。平性 へいせい で薬性は温和だが,作用は緩慢。芡実 けんじつ と作用は類似し、よく同時に使用され,食用ともなる。養心安神 ようしんあんじん 作用を有する健脾止瀉 けんぴししゃ 固精薬 こせいやく 芡実 けんじつ に比べ健脾止瀉 けんぴししゃ 作用に優れる。

益腎固精・
止帯

芡実などと同様に,脾腎の機能を高め,精液・帯下・尿を漏らさない。
(1)腎虚の遺精・白濁尿・尿失禁・頻尿・労淋・膏淋,腎虚や脾虚の白色無臭で慢性の帯下過多などに使用される。
①遺精には,菟絲子・沙苑子・鹿茸・金櫻子・竜骨・牡蛎などと用いる。〔代表方剤:金鎖固精丸〕
②白濁尿や頻尿には潼蒺藜・竜骨・茯苓・白果・金櫻子などと用いる。〔代表方剤:清心蓮子飲〕
(2)脾虚や腎虚による不正性器出血にも使用される。

健脾止瀉

よく脾の運化機能を高め益気し,胃の機能を調整(開胃)し,下痢を止め食欲を増進する。祛湿作用も有する。脾虚証の慢性下痢や食欲不振などに使用される。人参・白朮・山薬・茯苓などと用いる。〔代表方剤:啓脾湯,参苓白朮散〕

養心安神

心を養い腎を補い,心腎の交通を良好とする。心腎両虚証や心血虚の虚煩・動悸・不眠などに使用される。酸棗仁・麦門冬・茯苓・柏子仁などと用いる。〔代表方剤:清心蓮子飲 〕

 

(管理No.01-187)

 

蓮心 れんしん

れんししん

[基原]スイレン科ハスの果実中にある緑色棒状の胚芽のみを採取したもの。

[別名]蓮子心 れんししん 青蓮心 せいれんしん

[性・味]寒・苦

[帰経]心

[用法]1.5~3g。煎服。

清心瀉火 せいしんしゃか 除煩安神 じょはんあんじん にすぐれており,熱陥心包 ねつかんしんぽう 神昏譫語 しんこんせんご 心火亢盛 しんかこうせい 心煩不眠 しんはんふみん に有効である。心煩不眠で遺精 いせい を呈するときも,清心により心火 しんか じん に下通させて効果を示す。

清心瀉火・
安神

心火亢進に使用される。温病熱邪が心に入ったための煩熱・ 意識障害・うわごとなどに,玄参・竹葉巻心・麦門冬などと用いられる。そのほか,心煩不眠・遺精などに,補助的に配合される。

(管理No.01-188)

 

鹿茸 ろくじょう

ろくじょう

[基原]シカ科マンシュウジカやマンシュウアカジカなどの雄の未角化の幼角(袋角)。

[性・味]温・甘・鹹

[帰経]肝・腎

[用法]1~3g。丸・散・酒剤も可。

腎陽不足 じんようふそく 精血虚損 せいけつきょそん 治療の重要薬。

温腎壮陽

腎の陽気を温め補い,元陽を盛んにし,優れた壮陽作用を有する。
(1)腎陽虚証の陽萎・早漏・不妊症・四肢冷感・腰部下肢の疼痛や倦怠感・全身倦怠感・頻尿・尿失禁などに使用される。人参・肉蓯蓉・巴戟天・拘杞子・熟地黄などと用いる。〔代表方剤:参茸固本丸〕
(2)衝任脈の虚寒による崩淵・白色帯下過多・不妊などにも使用される。当帰・蒲黄・烏賊骨などと用いる。〔代表方剤:鹿茸散〕

補益精血

腎陽を温補すると同時に精血を滋養する。血虚を伴う重度の陽虚証による倦怠無力感・羸痩・顔色蒼白や萎黄・めまい・耳嗚・動悸・健忘などに使 用される。熟地黄・当帰・山茱萸・黄耆・人参などと用いる。

補腎・
強健筋骨

腎気を補い筋骨を強健にする。
(1)腎虚による筋力低下・小児の発育不良や大小泉門閉鎖遅延,歩行遅延などに使用される。六味地黄丸に加味して用いる。〔代表方剤:加味地黄丸〕
(2)腎虚の骨折時の骨癒合不全にも使用される。黄耆・五加皮・骨砕補などと用いる。

正気を補い祛邪力を増強し,皮膚化膿症の治癒を促進する。虚証の化膿症によく使用される。

[注意]通常は少量より使用し徐々に増量する。一度に多量を服用すると,陽気が上昇し内風状態となり,頭痛・めまい・眼球眼瞼結膜充血や鼻出血などが出現することがある。陰虚内熱,血熱出血証,胃火証,肺の痰熱証,外感温熱病には禁忌。

(管理No.01-189)

 

芦根 ろこん

ろこん

[基原]イネ科アシの根茎(実際には茎を使用)。

[別名]葦茎 いけい

[性・味]寒・甘

[帰経]肺・胃

[用法]15~30g。多量に使用する。絞り汁を使用してもよい。

甘性多汁でよく肺胃の熱を冷まし津液 しんえき を潤す。 性はなく,清熱 せいねつ しても津液 しんえき を損なわず,生津 せいしん して邪を留めない。天花粉 てんかふん に比べ,清熱 せいねつ 作用は優れるが生津 せいしん 作用は劣る。

清熱生津

肺や胃の熱を冷まし,津液を潤し(生津)口渇を止める。また熱による煩躁を静める。
(1)熱病や熱病後期の津液不足・煩熱口渇などに使用される。
①石膏・麦門冬・天花粉などと用いる。
②過度の津液不足には,梨汁・藕汁・麦門冬汁などと用いる。〔代表方剤:五汁飲〕。
(2) 裏熱を冷ますと同時に表邪を発散する。温病気分証などの風熱表証で津液不足・ロ渇を伴う病態に使用される。菊花・薄荷・金銀花・天花粉などと用いる。 〔代表方剤:桑菊飲,銀翹散〕。

清肺熱

よく肺熱を冷まし祛痰する。肺熱や風熱の粘稠黄色痰や燥痰,肺癰の膿痰に使用される。
①風熱咳嗽には桑葉・桔梗・牛蒡子・杏仁などと用いる。
②肺陰不足には,麦門冬・天花粉・地骨皮などと用いる。
③肺癰には薏苡仁・黄芩・冬瓜子・魚腥草などと用いる。〔代表方剤:葦茎湯〕。

清熱止嘔

胃熱による悪心・嘔吐を止める 。姜汁・竹筎・枇杷葉などと用いる。〔代表方剤:芦根飲〕。

清熱利尿作用もある。

[注意点]脾胃虚寒証には慎重に使用する。

(管理No.01-190)

 

鹿角膠 ろっかくきょう

ろっかくきょう

[基原]鹿角を煮詰めた膠。

[性・味]温・甘・鹹

[帰経]肝・腎

[用法]5~10g。烊化または沖服。丸・散・軟剤も可。

腎陽不足 じんようふそく 精血虚損 せいけつきょそん 治療の重要薬。鹿茸 ろくじょう より薬効が弱いが,止血作用を有する。

温補腎陽・
補益精血

肝腎を補い,精血を滋養する。薬力は鹿角より優れるが, 鹿茸より劣る。腎陽不足や精血不足による虚労・羸瘦・陽萎・遺精・頻尿などに使用される。

補血止血

止血作用があり,虚寒性の吐血・不正性器出血・鼻出血・血尿に使用される。また陰疽にも用いられる。〔代表方剤:陽和湯〕。

[注意点]陰虚火旺には禁忌。

(管理No.01-191)