体質で考える「不眠症」

更新日:2023.11.20

 

 

 

眠れるための「不眠」の話し

体質で考える「不眠症」

体質で考える「不眠症」

夜間の不眠症状(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒)に加え、日中症状が見られ、少なくとも週に3日以上、3ヶ月以上続く場合に(慢性)不眠障害と診断されます。日中症状とは、疲労倦怠感、注意力の低下、記憶力の低下、気分がすぐれない、イライラする、日中の眠気、ミスや事故を起こしやすくなったなど、日中のQOL(生活の質)の低下を指します。仕事や人間関係のストレスで眠れなくなっても、一時的であれば治療の対象にはなりません。次第に眠れないこと自体がストレスになり、布団を見ると無意識に緊張したり、「今夜も眠れなかったらどうしよう…」と不眠に対する不安が生じたりすると、慢性化しやすくなります。

 

不眠症の原因と治療

不眠障害は、ストレスなどの心理的な原因以外に、身体的原因(痛み、痒み、頻尿、呼吸障害など)、生理的原因(不規則な生活習慣など)、精神的原因(うつ病、統合失調症、アルコール依存症など)、薬物的原因(薬の副作用、お酒、カフェイン、喫煙など)でも起こります。
不眠の原因が明らかな場合は、その治療を進めます。他にも生活習慣指導や薬物療法、場合によっては認知行動療法が行われます。

 
体質で考える「不眠症」

漢方で考える不眠症

体質で考える「不眠症」

不眠の原因としては、ストレスや抑うつ、過労や過度に怠惰な生活、慢性病による体力の消耗、暴飲暴食などの食生活の不摂生があげられます。中医学において不眠と主に関係する臓腑は “心(しん)”、“肝(かん)”、“脾(ひ)”の3つです。

 


しん

中医学でいうところの“心(しん)”は西洋医学と同じ血液ポンプとしての役目に加えて、精神活動を担っています。心が十分に養われ働きが順調であれば精神活動は安定しますが、養う力が不足すると精神不安となり、不眠症状が見られるようになります。


かん

“肝”は大量の血(けつ)を貯蔵している場所です。憂うつや激しい怒りによって肝を傷つけると、血を蓄える機能が失われて熟睡ができなくなります。肝は落ち込んで気分がすぐれない、抑うつ状態になる、イライラする、妙に怒りっぽいという情緒の変化と関係します。


“脾(ひ)”は飲食物から栄養を吸収する消化器と同じような働きがありますが、思い悩むと脾の機能が弱るため、身体全体の気や血の量が少なくなります。“心(しん)”に届く血が不足すると心の働きが不安定となり、不眠が生じます。

 

 

 

中医学体質別治療法

① 心火上炎(しんかじょうえん)体質
精神活動を司る“心(しん)”に熱が生じているため強い不眠があり、悶々として夜通し眠れないことがある。
随伴症状:夢が多い、焦燥感、動悸、顔面紅潮、口が苦い、口内炎など。
精神的なストレスや不安感から熱がこもり、不眠を引き起こしやすくなります。

 

漢方

黄連解毒湯、三黄瀉心湯など

ツボ

心兪、大陵など

食材

春菊、セロリ、セリ、緑茶、トマト、蓮根、小豆、ゆり根など

 


② 肝鬱化火(かんうつかか)体質
ストレスにより気の流れが停滞して熱が生じており、あれこれ考えて眠れなかったり、夢を見たり、すぐに目が覚めやすい。
随伴症状:イライラしやすい、情緒不安定、手足の冷え、頭痛、目の充血など。
強いストレスによって、自律神経が失調したタイプです。ストレスが過剰になると気の流れをコントロールできず、不眠が起こりやすくなります。

 

漢方

柴胡加竜骨牡蛎湯、加味逍遙散など

ツボ

太衝、行間など

食材

ミント、ジャスミン、緑茶、春菊、セロリ、豆腐、トマトなど

 


③ 痰熱内(たんねつないじょう)体質

余分な水分と熱が体内に停滞することで、イライラして寝つきが悪い。
随伴症状:驚いて目を覚ます、夢が多い、不安感、胃やみぞおちのつかえ、痰が多い、頭重など。
甘いものや味の濃いもの、アルコールなどの暴飲暴食や消化機能が低下したタイプで、身体の中に余分な老廃物がたまり、不眠症状を悪化させます。

 

漢方

温胆湯、竹茹温胆湯など

ツボ

豊隆、内庭など

食材

きゅうり、すいか、とうがん、ハトムギ、緑豆、里芋、小豆など

 


④ 胆気虚(たんききょ)体質
思考や決断をする力が弱っており、寝ても少しの刺激で目が覚める。
随伴症状:悪夢を見る、驚きやすい、決断力の低下、眩暈、動悸など。
心配性であり、普段から物事に感情的で過度に反応しやすく、睡眠にも影響が出ます。

 

漢方

酸棗仁湯など

ツボ

胆兪、丘墟など

食材

小麦、牛乳、牡蠣、卵、ライチ、ピーナッツ、豆腐など

 


⑤ 心脾両虚(しんぴりょうきょ)体質
疲労や貧血などで身体に必要な気や血(けつ)が不足しており、睡眠をとる体力がない。
随伴症状:眠りが浅い、夜中に目が覚める、日中に眠い、動悸、物忘れ、疲労感、めまいなど。
思い悩む性格や元々胃腸が弱いタイプで、気や血が不足すると“心(しん)”を栄養できず、精神不安になります。

 

漢方

帰脾湯、人参養栄湯など

ツボ

足三里、三陰交など

食材

小麦、牛乳、牡蠣、卵、人参、ほうれん草、ライチ、ピーナッツなど

 


⑥ 心腎不交(しんじんふこう)体質
身体の陰分(体液)が不足するために相対的に熱が生まれており、焦燥感が強く夜通し眠れない。
随伴症状:動悸、のぼせ、耳鳴り、物忘れ、足腰がだるい、手足のほてり、口内炎など。
加齢や心労、過労により、身体の体液が不足したり、精神の興奮によって熱がこもるため、脳を鎮静することができない状態です。

 

漢方

天王補心丸、黄連阿膠湯など

ツボ

神門、腎兪など

食材

牛乳、牡蠣、豚肉、鴨肉、きゅうり、トマト、ハスの実など

 

 

 

不眠症の鍼灸治療

鍼灸治療においては、精神の失調と関係の深い“手の少陰心経(しょういんしんけい)”と“手の厥陰心包経(けついんしんぽうけい)”を使い、経絡(気や血の通り道)を通じて五臓六腑(この場合は心と心包)の変調を調整していきます。また、ツボの中には不眠や精神不安に作用するものがあります。それらのツボは、経験上皮膚の痛み、こり、硬い部分などとして発生しやすい部位でもあり、経絡や臓腑の考え方とともに用いると相乗効果が期待できます。不眠症状を訴える方の多くは、頭痛や肩こりをともなうため、肩こりの治療として鍼灸治療を試されるのもおすすめです。

不眠症で使う代表的なツボ
・神門(しんもん)
・内関(ないかん)
・百会(ひゃくえ)
・安眠(あんみん)
・失眠(しつみん)
・健脳(けんのう)
など。

 

暮らしのアドバイス

・朝は太陽の光を浴びて、生活リズムを整えましょう
・定期的に運動をして、肉体を適度に疲れさせましょう
・アルコールやカフェイン、濃いお茶などは控えましょう
・気功や呼吸法を行って、精神を安定させましょう
・夜寝る直前の食事は控えましょう

 

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