体質で考える「低血圧」
更新日:2023.11.20
原因も症状も様々な「低血圧」
低血圧とは、国際的に決められている診断基準はありませんが、一般的にあおむけに寝た状態で、最大血圧(収縮期血圧)が約100mmHg以下の場合をいいます。検査をしても原因が分からないことが多く、様々な不定愁訴(多岐にわたる自覚症状)をともなうため、ご家族や身近な方々になかなか理解してもらえないケースが多いようです。低血圧では、心臓のポンプの圧力が弱いために、頭、内臓、筋肉、各器官などに充分な血液を送ることができず各機能が低下している状態であり、治療が必要になります。
低血圧の原因と治療
低血圧の症状には、立ちくらみ、動悸、息切れ、寝起きが悪い、疲労倦怠感、頭痛、耳鳴り、肩こり、不眠、胸部不快感、吐き気、手足の冷えなどがあります。
本態性低血圧
多くは体質によるもので、常に低血圧であるもの。
起立性低血圧
寝た状態では正常な血圧でも、起き上がったり立ち上がったりすると最大20mmHg以上血圧が低下するもの。
症候性低血圧
心臓や甲状腺など、他の病気によって低血圧になるもの。
低血圧症では生活習慣を見直すことが重要になります。症状によっては昇圧剤、ビタミン剤、抗不安薬を用いることがあります。
漢方で考える低血圧
中医学では、低血圧の原因として、根底に何らかの“虚(体力の低下や内臓の弱り)”が存在します。体質を見極め、個人にあった対応が改善効果を高めます。まずは生活養生を見直したうえで、漢方薬や鍼灸治療を取り入れ、少しずつ体質を改善していきましょう。
中医学体質別治療法
① 気血両虚
(きけつりょうきょ)体質
血管中を流れる血(けつ)や、心臓のポンプ力の源であるエネルギーの不足により低血圧になる。
随伴症状:倦怠感、食欲不振、不眠、顔色が白い、めまい、眼精疲労、動悸、脱毛など。
過労や胃腸虚弱、栄養失調、出産などにより気や血が不足すると、血管内を巡る物質がなくなるため低血圧になります。
漢方 |
十全大補湯、人参養栄湯など |
ツボ |
足三里、三陰交など |
食材 |
豆腐などの大豆製品、卵、いんげん豆、山芋、人参、ほうれん草など |
②
気陰両虚(きいんりょうきょ)体質
心臓のポンプ力の源であるエネルギーと、血(けつ)の元となる陰分(体液)が消耗して低血圧になる。
随伴症状:疲労倦怠感、めまい、ふらつき、動悸、不眠、痩せ、口の渇き、多汗など。
慢性病や加齢、ストレスなどにより気や陰分(体液)が不足して血管への圧力が減り、低血圧になります。
漢方 |
生脈散、炙甘草湯など |
ツボ |
復溜、気海など |
食材 |
鶏肉、豆腐などの大豆製品、卵、牛乳、牡蠣、豚肉など |
③
脾腎陽虚(ひじんようきょ)体質
加齢や胃腸虚弱により生じ、温めるエネルギーが不足して低血圧になる。
随伴症状:お腹や腰の冷え、立ちくらみ、めまい、倦怠感、疲れやすい、むくみ、頻尿など。
加齢や過労、胃腸虚弱、飲食の不摂生などにより、身体のエネルギーを作り出す力が落ちて冷え、血行不良となるため血圧が下がります。
漢方 |
附子理中湯、八味地黄丸合補中益気湯など |
ツボ |
関元、足三里など ※命門にお灸を加える |
食材 |
もち米、鶏肉、イワシ、エビ、くるみ、栗、ニラ、とちゅう茶など |
低血圧の鍼灸治療
鍼灸治療では、もともとの血(けつ)の量が不足しているタイプと血の流れ方が悪いタイプに分けて治療します。体質を見極め、全身の調整と気になる症状の改善を行っていきます。
よく使用されるツボ
・足三里(あしさんり)
・三陰交(さんいんこう)
・血海(けっかい)
・膈兪(かくゆ)など。
暮らしのアドバイス
・たんぱく質(肉や魚、豆類)をしっかりとりましょう
・胃腸の働きが落ちるため、甘いもののとりすぎに気をつけましょう
・香辛料を適度にとりましょう
・ストレッチやウォーキングなど、適度な運動をしましょう
・睡眠時間をしっかりとりましょう
日本全国よりご相談を頂いております。
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