体質で考える「掌蹠膿疱症」
更新日:2023.11.17
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは?
手の平や足の裏の皮が剥けて赤くなり、水疱や膿疱をともなう皮膚病です。ほかにも頭や肘、膝などに見られることがあります。無菌性のため人にうつることはないですが、良くなったり悪くなったりを周期的に繰り返すことが多く、慢性化する傾向があります。合併症として、1~3割の方に“掌蹠膿疱症性骨関節症”が見られます。これは、関節や骨そのものに炎症が起き激しい痛みをともなうもので、肩回りや手の関節、腰に頑固な痛みが続くことがあります。
掌蹠膿疱症の原因と治療
生まれ持った遺伝的素因に環境因子が加わることで免疫系が活性化され、炎症が引き起こされるといわれています。
喫煙
悪化因子の一つと考えられています。
金属アレルギー
口腔内にある銀歯などの金属が原因になることがあります。
感染症
扁桃炎や虫歯、歯肉炎、副鼻腔炎など、小さな炎症が引き金となる“病巣感染”の代表的な疾患といわれています。
便秘
発症に深く関わっているケースが見られます。
治療では、通常ステロイドやビタミンD3などの外用薬が用いられますが、ビタミンAなどの内服薬を使うこともあります。また、紫外線照射などの光線療法も行われます。
漢方で考える掌蹠膿疱症
中医学では、掌蹠膿疱症を“免疫低下”と“免疫過剰”の状態と捉え、免疫が低下すればそれを高め、過剰な場合はそれを抑えるようにしていきます。また、中医学の理論では、皮膚は内臓と密接な関係を持つことから、“皮膚は内臓の鏡”と呼ばれており、内臓の機能を高めてバランスを取り戻し、繰り返さないような肌質作りをしていきます。
中医学体質別治療法
①
湿熱(しつねつ)体質
身体に滞っている湿と熱によるもので、入浴後や飲食後に悪化することが多い。
随伴症状:身体が重だるい、のぼせ、口臭、吹き出物が出やすい、むくみなど。
アルコールや脂っこいものを食べることで悪化しやすく、長期化する傾向があります。
漢方 |
茵蔯五苓散、竜胆瀉肝湯など |
ツボ |
陰陵泉、曲池など |
食材 |
ハトムギ、とうもろこし、冬瓜、緑豆、きゅうり、くちなしの実など |
②
血熱(けつねつ)体質
血中に熱がこもるもので、夜間の痒みが強く、かきむしって出血することがある。
随伴症状:発熱、のぼせ、目の充血、便秘、イライラ、頭痛、不正出血など。
暴飲暴食をしたり、辛いものを食べる食生活や、ストレスによって熱が生じ、炎症症状が起きやすくなります。
漢方 |
温清飲、桃核承気湯など |
ツボ |
百虫窩、血海など |
食材 |
苦瓜、すいか、ナス、きゅうり、緑茶、くちなしの実など |
③
血虚(けっきょ)体質
血(けつ)の不足により、皮膚を栄養することができず、ザラザラと乾燥して痒くなる。
随伴症状:めまい、立ちくらみ、顔色が白い、眼精疲労、不眠、動悸、脱毛など。
疲労や出血、睡眠不足などにより血が不足して、皮膚の栄養となる血を送り届けることができません。赤みは少ないけれど痒みが強く、掻き傷が多くなります。
漢方 |
当帰飲子、七物降下湯など |
ツボ |
足三里、三陰交など |
食材 |
人参、ほうれん草、なつめ、黒ごま、クコの実、プルーンなど |
④
脾虚(ひきょ)体質
胃腸が弱り、エネルギー不足になることで、皮膚の免疫系のバランスが乱れる。
随伴症状:食欲不振、食後に眠くなる、軟便、お腹の張り、疲れやすい、むくみなど。
胃腸機能が低下すると、身体に必要な気を作ることができず、防御機能が低下します。そのため、日光、寒冷や温熱の刺激、発汗などの影響を受けやすくなります。
漢方 |
六君子湯、補中益気湯など |
ツボ |
中脘、胃の六つ灸など |
食材 |
豆腐や湯葉などの大豆製品、卵、いんげん豆、山芋など |
⑤
血瘀(けつお)体質
皮膚は黒ずみやすく、治ったあとも色素沈着が残りやすい。
随伴症状:肩こり、頭痛、唇の色が悪い、シミやくすみが目立つ、冷えのぼせなど。
炎症状態が続いていたり、ストレスや冷えで血行不良が起きると、老廃物を外に出すことができず、より一層治りづらくなります。
漢方 |
血府逐瘀湯、桂枝茯苓丸など |
ツボ |
血海、三陰交など |
食材 |
蓮根、ナス、チンゲン菜、玉ねぎ、黒きくらげ、黒豆など |
掌蹠膿疱症の鍼灸治療
第一段階 急性発作を抑える
赤みや痒みが強い状態では、炎症を落ち着かせたり、皮膚への物理的な刺激によって痒みの感じやすさを和らげていきます。
第二段階 慢性症状の改善
炎症がおさまり、皮膚が乾燥して軽い痒みが続く状態では、皮膚に栄養と潤いを届けてバリア機能を回復させ、外からの刺激に負けない皮膚作りを行います。
皮膚疾患のある方は、一般的に胃腸が弱い体質が多く、熱をとったり皮膚の栄養となる血を養う生薬が胃腸の負担になる場合があります。鍼灸治療で胃腸機能を高め、より漢方の効果を引き出す相乗効果が期待できます。
暮らしのアドバイス
・喫煙は控えましょう
・香辛料やコーヒー、喫煙などの刺激物は避けましょう
・毎日の口腔ケアはもちろんのこと、定期的に歯科検診に行きましょう
・腸内環境を整え、便秘にならないようにしましょう
・ストレスをうまく発散しましょう