体質で考える「赤ら顔」
赤ら顔の原因と治療
赤ら顔の原因は様々で、治療法もそれぞれ異なります。
毛細血管拡張症
血管が糸状に透けて赤く見えるもので、レーザーなどで治療します。
酒さ(しゅさ)
中高年の女性に多く、顔面紅潮や毛細血管の拡張などで起きる慢性炎症性疾患です。抗菌剤の外用薬や内服薬などで治療します。
脂漏性湿疹(しろうせいしっしん)
皮脂が酸化することにより、炎症が起きて皮膚が赤くなります。顔以外にも頭皮や髪の生え際、脇の下、胸、股間部、膝の裏など皮脂分泌が盛んな場所で起きやすいとされています。マラセチア菌というカビの一種が関係しており、抗真菌薬などが治療に使われます。
他にも、乾燥肌、敏感肌、アルコールや香辛料の摂取、気温差、ストレス、ステロイド外用薬の長期使用などの原因があるとされています。
漢方で考える赤ら顔
中医学において、人の顔は部位別に深く関連する臓腑があると考えています。たとえば、左頬は“肝”、右頬は“肺”、鼻は“脾胃(ひい)”、顎は“腎(じん)”に関係すると考え、両頬の赤みは肺と肝に何らかの影響を受けている状態を指しています。赤ら顔が女性に出やすいのは、蔵血(血を貯蔵する)作用がある肝が特に関わっているためと考えられています。肝は、女性の生理に深く関連するとともに、木のような性質を持っているので伸び伸びと上に向いて気の向くままに動こうとする特徴があります。この性質からストレスや怒りなどで流れが詰まると気が滞り、熱や血の滞りが生じると考えます。
中医学体質別治療法
①
肝鬱化火(かんうつかか)体質
ストレスなどの精神刺激や生理前に悪化する傾向がある。
随伴症状:イライラしやすい、情緒不安定、手足の冷え、頭痛、目の充血など。
血(けつ)を貯蔵して血流を調節する肝は、ストレスにより血を消耗したり、気の流れが詰まることで熱を持ちやすくなります。
漢方 |
柴胡清肝湯、加味逍遙散など |
ツボ |
太衝、行間など |
食材 |
ミント、ジャスミン、緑茶、春菊、セロリ、豆腐、トマトなど |
② 胃熱(いねつ)体質
鼻周りや頬の赤みが強い。
随伴症状:のぼせ、口の渇き、過食、便秘、吹き出物が出やすい、冷たいものが好きなど。
暴飲暴食や辛いもの、アルコールの摂取ストレスなどにより胃に熱がこもると、顔に赤みが出やすくなります。
漢方 |
防風通聖散、黄連解毒湯など |
ツボ |
内庭、曲池など |
食材 |
緑茶、ゴーヤ、レタス、トマト、きゅうり、セロリ、豆腐、バナナなど |
③
血瘀(けつお)体質
血行不良により熱の排泄がうまくいかず、炎症が起きやすくなる。
随伴症状:肩こり、頭痛、唇の色が悪い、シミやくすみが目立つ、冷えのぼせなど。
血管が拡張して血流が停滞し、微小循環障害が生じている状態です。
漢方 |
血府逐瘀湯、桂枝茯苓丸など |
ツボ |
血海、三陰交など |
食材 |
蓮根、ナス、チンゲン菜、玉ねぎ、黒きくらげ、黒豆など |
④腎陰虚(じんいんきょ)体質
午後や夜間に悪化しやすく、微熱を感じる。頬骨あたりの赤みが強い。
随伴症状:足腰がだるい、倦怠感、便秘、ほてり、のぼせ、動悸、寝汗、便秘、白髪など。
加齢や過労、睡眠不足などにより、身体に必要な陰分(体液)が減ることで相対的に熱が強くなります。
漢方 |
知柏地黄丸、瓊玉膏など |
ツボ |
腎兪、太谿など |
食材 |
黒豆、黒きくらげ、アスパラガス、山芋、卵、ホタテ、牡蠣、豚肉など |
⑤気虚(ききょ)体質
疲労で悪化しやすく、微熱を感じる。
随伴症状:食欲不振、お腹の張り、風邪を引きやすい、倦怠感、疲れやすい、めまいなど。
気には体を温める働きがありますが、気が不足すると、このエネルギーを十分に巡らせることができず滞ってしまい、熱が停滞する原因となります。また、気による防御作用が低下するため、ウイルスや細菌が皮膚に繁殖しやすくなることがあります。
漢方 |
補中益気湯、六君子湯など |
ツボ |
足三里、合谷など |
食材 |
豆腐や湯葉などの大豆製品、卵、いんげん豆、山芋など |
赤ら顔の鍼灸治療
顔面部は人体において一番上部に位置し、体内の陽気が集まってくる部分です。陽気が多いため、寒い冬でも顔を出しておくことができますが、逆に言えば一番熱を持ちやすい部位とも言えるでしょう。赤ら顔は熱が鬱滞している状態のため、鍼灸では炎症をとるほか、手足やお腹などに鍼灸をして熱を下に引っ張ることで全身の寒熱バランスを整えたり、自律神経を調整して血管の反応性を改善していきます。
暮らしのアドバイス
・脂っこいもの、甘いもの、味の濃いもの、辛いものをとらないようにしましょう
・喫煙やアルコールなどの刺激物は避けましょう
・ストレスをうまく発散しましょう
・排便習慣を身に付けましょう
・寝不足にならないように気をつけましょう