産後の腱鞘炎
産後に起こりやすい「腱鞘炎」
産後のつらい腱鞘炎
「赤ちゃんを抱っこしていると、手首に痛みがでてくる」
「赤ちゃんを抱っこした瞬間、激痛が走った」
「抱っこ以外の時でも、手首に痛みや違和感を感じるようになった」
実は産後のママのトラブルとして多いのが腱鞘炎なのです。
なるべく使わないでいたいけど、子育をするにも家事をするにも、手を使わずにはいられない...。こんな産後の腱鞘炎の原因とその対処法は?
産後の腱鞘炎の多くの原因は「赤ちゃんのお世話」
「以前は腱鞘炎なんて無縁だった」という方も、産後に腱鞘炎になってしまうケースは多いものです。産後の腱鞘炎の原因はいくつかありますが、「赤ちゃんのお世話」がその大半です。
その中でも特に体への負担となっているのが「授乳時の姿勢」や「抱っこ」です。 授乳は定期的に行わなうもので、赤ちゃんの体を片手で支える動作を繰り返すため腕に負荷がかかり、中でも「手首」や「親指」はいちばん痛めやすい部位で、酷くなると腱鞘炎を生じる場合があります。
そもそも産後の女性は、自分が思っている以上に筋力が低下しているので、重いものを持ったり、抱えたりすることは、体への負担となります。
また、産後は女性ホルモンの分泌が大きく減少します。その代表的なものがエストロゲンというホルモンです。エストロゲンには皮膚や組織をみずみずしく滑らかに保つ役割があるので、この役割が低下すると、関節や腱の周りにある滑膜という組織が腫れやすくなります。関節の滑膜が腫れると関節炎が起こりやすくなり、腱の周りの滑膜が腫れると腱鞘炎も起こりやすくなります。
産後の腱鞘炎予防のために
手に負担がかかるのは、なんといっても定期的で長時間に及ぶ授乳です。出来れば一度の授乳を15分ぐらいに出来るといいのですが、現実的に難しいこともあるでしょうから、なるべく短くできるように心がけると良いですね。
また、赤ちゃんの位置を授乳クッションや枕などを使って、腕や手に負担のかからないように工夫をしましょう。入浴時には入浴サポーターを使ったり、抱っこの時には抱っこ紐など育児に便利な道具を上手く取り入れましょう。
とは言っても、一番は「休めること」「使わないこと」です。家事の負担を減らす工夫など、ご家族と相談できれば心強いですね。子育ては女性一人がするには負担が大きすぎますので、出産後はパートナーや周囲のご家族の協力を得て無理のない環境でゆっくりと育児に関わることが大事です。
「中医学での産後の腱鞘炎の考え方」
産後の「気」と「血」の不足から起こる不調
産後の女性は基本的に「気」や「血」といったエネルギーが足りない状態です。
出産で大量にエネルギーを使っていますので、栄養が足りず、巡りも悪くなっており、関節や腱の周りにある滑膜という組織が弱くなりがちです。これにより腱鞘炎も引き起こしやすくなります。
中医学には栄養が足りないと痛むといった「栄則不痛(栄えれば則ち痛まず)」という考え方があり、その状態を改善するためには、「気」「血」を整える必要があります。
また、滞りが痛みを招くといった「不通則痛」の状態であれば、“瘀血(おけつ)”による滞りをなくすために「気」「血」「津液」を整えていくことが大切です。
こういった炎症や痛みは中医学の中でも、鍼灸治療の得意分野の一つです。鍼や灸によって、経絡上のツボに刺激を与えることで痛みや炎症を抑え、患部の血流や巡りに働きかけ循環改善をはかるための治療を行います。
このように鍼灸特有の鎮痛作用を活かして痛みを柔らげることにより、症状が改善されたり、完治に向かっていくケースが多く見受けられます。
産後の「腱鞘炎」養生のポイント
中医学では、「血液の流れが悪く、通じないと、痛みを感じる」考えますので、血の巡りを良くし、腱鞘に新しい血液が流れることで、腱鞘炎の改善をはかります。日常生活の中でも「巡り良く」することが腱鞘炎改善の1つのポイントになります。
もう一つ忘れてはならないのが、「栄養(気、血、津液)が不足すると、痛みを感じる」という考え方です。腱鞘に必要な「気」や「血」といったエネルギーを補い届けることで腱鞘の組織を元気にします。また、「津液」には腱鞘の熱を鎮める役割があります。出産で不足した栄養をしっかり補うことが腱鞘炎改善の第2のポイントです。
このように「気・血・津液」といった体に必要なエネルギーの状態が、産後の女性の体を大きく左右しますので、栄養のある食事、質の良い睡眠、軽い運動やストレッチはもちろん、必要に応じて漢方や鍼灸といった手段を上手く取り入れることが大切です。
産後の腱鞘炎対策に「前腕ストレッチ」
- 1
- 片手で、逆の方の手の甲を握る。
- 2
- そのまま前方に肘を伸ばしていく。
- 3
- 指先を下にむけたまま腕から手首までをしっかりのばす。
- 4
- 手のひらを上にして同様に伸ばしていく。反対側の手も同様に行う。
※患部は炎症を起こしているのであまり触らないようにしましょう。
肩が硬いと手首までの筋肉全体が張ってきますので、肩回しも効果的です。
公開日:2023-1-12
更新日:2023-07-24