産後の貧血

 

知っておきたい「産後の貧血」と養生法

つらい貧血

女性の多くは、妊娠する前から貧血ぎみだと言われています。
普段から自覚がある方も多いのではないでしょうか。ほとんど自覚がなく、気づかないうちに症状が進んでいることもあります。
貧血は、女性に良く見られる症状ですが、放っておくのはよくありません。


妊娠中のママは、血液を通してお腹の赤ちゃんに栄養と酸素を送っているので、母体は鉄分不足になりがちな状態です。また、出産時には出血もあるので、産後は貧血気味になる方も少なくありません。
ママの健康だけでなく、赤ちゃんの成長にまで影響をするのが貧血ですので、しっかり学んで改善しましょう。


産後のママは貧血に注意しましょう。

産後の貧血

「産後はどうして貧血になりやすいの?」「産後の貧血になりやすいのはどんな人?」
貧血をそのまま放置すると「産後うつ」にも繋がることもあります。めまいや、動悸、立ちくらみの症状はありませんか?貧血に悩むママや、貧血に心あたりがあるママは、ぜひ参考にして、早めにケアしてあげましょう。


1)産後貧血になりやすいのはどんなタイプ?

産後は出産による影響で貧血を感じる女性が多いものですが、多くの場合、体内の血液量は約1ヶ月かけて次第に元の状態へと戻っていきます。「妊娠前から貧血の症状があった方」や「出産時に出血の多かった方」は、産後貧血になりやすい傾向があるので注意しましょう。また、通常よりも回復に時間がかかるケースもありますので、きちんと対策をとることが大切です。


2)産後のママが貧血になりやすい理由

出産時には多くの血液が使われるために一時的に貧血気味になりますが、産後ママが貧血になる一番の理由は「赤ちゃんへの授乳」です。母乳は、血液が乳房の中の毛細血管に取り込まれて作られるものです。その際に、血液が赤くなるための赤血球は取り込まれないため、母乳は血液のような赤色にはなりませんが、鉄分をはじめ、さまざまな栄養素が含まれています。ママの体の中から赤ちゃんへと鉄分が分け与えらるため、授乳は、貧血に拍車をかけるのです。
また、出産後は、急に子宮が収縮しますが、これがうまくいかない場合は「子宮復古不全」と言われ、出血量が増加して貧血を招くことに。生理が再開されれば、貧血が悪化することもあります。


3)産後の貧血はいつまで続くの?

出産で開いた子宮や骨盤は、約1ヵ月をかけて徐々に元に戻っていきます。ただし、生理の再開は授乳をしているかどうかやママそれぞれで個人差があります。おおよその目安として、授乳をしていないママで産後2か月~4か月、授乳をしているママで産後8か月~1年程度もしくは卒乳時期になる方も。焦りは禁物ですが、月経が再開すると鉄の喪失スピードがまた早くなり、貧血症状がひどくなる方もいます。過多月経や過長月経による立ちくらみなどの貧血症状があるときには、婦人科を受診するようにしましょう。


産後の貧血は、放置しないでください。

血は女性の身体を支える基礎物質です。妊娠中から貧血状態が続いていると、出産後、赤ちゃんに充分な栄養を送ることができませんし、疲れやすく、いつも気分がすぐれなかったりと、自分自身も疲弊してしまいます。
国立成育医療研究センターの研究によると、産後に貧血だった女性は、貧血でなかった女性と比べて産後うつの発症リスクが1.63倍も上がると言われています。現代の研究によれば、貧血は、産後うつの一因になると考えられています。産後のメンタル不調は長引くほど、リスクが高くなりますので、貧血の症状を甘く考えず早めにケアしたいものです。


「中医学での産後の貧血の考え方」

産後ケア「貧血」

全身を栄養し、滋養する「けつ

出産後の女性の体は、基本的にエネルギーが不足しています。
中医学の考え方では、このエネルギーを「」「けつ」「津液しんえき」と言った言葉で表し、これらのエネルギーバランスを整えることを大切にします。出産直後は3つのエネルギーが共に大きく減った状態で、中でも貧血と密接な関りのある「血」に至っては著しく不足します。全身の健康は、血が充分にあって、滞りなく循環していることで保たれます。

西洋医学との考え方の違い
現代医学では、貧血と言えば、赤血球やヘモグロビン、ヘマトクリットといった数値が判断基準とされますが、中医学では貧血の事を「血虚」と言い、貧血状態を改善するためには、「血」の状態を良くしてあげる必要があると考えます。 出産時は多くの血液が使われ、また産後は子宮を元の状態に戻すために、またたくさんの血液が必要とする時ですので、「血」の状態が良いことが望まれます。

「血虚」になるとどうなるの?
「血虚」とは、現代医学的な考え方において、「血液が薄い状態」も含めて、全身に「血」が巡らず行き渡らない状態を表しています。その反対の「血余けつよ」の状態であれば、精神や感情が安定して、睡眠の質もよく心身が健康に過ごせるのですが、出産や授乳では血を必要とするため、血が不足し、血虚となると、精神不安定、不眠、物忘れなどが症状として見られるようになります。

産後の貧血に悩まないために

「血」の状態をよくするために、中医学漢方では胃腸のはたらきを良くしてくれる漢方薬を用いることがあります。これは、胃腸のはたらきを良くすることにより、消化吸収の機能が高まり、食べ物から得る栄養が増え、血の生成が増え改善していくためです。
体力をつけると同時に、不足している血を補うことで全身のコンディションが整い、バランスがとれるようになることで貧血の改善を目指します。

産後の「貧血」養生のポイント

産後の貧血の回復のためには、「血」を補うことが大切です。
普段の生活の中でできる養生をためしてみても解決できないようなら、一度きちんと専門家に相談してみることをおすすめします。


日常生活で心がけたい「血」のための養生法

1
「しっかり食べる」 鉄分の多いものや、赤・黒など色の濃いものを摂りましょう
2
「良く眠る」 約7時間を目安に良く眠る・零時前には就寝しましょう
3
「運動をする」 体調に合わせて適度な運動をしましょう
4
「体をあたためリラックス」 体を冷やさないように・ストレスをためないこと




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公開日:2023-06-29
更新日:2023-07-24

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