薬草辞典-あ行

 

阿膠あきょう

あきょう

[基原]ウマ科ロバの毛を除去した皮を煮て膠〈にかわ〉にしたもの。

[別名]驢皮膠ろひきょう

[性・味]平・甘

[帰経]肺・肝・腎

[用法]5~10g。溶解(烊化)または冲服。丸・散剤も可。

止血潤肺しけつじゅんぱい作用を有する優れた補血薬ほけつやく熟地黄じゅくじおうに比べより膩性じせいであり,潤肺じゅんぱい止血しけつ作用を有する。

補血止血

優れた補血作用とともに,良好な収斂止血作用を有する。
(1) 心肝などの血虚証に使用される。めまい・動悸・顔色不良・不眠 ・羸痩〈るいそう〉・月経後期・過少月経・閉経,さらに煩躁などに使用される。(配合生薬)黄者・当帰・白芍薬・熟地黄など。〔代表方剤:阿膠四物湯〕。
(2) 吐血・喀血・崩漏・過多月経・血尿など一切の出血症に使用される。陰虚火旺や虚寒証など各種の病態に使用可能だが,特に陰血虚の出血に適する。(配合生薬)①虚寒性の崩漏・過多月経には,蒲黄・乾地黄・艾葉・白芍薬など。〔代表方剤:芎帰膠艾湯〉。②脾陽虚証の各種出血には,乾地黄・灶心土・白朮・附子など。〔代表方剤:黄土湯〕。
(3) 養血止血安胎作用もあり,妊婦の下血・胎動不安などに使用される。(配合生薬)続断・苧麻根など。

滋陰潤燥

肝・腎・肺の陰を補い乾燥を潤す(潤燥)。
(1) 熱病の陰液消耗や肝腎陰虚の煩躁不眠・動悸・四肢のほてり・倦怠感などに使用される。黄連・黄芩・白芍薬・鶏子黄・炙甘草・麦門冬などと用いる。〔代表方剤:炙甘草湯,黄連阿膠湯〉。
(2) 陰虚内風による痙攣などに使用される。乾地黄・亀板・牡蛎・鼈甲などと用いる。〔代表方剤:大定風珠〕。
(3) 肺陰虚や肺燥による乾咳・粘性少量痰・鼻腔乾燥などに使用される。麦門冬・天門冬・沙参・貝母・桑葉などと用いる。〔代表方剤:清燥救肺湯,補肺阿膠湯〕。

潤腸通便作用があり,腸燥便秘に使用される。通便力は弱く,他薬の補助薬として用いられる。麻子仁・杏仁・桃仁・熟地黄・当帰などと用いる。〔代表方剤:潤腸湯〕。

[注意点]粘膩性であり消化器の障害を起こしやすい。脾胃虚弱証の食欲不振,痰湿証の嘔吐・下痢などには使用しない。

(管理No.01-001)

 

茵蔯蒿いんちんこう

いんちんこう

[基原]キク科カワラヨモギの幼苗。

[別名]茵蔯いんちん

[性・味]微寒・苦

[帰経]脾・胃・肝・胆

[用法]10~15g。外用も可。

清熱利湿せいねつりしつ退黄たいおうの重要薬。

清熱利湿・
退黄

(1)利湿により黄疸を除く。微寒性であり湿熱性の黄疸(陽黄)に適するが,温裏薬などの配合により寒湿性の黄疸(陰黄)にも使用される。
①湿熱性黄疸には,山梔子・大黄・黄柏・金銭草などと用いる。〔代表方剤:茵蔯蒿湯 〕。
②熱より湿邪が盛んな下痢・浮腫・悪心などを伴う黄疸には,白朮・茯苓・猪苓などと用いる。〔代表方剤:茵蔯五苓散〕。
③寒湿性黄疸には,乾姜・附子・白朮などと用いる。〔代表方剤:茵蔯四逆湯,茵蔯朮附湯〕。
(2)黄疸がない肝胆の湿熱証の季肋部痛(痞塞感)・ロ苦・焦燥感・褐色尿・黄膩苔などにも使用される。そのほか,肝胆湿熱の胆嚢炎・胆嚢ジスキネジー・胆石症にも用いられる。柴胡・金銭草・鬱金・大黄などと用いる。〔代表方剤:清胆利湿湯〕。
(3)湿疹・疥癬・蕁麻疹・皮膚瘙痒症・滲出液を伴う皮膚化膿症などの湿熱性皮膚疾患(特に下肢)にも使用される。単味の外用も可。黄柏・土茯苓・白蘚皮・ 地膚子などと用いる。〔代表方剤:茵蔯蒿散〕。
(4) 湿と熱がともに盛んな湿温証初期に使用される。滑石・黄芩・白豆蔲・藿香などと用いる。〔代表方剤:甘露消毒丹,一加減正気散〕。

軽度の疏肝作用を有し,陰虚の肝気鬱結に使用される。〔代表方剤:鎮肝熄風湯〕。

(管理No.01-002)

 

淫羊藿いんようかくイカリ草いかりそう

いんようかく

[基原]メギ科シロバナイカリソウやホザキイカリソウなどの葉。

[別名]仙霊脾れいせんひ

[性・味]温・辛・甘

[帰経]肝・腎

[用法]5~10g。丸・散・膏・酒剤にも使用可。

温燥おんそう性が強く,祛風湿きょふうしつ作用を有する温腎壮陽おんじんそうよう薬。補陽ほよう力は肉蓯蓉にくじゅよう巴戟天はげきてん鎖陽さようより優れるが,燥性が強く温和さに欠ける。仙茅せんぼうに比べ壮陽そうよう作用に優れる。

温腎壮陽

温性が強く,よく腎陽を補い命門の火を温め,壮陽作用を有する。
(1) 腎陽虚証の下肢冷感・腰下肢関節痛などに仙茅とともに使用される。腎陰陽両虚証で,ほてり・焦燥感などには,仙茅・知母・黄柏などと用いる。〔代表方剤:二仙湯〕。
(2) 腎陽虚による陽萎・不妊・頻尿・腰部下肢倦怠無力感などにも使用される。熟地黄・拘杞子などと用いる。〔代表方剤:贊育丹〕。

強健筋骨
・祛風湿

腎とともに肝をも補い筋骨を強健にし,温性と燥性が強く,陽気を温め通じて風湿寒の邪をよく除く。風寒湿痺証の疼痛・しびれ,中風の筋拘縮・片マヒなどに使用される。特に腎陽虚証を伴うものによい。そのほか,小児マヒの後遺症にも使用される。威霊仙・当帰・桑寄生・川芎など。〔代表方剤:仙霊脾散〕。

肺腎虚証の老人の咳嗽や呼吸困難,歯痛などにも使用される。

[注意点]陰虚火旺には使用しない。

(管理No.01-003)

 

鬱金うこん姜黄きょうおう

うこん

[基原]ショウガ科ウコンやハルウコンの根茎。

[別名]中国ではショウガ科のウコンやハルウコン,ガジュツの乾燥した塊根を鬱金と呼び,ウコンやハルウコンの乾燥した根茎を姜黄と呼ぶ。これに対し,わが国の生薬名である鬱金は,ウコンの乾燥した根茎,つまり中国でいう姜黄のことである。また中国の鬱金は,わが国では川玉金せんぎょくきん玉金ぎょくきんと通称される。このように,中国とわが国ではその呼び方が逆となるので注意が必要である。

[性・味]温・辛・苦

[帰経]肝・脾

[用法]3~9g。外用も可。

気中きちゅう血薬けつやくといわれ,活血かっけつしよく止痛する。温性おんせいであり,鬱金うこんに比べ,活血力かっけつりょくに優れ肢体にも作用する。

行気活血

良好な活血力を有し,同時に気も巡らせ止痛する。瘀血気滞証に多用される。温性であり寒性の気滞瘀血証に適する。肝気鬱結や瘀血による胸部腹部季肋部痛・月経痛・閉経などに使用される。さらに胃痛や歯痛にも用いられる。
①心痛には当帰・木香・烏薬などと用いる。〔代表方剤:姜黄散〕。
②季肋部痛には枳殻・桂心・烏薬などと用いる。〔代表方剤:推気散〕。
③閉経・産後腹痛には,当帰・川芎・紅花・延胡索などと用いる。
④外傷打撲には,桃仁・蘇木・乳香などと用いる。〔代表方剤:姜黄湯〕。

通経止痛

気血を巡らせるとともに風寒の邪を散じ,経絡を通じさせる 。寒性の瘀血を伴う風湿痺証に使用される。特に上肢肩部の痺証に常用される。羗活・ 防風・当帰などと用いる。〔代表方剤:蠲痺湯,舒筋湯〕。

消腫止痛の作用があり,熱毒が盛んな瘀血気滞による皮膚化膿症などに使用される。粉末を外用する。大黄・天花粉・白芷などと用いる。〔代表方剤:如意金黄散〕。

[注意点]妊婦には慎重に使用する 。

(管理No.01-004)

 

延胡索えんごさく

えんごさく

[基原]ケシ科エンゴサクの塊茎。

[別名]元胡げんこ玄胡索げんごさく

[性・味]温・辛・苦

[帰経]肝・脾・心

[用法]3~10g。粉末の服用も可 (1.5~3g/回)。醋炒延胡索は止痛作用が優れる。

気血きけつを巡らせ,全身の各種疼痛を止める。気滞瘀血きたいおけつ性疼痛の常用薬。

行気活血・
止痛

気とともに血もよく巡らせ,瘀血を散じ,良好な止痛作用を有する。気滞瘀血性の疼痛に多用される。そのほか,配合薬によって寒性の疼痛(寒凝気滞証)・熱証の疼痛・肝気鬱結・風湿痺証・外傷痛などに使用される。腹痛・胸痛・季肋部痛・疝気痛・月経痛・四肢痛・外傷性痛など,各種の病態や広範囲の疼痛(特に臓腑性の疼痛)に用いられる。
①胸痛(胸痺など)には,薤白・栝楼仁・丹参・赤芍薬などと用いる。
②気滞の季肋部痛や胃痛には枳殻・鬱金などと用いる。瘀血性疼痛には,桃仁・紅花などと用いる。〔代表方剤:血府逐瘀湯〕。熱証疼痛には,川楝子・山梔子などと用いる。 〔代表方剤:金鈴子散〕。寒証疼痛には,香附子・高良姜などと用いる。〔代表方剤:安中散〕。
③寒性疝痛には, 小茴香・呉茱萸などと用いる。
④月経痛や産後の瘀血性の腹痛には,当帰・川芎・五霊脂・蒲黄などと用いる。〔代表方剤:少腹逐瘀湯,延胡索散〕。⑤外傷打撲痛や風湿痺証には,乳香・没薬・桂枝・秦艽などと用いる。

(管理No.01-005)

 

黄耆おうぎ

おうぎ

[基原]マメ科キバナオウギやナイモウオウギなどの根。

[性・味]微温・甘

[帰経]脾・肺

[用法]10~15g。生黄耆は外表に作用し固表・托瘡・利水の作用に優れる。灸黄蓍は裏に作用し補中補気昇陽作用に優れる。補気昇陽には多量 (~30g) を使用。

人参に比べ補気力ほきりょくは劣るが,昇陽しょうよう固表こひょう・利水・托瘡たくそう作用に優れる。

補気昇陽

脾気を補うとともに,上昇力の低下した脾気の精気(中気下陥)をもち上げる。また補気により血の経絡よりの流失を防ぐ(摂血)。
(1)脾胃気虚の倦怠感・食欲不振・下痢・顔色不良などに使用される。また脾肺両虚証や気血両虚証にも用いられる。
①脾胃虚証には,人参・白朮・山薬・茯苓などと用いる。
②脾陽虚証には附子・肉桂などと用いる。
③肺脾両虚証の易感冒・食欲不振・下痢・自汗などには,芍薬・桂枝・大棗などと用いる。〔代表方剤:黄耆建中湯 〕。
④気血両虚証には, 熟地黄・人参・白朮・芍薬などと用いる。〔代表方剤:十全大補湯 〕。
(2)中気下陥の下垂感・めまい・倦怠感・内蔵下垂・気虚発熱・めまい・慢性下痢・頻尿などに使用される。
①中気下陥証には,升麻・柴胡・人参・白朮などと用いる。〔代表方剤:補中益気湯 ,挙元煎〕。
②中気下陥による息切れ・呼吸困難などには, 柴胡・升麻・桔梗・山茱萸などと用いる。〔代表方剤:昇陥湯〕。
(3)気虚による出血証(気不摂血)にも用いられる。
①気血両虚には,当帰などと用いる。 〔代表方剤:当帰補血湯〕。
②脾不統血の吐血・鼻出血・血便・崩漏・内出血紫斑などには, 人参・当帰・竜眼肉・酸棗仁や三七・烏賊骨・阿膠などと用いる。〔代表方剤:帰脾湯 〕。

補気固表・
解表

肺気を補い,膝理を密にし衛気の機能を高める(固表)。
(1)肺気虚証の息切れ・易感冒・咳嗽・白色多痰・慢性喘息・自盗汗などに使用される。
①肺気虚証の咳嗽・息切れなどには五味子・人参・熟地黄などと用いる。〔代表方剤:補肺湯〕。
②易感冒症には,防風・白朮などと用いる。〔代表方剤:玉屏風散〕 。
③表虚証の自汗には, 牡蛎・浮小麦・麻黄根などと用いる。〔代表方剤:桂枝加黄耆湯 ,牡蛎散〕。
④陰虚の盗汗には, 生地黄・麦門冬・五味子・地骨皮・浮小麦などと用いる。
⑤陽虚の自汗には,附子などと用いる。 〔代表方剤:耆附湯〕。
(2) 気虚や陽虚の感冒に使用される。陽虚の感冒の初期で,四肢冷感・倦怠感・顔色蒼白・悪寒・無汗などには,人参・桂枝・附子・細辛。生姜などと用いる。〔代表方剤:再造散〕。

益気利水

脾の機能を高めることで利水する。気虚や脾虚の水湿停滞による浮腫・尿量減少・身体の重だるさなどに使用される。白朮・防已・茯苓・生姜・桂枝などと用いる。〔代表方剤:防已黄者湯 ,防已茯苓湯〕。

托瘡生肌

瘡家の聖薬といわれ,正気を高めることで排膿を促し(托裏), 創傷や皮膚化膿症の治癒を促進する(生肌)。気血両虚などの排膿や化膿の遅延, 排膿後の傷口修復遅延などに使用される。
①気血両虚の排膿遅延には,当帰・ 川芎・穿山甲・皀角刺・連翹・金銀花などと用いる。〔代表方剤:当帰飲子 ,透膿散,托裏消毒飲〕。
②創傷修復遅延には,当帰・肉桂などと用いる。

(1) 補気により血を補い,かつよく巡らせる。気虚血虚証などの四肢のしびれ・痺証などに使用される。桂枝・芍薬・大棗・生姜などと用いる。〔代表方剤:大防風湯 ,黄蓍桂枝五物湯〕。
(2) 気虚瘀血証などの中風後遺症の半身マヒ・しびれなどに使用される。当帰・ 川芎・桃仁・紅花・地竜などと用いる。〔代表方剤:補陽還五湯〕。

[注意点]補気昇陽作用があり ,火邪を助長しやすい。そのため,表実証・気滞湿証・食積・陰虚内熱・初期の皮膚化膿炎や,十分に正気がある同症には使用しない。

(管理No.01-006)

 

黄芩おうごん

おうごん

[基原]シソ科コガネバナの根。

[別名]尖苓せんごん片苓へんごん

[性・味]寒・苦

[帰経]肺・胆・胃・大腸

[用法]3~10g。炒黄芩は清熱安胎,酒黄芩は清肺熱,炒炭黄芩は止血作用に優れる。

広範囲の熱証ねっしょう湿熱証しつねつしょうに使用され,特に肺火はいか肝火かんかをよく冷ます。清熱安胎せいねつあんたい作用・止血作用を有する。

清熱燥湿

よく熱を冷まし湿を除く。肝胆・胃・大腸・boukou

など多くの湿熱証 の下痢・煩熱・胸悶感・ロ渇・褐色尿・小便不利・黄膩苔などに使用される。
(1)肝胆の湿熱黄疸や寒熱錯雑証に使用される。黄疸には菌蔯嵩・山梔子・柴胡などと用いる。
(2)湿温病や暑湿初期の発熱・発汗・胸悶感・腹部脹満・嘔吐・膩苔などに使用される。滑石・通草・白豆蔲などと用いる。〔代表方剤:黄芩滑石湯,甘露消毒飲)。
(3)大腸湿熱による発熱・腹痛下痢・裏急後重などに使用される。黄連・黄柏・葛根・秦皮・白頭翁・木香・白芍薬などと用いる。〔代表方剤:葛根苓連湯,白頭翁湯,黄芩湯 〕。
(4)膀胱湿熱による熱淋の小便不利・頻尿・排尿痛・残尿感・褐色尿や血淋・赤色尿などに使用される。
①木通・茅根・車前子・沢瀉・滑石などと用いる。〔代表方剤:五淋散 〕。
②気虚や血虚を伴うときには,黄耆・麦門冬などと用いる。〔代表方剤:清心蓮子飲 〕。

清熱瀉火

熱を冷まし火を降ろす。温病気分証や少陽病・肺などの実熱証に多用される。
(1)温病気分証や心火亢進(特に前者)の高熱・熱感・発汗・煩燥・焦燥感・頭痛・不眠・ロ渇・意識障害・紅色舌などの実熱証に使用される。黄連・黄柏・山梔子・大黄・生地黄・牛黄などと用いる。〔代表方剤:黄連解毒湯,牛黄清心丸,清営湯〕。
(2) 寒熱錯雑証の心窩部痞塞感・胃痛・下痢・悪心・嘔吐・ロ苦などに使用され る。黄連・半夏・乾姜や生姜などと用いる。〔代表方剤:半夏瀉心湯 ,生姜瀉心湯〕。
(3)少陽病の熱盛状態の口苦・めまい・寒熱往来などに使用される。
①柴胡・黄連・半夏などと用いる。〔代表方剤:小柴胡湯 〕。
②肝胆実火による頭痛・めまい・耳鳴・焦燥感・易怒・季肋部脹満感などに使用される。竜胆草・柴胡・山梔子・車前子などと用いる。〔代表方剤:竜胆瀉火湯,大柴胡湯〕。
(4)肺熱による咳嗽・呼吸促迫・胸痛・黄色粘性痰などに使用される。桑白皮・天花粉・貝母・杏仁・天南星などと用いる。〔代表方剤:清肺湯 ,柴陥湯 ,定喘湯〕。

清熱止血

止血作用があり,黄連と同様に,血熱による吐血・鼻出血・血便などに使用される。また喀血・血尿・湿疹などにも用いられる。黄連・大黄・山楯子・三七・茅根・愧花などと用いる。〔代表方剤:三黄潟心湯〕。

清熱安胎

安胎作用(流産防止作用)がある 。胎熱による熱性の胎動不安 ・腹痛・下血などに使用される。白朮・当帰などと用いる。〔代表方剤:当帰散〕。

清熱解毒

熱毒をよく冷まし除く。皮膚化膿症・火傷・熱毒による温病・細菌性などの重症下痢・咽頭腫脹などに使用される。特に,皮膚化膿症や火傷に用いられる。黄連・連翹・金銀花・蒲公英などと用いる。〔代表方:清上防風湯 〕。

[注意点]苦寒の性が強いため,脾胃を損傷しやすい(苦寒敗胃)。脾胃虚寒証には禁忌。実熱証以外には使用しない。また燥湿作用も強く津液を消耗しやすい。

(管理No.01-007)

 

黄連おうれん

おうれん

[基原]キンポウゲ科オウレンなどの根茎。

[別名]川連せんれん

[性・味]寒・苦

[帰経]心・肝・胃・大腸

[用法]2~6g。強い熱証には12gまで使用可。粉末も可 (1~1.5g/回)。姜黄連は止嘔に優れる。酒黄連は上部の熱証(口内炎や眼痛耳痛など)に使用される。

治火ちかの主薬といわれ,清熱せいねつ燥湿そうしつ解毒げどく各作用ともに優れた実熱瀉火じつねつしゃかの重要薬。特に心火除煩しんかじょはん作用に優れる。

清熱瀉火

よく熱を冷まし火を降ろす。諸薬の配合で以下の広範囲な実熱証に使用される。特に心火や胃熱を冷ます作用に優れる。
(1)心火亢進や温病気分証の高熱・熱感・発汗・煩躁・焦燥感・頭痛・不眠・口渇・意識障害・紅色舌などの実熱証に使用される。黄芩・黄柏・山梔子・大黄・生地黄・牛黄などと用いる。〔代表方剤:黄連解毒湯,牛黄清心丸,清営湯〕。陰血不足を伴う煩躁・不眠などにも用いられる。白芍・阿膠・黄芩・鶏子黄など。〔代表方剤:黄連阿膠湯,交泰丸〕。
(2)血熱による吐血・鼻出血・血便などに使用される。黄芩・大黄・山梔子・三七・茅根・槐花などと用いる。〔代表方剤:三黄瀉心湯〕。
(3)寒熱錯雑証の心窩部痞塞感・胃痛・下痢・悪心・嘔吐・ロ苦などに使用される。黄芩・半夏・乾姜や生姜などと用いる。〔代表方剤:半夏瀉心湯 ,生姜瀉心湯〕。
(4)胃熱証に使用される。止嘔作用も有し,胃熱嘔吐の常用薬。
①胃熱嘔吐には,半夏・竹筎などと用いられる。〔代表方剤:黄連橘皮半夏湯〕。
②口内炎・歯齦炎・歯齦出血・歯痛などには,升麻・白芷・生地黄などと用いる。〔代表方剤:清胃散〕。
③消渇などの飢餓感・ロ渇・多飲などには,天花粉・生地黄・知母などと用いる。
(5) 肝火亢進証の眼球結膜充血・眼痛腫脹・羞明・流涙などに使用される 。点眼薬も可。山梔子・竜胆草・菊花・連翹などと用いる。〔代表方剤:当帰竜薈丸)。
(6) 肝火犯胃の嘔吐・呑酸・季肋部脹満痛・曖気などにも用いられる。呉茱萸・蘇葉などと用いる。〔代表方剤:左金丸)。

清熱燥湿

よく熱を冷まし,強力に湿を除く。
(1)脾胃湿熱証に使用される。湿熱実証の胸悶感・心窩部痞塞感・悪心・嘔吐・下痢・黄膩苔などに用いられる。厚朴・山梔子・半夏などと用いる。〔代表方剤:連朴飲〕。寒熱錯雑証の胃痛・心窩部痞塞感・口苦などにも使用される。半夏・生姜などと用いる。〔代表方剤:黄連湯 〕。②裏急後重を伴う腹痛下痢には,木香・檳榔子などと用いる。〔代表方剤:香連丸〕。
(2)大腸湿熱による発熱・腹痛下痢・裏急後重などに使用される。黄芩・黄柏・葛根・秦皮・白頭翁・木香・白芍薬などと用いる。〔代表方剤:葛根苓連湯,白頭翁湯〕。
(3)肺の痰熱証の胸痛・咳嗽・黄色痰などに使用される。貝母・半夏・栝楼仁などと用いる。〔代表方剤:小陥胸湯,柴陥湯 〕。
(4)痰熱証の不眠・悪心・嘔吐・めまい・ロ苦・ロの粘り・精神不安・焦燥感などに使用される。半夏・竹筎・茯苓などと用いる。〔代表方剤:竹筎温胆湯〕。

清熱解毒

熱毒をよく冷まし除く。本作用に特に優れる。熱毒による温病・細菌性などの重症下痢・皮膚化膿症・火傷・咽頭腫脹などに使用される。外用も可。)黄芩・連翹・大黄・升麻・板藍根などと用いる。〔代表方剤:清上防風湯〕

寒性を和らげるために,少量を反佐薬として使用する。

[注意点]寒性と燥性が強く,多量や長期の服用で脾胃を損傷し(苦寒敗胃),食欲不振やもたれ,悪心・嘔吐などが出現することがある。実熱証以外には使用しない。 脾胃虚証には禁忌。また燥湿作用も強く津液を消耗しやすい。陽虚証・陰虚証には慎重に使用する。

(管理No.01-008)