薬草辞典-あ行
阿膠
[基原]ウマ科ロバの毛を除去した皮を煮て膠〈にかわ〉にしたもの。
[別名]驢皮膠
[性・味]平・甘
[帰経]肺・肝・腎
[用法]5~10g。溶解(烊化)または冲服。丸・散剤も可。
止血潤肺作用を有する優れた補血薬。熟地黄に比べより膩性であり,潤肺・止血作用を有する。
補血止血 |
優れた補血作用とともに,良好な収斂止血作用を有する。 |
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滋陰潤燥 |
肝・腎・肺の陰を補い乾燥を潤す(潤燥)。 |
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他 |
潤腸通便作用があり,腸燥便秘に使用される。通便力は弱く,他薬の補助薬として用いられる。麻子仁・杏仁・桃仁・熟地黄・当帰などと用いる。〔代表方剤:潤腸湯〕。 |
[注意点]粘膩性であり消化器の障害を起こしやすい。脾胃虚弱証の食欲不振,痰湿証の嘔吐・下痢などには使用しない。
(管理No.01-001)
茵蔯蒿
[基原]キク科カワラヨモギの幼苗。
[別名]茵蔯
[性・味]微寒・苦
[帰経]脾・胃・肝・胆
[用法]10~15g。外用も可。
清熱利湿・退黄の重要薬。
清熱利湿・ 退黄 |
(1)利湿により黄疸を除く。微寒性であり湿熱性の黄疸(陽黄)に適するが,温裏薬などの配合により寒湿性の黄疸(陰黄)にも使用される。 |
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他 |
軽度の疏肝作用を有し,陰虚の肝気鬱結に使用される。〔代表方剤:鎮肝熄風湯〕。 |
(管理No.01-002)
淫羊藿・イカリ草
[基原]メギ科シロバナイカリソウやホザキイカリソウなどの葉。
[別名]仙霊脾
[性・味]温・辛・甘
[帰経]肝・腎
[用法]5~10g。丸・散・膏・酒剤にも使用可。
温燥性が強く,祛風湿作用を有する温腎壮陽薬。補陽力は肉蓯蓉・巴戟天・鎖陽より優れるが,燥性が強く温和さに欠ける。仙茅に比べ壮陽作用に優れる。
温腎壮陽 |
温性が強く,よく腎陽を補い命門の火を温め,壮陽作用を有する。 |
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強健筋骨 ・祛風湿 |
腎とともに肝をも補い筋骨を強健にし,温性と燥性が強く,陽気を温め通じて風湿寒の邪をよく除く。風寒湿痺証の疼痛・しびれ,中風の筋拘縮・片マヒなどに使用される。特に腎陽虚証を伴うものによい。そのほか,小児マヒの後遺症にも使用される。威霊仙・当帰・桑寄生・川芎など。〔代表方剤:仙霊脾散〕。 |
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他 |
肺腎虚証の老人の咳嗽や呼吸困難,歯痛などにも使用される。 |
[注意点]陰虚火旺には使用しない。
(管理No.01-003)
鬱金・姜黄
[基原]ショウガ科ウコンやハルウコンの根茎。
[別名]中国ではショウガ科のウコンやハルウコン,ガジュツの乾燥した塊根を鬱金と呼び,ウコンやハルウコンの乾燥した根茎を姜黄と呼ぶ。これに対し,わが国の生薬名である鬱金は,ウコンの乾燥した根茎,つまり中国でいう姜黄のことである。また中国の鬱金は,わが国では川玉金・玉金と通称される。このように,中国とわが国ではその呼び方が逆となるので注意が必要である。
[性・味]温・辛・苦
[帰経]肝・脾
[用法]3~9g。外用も可。
気中の血薬といわれ,活血しよく止痛する。温性であり,鬱金に比べ,活血力に優れ肢体にも作用する。
行気活血 |
良好な活血力を有し,同時に気も巡らせ止痛する。瘀血気滞証に多用される。温性であり寒性の気滞瘀血証に適する。肝気鬱結や瘀血による胸部腹部季肋部痛・月経痛・閉経などに使用される。さらに胃痛や歯痛にも用いられる。 |
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通経止痛 |
気血を巡らせるとともに風寒の邪を散じ,経絡を通じさせる 。寒性の瘀血を伴う風湿痺証に使用される。特に上肢肩部の痺証に常用される。羗活・ 防風・当帰などと用いる。〔代表方剤:蠲痺湯,舒筋湯〕。 |
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他 |
消腫止痛の作用があり,熱毒が盛んな瘀血気滞による皮膚化膿症などに使用される。粉末を外用する。大黄・天花粉・白芷などと用いる。〔代表方剤:如意金黄散〕。 |
[注意点]妊婦には慎重に使用する 。
(管理No.01-004)
延胡索
[基原]ケシ科エンゴサクの塊茎。
[別名]元胡・玄胡索
[性・味]温・辛・苦
[帰経]肝・脾・心
[用法]3~10g。粉末の服用も可 (1.5~3g/回)。醋炒延胡索は止痛作用が優れる。
気血を巡らせ,全身の各種疼痛を止める。気滞瘀血性疼痛の常用薬。
行気活血・ 止痛 |
気とともに血もよく巡らせ,瘀血を散じ,良好な止痛作用を有する。気滞瘀血性の疼痛に多用される。そのほか,配合薬によって寒性の疼痛(寒凝気滞証)・熱証の疼痛・肝気鬱結・風湿痺証・外傷痛などに使用される。腹痛・胸痛・季肋部痛・疝気痛・月経痛・四肢痛・外傷性痛など,各種の病態や広範囲の疼痛(特に臓腑性の疼痛)に用いられる。 |
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(管理No.01-005)
黄耆
[基原]マメ科キバナオウギやナイモウオウギなどの根。
[性・味]微温・甘
[帰経]脾・肺
[用法]10~15g。生黄耆は外表に作用し固表・托瘡・利水の作用に優れる。灸黄蓍は裏に作用し補中補気昇陽作用に優れる。補気昇陽には多量 (~30g) を使用。
人参に比べ補気力は劣るが,昇陽・固表・利水・托瘡作用に優れる。
補気昇陽 |
脾気を補うとともに,上昇力の低下した脾気の精気(中気下陥)をもち上げる。また補気により血の経絡よりの流失を防ぐ(摂血)。 |
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補気固表・ 解表 |
肺気を補い,膝理を密にし衛気の機能を高める(固表)。 |
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益気利水 |
脾の機能を高めることで利水する。気虚や脾虚の水湿停滞による浮腫・尿量減少・身体の重だるさなどに使用される。白朮・防已・茯苓・生姜・桂枝などと用いる。〔代表方剤:防已黄者湯 ,防已茯苓湯〕。 |
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托瘡生肌 |
瘡家の聖薬といわれ,正気を高めることで排膿を促し(托裏), 創傷や皮膚化膿症の治癒を促進する(生肌)。気血両虚などの排膿や化膿の遅延, 排膿後の傷口修復遅延などに使用される。 |
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他 |
(1) 補気により血を補い,かつよく巡らせる。気虚血虚証などの四肢のしびれ・痺証などに使用される。桂枝・芍薬・大棗・生姜などと用いる。〔代表方剤:大防風湯 ,黄蓍桂枝五物湯〕。 |
[注意点]補気昇陽作用があり ,火邪を助長しやすい。そのため,表実証・気滞湿証・食積・陰虚内熱・初期の皮膚化膿炎や,十分に正気がある同症には使用しない。
(管理No.01-006)
黄芩
[基原]シソ科コガネバナの根。
[別名]尖苓・片苓
[性・味]寒・苦
[帰経]肺・胆・胃・大腸
[用法]3~10g。炒黄芩は清熱安胎,酒黄芩は清肺熱,炒炭黄芩は止血作用に優れる。
広範囲の熱証や湿熱証に使用され,特に肺火・肝火をよく冷ます。清熱安胎作用・止血作用を有する。
清熱燥湿 |
よく熱を冷まし湿を除く。肝胆・胃・大腸・boukou など多くの湿熱証 の下痢・煩熱・胸悶感・ロ渇・褐色尿・小便不利・黄膩苔などに使用される。 |
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清熱瀉火 |
熱を冷まし火を降ろす。温病気分証や少陽病・肺などの実熱証に多用される。 |
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清熱止血 |
止血作用があり,黄連と同様に,血熱による吐血・鼻出血・血便などに使用される。また喀血・血尿・湿疹などにも用いられる。黄連・大黄・山楯子・三七・茅根・愧花などと用いる。〔代表方剤:三黄潟心湯〕。 |
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清熱安胎 |
安胎作用(流産防止作用)がある 。胎熱による熱性の胎動不安 ・腹痛・下血などに使用される。白朮・当帰などと用いる。〔代表方剤:当帰散〕。 |
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清熱解毒 |
熱毒をよく冷まし除く。皮膚化膿症・火傷・熱毒による温病・細菌性などの重症下痢・咽頭腫脹などに使用される。特に,皮膚化膿症や火傷に用いられる。黄連・連翹・金銀花・蒲公英などと用いる。〔代表方:清上防風湯 〕。 |
[注意点]苦寒の性が強いため,脾胃を損傷しやすい(苦寒敗胃)。脾胃虚寒証には禁忌。実熱証以外には使用しない。また燥湿作用も強く津液を消耗しやすい。
(管理No.01-007)
黄連
[基原]キンポウゲ科オウレンなどの根茎。
[別名]川連
[性・味]寒・苦
[帰経]心・肝・胃・大腸
[用法]2~6g。強い熱証には12gまで使用可。粉末も可 (1~1.5g/回)。姜黄連は止嘔に優れる。酒黄連は上部の熱証(口内炎や眼痛耳痛など)に使用される。
治火の主薬といわれ,清熱・燥湿・解毒各作用ともに優れた実熱瀉火の重要薬。特に心火除煩作用に優れる。
清熱瀉火 |
よく熱を冷まし火を降ろす。諸薬の配合で以下の広範囲な実熱証に使用される。特に心火や胃熱を冷ます作用に優れる。 |
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清熱燥湿 |
よく熱を冷まし,強力に湿を除く。 |
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清熱解毒 |
熱毒をよく冷まし除く。本作用に特に優れる。熱毒による温病・細菌性などの重症下痢・皮膚化膿症・火傷・咽頭腫脹などに使用される。外用も可。)黄芩・連翹・大黄・升麻・板藍根などと用いる。〔代表方剤:清上防風湯〕 |
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他 |
寒性を和らげるために,少量を反佐薬として使用する。 |
[注意点]寒性と燥性が強く,多量や長期の服用で脾胃を損傷し(苦寒敗胃),食欲不振やもたれ,悪心・嘔吐などが出現することがある。実熱証以外には使用しない。 脾胃虚証には禁忌。また燥湿作用も強く津液を消耗しやすい。陽虚証・陰虚証には慎重に使用する。
(管理No.01-008)