薬草辞典-は行
敗醬
[基原]オミナエシ科オミナエシやオトコエシなどの全草や根。
[別名]全草は敗醬草。根は敗醬根。
[性・味]微寒・辛・苦
[帰経]大腸・肝
[用法]敗醬草:6~15g。敗醤根:3~20g。外用も可。
活血作用を有する清熱解毒薬。腸癰治療の重要薬。有膿・無膿を問わず応用してよい。
清熱解毒・ 排膿 |
熱毒を冷ますとともに湿を除き,瘀血を去る。熱毒と湿・気・血が結び出現した腸癰に多用される。そのほか,排膿作用を有し,配合薬により皮膚などの化膿症の初期から化膿期まで使用される。肺癰(肺炎や熱邪蘊肺証)にも使用される。塗布も可。 |
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活血化瘀 |
紅藤と同様に,血を巡らせ疼痛を去る。瘀血による産後の腹痛や月経痛・胸腹疼痛などに使用される。単味服用も可。当帰・川芎・五霊脂・香附子などと用いる。 |
[注意点]血瘀であっても熱毒によらない場合には用いない。
(管理No.01-131)
貝母
[基原]ユリ科アミガサユリ属植物の鱗茎。
[性・味]平(川貝母)・寒(浙貝母)・甘(川貝母)・苦(浙貝母)
[帰経]肺・心
[用法]3~5g。粉末も可 (1~1.5g/回)。川貝母は高値であり,粉末で服用してもよい。
寒性と潤性があり,清熱潤燥作用を有し,熱痰・燥痰ともに使用可能な化痰薬。栝楼に比べ清熱化痰作用に優れる。
清熱化痰 ・止咳 |
よく肺熱を冷まし,痰を除去し止咳する。潤性・寒性は貝母の種類によって異なる。栝楼と同様に,肺熱鬱滞による粘性痰・黄色痰・乾燥黄膩苔・紅色舌,肺の津液不足や肺陰虚内熱による粘性少痰・喀出困難の痰・咽頭乾燥・少苔や無苔・紅色舌などに使用される。さらに,外感風熱の咳嗽にも用いられる。 |
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清熱散結 |
熱を冷まし解毒し痰熱などの鬱結や結実を除く。浙貝母が優れる。肺癰・乳癰・腸癰・瘰癧・甲状腺腫(癭瘤)・皮膚化膿症状の初期(未潰) などに使用される。特に初期に使用される。 |
[注意点]基本的には寒性であり,寒痰証には禁忌。伝統的に烏頭とは相反。
(管理No.01-132)
麦芽
[基原]イネ科オオムギの発芽した穂先の果実。
[別名]麦糵
[性・味]平・甘
[帰経]脾・胃・肝
[用法]10~15g。丸・散剤も可。回乳には生麦芽を大量に使用する(30~60g)。生麦芽は健脾開胃,炒麦芽は消食作用に優れる。
和中作用を有する消食薬。山楂子や神麹に比べ消食力は弱いが,健脾開胃作用を有する。穀芽に比べ,消食力に優れる。
消食和中 |
消化力に優れ,消化作用を促進することで脾胃の機能を助ける。特に米・芋・小麦などの澱粉類の消化作用に優れる。食積や脾胃虚証によるもたれ・胃部脹満感・食欲不振,さらには嘔吐などに使用される。特に脾胃虚証に食積を伴う証に多用される。また健脾薬と併用してその胃腸障害を防ぐ。軽症には単味の服用も可。 |
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回乳 |
乳汁の分泌を抑制する。断乳や乳汁鬱滞による乳房脹満感(痛)などに使用される。単味の使用も可。神麹などと用いる。 |
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疏肝解鬱 |
肝気を流通に流す。胸部季肋部脹満感・曖気・めまいなどを呈する 肝鬱気滞証や肝陽上亢証・肝脾不和証の補助薬として使用される。肝気鬱結に食積を伴う証によく適する。川楝子・芍薬・菌蔯蒿などと用いる。〔代表方剤:鎮肝熄風湯〕 |
[注意点]授乳期には禁忌。
(管理No.01-133)
白蘚皮
[基原]ミカン科ハクセンの根皮。
[性・味]寒・苦
[帰経]脾・胃
[用法]5~10g。外用も可。
瘙痒を伴う湿熱瘡瘍の常用薬。
清熱解毒 ・除湿止痒 |
清熱解毒と同時に湿を除き祛風して瘙痒感を緩和する。 (2)湿熱黄疸・湿熱痺症などにも使用される。 |
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(管理No.01-134)
白扁豆
[基原]マメ科フジマメの成熟種子。
[別名]扁豆
[性・味]微温・甘・苦
[帰経]脾・胃
[用法]10~30g。丸・散剤も可。炒白扁豆は健脾止瀉に,生白扁豆は祛暑化湿に優れる。
補気健脾力は山薬・白朮に劣るが,祛暑化湿作用を有する補気薬。
健脾化湿 |
脾胃の気を補いその機能を高めて補気する。だが健脾カ・燥性ともに弱く,化湿するも乾燥させず温和である。芳香性があり,湿を除き脾胃機能を調整する(化湿和中)。白朮・人参などの補助薬として使用される 。 |
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祛暑化湿 |
健脾するとともによく暑湿の邪を除く。夏季の暑湿邪による腹痛下痢・嘔吐・腹部脹満感などに使用される。単品を服用してもよい。香薷・厚朴・藿香などと用いる。〔代表方剤:香薷散〕。 |
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解酒毒 |
解毒作用があり酒毒・食肉中毒などに使用される。 |
(管理No.01-135)
麦門冬
[基原]ユリ科ジャノヒゲの塊根。
[性・味]寒・甘・微苦
[帰経]心・肺・胃
[用法]10~15g。丸・散・膏剤にも使用可。
よく肺陰を滋養する。天門冬に比べ滋陰作用は弱いが,養心陰・清心火・養胃陰作用を有する。
養陰潤肺 |
肺陰を滋養し肺を潤すが,天門冬に比べ滋陰作用は弱い。肺陰虚証や肺燥,肺熱,肺癆などによる乾咳・無痰や粘性少痰・血痰・喀出困難な痰,少苔・無苔・乾燥舌・紅色舌など,天門冬と同様の病態症状に使用される。そのほか,気逆性の乾咳にも使用される。 |
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養胃生津 |
胃陰を潤し津液を生じよみがえらせ,胃熱を去り,渇を止める。薬性が温和で,胃陰を補う良品。 |
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養心陰・ 清心火 |
心陰を滋養し心火を冷まし,心神を安定させる。 |
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他 |
(1)腸を潤し排便を促進する(軽度の潤腸通便)。だが薬力は天門冬より弱く,他の補助薬として使用される。熱性燥性の腸燥便秘に使用される。玄参・乾地黄などと用いる。〔代表方剤:増液湯〕 |
[注意点]風寒感冒や風寒,湿性の咳嗽,脾胃虚寒証の下痢には禁忌。
(管理No.01-136)
巴戟天
[基原]アカネ科ヤエヤマアオキの根。
[性・味]温・辛・甘
[帰経]腎
[用法]10~15g。丸・散剤も可。
潤性の温腎壮陽薬。肉蓯蓉・鎖陽と同時によく使用される。祛風寒湿作用を兼ねる温腎壮陽薬。
温腎壮陽 |
よく腎陽を補い先天の気を盛んにする。さらに壮陽作用を有し,精血を補う。潤性であり乾燥させず傷陰の弊害が少ない。腎陽虚の陽萎・不妊・腰痛・腰下肢の脱力倦怠感などに使用される。また腎陽虚による尿失禁などにも使用される。 |
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強健筋骨 ・祛風湿 |
腎陽を補いながら筋骨を強健にし,風湿を除き痺痛を止める 。腎陽虚を伴う下半身の風湿寒痺証に多用される。腰下肢関節痛・筋肉痛・屈伸不利など。杜仲・牛膝・五加皮・肉桂・附子などと用いる。〔代表方剤:金剛丸〕。 |
[注意点]陰虚火旺や湿熱の痺証には使用しない。
(管理No.01-137)
馬歯莧
[基原]スベリヒユ科スベリヒユの全草
[性・味]寒・酸
[帰経]大腸
[用法]9~15g。下痢には多量(30~60g)に使用する。食用も可。
薬性が温和な湿熱下痢の常用薬。酸性であり,地錦草に比べ止痢作用に優れる。
清熱解毒 ・止痢 |
清熱解毒とともに止痢作用があり,胃腸の湿熱毒邪を冷まし下痢を止 める(清腸止瀉)。 |
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涼血止血 ・通淋 |
血熱を冷まし止血し,利尿通淋する。 |
[注意点]脾虚や寒証の下痢には禁忌。
(管理No.01-138)
薄荷
[基原]シソ科ハッカの地上部や葉。
[性・味]涼・辛
[帰経]肺・肝
[用法] 2~6g。芳香性であり後下する 。
風熱の邪を透散する。芳香性で軽く浮いて上昇し頭部疾患に多用される。
発散風熱 |
最も一般的な辛涼解表薬で,風熱を散じる。辛涼解表薬中,発汗解表力は最も強い。風熱表証の熱感・軽度悪寒・咽頭痛・微発汗などに使用される。 原則として実証に使用される。荊芥・金銀花・連翹・牛蒡子などと用いる。〔代表方剤:銀翹散,桑菊飲〕。 |
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清頭目 |
頭や眼の熱を冷まし明瞭にする。 |
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清利咽頭 |
咽頭の熱を冷まし流暢に呼吸させる。風熱による咽頭の発赤腫脹・疼痛・嗄声などに使用される。牛蒡子・桔梗・荊芥など。〔代表方剤:六味湯〕。 |
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透疹 |
風熱を散じるとともに熱毒を排出することにより,透疹させる。麻疹の初期や湿疹が出切らないもの,風熱の発疹などに使用される。止痒作用もある。蟬退・牛蒡子・荊芥・葛根などと用いる。〔代表方剤:透疹湯,竹葉柳蒡湯〕。 |
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疏肝解鬱 |
芳香発散性により気を巡らせて鬱を開く。薬力は弱い。肝気鬱結証に対し補助的に使用される。柴胡・白芍・当帰などと用いる。〔代表方剤:加味逍遙散〕。 |
[注意点]発汗性が強く,陰虚火旺証や表虚証の自汗には禁忌。
(管理No.01-139)
薏苡仁・はと麦
[基原]イネ科ハトムギの成熟種子。
[別名]薏米・苡仁
[性・味]微寒・甘・淡
[帰経]脾・胃・肺
[用法]10~30g。丸・散剤に可。食品としても使用可。炒薏苡仁は健脾作用に優れる。
薬性が温和で補益性があり,各種の作用を有する利水滲湿薬。
利湿健脾 |
湿を除くと同時に脾の機能を高める(健脾)。脾虚証に湿が加わっ た病態(脾虚湿盛)に多用される。作用は茯苓と類似し,標本兼治の薬物といえる。 |
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利湿除痺 |
利湿と同時に筋を緩め(舒筋)関節や筋肉痛を緩和する 。風湿痺証 や筋の痙攣(転筋)に使用される。特に湿邪が強い病態に適する。 |
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清熱排膿 |
熱を冷まし膿を排泄する。肺癰・腸癰・皮膚化膿症などに使用される。また生肌作用も有する。 |
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他 |
単味を尋常性疣贅(イボ)に使用する。 |
(管理No.01-140)
半夏
[基原]サトイモ科カラスビシャクの塊茎。
[性・味]温・辛
[帰経]脾・胃・肺
[用法]5~10g。内服には主に製半夏を使用する。外用も可。
化痰の重要薬。天南星とともによく配合される。治痰の要薬といわれ,湿痰を除去し和胃降逆止嘔する化痰の重要薬。天南星に比べ体内,特に脾胃の湿痰をよく除き,かつ止嘔作用を有する。
燥湿化痰 |
温燥の性質があり,よく化痰しかつ咳嗽を止める 。痰湿による多痰・咳嗽・胸部痞塞感・呼吸困難などに使用される。主に寒性の湿痰に使用するが,炮製や清熱化痰薬との配合で熱痰にも用いられる。 |
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降逆止嘔 |
化痰と同時に胃気を降ろし(胃気降逆),悪心・嘔吐を止める。止嘔の重要薬。痰飲による嘔吐,特に顔面蒼白・腹部喜温・淡白舌などの寒性痰飲による嘔吐に適する。また他薬との配合で,各種病態の悪心・嘔吐に使用される。 |
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消痞散結 |
化痰と同時に気も巡らせ,痞を除き痰結を散じる。痰と気が結び停滞した胸部胃部の痞塞感・梅核気・癭瘤・痰核などに使用される。厚朴・蘇梗・薄荷などと用いる。〔代表方剤:半夏厚朴湯〕。 |
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消腫止痛 |
腫脹や腫瘍をやわらげ止痛する。皮膚化膿症・毒蛇の咬傷などに使用される。生半夏や新鮮な半夏の粉末を塗布する。毒性があり主に炮製して使用される。 |
[注意点]温燥の性質があり,陰虚の乾咳・津液不足による口渇,熱証には禁忌あるいは慎重に使用する。伝統的に烏頭とは相反。
(管理No.01-141)
板藍根
[基原]アブラナ科ホソバタイセイなどの根。
[性・味]寒・苦
[帰経]心・胃
[用法]10~15g。散剤も可。
解毒の重要薬。大青葉と同様の薬効だが,解毒力にやや優れ頭部疾患に多用される。
清熱解毒 ・涼血利咽 |
強力な清熱解毒作用を有する 。寒性が強く,よく気血の熱を冷まし斑を消失させる。燥性は弱い。特に熱邪が強い温病気分証,熱邪が営・血分に深入したときに多用される。衛分証にも用いられる。皮膚化膿症・ウイルス性肺炎などもに使用される。大頭痙(顔面丹毒)・耳下腺炎・咽頭炎・扁桃腺炎などの咽頭頭部疾患に多用される。そのほか,温病の気・血・営分証の高熱・煩躁・譫言・発斑・皮下出血などに使用される。 |
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(管理No.01-142)
白朮
[基原]キク科オオバナオケラの根茎。
[性・味]温・甘・苦
[帰経]脾・胃
[用法]5~15g。通便には多量(~60g)を使用。生白朮は燥湿利水に,炒白朮は補気健脾に,炒焦白朮は健脾止瀉にそれぞれ優れる。
最も一般的かつ重要な補気健脾薬。山薬・白扁豆とともによく配合される。良好な補気健脾作用を有する。補気健脾の重要薬。白朮・山薬・白扁豆の三薬中,最も燥湿健脾作用に優れる。
補気健脾 |
脾胃の気をよく補いその機能を高めてよく補気し,またよく燥湿する。補気健牌の基本的かつ重要薬で,一般的な脾虚証に多用される。 |
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健脾・ 燥湿利水 |
燥性があり,健脾作用により体内停滞の湿・痰飲を除く。 |
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補気止汗 |
補気健脾作用により固表止汗する。気虚の自汗や陰虚の盗汗などに使用される。単味を服用してもよい。黄耆・浮小麦・防風・牡蛎などと用いる。〔代表方剤:玉屏風散〕。 |
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補気安胎 |
補気することで流産を防止する(安胎)。脾虚証や気虚証などの胎動不安に使用される。 |
[注意点]燥湿作用があり傷陰しやすい。そのため,陰虚内熱証や陰虚証には使用しない。
(管理No.01-143)
百合
[基原]ユリ科ユリなどの鱗茎の鱗片。
[性・味]微寒・甘・微苦
[帰経]心・肺
[用法]10~30g。食用も可。
安神作用を有する滋陰潤肺止咳薬。
養陰潤肺・ 止咳 |
肺陰を滋養し肺気を降ろし,肺熱を冷まして止咳する 。肺陰虚証や陰虚内熱による慢性咳嗽(肺癆咳嗽)に多用される。乾咳・粘性少痰や無痰・喀血,乾燥舌・少苔無苔などの症状に用いられる。 |
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清心安神 |
心を潤し熱を除き,心神を安定させる 。熱病後期の余熱や心陰虚内熱などによる心神不安証の,不眠多夢・動悸・虚熱煩躁・焦燥不安感・異常行動・精神不安などに使用される。知母・生地黄・酸棗仁などと用いる。〔代表方剤:百合地黄湯,百合知母湯〕。 |
[注意点]寒証の下痢には禁忌。
(管理No.01-144)
枇杷葉
[基原]バラ科ビワの葉。
[性・味]微寒・苦・辛
[帰経]肺・胃
[用法]5~10g。蜜炙枇杷葉は止咳に,生姜汁で炙ると止嘔作用に優れる。
寒性の止咳降気薬。肺と胃の熱を冷まし降ろす。桑白皮に比べ降気作用に優れ,肺熱・肺燥の咳嗽に多用される。
清肺止嗽 |
降気作用に優れ,肺熱を冷まし肺気を降ろすことで止咳し呼吸困難を静める(平喘)。風熱や燥熱の粘稠黄色痰・黄色少痰,黄膩苔などに多用される。 |
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清胃止嘔 |
胃熱を冷まし,胃気の上逆を抑える 。 |
[注意点]寒性の咳嗽,胃寒性の嘔吐には使用しない。
(管理No.01-145)
檳榔子
[基原]ヤシ科ビンロウの成熟種子。
[別名]大腹子・海南子
[性・味]温・辛・苦
[帰経]胃・大腸
[用法]6~15g。条虫・姜片虫治療には多量(60~90g)を使用する。
行気し凝固した痰湿(有形の痰)を除き,優れた消食作用を有する駆虫薬。大腹皮に比べ行気力・化痰力に優れる。
駆虫 |
条虫・姜片虫・蛔虫・蟯虫などの広範囲な寄生虫に使用される 。特に条虫・姜片虫に適する。単味粉末の服用も可。 |
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行気消積 |
よく気を巡らせ消化を促進し,痰湿の停滞を除く。軽度の瀉下作用もある。大腹皮と同様に,気と湿の停滞による病態に使用される。 |
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利水化湿 |
凝固した痰湿を除き,利尿を図る。実証の浮腫や寒湿証による脚気・ 下肢浮腫・下肢腫脹疼痛などに使用される。 |
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他 |
截瘧作用もあり,瘧疾に使用される。常山・草果などと用いる。〔代表方剤:截瘧七宝飲〕。 |
[注意点]大腹皮と同様に,気を消耗しやすいので気虚証には禁忌。脾虚証の下痢には使用しない。
(管理No.01-146)
茯苓
[基原]サルノコシカケ科マツホドの菌核。
[性・味]平・甘・淡
[帰経]心・脾・腎
[用法]10~15g。朱茯苓(朱砂で撹拌)は安神作用に優れる。
健脾作用を有する薬性温和で広範囲に使用可能な利湿の重要薬 。利尿力は茯苓・猪苓・沢瀉の三薬中で一番弱い 。
利水滲湿 |
体内の水湿や痰飲を利水により取り除く。利水するも正気を損傷せず,体表・体内を問わず痰・湿・飲のいずれの病態にも使用される。また平性で虚・実・寒・熱各証に使用可能。健脾作用があり,特に脾虚のため湿を生じた病態(脾虚生湿)によく適する。水湿や痰飲停留の実証のほか,虚証にも使用される。 |
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健脾利湿 |
湿の除去と同時に脾の機能を高める(健脾)。脾虚証に湿が加わった 病態(脾虚湿盛)に多用される。標本兼治薬といえるが,健脾作用はあまり強くなく,他の健脾薬の補助として使用される。下痢・食欲不振・腹鳴・倦怠感などの症状に使用される。人参・白朮・陳皮・半夏・縮砂などと用いる。〔代表方剤:四君子湯,六君子湯,啓脾湯,参苓白朮散〕。 |
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安神 |
心神を安定させる。脾虚や痰飲による心神不安の動悸・不眠・不安感などに使用される。 |
(管理No.01-147)
附子
[基原]キンポウゲ科カラトリカブトの子根。
[性・味]大熱・大辛
[帰経]腎・心・脾
[用法]3~15g。一般には,炮製した附子(炮附子)を使用する。生附子や炮附子を多量に使用するときには,先煎(30~60分)により毒性を軽減する 。
陽気を温め鼓舞する。温裏の重要薬。烏頭・肉桂とよく同時に使用される。全身の陽気を温補する。回陽救逆や各種陽虚証,寒性疼痛の重要治療薬。
回陽救逆 |
心陽を助けて脈をよく通じ(通脈),腎陽を温め補うこと(益火)で喪失しつつある元陽の力を挽回する。亡陽証の重要薬。四肢厥冷・冷汗・微呼吸・顔面蒼白・脈微などの亡陽証に使用される。 |
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温陽 |
よく陽気を温め補い高める。特に腎陽,次いで心陽をよく補う。各種の陽虚証に使用される。また虚喘などにも使用される。 |
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散寒止痛 |
経絡を温め寒を除き止痛する。特に寒湿除去作用に優れる。寒湿による痺証に多用される。桂枝・白朮など。〔代表方剤:桂枝加朮附湯,甘草附子湯〕。 |
[注意点]毒性があり中毒に注意する。陰虚火旺・真熱仮寒などには禁忌。
(管理No.01-148)
仏手柑
[基原]ミカン科ブッシュカンの成熟果実。
[別名]仏手
[性・味]温・辛・苦
[帰経]肝・脾・肺
[用法]5~10g。
香櫞に比べ行気力・化痰力は弱いが,薬性は温和で脾胃の気をよく調理する。
行気止痛 |
脾・胃・肝の気(特に脾胃)を巡らせ止痛する。だが止痛力は強くない。 芳香性で薬性は温和,肝胃気滞証の軽症に多用される。肝胃不和による上腹部脹満感(痛)・噯気・悪心・嘔吐・食欲不振などに使用される。そのほか,脾胃気滞証・肝気鬱結証などにも用いられる。蘇梗・陳皮・香附子・木香・枳実などと用いる。 |
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行気化痰 |
行気により痰を除く。慢性痰湿阻肺の多痰・咳嗽・胸部痞塞感・胸痛・呼吸困難などに使用される。感冒初期にはあまり使用されない。枇杷葉・鬱金などと用いる。 |
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他 |
裏急後重を伴う下痢にも使用される。 |
[注意点]陰虚火旺には慎重に使用する。
(管理No.01-149)
紅花
[基原]キク科ベニバナの管状花。
[性・味]温・辛
[帰経]心・肝
[用法]3~10g。活血通経として使用時,酒を加えて煎じてもよい。
広範囲に使用される活血祛瘀の重要常用薬。桃仁とともによく配合される。養血作用も有し通経作用に優れる活血薬。桃仁に比べ,通絡作用に優れ外傷打撲・風湿痺証・皮膚湿疹などの外表四肢の疾患に多用される。温性であり寒性瘀血証により適する。
活血通経 |
活血すると同時に経絡の流通を良好にし,月経調整作用(調経)を有する。また軽度の補血作用もある。瘀血証の常用薬。 |
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祛瘀止痛 |
活血することで止痛する 。瘀血による外傷打撲・胸痛(狭心症など)・風湿痺証の関節痛など各種疼痛に使用される。 |
[注意点]過多月経には禁忌。
(管理No.01-150)
防已
[基原]ツヅラフジ科シマハスノハカズラの根。
[性・味]寒・苦・辛
[帰経]膀胱
[用法]5~10g。
寒性の祛風湿止痛薬。祛湿作用に優れ,浮腫・風湿熱痺証の重要薬。よく下部に作用する。豨蘞草に比べ祛湿作用に優れる。
祛風湿 |
祛湿作用に優れ,祛風止痛作用を有し,身体下部によく作用する。 |
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利水消腫 |
下行性があり,水分を除き熱を冷ます。湿熱の浮腫・腹水・肺内水腫・関節水腫などに使用される。特に下肢の浮腫によく適する。虚・実,寒・熱 の各証に使用可能。 |
[注意点]苦寒性が比較的強く,多量の使用で胃を損傷するおそれがある。そのため,多量には使用しない。また脾胃虚証,無湿熱証,陰虚証には禁忌。
(管理No.01-151)
茅根
[基原]イネ科チガヤの根茎。
[別名]白茅根
[性・味]寒・甘
[帰経]肺・胃・膀胱
[用法]15~30g。薬効は新鮮品が優れる(30~60g)。
利尿作用と生津作用を有する涼血止血薬。利水するも津液を消耗せず,熱証に津液不足を伴う証に適する 。
涼血止血 |
血熱妄行による各種の出血証に使用される。 |
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清熱利尿 |
熱を冷まし利尿し,熱を尿より排泄する。生津作用もあり,陰液消耗(傷陰)の弊害が少ない。熱淋などの排尿痛・小便不利や浮腫・湿熱黄疸などに使用される。熱淋には,木通・冬葵子・石葦・車前子などと用いる。〔代表方剤:茅根飲子〕。 |
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清肺胃熱 ・生津 |
肺胃の鬱熱を除くとともに津液を蘇らせる。寒性だが胃腸障害は少ない。熱病後期の陰液不足による口渇,胃熱による悪心・嘔吐・吃逆,肺熱の咳嗽・乾咳・呼吸困難などに使用される。 |
[注意点]脾胃虚寒証にば慎重に使用する。
(管理No.01-152)
防風
[基原]セリ科ボウフウの根茎。
[性・味]温・辛・甘
[帰経]膀胱・肝・脾
[用法]13 ~10g。生防風は解表や止痛に,炒防風は腹痛や止瀉に優れる。
全身を巡り,風邪による緒証を緩和する。祛風の重要薬。
祛風 |
強い祛風作用を有し,風邪による広範囲の疾患に使用される。祛風薬の多くは温性・燥性であるのに対し,微温でかつ燥性は弱い。これより“風薬中の潤薬”とも呼ばれる。寒熱両証に使用可能。 (1)祛風解表:風邪を発散し解表する。発汗力は弱い。 |
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止瀉 |
肝牌不和の下痢や腹痛に使用される。白芍・白朮・陳皮などと用いる。〔痛瀉要方〕。 |
[注意点]陰虚火旺,血虚には使用しない。日本で使用されている浜防風とは,作用が異なるので注意が必要。
(管理No.01-153)
蒲黄
[基原]ガマ科ヒメガマなどの成熟花粉。
[性・味]平・甘
[帰経]肝・心包
[用法]5 ~10g。包煎。冲服・外用も可。炒蒲黄は止血に,生蒲黄は化瘀止血に優れる。
活血止痛・利尿作用を有する収斂止血薬。
化瘀止血 |
よく収斂止血し,よく血を巡らせる。そのため,止血しても血を停滞させない。 |
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化瘀止痛 |
瘀血を除き止痛する。寒熱両証に使用可能。瘀血証による胸痛・腹痛・月経痛・産後の疼痛などに使用される。 |
[注意点]子宮収縮作用があり妊婦には禁忌。
(管理No.01-154)
蒲公英
[基原]キク科モウコタンポポなどの全草。
[性・味]寒・苦・甘
[帰経]肝・胃
[用法]10~30g。外用も可。
瘡瘍の重要薬。紫花地丁とともに配合される。紫花地丁に比べ癰の治療に優れ,気をよく巡らせて散結する。また清熱利尿作用を有す。
清熱解毒・ 消癰散結 |
瘡瘍の熱毒を冷まし取り除き,化膿を治癒させ(消癰),腫脹硬結を散じる(散結)。皮膚化膿症・乳癰(乳腺炎)・腸癰(虫垂炎など)・丹毒などに使用される。 特に癰の治療に優れ,乳癰の腫脹・疼痛・乳汁分泌不利などに多用される。乳癰には外用も可。そのほか,咽頭発赤腫脹などにも使用される。咽頭発赤腫脹には,板藍根・玄参などと用いる。 |
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清肝明目 |
肝火を冷まし(清肝),視力を明瞭にする(明目)。肝火上炎による眼球結膜充血・眼痛などに使用される。菊花・夏枯草・黄芩などと用いる。〔代表方剤:蒲公英湯〕。 |
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清熱利尿 |
湿熱を冷まし利尿する。熱淋の排尿痛・排尿困難,湿熱黄疸,下痢,下血などに使用される。 |
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清胃止痛 |
食積化熱の胃痛に使用される。 |
[注意点]多量の使用で下痢となることもある。
(管理No.01-155)
牡丹皮
[基原]ボタン科ボタンの根皮。
[別名]丹皮
[性・味]寒・苦・辛
[帰経]心・肝・腎
[用法]5~10g。生牡丹皮は清熱涼血,炒炭牡丹皮は止血,酒炒牡丹皮は活血にそれぞれ優れる。
活血作用も兼ねる清熱涼血薬。血熱瘀血証の常用薬。赤芍薬とよく同時に配合される。赤芍薬に比べ清熱涼血作用に優れる。清虚熱作用もあり,虚証実証ともに使用可。
清熱涼血 |
1)血熱を冷まし,よく活血し,血熱の妄行を防ぐ。赤芍薬に比べ血熱をよく冷ます。以下の温病や雑病の血熱証に使用される。 |
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活血化瘀 |
活血して瘀血を除き血熱を冷ます。以下の熱性瘀血証に使用される。 特に血と熱がより結びついた状態(血熱凝結)に多用される。 |
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清肝瀉火 |
肝火を冷ます。肝鬱化火や虚実錯雑証の肝陽上亢などの眼球眼瞼充血・眼痛・熱感頭痛・ほてり感などに使用される。山梔子・柴胡・白芍などと用いる。〔代表方剤:加味逍遙散〕。 |
[注意点]血虚有寒証や過多月経には慎重に使用する。
(管理No.01-156)
牡蛎
[基原]イタボガキ科マガキの貝殻。
[性・味]微寒・鹹・澁
[帰経]肝・腎
[用法]15~30g。砕いて先煎。生牡蛎は平肝潜陽安神作用に,煅牡蛎は収斂固澁と制酸作用に優れる。
安神,散結,固澁作用をも有する平肝潜陽薬。平肝潜陽は石決明に次いで強い。
平肝潜陽・ 安神 |
平肝潜陽とともに心神を安定させる作用を有する。動悸・不眠・煩躁不安などの心神不安を伴う肝陽上亢証に多用される。 |
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軟堅散結 |
結実を軟らかくし散じる。痰核・腫瘍・瘰癧・癭瘤などに使用される。微寒性のため痰火鬱結の病態に適する。 |
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収斂固澁 |
固澁作用があり,自汗・盗汗・遺精・帯下・性器出血(崩漏)・慢性下痢などに使用される。 |
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制酸 |
制酸作用や止痛止血作用があり,胃酸過多の胃痛・胸やけ・呑酸・吐血 などに使用される。煅牡蛎がよく使用される。〔代表方剤:安中散〕。 |
[注意点]収斂作用があるため,湿熱の実証には禁忌。また脾虚証に使用すると下痢や胃痛などを起こすことがある。
(管理No.01-157)