薬草辞典-は行

 

敗醬はいしょう

はいしょうこん

[基原]オミナエシ科オミナエシやオトコエシなどの全草や根。

[別名]全草は敗醬草はいしょうそう。根は敗醬根はいしょうこん

[性・味]微寒・辛・苦

[帰経]大腸・肝

[用法]敗醬草:6~15g。敗醤根:3~20g。外用も可。

活血かっけつ作用を有する清熱解毒薬せいねつげどくやく腸癰ちょうよう治療の重要薬。有膿・無膿を問わず応用してよい。

清熱解毒・
排膿

熱毒を冷ますとともに湿を除き,瘀血を去る。熱毒と湿・気・血が結び出現した腸癰に多用される。そのほか,排膿作用を有し,配合薬により皮膚などの化膿症の初期から化膿期まで使用される。肺癰(肺炎や熱邪蘊肺証)にも使用される。塗布も可。
①未排膿の腸癰の初期には,大黄・紅藤・金銀花・牡丹皮などと用いる。
②膿あるも無熱の病症には,薏苡仁・附子などと用いる。〔代表方剤:薏苡附子敗醬散〕
③熱毒が盛んな病症には,金銀花・連翹・黄芩などと用いる。
④肺癰には,黄芩・魚腥草・桔梗などと用いる。

活血化瘀

紅藤と同様に,血を巡らせ疼痛を去る。瘀血による産後の腹痛や月経痛・胸腹疼痛などに使用される。単味服用も可。当帰・川芎・五霊脂・香附子などと用いる。

[注意点]血瘀であっても熱毒によらない場合には用いない。

(管理No.01-131)

 

貝母ばいも

ばいも

[基原]ユリ科アミガサユリ属植物の鱗茎。

[性・味]平(川貝母)・寒(浙貝母)・甘(川貝母せんばいも)・苦(浙貝母せきばいも

[帰経]肺・心

[用法]3~5g。粉末も可 (1~1.5g/回)。川貝母は高値であり,粉末で服用してもよい。

寒性かんせい潤性じゅんせいがあり,清熱潤燥せいねつじゅんそう作用を有し,熱痰ねつたん燥痰そうたんともに使用可能な化痰薬かたんやく栝楼かろに比べ清熱化痰せいねつかたん作用に優れる。

清熱化痰
・止咳


よく肺熱を冷まし,痰を除去し止咳する。潤性・寒性は貝母の種類によって異なる。栝楼と同様に,肺熱鬱滞による粘性痰・黄色痰・乾燥黄膩苔・紅色舌,肺の津液不足や肺陰虚内熱による粘性少痰・喀出困難の痰・咽頭乾燥・少苔や無苔・紅色舌などに使用される。さらに,外感風熱の咳嗽にも用いられる。
①肺熱咳嗽(浙貝母が適する)には,栝楼・知母・桑白皮などと用いる。〔代表方剤:清肺湯,二母散〕。
②肺陰虚(川貝母が適する)には,沙参・麦門冬・百合・紫苑などと用いる。〔代表方剤:貝母散,滋陰至宝湯,養陰清肺湯〕。
③痰熱を伴う風熱証の咳嗽には,桑葉・菊花・牛蒡子などと用いる。

清熱散結

熱を冷まし解毒し痰熱などの鬱結や結実を除く。浙貝母が優れる。肺癰・乳癰・腸癰・瘰癧・甲状腺腫(癭瘤)・皮膚化膿症状の初期(未潰) などに使用される。特に初期に使用される。
①瘰癧には,玄参・牡蛎などと用いる。〔代表方剤:消瘰丸〕。
②癭瘤(浙貝母が適する)には,海藻・昆布・半夏・青皮・川芎などと用いる。[代表方剤:海藻玉壺湯〕 。
③皮膚化膿症の初期には,麦門冬・天花粉・金銀花などと用いる。
④肺癰には,薏苡仁・魚腥草・桃仁・桔梗などと用いる。

[注意点]基本的には寒性であり,寒痰証には禁忌。伝統的に烏頭とは相反。

(管理No.01-132)

 

麦芽ばくが

ばくが

[基原]イネ科オオムギの発芽した穂先の果実。

[別名]麦糵ばくげつ

[性・味]平・甘

[帰経]脾・胃・肝

[用法]10~15g。丸・散剤も可。回乳には生麦芽を大量に使用する(30~60g)。生麦芽は健脾開胃,炒麦芽は消食作用に優れる。

和中わちゅう作用を有する消食薬しょうしょくやく山楂子さんざし神麹しんきくに比べ消食力は弱いが,健脾開胃けんぴかいい作用を有する。穀芽こくがに比べ,消食力に優れる。

消食和中

消化力に優れ,消化作用を促進することで脾胃の機能を助ける。特に米・芋・小麦などの澱粉類の消化作用に優れる。食積や脾胃虚証によるもたれ・胃部脹満感・食欲不振,さらには嘔吐などに使用される。特に脾胃虚証に食積を伴う証に多用される。また健脾薬と併用してその胃腸障害を防ぐ。軽症には単味の服用も可。
①食積には穀芽・神麹・鶏内金などと用いる。
②脾胃虚証による食欲不振などには,人参・白朮などと用いる。

回乳

乳汁の分泌を抑制する。断乳や乳汁鬱滞による乳房脹満感(痛)などに使用される。単味の使用も可。神麹などと用いる。

疏肝解鬱

肝気を流通に流す。胸部季肋部脹満感・曖気・めまいなどを呈する 肝鬱気滞証や肝陽上亢証・肝脾不和証の補助薬として使用される。肝気鬱結に食積を伴う証によく適する。川楝子・芍薬・菌蔯蒿などと用いる。〔代表方剤:鎮肝熄風湯〕

[注意点]授乳期には禁忌。

(管理No.01-133)

 

白蘚皮はくせんぴ

はくせんぴ

[基原]ミカン科ハクセンの根皮。

[性・味]寒・苦

[帰経]脾・胃

[用法]5~10g。外用も可。

瘙痒そうようを伴う湿熱瘡瘍しつねつそうようの常用薬。

清熱解毒
・除湿止痒


清熱解毒と同時に湿を除き祛風して瘙痒感を緩和する。
(1) 瘙痒感・糜爛・黄色の滲出液などを伴う湿熱の湿疹や皮膚化膿症に多用され る。そのほか,風疹・陰部湿疹・陰部瘙痒症・疥癬などにも用いられる。煎液の外洗も可。苦参・蒼朮・地膚子・防風などと用いる。

(2)湿熱黄疸・湿熱痺症などにも使用される。

(管理No.01-134)

 

白扁豆はくへんず

はくへんず

[基原]マメ科フジマメの成熟種子。

[別名]扁豆へんず

[性・味]微温・甘・苦

[帰経]脾・胃

[用法]10~30g。丸・散剤も可。炒白扁豆は健脾止瀉に,生白扁豆は祛暑化湿に優れる。

補気健脾力ほきけんぴりょく山薬さんやく白朮びゃくじゅつに劣るが,祛暑化湿きょしょかしつ作用を有する補気薬ほきやく

健脾化湿

脾胃の気を補いその機能を高めて補気する。だが健脾カ・燥性ともに弱く,化湿するも乾燥させず温和である。芳香性があり,湿を除き脾胃機能を調整する(化湿和中)。白朮・人参などの補助薬として使用される 。
(1)湿証を伴う脾虚証に多用される。左記病態の下痢・食欲不振・身体の重だるさ,さらにもたれ・胃部脹満感・倦怠感・顔色不良などに使用される。慢性の下痢には,白朮・山薬・人参・茯苓・陳皮・薏苡仁・砂仁などと用いる。〔代表方剤:啓脾湯 ,参苓白朮散〕。
(2)脾虚証による白色や赤色帯下・倦怠感,さらに混濁尿・頻尿などに使用される。白朮・芡実・烏賊骨などと用いる。

祛暑化湿

健脾するとともによく暑湿の邪を除く。夏季の暑湿邪による腹痛下痢・嘔吐・腹部脹満感などに使用される。単品を服用してもよい。香薷・厚朴・藿香などと用いる。〔代表方剤:香薷散〕。

解酒毒

解毒作用があり酒毒・食肉中毒などに使用される。
①酒毒には,葛花・砂仁・白豆蔲などと用いる。
②フグ毒には,芦根などと用いる。

(管理No.01-135)

 

麦門冬ばくもんどう

ばくもんどう

[基原]ユリ科ジャノヒゲの塊根。

[性・味]寒・甘・微苦

[帰経]心・肺・胃

[用法]10~15g。丸・散・膏剤にも使用可。

よく肺陰はいいんを滋養する。天門冬てんもんどうに比べ滋陰じいん作用は弱いが,養心陰ようしんいん清心火せいしんか養胃陰よういいん作用を有する。

養陰潤肺

肺陰を滋養し肺を潤すが,天門冬に比べ滋陰作用は弱い。肺陰虚証や肺燥,肺熱,肺癆などによる乾咳・無痰や粘性少痰・血痰・喀出困難な痰,少苔・無苔・乾燥舌・紅色舌など,天門冬と同様の病態症状に使用される。そのほか,気逆性の乾咳にも使用される。
①肺燥の咳嗽には,天門冬・桑葉・杏仁・阿膠・知母などと用いる。〔代表方剤:麦門冬湯,滋陰降火湯,滋陰至宝湯,二冬膏,清燥救肺湯〕
②肺癆の咳嗽・喀血には,百合・沙参・生地黄などと用いる。

養胃生津

胃陰を潤し津液を生じよみがえらせ,胃熱を去り,渇を止める。薬性が温和で,胃陰を補う良品。
(1)外感熱病後期や慢性疾患などの胃陰虚証に使用される。口渇・ロ燥・紅舌・無苔や少苔などの症状。玉竹・沙参・乾地黄などと用いる。〔代表方剤:益胃湯〕
(2)消渇病に使用される。特に上・中消に多用される。烏梅・括楼根・生地黄などと用いる。

養心陰・
清心火

心陰を滋養し心火を冷まし,心神を安定させる。
(1)心陰虚や心経熱証による不眠・心煩・動悸・ほてり・盗汗などに使用される。生地黄・酸棗仁・玄参・五味子などと用いる。〔代表方剤:天王補心丹〕
(2)気陰両虚証の息切れ・倦怠感・動悸・不眠・ロ渇などにも使用される。人参・五味子・竹葉・人参などと用いる。〔代表方剤:生脈散,清暑益気湯,灸甘草湯,竹葉石膏湯〕
(3)温熱邪の心営に入ったための身熱煩躁・意識障害・乾燥絳舌などの症状に使用される。黄連・生地黄・竹葉・丹参などと用いる。〔代表方剤:清営湯〕。

(1)腸を潤し排便を促進する(軽度の潤腸通便)。だが薬力は天門冬より弱く,他の補助薬として使用される。熱性燥性の腸燥便秘に使用される。玄参・乾地黄などと用いる。〔代表方剤:増液湯〕
(2)清熱作用があり,陰虚鬱熱による咽頭痛・咽頭発赤・咽頭炎・慢性扁桃腺炎などに使用される。生地黄・貝母・玄参・牡丹皮・百僵蚕などと用いる。〔代表方剤:養陰清肺湯〕

[注意点]風寒感冒や風寒,湿性の咳嗽,脾胃虚寒証の下痢には禁忌。

(管理No.01-136)

 

巴戟天はげきてん

はげきてん

[基原]アカネ科ヤエヤマアオキの根。

[性・味]温・辛・甘

[帰経]腎

[用法]10~15g。丸・散剤も可。

潤性じゅんせい温腎壮陽薬おんじんそうようやく肉蓯蓉にくじゅよう鎖陽さようと同時によく使用される。祛風寒湿きょふうかんしつ作用を兼ねる温腎壮陽薬おんじんそうようやく

温腎壮陽

よく腎陽を補い先天の気を盛んにする。さらに壮陽作用を有し,精血を補う。潤性であり乾燥させず傷陰の弊害が少ない。腎陽虚の陽萎・不妊・腰痛・腰下肢の脱力倦怠感などに使用される。また腎陽虚による尿失禁などにも使用される。
①陽萎・不妊には人参・肉蓯蓉・菟絲子などと用いる。〔代表方剤:巴戟丸〕。
②尿失禁には,益智仁・桑螵蛸などと用いる。
③月経失調・小腹部冷感・淡白色帯下などには,肉桂・呉茱萸・高良姜などと用いる。〔代表方剤:二仙湯〕。

強健筋骨
・祛風湿

腎陽を補いながら筋骨を強健にし,風湿を除き痺痛を止める 。腎陽虚を伴う下半身の風湿寒痺証に多用される。腰下肢関節痛・筋肉痛・屈伸不利など。杜仲・牛膝・五加皮・肉桂・附子などと用いる。〔代表方剤:金剛丸〕。

[注意点]陰虚火旺や湿熱の痺証には使用しない。

(管理No.01-137)

 

馬歯莧ばしけん

ばしけん

[基原]スベリヒユ科スベリヒユの全草

[性・味]寒・酸

[帰経]大腸

[用法]9~15g。下痢には多量(30~60g)に使用する。食用も可。

薬性が温和な湿熱しつねつ下痢の常用薬。酸性であり,地錦草ちきんそうに比べ止痢作用に優れる。

清熱解毒
・止痢

清熱解毒とともに止痢作用があり,胃腸の湿熱毒邪を冷まし下痢を止 める(清腸止瀉)。
(1)湿熱による下痢・裏急後重や,湿熱と血が結びついた痢疾の膿血便に使用される。地錦草とよく同時に使用される。単味でも可。白頭翁・黄連・黄芩などと用いる。
(2)熱毒の皮膚化膿症・湿疹・痔・瘰癧・毒蛇などの咬傷にも使用される。塗布も可。

涼血止血
・通淋

血熱を冷まし止血し,利尿通淋する。
(1)産後の出血・不正性器出血,熱性赤白色帯下に使用される。帯下には,烏賊骨・樗根皮など。
(2)利尿通淋作用もあり,熱淋・血淋などに使用される。

[注意点]脾虚や寒証の下痢には禁忌。

(管理No.01-138)

 

薄荷はっか

はっか

[基原]シソ科ハッカの地上部や葉。

[性・味]涼・辛

[帰経]肺・肝

[用法] 2~6g。芳香性であり後下する 。

風熱ふうねつの邪を透散とうさんする。芳香性で軽く浮いて上昇し頭部疾患に多用される。

発散風熱

最も一般的な辛涼解表薬で,風熱を散じる。辛涼解表薬中,発汗解表力は最も強い。風熱表証の熱感・軽度悪寒・咽頭痛・微発汗などに使用される。 原則として実証に使用される。荊芥・金銀花・連翹・牛蒡子などと用いる。〔代表方剤:銀翹散,桑菊飲〕。

清頭目

頭や眼の熱を冷まし明瞭にする。
(1)風熱による頭痛や眼球結膜充血(目赤)などに使用される。桑葉・菊花・ 蔓荊子など。〔代表方剤:薄荷湯〕。
(2)風寒表証の頭痛にも補助的に使用される。川芎・荊芥・白芷などと用いる。〔代表方剤:川芎茶調散 〕

清利咽頭

咽頭の熱を冷まし流暢に呼吸させる。風熱による咽頭の発赤腫脹・疼痛・嗄声などに使用される。牛蒡子・桔梗・荊芥など。〔代表方剤:六味湯〕。

透疹

風熱を散じるとともに熱毒を排出することにより,透疹させる。麻疹の初期や湿疹が出切らないもの,風熱の発疹などに使用される。止痒作用もある。蟬退・牛蒡子・荊芥・葛根などと用いる。〔代表方剤:透疹湯,竹葉柳蒡湯〕。

疏肝解鬱

芳香発散性により気を巡らせて鬱を開く。薬力は弱い。肝気鬱結証に対し補助的に使用される。柴胡・白芍・当帰などと用いる。〔代表方剤:加味逍遙散〕。

[注意点]発汗性が強く,陰虚火旺証や表虚証の自汗には禁忌。

(管理No.01-139)

 

薏苡仁よくいにんはと麦

はとむぎ

[基原]イネ科ハトムギの成熟種子。

[別名]薏米よくべい苡仁いにん

[性・味]微寒・甘・淡

[帰経]脾・胃・肺

[用法]10~30g。丸・散剤に可。食品としても使用可。炒薏苡仁は健脾作用に優れる。

薬性が温和で補益性ほえきせいがあり,各種の作用を有する利水滲湿薬りすいしんしつやく

利湿健脾

湿を除くと同時に脾の機能を高める(健脾)。脾虚証に湿が加わっ た病態(脾虚湿盛)に多用される。作用は茯苓と類似し,標本兼治の薬物といえる。
(1)脾虚湿停の下痢・食欲不振などに使用される。人参・白朮・茯苓・山薬などと用いる。〔代表方剤:参苓白朮散〕
(2)水湿停留による浮腫・下肢の重だるさなどに使用される。冬瓜皮・赤小豆・茯苓などと用いる。
(3)湿熱による淋病や湿盛の白色帯下に使用される。
(4)湿邪が強い湿温病気分証の胸部痞塞感・食欲不振・下痢・身体の重だるさ・白膩苔などに使用される。杏仁・白蔲仁・厚朴などと用いる。〔代表方剤:三仁湯〕

利湿除痺

利湿と同時に筋を緩め(舒筋)関節や筋肉痛を緩和する 。風湿痺証 や筋の痙攣(転筋)に使用される。特に湿邪が強い病態に適する。
①湿が強い風湿痺証には,蒼朮・麻黄などと用いる。〔代表方剤:薏苡仁湯〕
②熱性の痺証には地竜・防已・麻黄・杏仁などと用いる。(麻杏薏甘湯,宣痺湯〕
③湿熱下注による下肢浮腫・重だるさ・筋萎縮・しびれなどには,蒼朮・黄柏・牛膝などと用いる。〔代表方剤:四妙散〕
④寒性の痺証には,麻黄・桂枝などと用いる。

清熱排膿

熱を冷まし膿を排泄する。肺癰・腸癰・皮膚化膿症などに使用される。また生肌作用も有する。
①肺癰の咳嗽・膿性痰には,芦根・冬瓜仁・桃仁などと用いる。〔代表方剤:葦茎湯〕
②腸癰には,牡丹皮・桃仁・敗醬草などと用いる。〔代表方剤:腸癰湯 〕

単味を尋常性疣贅(イボ)に使用する。

 

(管理No.01-140)

 

半夏はんげ

はんげ

[基原]サトイモ科カラスビシャクの塊茎。

[性・味]温・辛

[帰経]脾・胃・肺

[用法]5~10g。内服には主に製半夏を使用する。外用も可。

化痰かたんの重要薬。天南星てんなんしょうとともによく配合される。治痰の要薬ちたんのようやくといわれ,湿痰しつたんを除去し和胃降逆止嘔わいこうぎゃくしおうする化痰かたんの重要薬。天南星てんなんしょうに比べ体内,特に脾胃の湿痰しつたんをよく除き,かつ止嘔作用を有する。

燥湿化痰

温燥の性質があり,よく化痰しかつ咳嗽を止める 。痰湿による多痰・咳嗽・胸部痞塞感・呼吸困難などに使用される。主に寒性の湿痰に使用するが,炮製や清熱化痰薬との配合で熱痰にも用いられる。
①痰湿による多痰・胸部痞塞感・胸悶感・四肢の重だるさ・賦苔などには,陳皮・茯苓などと用いる。〔代表方剤:二陳湯〕。
②寒湿による薄い水様性の多量の痰には,細辛・乾姜などと用いる。〔代表方剤:小青竜湯 ,苓甘姜味辛夏仁湯〕。
③脾虚生痰には,人参・白朮・茯苓などと用いる。健脾薬の補助として使用される。〔代表方剤:六君子湯〕。
④痰熱証には,黄芩・知母・瓜萎根・竹筎などと用いる。〔代表方剤:竹筎温胆湯〕。

降逆止嘔

化痰と同時に胃気を降ろし(胃気降逆),悪心・嘔吐を止める。止嘔の重要薬。痰飲による嘔吐,特に顔面蒼白・腹部喜温・淡白舌などの寒性痰飲による嘔吐に適する。また他薬との配合で,各種病態の悪心・嘔吐に使用される。
①生姜と配合し止嘔力を強める。〔代表方剤:小半夏加茯苓湯〕。
②胃寒性の嘔吐には,乾姜・呉茱萸などと用いる。
③胃熱性の嘔吐で黄色吐物・黄膩苔・ロ苦などには,黄連・竹筎などと用いる。〔代表方剤:黄連温胆湯〕。
④胃気虚弱の嘔吐には,人参・白朮・茯苓などと用いる。〔代表方剤:大半夏湯,六君子湯〕。
⑤胃陰不足の嘔吐で乾嘔・ロ燥感・嘈雑感・舌乾燥紅色・少苔無苔などには,麦門冬・石斛・太子参などと用いる。〔代表方剤:麦門冬湯〕。
⑥痰飲による嘔吐で清水を伴う嘔吐・腹鳴・白滑膩苔などには,茯苓・陳皮・白朮などと用いる。〔代表方剤:二陳湯,小半夏加茯苓湯〕。
⑦妊娠の嘔吐には,蘇梗・砂仁や人参・乾姜などと用いる。〔代表方剤:乾姜人参半夏丸〕。
⑧痰飲が頭部に上昇した(上擾)ための嘔吐・頭痛・めまいなどには,白朮・天麻・茯苓などと用いる。〔代表方剤:半夏白朮天麻湯〕。

消痞散結

化痰と同時に気も巡らせ,痞を除き痰結を散じる。痰と気が結び停滞した胸部胃部の痞塞感・梅核気・癭瘤・痰核などに使用される。厚朴・蘇梗・薄荷などと用いる。〔代表方剤:半夏厚朴湯〕。

消腫止痛

腫脹や腫瘍をやわらげ止痛する。皮膚化膿症・毒蛇の咬傷などに使用される。生半夏や新鮮な半夏の粉末を塗布する。毒性があり主に炮製して使用される。

[注意点]温燥の性質があり,陰虚の乾咳・津液不足による口渇,熱証には禁忌あるいは慎重に使用する。伝統的に烏頭とは相反。

(管理No.01-141)

 

板藍根ばんらんこん

ばんらんこん

[基原]アブラナ科ホソバタイセイなどの根。

[性・味]寒・苦

[帰経]心・胃

[用法]10~15g。散剤も可。

解毒の重要薬。大青葉と同様の薬効だが,解毒力にやや優れ頭部疾患に多用される。

清熱解毒
・涼血利咽

強力な清熱解毒作用を有する 。寒性が強く,よく気血の熱を冷まし斑を消失させる。燥性は弱い。特に熱邪が強い温病気分証,熱邪が営・血分に深入したときに多用される。衛分証にも用いられる。皮膚化膿症・ウイルス性肺炎などもに使用される。大頭痙(顔面丹毒)・耳下腺炎・咽頭炎・扁桃腺炎などの咽頭頭部疾患に多用される。そのほか,温病の気・血・営分証の高熱・煩躁・譫言・発斑・皮下出血などに使用される。
①大頭痙には連随・牛蒡子・玄参・薄荷などと用いる。〔代表方剤:普済消毒飲〕。
②外感風熱証や温病気分証の高熱には,荊芥・金銀花・牛蒡子などと用いる。

(管理No.01-142)

 

白朮びゃくじゅつ

びゃくじゅつ

[基原]キク科オオバナオケラの根茎。

[性・味]温・甘・苦

[帰経]脾・胃

[用法]5~15g。通便には多量(~60g)を使用。生白朮は燥湿利水に,炒白朮は補気健脾に,炒焦白朮は健脾止瀉にそれぞれ優れる。

最も一般的かつ重要な補気健脾薬ほきけんぴやく山薬さんやく白扁豆はくへんずとともによく配合される。良好な補気健脾ほきけんぴ作用を有する。補気健脾ほきけんぴの重要薬。白朮びゃくじゅつ山薬さんやく白扁豆はくへんずの三薬中,最も燥湿健脾そうしつけんぴ作用に優れる。

補気健脾

脾胃の気をよく補いその機能を高めてよく補気し,またよく燥湿する。補気健牌の基本的かつ重要薬で,一般的な脾虚証に多用される。
(1)脾虚証の食欲不振・もたれ・胃部脹満感・下痢・倦怠感・顔色不良などに使用される。
①脾虚証には,人参・茯苓・炙甘草などと用いる。[代表方剤:四君子湯,補中益気湯,啓脾湯〕。
②慢性の下痢には,山薬・白扁豆・人参・茯苓・陳皮・薏苡仁・砂仁などと用いる。〔代表方剤:啓脾湯,参苓白朮散〕。
③脾陽虚証で,腹部冷痛・下痢などには,人参・乾姜などと用いる。〔代表方剤:人参湯 〕。
④脾虚食積証のもたれ・心下痞塞脹満感(痛)・食欲不振などには,枳実・焦三仙などと用いる。〔代表方剤:枳朮丸〕。
(2)脾気虚による便秘(虚秘)にも使用される。単味の多量の服用も可。麻子仁・升麻・生地黄・柏子仁などと用いる。

健脾・
燥湿利水

燥性があり,健脾作用により体内停滞の湿・痰飲を除く。
(1)浮腫やめまい・動悸・身体の重だるさ・白色透明痰などの痰飲症に使用される。
①一般的痰飲証には,茯苓・沢瀉・猪苓・車前子などと用いる。〔代表方剤:五苓散,四苓散〕。
②痰飲のめまい・動悸などには,桂枝・茯苓・甘草などと用いる。〔代表方剤:苓桂朮甘湯〕。
③脾腎陽虚による下肢浮腫・重だるさ・下痢・めまいなどには,乾姜・茯苓・甘草・附子などと用いる。〔代表方剤:苓姜朮甘湯,真武湯〕。
④脾虚生痰によるめまい・頭痛などには, 半夏・天麻・茯苓・陳皮などと用いる。〔代表方剤:半夏白朮天麻湯〕。
(2)脾虚証に合併した白色や透明帯下・混濁尿・頻尿などに使用される。脾虚による帯下には,山薬・蒼朮・車前子などと用いる。〔代表方剤:完帯湯〕。
(3)祛風湿薬を配合し寒湿痺証にも使用される。附子・桂枝・羗活・独活・黄耆などと用いる。〔代表方剤:防已黄耆湯〕。

補気止汗

補気健脾作用により固表止汗する。気虚の自汗や陰虚の盗汗などに使用される。単味を服用してもよい。黄耆・浮小麦・防風・牡蛎などと用いる。〔代表方剤:玉屏風散〕。

補気安胎

補気することで流産を防止する(安胎)。脾虚証や気虚証などの胎動不安に使用される。
①脾腎両虚証には,杜仲・桑寄生・阿膠・続断などと用いる。
②気虚有熱には,黄芩などと用いる。〔代表方剤:安胎丸〕。

[注意点]燥湿作用があり傷陰しやすい。そのため,陰虚内熱証や陰虚証には使用しない。

(管理No.01-143)

 

百合びゃくごう

びゃくごう

[基原]ユリ科ユリなどの鱗茎の鱗片。

[性・味]微寒・甘・微苦

[帰経]心・肺

[用法]10~30g。食用も可。

安神あんじん作用を有する滋陰潤肺止咳薬じいんじゅんぱいしがいやく

養陰潤肺・
止咳

肺陰を滋養し肺気を降ろし,肺熱を冷まして止咳する 。肺陰虚証や陰虚内熱による慢性咳嗽(肺癆咳嗽)に多用される。乾咳・粘性少痰や無痰・喀血,乾燥舌・少苔無苔などの症状に用いられる。
①肺癆咳嗽には,生地黄・玄参・貝母・麦門冬などと用いる。〔代表方剤:百合固金湯〕。
②慢性肺熱証には,款冬花・貝母・天花粉などと用いる。〔代表方剤:辛夷清肺湯,百花膏〕。

清心安神

心を潤し熱を除き,心神を安定させる 。熱病後期の余熱や心陰虚内熱などによる心神不安証の,不眠多夢・動悸・虚熱煩躁・焦燥不安感・異常行動・精神不安などに使用される。知母・生地黄・酸棗仁などと用いる。〔代表方剤:百合地黄湯,百合知母湯〕。

[注意点]寒証の下痢には禁忌。

(管理No.01-144)

 

枇杷葉びわよう

びわよう

[基原]バラ科ビワの葉。

[性・味]微寒・苦・辛

[帰経]肺・胃

[用法]5~10g。蜜炙枇杷葉は止咳に,生姜汁で炙ると止嘔作用に優れる。

寒性かんせい止咳降気薬しがいこうきやく。肺と胃の熱を冷まし降ろす。桑白皮そうはくひに比べ降気作用に優れ,肺熱はいねつ肺燥はいそうの咳嗽に多用される。

清肺止嗽

降気作用に優れ,肺熱を冷まし肺気を降ろすことで止咳し呼吸困難を静める(平喘)。風熱や燥熱の粘稠黄色痰・黄色少痰,黄膩苔などに多用される。
①肺熱咳嗽には,黄芩・山梔子・桑白皮などと用いる。〔代表方剤:枇杷清肺飲,辛夷清肺湯〕。
②燥熱咳嗽には,桑葉・麦門冬・阿膠・百部などと用いる。〔代表方剤:清燥救肺湯〕。

清胃止嘔

胃熱を冷まし,胃気の上逆を抑える 。
(1) 胃熱の悪心・嘔吐・吃逆・ロ渇などに使用される 。
①嘔吐には,橘皮・竹筎・半夏などと用いる。
②吃逆には橘皮・甘草などと用いる。〔代表方剤:枇杷葉湯〕。
(2)歯齦炎や口内炎に使用される。地黄・石斛・麦門冬・黄芩などと用いる。〔代表方剤:甘露飲〕

[注意点]寒性の咳嗽,胃寒性の嘔吐には使用しない。

(管理No.01-145)

 

檳榔子びんろうじ

びんろうじ

[基原]ヤシ科ビンロウの成熟種子。

[別名]大腹子だいふくし海南子かいなんし

[性・味]温・辛・苦

[帰経]胃・大腸

[用法]6~15g。条虫・姜片虫治療には多量(60~90g)を使用する。

行気こうきし凝固した痰湿たんしつ(有形の痰)を除き,優れた消食しょうしょく作用を有する駆虫薬くちゅうやく大腹皮だいふくひに比べ行気力こうきりょく化痰力かたんりょくに優れる。

駆虫

条虫・姜片虫・蛔虫・蟯虫などの広範囲な寄生虫に使用される 。特に条虫・姜片虫に適する。単味粉末の服用も可。
①条虫には南瓜子などと用いる。
②蛔虫には苦戀棟皮など。
③蟯虫には百部とともに煎液を注腸する。

行気消積

よく気を巡らせ消化を促進し,痰湿の停滞を除く。軽度の瀉下作用もある。大腹皮と同様に,気と湿の停滞による病態に使用される。
(1)食積気滞や湿滞などの腹部脹満痛(感)・脹満を伴う便秘・残便感を伴う下痢・裏急後重・噯気・呑酸などに使用される。木香・枳実・青皮・山楂子などと用いる。〔代表方剤:木香檳榔丸〕。
(2)湿熱証の下痢・裏急後重などにも使用される。木香・黄連・赤芍薬などと用いる。〔代表方剤:芍薬湯〕。

利水化湿

凝固した痰湿を除き,利尿を図る。実証の浮腫や寒湿証による脚気・ 下肢浮腫・下肢腫脹疼痛などに使用される。
①寒湿証には木瓜・呉茱萸・桂枝・木香などと用いる。〔代表方剤:九味檳榔湯,鶏鳴散〕。
②実証の浮腫には,商陸・沢瀉・茯苓皮・木通などと用いる。〔代表方剤:疏鑿飲子)。

截瘧作用もあり,瘧疾に使用される。常山・草果などと用いる。〔代表方剤:截瘧七宝飲〕。

[注意点]大腹皮と同様に,気を消耗しやすいので気虚証には禁忌。脾虚証の下痢には使用しない。

(管理No.01-146)

 

茯苓ぶくりょう

ぶくりょう

[基原]サルノコシカケ科マツホドの菌核。

[性・味]平・甘・淡

[帰経]心・脾・腎

[用法]10~15g。朱茯苓(朱砂で撹拌)は安神作用に優れる。

健脾けんぴ作用を有する薬性温和で広範囲に使用可能な利湿りしつの重要薬 。利尿力は茯苓・猪苓・沢瀉の三薬中で一番弱い 。

利水滲湿

体内の水湿や痰飲を利水により取り除く。利水するも正気を損傷せず,体表・体内を問わず痰・湿・飲のいずれの病態にも使用される。また平性で虚・実・寒・熱各証に使用可能。健脾作用があり,特に脾虚のため湿を生じた病態(脾虚生湿)によく適する。水湿や痰飲停留の実証のほか,虚証にも使用される。
(1)水湿停留による小便不利・浮腫・腹水・下肢の重だるさ,中焦の湿による下痢に使用される。膀胱気化不利には猪苓・沢瀉・桂枝・蒼朮・白朮などと用いる。〔代表方剤:五苓散〕。
(2)痰飲の頭部上擾によるめまい・頭重感などに使用される。天麻・白朮・猪苓・沢瀉・半夏などと用いる。〔代表方剤:半夏白朮天麻湯〕。
(3)気虚証の病症にも使用される。防已・黄者などと用いる。
(4)腎陽虚証の下肢の浮腫 ・重だるさなどに使用される。附子・桂枝・乾姜などと用いる。〔代表方剤:苓姜朮甘湯〕。
(5)胃内痰飲停滞の水様性吐物・嘔吐・上腹部脹満感など。白朮・桂枝・半夏などと用いる。〔代表方剤:小半夏加茯苓湯,茯苓飲〕。
(6)肺内停滞の多痰・咳嗽など。半夏・陳皮・杏仁などと用いる。〔代表方剤:苓甘姜味辛夏仁湯〕。
(7)下焦湿熱による淋病や,下焦内湿による帯下にも使用可能。
(8)清熱利湿薬などの配合で湿熱の黄疸・熱淋・熱性痰にも使用可能となる。

健脾利湿

湿の除去と同時に脾の機能を高める(健脾)。脾虚証に湿が加わった 病態(脾虚湿盛)に多用される。標本兼治薬といえるが,健脾作用はあまり強くなく,他の健脾薬の補助として使用される。下痢・食欲不振・腹鳴・倦怠感などの症状に使用される。人参・白朮・陳皮・半夏・縮砂などと用いる。〔代表方剤:四君子湯,六君子湯,啓脾湯,参苓白朮散〕。

安神

心神を安定させる。脾虚や痰飲による心神不安の動悸・不眠・不安感などに使用される。
①心脾両虚証には,党参・酸棗仁・竜眼肉・当帰などと用いる。〔代表方剤:酸棗仁湯 ,帰牌湯〕。
②痰飲には,菖蒲・遠志・竜骨などと用いる。〔代表方剤:安神定志丸〕

(管理No.01-147)

 

附子ぶし

ぶし

[基原]キンポウゲ科カラトリカブトの子根。

[性・味]大熱・大辛

[帰経]腎・心・脾

[用法]3~15g。一般には,炮製した附子(炮附子)を使用する。生附子や炮附子を多量に使用するときには,先煎(30~60分)により毒性を軽減する 。

陽気ようきを温め鼓舞する。温裏おんりの重要薬。烏頭うず肉桂にっけいとよく同時に使用される。全身の陽気ようき温補おんぽする。回陽救逆かいようきゅうぎゃくや各種陽虚証ようきょしょう,寒性疼痛の重要治療薬。

回陽救逆

心陽を助けて脈をよく通じ(通脈),腎陽を温め補うこと(益火)で喪失しつつある元陽の力を挽回する。亡陽証の重要薬。四肢厥冷・冷汗・微呼吸・顔面蒼白・脈微などの亡陽証に使用される。
①乾姜・甘草などと用いる。〔代表方剤:四逆湯〕。
②陽虚気脱の微呼吸・出血などには人参などと用いる。〔代表方剤:参附湯〕。
③過度の多汗のため,汗とともに気が流失するときには,黄耆・竜骨・牡蛎などと用いる。〔代表方剤:耆附湯〕

温陽

よく陽気を温め補い高める。特に腎陽,次いで心陽をよく補う。各種の陽虚証に使用される。また虚喘などにも使用される。
(1)腎陽虚の下肢や四肢冷感・腰部下肢の脱力感や疼痛・頻尿・夜間尿・陽萎・遺精,淡白苔・脈細遅などに多用される。肉桂・山茱萸・熟地黄・枸杞子などと用いる。〔代表方剤:八味丸,牛車腎気丸,右帰丸,右帰飲〕。
(2)心陽虚証の動悸・呼吸困難・胸痺心痛・紫色唇などに使用される。人参・桂枝などと用いる。
(3)脾陽虚証の腹部冷痛・嘔吐・下痢などに使用される。人参・白朮・乾姜などと用いる。〔代表方剤:附子理中丸〕。
(4)腎脾陽虚証の浮腫・下痢などに使用される。肉桂・茯苓・白朮・乾姜などと用いる。〔代表方剤:真武湯,実脾飲〕。
(5)陽虚外感で悪寒・沈脈などに使用される。麻黄・細辛などと用いる。〔代表方剤:麻黄附子細辛湯〕。
(6)陽虚の自汗に使用される。黄耆・桂枝などと用いる。

散寒止痛

経絡を温め寒を除き止痛する。特に寒湿除去作用に優れる。寒湿による痺証に多用される。桂枝・白朮など。〔代表方剤:桂枝加朮附湯,甘草附子湯〕。

[注意点]毒性があり中毒に注意する。陰虚火旺・真熱仮寒などには禁忌。

(管理No.01-148)

 

仏手柑ぶっしゅかん

ぶっしゅかん

[基原]ミカン科ブッシュカンの成熟果実。

[別名]仏手ぶしゅ

[性・味]温・辛・苦

[帰経]肝・脾・肺

[用法]5~10g。

香櫞こうえんに比べ行気力こうきりょく化痰力かたんりょくは弱いが,薬性は温和で脾胃ひいをよく調理する。

行気止痛

脾・胃・肝の気(特に脾胃)を巡らせ止痛する。だが止痛力は強くない。 芳香性で薬性は温和,肝胃気滞証の軽症に多用される。肝胃不和による上腹部脹満感(痛)・噯気・悪心・嘔吐・食欲不振などに使用される。そのほか,脾胃気滞証・肝気鬱結証などにも用いられる。蘇梗・陳皮・香附子・木香・枳実などと用いる。

行気化痰

行気により痰を除く。慢性痰湿阻肺の多痰・咳嗽・胸部痞塞感・胸痛・呼吸困難などに使用される。感冒初期にはあまり使用されない。枇杷葉・鬱金などと用いる。

裏急後重を伴う下痢にも使用される。

[注意点]陰虚火旺には慎重に使用する。

(管理No.01-149)

 

紅花べにばな

べにばな

[基原]キク科ベニバナの管状花。

[性・味]温・辛

[帰経]心・肝

[用法]3~10g。活血通経として使用時,酒を加えて煎じてもよい。

広範囲に使用される活血祛瘀かっけつきょおの重要常用薬。桃仁とともによく配合される。養血ようけつ作用も有し通経つうけい作用に優れる活血薬かっけつやく桃仁とうにんに比べ,通絡つうらく作用に優れ外傷打撲・風湿痺証ふうしつひしょう・皮膚湿疹などの外表四肢の疾患に多用される。温性おんせいであり寒性瘀血証かんせいおけつしょうにより適する。

活血通経

活血すると同時に経絡の流通を良好にし,月経調整作用(調経)を有する。また軽度の補血作用もある。瘀血証の常用薬。
(1) 月経痛・閉経・産後腹痛・瘀血腹痛・外傷打撲・腫瘍(癥瘕積聚)・風湿痺証などの関節痛など各種の瘀血証に使用される。特に月経痛・閉経など婦人科疾患に多用される。
①月経痛・閉経などには,桃仁・当帰・川芎・紅花など。 〔代表方剤:通導散,桃紅四物湯,血府逐瘀湯〕。
②産後瘀血腹痛には,蒲黄・当帰・牡丹皮などと用いる。〔代表方剤:紅花散〕。
③癥瘕積聚には,桃仁・三稜・莪朮・枳殻などと用いる。〔代表方剤:隔下逐瘀湯〕。
④難産や胎児死亡の排泄不全には,川芎・当帰・牛膝などと用いる。〔代表方剤:脱紅煎〕。
⑤外傷打撲には,桃仁・当帰 ・穿山甲・赤芍薬などと用いる。〔代表方剤:復元活血湯〕。
⑥慢性の風湿痺証には,桃仁・川芎・秦艽・羗活などと用いる。〔代表方剤:身痛逐瘀湯〕。
(2)血熱瘀血による赤褐色などの湿疹や皮膚斑・皮膚化膿症に使用される。当帰・紫草・大青草などと用いる。〔代表方剤:治頭瘡一方, 当帰紅花飲〕。

祛瘀止痛

活血することで止痛する 。瘀血による外傷打撲・胸痛(狭心症など)・風湿痺証の関節痛など各種疼痛に使用される。
①外傷打撲には当帰・穿山甲・赤芍薬・蘇木・乳香などと用いる。紅花油を塗布してもよい。〔代表方剤:七厘散〕。
②胸痛には,桂枝・栝楼仁・丹参などと用いる。〔代表方剤:冠元Ⅱ号〕。

[注意点]過多月経には禁忌。

(管理No.01-150)

 

防已ぼうい

ぼうい

[基原]ツヅラフジ科シマハスノハカズラの根。

[性・味]寒・苦・辛

[帰経]膀胱

[用法]5~10g。

寒性かんせい祛風湿止痛薬きょふうしつしつうやく祛湿きょしつ作用に優れ,浮腫・風湿熱痺証ふうしつねつひしょうの重要薬。よく下部に作用する。豨蘞草きれんそうに比べ祛湿きょしつ作用に優れる。

祛風湿

祛湿作用に優れ,祛風止痛作用を有し,身体下部によく作用する。
(1)寒性であり,湿がより強い風湿熱痺証や下肢の痺証症状に多用される。風湿熱痺証の関節の熱感・発赤・腫脹・疼痛,舌質紅色・黄脈苔などに使用される。そのほか,四肢の重だるさ・運動障害などにも用いられる。滑石・薏苡仁・蚕沙・知母などと用いる。〔代表方剤:宣痺湯〕。
(2)温経止痛薬を配合することで寒湿痺証にも使用される。肉桂・附子・生姜・黄者などと用いる。 〔代表方剤:防巳黄者湯,疎経活血湯,防已湯〕。

利水消腫

下行性があり,水分を除き熱を冷ます。湿熱の浮腫・腹水・肺内水腫・関節水腫などに使用される。特に下肢の浮腫によく適する。虚・実,寒・熱 の各証に使用可能。
①腹水・ニ便不利・ロ渇などには葶藶子・大黄などと用いる。〔代表方剤:已椒藶黄丸〕。
②表虚証を伴う下肢浮腫•関節腫脹疼痛・下肢の重だるさ・自汗・悪風などには,黄者・茯苓・白朮・桂枝などと用いる。〔代表方剤:防已黄蓍湯 ,防已茯苓湯〕。
③肺内水腫の呼吸困難には,茯苓・桂枝などと用いる。〔代表方剤:木防已湯 , 木防已加茯苓芒硝湯〕。
④脚気の下肢浮腫には,呉茱萸・檳榔子・木瓜などと用いる。

[注意点]苦寒性が比較的強く,多量の使用で胃を損傷するおそれがある。そのため,多量には使用しない。また脾胃虚証,無湿熱証,陰虚証には禁忌。

(管理No.01-151)

 

茅根ぼうこん

ぼうこん

[基原]イネ科チガヤの根茎。

[別名]白茅根はくぼうこん

[性・味]寒・甘

[帰経]肺・胃・膀胱

[用法]15~30g。薬効は新鮮品が優れる(30~60g)。

利尿作用と生津せいしん作用を有する涼血止血薬りょうけつしけつやく。利水するも津液しんえきを消耗せず,熱証ねつしょう津液不足しんえきふそくを伴う証に適する 。

涼血止血

血熱妄行による各種の出血証に使用される。
(1)胃と肺の熱をよく冷まし,胃熱の吐血・肺熱の喀血・血便などの肺や胃の出血症に多用される。鼻出血にも使用される。また生津作用もあり虚証の熱性出血証にも用いられる。
(2)清熱利尿作用を有し,血尿や血淋にも多用される。単味使用も可。
①大薊・ 側柏葉・山梔子などと用いる。〔代表方剤:十灰散〕。
②虚熱血尿には,人参・乾地黄・茯苓などと用いる。〔代表方剤:茅根飲子〕。

清熱利尿

熱を冷まし利尿し,熱を尿より排泄する。生津作用もあり,陰液消耗(傷陰)の弊害が少ない。熱淋などの排尿痛・小便不利や浮腫・湿熱黄疸などに使用される。熱淋には,木通・冬葵子・石葦・車前子などと用いる。〔代表方剤:茅根飲子〕。

清肺胃熱
・生津

肺胃の鬱熱を除くとともに津液を蘇らせる。寒性だが胃腸障害は少ない。熱病後期の陰液不足による口渇,胃熱による悪心・嘔吐・吃逆,肺熱の咳嗽・乾咳・呼吸困難などに使用される。
①熱病後期には,芦根・生地黄・知母などと用いる。
②胃熱には葛根などと用いる。
③肺熱には桑白皮・麦門冬などと用いる。〔代表方剤:如神湯〕。

[注意点]脾胃虚寒証にば慎重に使用する。

(管理No.01-152)

 

防風ぼうふう

ぼうふう

[基原]セリ科ボウフウの根茎。

[性・味]温・辛・甘

[帰経]膀胱・肝・脾

[用法]13 ~10g。生防風は解表や止痛に,炒防風は腹痛や止瀉に優れる。

全身を巡り,風邪による緒証を緩和する。祛風きょふうの重要薬。

祛風

強い祛風作用を有し,風邪による広範囲の疾患に使用される。祛風薬の多くは温性・燥性であるのに対し,微温でかつ燥性は弱い。これより“風薬中の潤薬”とも呼ばれる。寒熱両証に使用可能。

(1)祛風解表:風邪を発散し解表する。発汗力は弱い。
①風寒表証で特に頭痛や身体痛が強いときによく使用される。荊芥・羗活 ・白正・紫蘇葉などと用いる。〔代表方剤:荊防敗毒散〕。
②温性が弱く薬性が穏やかなところより,風熱表証にも使用される。荊芥・黄芩・連翹・薄荷など用いる。
③表虚証による易感冒症・自汗などに使用され る。黄者・白朮などと用いる。〔玉屏風散〕。
(2)祛風止痛:
①風寒湿痺証の筋肉関節痛・しびれなどに使用される。特に風邪が強い証に用いられる。羗活・独活・桂枝・蒼朮・威霊仙などと用いる。〔代表方剤:蠲痺湯,防風通聖散,疏経活血湯〕。
②局所の熱感・発赤などがある寒熱錯雑証や熱証の痺証にも使用される。石膏・知母などと用いる。〔代表方剤:桂芍知母湯,当帰拈痛湯〕。
③風寒証の頭痛や止痛に使用される。川芎・白芷 ・差活など。〔川芎茶調散,立効散 〕。
(3)祛風止痙:祛風により,筋を緩め痙攣を緩和する。止痙力は弱く,補助薬として使用される。破傷風などの牙関緊張・痙攣・角弓反張などに使用される。天南星・白附子・白僵蚕 ・天麻などと用いる。〔代表方剤:玉真散〕。
(4)祛風止痒:祛風により瘙痒感を緩和する。風熱の発疹や皮膚瘙痒症に使用 される。荊芥・薄荷・連翹・山梔子などと用いる。〔代表方剤:消風散,治頭字蒼一方,清上防風湯〕。

止瀉

肝牌不和の下痢や腹痛に使用される。白芍・白朮・陳皮などと用いる。〔痛瀉要方〕。

[注意点]陰虚火旺,血虚には使用しない。日本で使用されている浜防風とは,作用が異なるので注意が必要。

(管理No.01-153)

 

蒲黄ほおう

ほおう

[基原]ガマ科ヒメガマなどの成熟花粉。

[性・味]平・甘

[帰経]肝・心包

[用法]5 ~10g。包煎。冲服・外用も可。炒蒲黄は止血に,生蒲黄は化瘀止血に優れる。

活血止痛かっけつしつう・利尿作用を有する収斂しゅうれん止血薬。

化瘀止血

よく収斂止血し,よく血を巡らせる。そのため,止血しても血を停滞させない。
(1)寒熱,瘀血証の有無にかかわらず各種の出血症に使用可能。喀血・鼻出血・吐血・血尿・血便・性器出血(崩漏)・外傷性出血などに使用される。単味の冲服も可。
①血熱性出血には,生地黄・大薊・小薊などと用いる。
②虚寒性出血には,炮姜・艾葉・鹿茸・当帰などと用いる。〔代表方剤:蒲黄散〕
(2)利尿通淋作用があり,排尿痛がある血淋などに使用される。小薊・生地黄・冬葵子・欝金などと用いる。〔代表方剤:蒲黄散〕

化瘀止痛

瘀血を除き止痛する。寒熱両証に使用可能。瘀血証による胸痛・腹痛・月経痛・産後の疼痛などに使用される。
①五霊脂などと用いる。〔代表方剤:失笑散〕
②寒性瘀血には,肉桂・炮姜・熟地黄・当帰などと用いる。〔代表方剤:黒神散〕
③熱性瘀血には,牡丹皮・延胡索・生地黄などと用いる。〔代表方剤:蒲黄散〕

[注意点]子宮収縮作用があり妊婦には禁忌。

(管理No.01-154)

 

蒲公英ほこうえい

ほこうえい

[基原]キク科モウコタンポポなどの全草。

[性・味]寒・苦・甘

[帰経]肝・胃

[用法]10~30g。外用も可。

瘡瘍の重要薬。紫花地丁とともに配合される。紫花地丁しかじちょうに比べようの治療に優れ,をよく巡らせて散結さんけつする。また清熱利尿せねつりにょう作用を有す。

清熱解毒・
消癰散結

瘡瘍の熱毒を冷まし取り除き,化膿を治癒させ(消癰),腫脹硬結を散じる(散結)。皮膚化膿症・乳癰(乳腺炎)・腸癰(虫垂炎など)・丹毒などに使用される。
①乳癰には,栝楼仁・天花粉・青皮・金銀花・穿山甲・牛蒡子などと用いる。〔代表方剤:栝楼牛蒡湯〕。
②皮膚化膿症には,金銀花・野菊花などと用いる。〔代表方剤:五味消毒飲〕。
③肺癰には,魚腥草・芦根・冬瓜仁などと用いる。

特に癰の治療に優れ,乳癰の腫脹・疼痛・乳汁分泌不利などに多用される。乳癰には外用も可。そのほか,咽頭発赤腫脹などにも使用される。咽頭発赤腫脹には,板藍根・玄参などと用いる。

清肝明目

肝火を冷まし(清肝),視力を明瞭にする(明目)。肝火上炎による眼球結膜充血・眼痛などに使用される。菊花・夏枯草・黄芩などと用いる。〔代表方剤:蒲公英湯〕。

清熱利尿

湿熱を冷まし利尿する。熱淋の排尿痛・排尿困難,湿熱黄疸,下痢,下血などに使用される。
①黄疸には菌蔯蒿・柴胡・山梔子などと用いる。
②熱淋には,金銭草・茅根・車前子などと用いる。

清胃止痛

食積化熱の胃痛に使用される。

[注意点]多量の使用で下痢となることもある。

(管理No.01-155)

 

牡丹皮ぼたんぴ

ぼたんぴ

[基原]ボタン科ボタンの根皮。

[別名]丹皮たんぴ

[性・味]寒・苦・辛

[帰経]心・肝・腎

[用法]5~10g。生牡丹皮は清熱涼血,炒炭牡丹皮は止血,酒炒牡丹皮は活血にそれぞれ優れる。

活血かっけつ作用も兼ねる清熱涼血薬せいねつりょうけつやく血熱瘀血証けつねつおけつしょうの常用薬。赤芍薬せきしゃくやくとよく同時に配合される。赤芍薬せきしゃくやくに比べ清熱涼血せいねつりょうけつ作用に優れる。清虚熱せいきょねつ作用もあり,虚証実証きょしょうじつしょうともに使用可。

清熱涼血

1)血熱を冷まし,よく活血し,血熱の妄行を防ぐ。赤芍薬に比べ血熱をよく冷ます。以下の温病や雑病の血熱証に使用される。
(1)温熱病の営分血分証で,夜間の高熱・発疹発斑・絳色舌などに使用される。赤芍薬・生地黄・玄参・連翹などと用いる。
(2)血熱妄行による吐血・鼻出血などに使用される。犀角・生地黄・白芍薬・赤芍薬などと用いる。〔代表方剤:犀角地黄湯〕。
(3)血熱による月経先期・月経前の発熱・倒経などに使用される。白芍・黄芩・柴胡などと用いる。〔代表方剤:宣鬱通経湯〕。
2)虚熱を冷ます作用もあり,陰虚内熱や温熱病後期の陰分伏熱の夜間発熱・無汗の骨蒸潮熱などに使用される。知母・生地黄・鼈甲などと用いる。〔代表方剤:青蒿鼈甲湯,知柏地黄丸,清骨飲〕。

活血化瘀

活血して瘀血を除き血熱を冷ます。以下の熱性瘀血証に使用される。 特に血と熱がより結びついた状態(血熱凝結)に多用される。
(1)瘀血の閉経(無月経)・月経痛・腹部腫瘍(癥・積)などに使用される。桃仁・川芎・当帰・乳香・紅花・赤芍薬などと用いる。〔代表方剤:桂枝茯苓丸,膈下逐瘀湯〕。
(2)外傷打撲や瘀血の腫脹疼痛に使用される。没薬・乳香・赤芍薬・紅花などと用いる。 〔代表方剤:折衝飲〕。
(3)痰熱による腸癰に使用される。大黄・桃仁・冬瓜仁などと用いる。〔代表方剤:大黄牡丹皮湯,腸癰湯〕。
(4)皮膚化膿症に使用される。金銀花・連翹・白芷などと用いる。

清肝瀉火

肝火を冷ます。肝鬱化火や虚実錯雑証の肝陽上亢などの眼球眼瞼充血・眼痛・熱感頭痛・ほてり感などに使用される。山梔子・柴胡・白芍などと用いる。〔代表方剤:加味逍遙散〕。

[注意点]血虚有寒証や過多月経には慎重に使用する。

(管理No.01-156)

 

牡蛎ぼれい

ぼれい

[基原]イタボガキ科マガキの貝殻。

[性・味]微寒・鹹・澁

[帰経]肝・腎

[用法]15~30g。砕いて先煎。生牡蛎は平肝潜陽安神作用に,煅牡蛎は収斂固澁と制酸作用に優れる。

安神あんじん散結さんけつ固澁こじゅう作用をも有する平肝潜陽薬へいかんせんようやく平肝潜陽へいかんせんよう石決明せっけつめいに次いで強い。

平肝潜陽・
安神


平肝潜陽とともに心神を安定させる作用を有する。動悸・不眠・煩躁不安などの心神不安を伴う肝陽上亢証に多用される。
①肝血虚や肝腸上亢による頭痛・めまい・動悸・不眠などには,竜骨・白芍・酸棗仁などと用いる。〔代表方剤:桂枝加竜骨牡蛎湯,柴胡桂枝乾姜湯〕。
②肝陰虚による肝風内動の痙攣・めまいなどには,亀板・鼈甲・白芍・代赭石・牛膝などと用いる。〔代表方剤:三甲復脈湯,鎮肝熄風湯〕。
③心神不安による煩躁不安・動悸・狂などには,竜骨・磁石・柴胡などと用いる。〔代表方剤:柴胡加竜骨牡蛎湯〕。

軟堅散結

結実を軟らかくし散じる。痰核・腫瘍・瘰癧・癭瘤などに使用される。微寒性のため痰火鬱結の病態に適する。
①瘰癧には玄参・浙貝母などと用いる。〔代表方剤:消痺丸〕。
②肝肥大には,鼈甲・丹参・沢蘭・乳香・没薬などと用いる。

収斂固澁

固澁作用があり,自汗・盗汗・遺精・帯下・性器出血(崩漏)・慢性下痢などに使用される。
①自汗・盗汗には,黄耆・麻黄根・小麦などと用いる。 〔代表方剤:牡蛎散〕。
②腎虚の遺精・失禁・腰痛・下半身の倦怠感などには,芡実・蓮須・ 沙苑疾藜などと用いる。〔代表方剤:金鎖固精丸〕。
③帯下・性器出血などには,竜骨・烏賊骨・山薬などと用いる。

制酸

制酸作用や止痛止血作用があり,胃酸過多の胃痛・胸やけ・呑酸・吐血 などに使用される。煅牡蛎がよく使用される。〔代表方剤:安中散〕。

[注意点]収斂作用があるため,湿熱の実証には禁忌。また脾虚証に使用すると下痢や胃痛などを起こすことがある。

(管理No.01-157)