薬草辞典-か行
艾葉
[基原]キク科ヨモギなどの若い全草や葉。
[性・味]温・苦・辛
[帰経]肝・脾・腎
[用法]3~10g。外用も可。生艾葉は温経止痛,炒炭文葉は温経止血に優れる。咳嗽に使用するときは後下がよい。
下焦虚寒証 による出血や疼痛を除く重要薬。
温経止血・ 調経安胎 |
経絡を温めるとともに止血する
。また月経調整作用,安胎作用もある。特に下焦をよく温め下焦の虚寒症に多用される。 |
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散寒止痛 |
経絡・子宮を温め寒湿を除き止痛する。下焦虚寒性の腹痛
・月経痛・白色や透明の帯下・月経不順・不妊などに多用される。単味の服用や熱した艾葉で局所を温めてもよい。 |
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除湿止痒・ 平喘 |
温燥性であり,寒湿を除く。 |
[注意点]温燥性であり,陰虚血熱証には慎重に使用する 。
(管理No.01-011)
夏枯草
[基原]シソ科ウツボグサの花穂
[性・味]寒・苦・辛
[帰経]肝・胆
[用法]10~15g。膏剤,外用も可。
肝火 を冷まし明目 し,結実 を散じる。山梔子や竜胆の二薬に比べ,清肝火作用は弱いが肝陰不足にも使用可能。さらに消痰散結 作用を有する。
清肝火・明目 |
肝火を冷まし,引き降ろす。また頭部や眼部をすっきりと明瞭にさせる(清頭目)。 (1)
肝火上炎や肝陰虚による肝陽上亢の頭痛・眼球結膜充血・眼痛・めまいなどに使用される。 |
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消痰散結 |
痰火が鬱して生じた瘰癧・癭瘤・乳腺炎や乳腺腫・結実した皮膚化膿症・耳下腺腫〔痄腮〈ささい〉〕などに使用される。昆布・海藻・貝母・牡蛎などと用いる。〔代表方剤:夏枯草膏〕。 |
(管理No.01-012)
何首烏
[基原]タデ科ツルドクダミの塊根。
[性・味]微温・甘・苦・澁
[帰経]肝・腎
[用法]10~20g。飲用・軟膏・酒剤・丸・散剤にも使用可。製何首烏は養血滋陰作用に,生何首烏は潤腸通便・截瘧解毒作用に優れる。
燥性 ・粘膩性 が弱い温和な補血薬 。
養血滋陰 |
陰血をよく補う。温性と燥性は弱く,熟地黄のような粘膩性も少なく,薬性の温和な補血薬。
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潤腸通便 |
腸を潤し気を降ろして排便を促進する。血虚や腸燥の便秘に使用される。当帰・麻子仁などと用いる。 |
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截瘧・解毒・ 止痒 |
(1)気血両虚証や陰虚証の慢性の瘧疾に使用される。人参・当帰・生姜・青蒿などと用いる。〔代表方剤:何人飲〕。 |
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他 |
近年では,高脂血症・動脈硬化症・高血圧などにも応用されている。 |
[注意点]下痢や強い痰湿証には使用しない。
(管理No.01-013)
莪朮
[基原]ショウガ科ガジュツの根茎。
[別名]蓬莪朮
[性・味]温・辛・苦
[帰経]肝・脾
[用法]3~10g。醋炒莪朮は破血作用に,生莪朮は行気止痛作用に優れる。作用が強く,正気の損傷を防ぐために益気補血薬を配合すべきである。
破血行気止痛 作用と消腫作用を有する活血薬 。三稜 と薬効が類似し,よくともに配合される。温性で,“気中 の血 を治す《本草網目 》”といわれ,三稜 に比べ行気力 に優れ良好な止痛消積 作用を有する。
破血行気 |
気血を巡らせ瘀血を除き,腫塊や結実を散じ,止痛する。強い活血作用(破血)を有し,同時に良好な行気作用を有する。気滞瘀血による腹部腫瘍(癥瘕・積聚)・肝腫大・季肋部痛・腹痛・閉経などに使用される。特に有形で実体のある腫瘍(癥・積)に多用される。近年では子宮外妊娠の血腫にも使用される。 |
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行気消積 |
気を巡らせ鬱滞を除き止痛する。気をよく巡らせ食積をよく緩和する。気滞が強い食積などによる腹部脹満痛
(感)・腹部痞塞悶絶感・曖気・呑酸・厚苔などに使用される。 |
[注意点]月経過多・妊婦には禁忌。
(管理No.01-014)
滑石
[基原]正品は天然の含水ケイ酸アルミニウムおよび二酸化ケイ素からなる粘土物質(加水ハロサイト・軟滑石)とされる 。中国では天然の含水ケイ酸マグネシウムである鉱物学上の滑石(タルク)を正品とする。
[性・味]寒・甘
[帰経]胃・膀胱
[用法]10~15g。包煎。外用も可。
寒性 の利水滲湿薬 。車前子 に比べ,清熱 作用に優れ,解暑 作用と収湿 作用を有する。
清熱利湿 |
清熱作用に優れ,寒性であり下焦の湿熱を尿より排泄し除く。湿熱による熱淋の排尿痛・褐色尿・頻尿・排尿困難・小便不利や浮腫などに使用さ
れる。また石淋にも用いられる。 |
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清熱解暑 |
暑邪を冷まし湿邪を除く。
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収澁収湿 |
清熱すると同時に湿疹などの滲出液を抑制する。湿疹・汗庖(あせも) などに使用される。主に単味か煅石膏と炉甘石の混合粉末を塗布する。 |
(管理No.01-015)
藿香
[基原]シソ科パチョリの全草。
[性・味]微温・辛
[帰経]脾・胃・肺
[用法]5~10g。長時間煎じない。後下が望ましい。藿香葉は解表,藿香梗は和中,鮮藿香は解暑の各作用にそれぞれ優れる。
代表的な芳香化湿薬 。化湿和中解暑 の重要薬。佩蘭 に比べ,温燥性 が強く止嘔・止痢作用に優れる。
化湿・ 解表解暑 |
外感や内傷による脾胃の湿を除き,暑邪を散じる。また解表作用を有する。
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和中止嘔 |
湿を除き冑機能を整え止嘔する。湿邪による胃部痞塞・悪心・嘔吐・吃逆・膩苔などに使用される。寒熱証ともに使用可能だが,寒湿に適する。妊娠性嘔吐や小児の嘔吐下痢にも用いられる。 |
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他 |
鼻渊にも使用される。また煎液の含嗽で口臭を除く。 |
[注意点]暑温証や陰虚火旺には禁忌。
(管理No.01-016)
葛根
[基原]マメ科クズの周皮を除いた根。
[性・味]平(やや涼)・甘・辛
[帰経]脾・胃
[用法]10~15g。煨葛根は昇陽止瀉作用に,生葛根は生津・透疹・解表に優れる。
浮性があり,外表 では退熱 や透疹 により表邪 を去り,内では昇陽 ・生津 により渇 と痢 を止める。
解表退熱 |
軽度の発汗作用があり,鬱熱を発散させる。生津により筋を緩める作用があるため,項背の強ばり・ロ渇を伴う外感表証に多用される。そのほか,発熱悪寒・鼻腔乾燥・頭痛・四肢倦怠などにも用いられる。風寒・風熱の表証に使用可能。 |
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透疹 |
発散作用により鬱した毒を皮膚の表面に出したり,肌腠の熱邪を取り除く。発熱・ロ渇や下痢などを伴う麻疹の初期に多用される。升麻・芍薬・甘草などと用いる。〔代表方剤:升麻葛根湯 〕。 |
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昇陽止潟 |
脾胃の気を上昇させることで下痢を止める。湿熱や脾虚の下痢に多用される。 |
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生津止渇 |
津液を潤し(生津)口渇を止める。口渇を伴う外感表証や消渇などに多用される 。麦門冬・天花粉・五味子などと用いる。〔代表方剤:麦門冬飲子〕。 |
[注意点]表虚の多汗には禁忌。
(管理No.01-017)
栝楼根
[基原]ウリ科シナカラスウリなどの肥大根。
[別名]天花粉 ・瓜蔞根・瓜呂根 ・花粉
[性・味]寒・甘・微苦・酸
[帰経]肺・胃
[用法]10~15g。
胃熱 を冷まし,肺燥 をよく潤す。清熱 作用は芦根 より劣るが,生津作用に優れ,熱が盛んでかつ津液不足 の病証や消渇病 に多用される 。
清熱生津・ 潤燥 |
肺や胃の熱を冷まし,よく津液を潤し(生津)口渇を止める 。
生津作用はより優れる。〔代表方剤:柴胡桂枝乾姜湯〕 |
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潤肺化痰 |
肺熱を冷ます(清肺)とともに肺燥を潤し,化痰して咳嗽を止める。肺熱の陰液不足による粘稠燥痰・乾咳・喀出困難な痰・血痰などに使用される。天門冬・麦門冬・生地黄・貝母・桑白皮などと用いる。〔代表方剤:沙参麦門冬湯,貝母栝楼散〕。 |
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消腫排膿 |
清熱瀉火とともに膿を排泄し腫瘍を縮小させる。皮膚化膿症(排膿前,排膿後ともに可)・乳腺炎・外傷などに使用される。外用も可。連翹・金銀花・ 浙貝母・蒲公英などと用いる。〔代表方剤:仙方活命飲,復元活血湯〕。 |
[注意点]潤腸通便傾向にあるので,脾胃虚寒証や下痢には禁忌。
(管理No.01-018)
甘草
[基原]マメ科のウラルカンゾウなどの根およびストロン。
[別名]国老
[性・味]平・甘
[帰経]脾・肺・心
[用法]2~6g。諸薬の調和には少量 (2~3g),心気虚証などの君薬としては中量 (5~10g),急性中毒の緩和には多量 (15~30g)を使用する。丸・散剤・外用も可。甘遂 ・大戟 ・芫花 とは相反 。
補気力 は弱いが,広範囲に使用される潤性 の補気薬 。大棗 とよく同時に使用される緩和補気薬 。
補気心脾 |
脾胃や心気の機能を補い,脾虚や心気不足を改善する。補気力は弱く,他の補気薬の補助として使用される。 |
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潤肺止咳 |
潤性があり,肺を潤し止咳する。薬性は緩和で平性のため,寒熱虚実・有痰無痰を問わず使用可能だが,特に燥痰・熱痰に適する。 |
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緩急止痛 |
急迫症状を緩め(緩急)止痛する。 |
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瀉火解毒 |
良好な解毒作用や薬性の緩和作用を有する。
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調和 |
(1)他薬による脾胃の損傷を防止し保護する。脾胃虚弱者に多用される。
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他 |
近年では消化性潰瘍に有効とされる。烏賊骨・瓦楞子・陳皮などと用いる。 |
[注意点]長期や多量の服用などで,低カリウム血症による浮腫・痙攣・四肢脱力無力感・しびれ・頭痛などが出現することがある。そのおそれがあるときや出現時には,沢瀉・茯苓などの利水薬や利水剤(五苓散など),あるいは西洋薬のカリウム補給剤を使用する。
(管理No.01-019)
旱蓮草
[基原]キク科タカサブロウの全草。
[別名]墨旱蓮
[性・味]寒・甘・酸
[帰経]肝・腎
[用法]10~15g。丸 ・散・膏剤,外用も可。
薬性が温和な補肝腎薬 。熟地黄 ・山茱萸 ・枸杞子 より補陰 作用は劣る。よくともに配合される。女貞子 より補肝腎 作用は劣るが,涼血止血 作用を有する。
補肝腎陰 |
肝腎の陰を補う 。膩性が少なく作用は比較的温和。肝腎陰虚によ る頭重・めまい・耳鳴・腰下肢倦怠感・遺精・白髪などに使用される。特に陰虚内熱のものに適する。女貞子・熟地黄・黄精・菟絲子・枸杞子・何首烏などと用いる。 |
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涼血止血 |
養陰すると同時に血熱を冷まし止血する。陰虚血熱による喀血・鼻出血・血尿・便血・崩漏・皮下出血などの各種出血症に多用される。生地黄・阿膠・蒲黄・車前草・茜草根などと用いる。〔代表方剤:二草丹〕。外傷出血や咽頭炎にも使用される。つぶして塗布する。 |
[注意点]寒性であり,脾胃虚寒証の下痢,腎陽虚証には使用しない。
(管理No.01-020)
桔梗
[基原]キキョウ科キキョウの根。
[性・味]微温・苦・辛
[帰経]肺
[用法]3~6g。肺癰治療には多量(~10g)に使用する。
外感風熱咳嗽 に多用される止咳薬。宣肺 作用に優れ昇散性が強い肺経気分 の重要薬。排膿作用を有す。前胡 に比べ化痰 作用に優れ寒熱両証に使用される。
宣発化痰・ 利咽 |
肺の宣発作用を高めて,咽頭を利し開音し,よく痰を除去し止咳する。また風熱を発散する。肺寒・肺熱両証の咳嗽多痰・胸部痞塞感,外感風寒の咳嗽や外感風熱の咳嗽.咽頭痛・嗄声などに使用される。 |
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排膿 |
良好な排膿作用があり,肺癰・咽頭炎・扁桃の化膿・皮膚化膿症などに使用される。 |
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開提肺気 |
(1)肺気の鬱滞を除くことで,表裏関係の大腸や胃の気を降ろしその機能を整える。
胃腸の気滞による下痢・裏急後重などに使用される
。 |
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他 |
“舟楫之剤”,“載諸薬上浮”といわれ,上昇する性質があり,諸薬をもち上げ上焦の病症に導く(引経薬)。また陽気の下降を防ぎ上昇させる。慢性下痢や呼吸困難などに使用される。〔代表方剤:参苓白朮散,昇陥湯〕。 |
[注意点]陰虚の慢性咳嗽や喀血には禁忌。多量の服用で悪心嘔吐を引き起こすことがある。
(管理No.01-021)
菊花
[基原]キク科キクの頭花。
[性・味]微寒・甘・苦
[帰経]肝・肺
[用法]5~10g。丸剤も可。生菊花を擦り潰し患部に塗布してもよい。
風熱 を軽く散じるとともに清肝明目 作用を有する。桑葉 に比べ清肝 作用に優れ,かつ清熱解毒 作用を有する。潤性 は桑葉 より強く、陰虚証 にも使用可能。肝火上炎 や肝陰不足証 に多用される。
疎散風熱 |
発散力は弱く,風熱を軽く散らす(疏散)。風熱表証に用いられるが,作用を強化するため,他の疎散風熱薬と配合される。甘性であり潤す性質(潤性)があり,燥性の病態によく使用される。上焦の風熱を除き頭部を明瞭にする(清頭)。頭痛を伴う風熱表証や風熱に多用される。薄荷・連翹・芦根・桔梗などと用いられる。〔代表方剤:桑菊飲〕 |
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清肝明目 |
肝経の熱を冷まして降ろし(清肝瀉火),視力を明瞭にする(明目)が,より清肝作用に優れる。
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清熱解毒 |
清熱解毒作用もあり,皮膚化膿症に使用される。本作用は野菊花がより強い。 |
(管理No.01-022)
枳実
[基原]ミカン科酸橙などの幼果。
[性・味]寒・苦・辛
[帰経]脾・胃・大腸
[用法]3~10g。中気下陥の内蔵下垂などには 15g程度使用する。外用も可。
強力な行気 力を有し,凝縮停滞した気 ・痰 ・食積 を取り除く寒性の理気薬 。熱証 をはじめ,各種の気滞 にも多用される。枳殻 に比べ行気 力が強く,中下焦 (胃腹部) に主に作用する。
破気消積 |
強力に気を巡らせ脹満・停滞を除く 。気滞や食積に多用される。
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化痰除痞 |
行気作用により痰を除く。気と痰の鬱滞(気痰交結)に使用される。
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他 |
中気下陥証にも使用される 。黄耆・柴胡や補中益気湯にも配合される。 |
[注意点]脾胃虚証・妊婦には慎重に使用する。
(管理No.01-023)
亀板
[基原]イシガメ科クサガメなどの腹甲 。
[性・味]寒・甘・鹹
[帰経]肝・腎・心
[用法]10~30g。砕いて煎じる。先煎。
鼈甲 に比べ滋陰力 に優れ,また補腎健骨 ・滋陰止血 作用を有する。
滋陰潜陽 |
肝腎の陰を滋養し,肝腎陰虚のために上昇(上浮)した陽気を抑え(潜陽),また内風を静める。滋陰力に優れ,重度の陰虚や津液不足の病態に使用される。 |
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益腎健骨 |
精血を補い,筋骨を強くする。 |
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滋陰養血止血 |
滋陰養血し経絡からの血の漏れを防ぎ(固経)止血する。陰虚血熱による崩漏・過多月経などに使用される。黄柏・阿膠・茜草などと用いる。〔代表方剤:固経丸〕。 |
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養血補心 |
血を補い心神を安定させる。血虚による心神不安の動悸・不眠・健忘などに使用される。竜骨・遠志・菖蒲などと用いる。〔代表方剤:孔聖枕中丹〕。 |
[注意点]脾虚寒による下痢・食欲不振・もたれなどには使用しない。
(管理No.01-024)
亀板膠
[基原]イシガメ科クサガメなどの腹甲を煮詰めて膠にしたもの。
[性・味]寒・甘・鹹
[帰経]肝・腎・心
[用法]3~9g。溶解(烊化)。
亀板 に比べ滋陰 ・養血 ・止血 作用に優れる。
滋陰潜陽 |
肝腎の陰を滋養し,肝腎陰虚のために上昇(上浮)した陽気を抑え(潜陽),また内風を静める。滋陰力に優れ,重度の陰虚や津液不足の病態に使用される。 |
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益腎健骨 |
精血を補い,筋骨を強くする。 |
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滋陰養血止血 |
滋陰養血し経絡からの血の漏れを防ぎ(固経)止血する。陰虚血熱による崩漏・過多月経などに使用される 。黄柏・阿膠・茜草などと用いる。〔代表方剤:固経丸〕。 |
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養血補心 |
血を補い心神を安定させる。血虚による心神不安の動悸・不眠・健忘などに使用される。竜骨・遠志・菖蒲などと用いる。〔代表方剤:孔聖枕中丹〕。 |
[注意点]脾虚寒による下痢・食欲不振・もたれなどには使用しない。
(管理No.01-025)
杏仁
[基原]バラ科ホンアンズやアンズなどの種子。
[性・味]温・苦・甘
[帰経]肺・大腸
[用法]3~10g。後下するほうがよい。砕いて煎じる。
温性の止咳薬。止咳平喘 の需要薬。
止咳平喘 |
肺気を降ろし痰を巡らせて止咳し呼吸困難を緩和する(平喘)。各種の邪による肺気鬱滞のための咳嗽・呼吸困難・白色痰などに使用される。配合薬により寒・熱・虚・実証や肺燥など各種の病態に使用可能。 |
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潤腸通便 |
大腸の気を降ろし,同時に腸を潤して通便する。腸燥の便秘に使用される。麻子仁・郁李仁・当帰・桃仁 ・枳実などと用いる。〔代表方剤:麻子仁丸,潤腸湯,五仁丸〕。 |
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他 |
肺気を流暢にすることで,水道通調作用を高め,軽度に利水する。湿証の 浮腫・重だるさ,湿温病初期の重だるさ・頭重・悪寒・胸部痞塞感 ・午後の発熱などに使用される。湿温病初期には,滑石 ・厚朴・薏苡仁などと用いる。〔三仁湯〕。 |
[注意点]軽度の毒性があり ,多量の服用で嘔吐・下痢 ・痙攣・呼吸困難などの副作用が出現することがある。
(管理No.01-026)
金銀花
[基原]スイカズラ科スイカズラなどの花蕾。
[別名]忍冬花 ・双花 ・二宝花
[性・味]寒・甘
[帰経]肺・胃
[用法]10~15g。解表には少量 (5~10g),熱毒が強いときには多量 (~60g) を使用する。炒炭金銀花は涼血止痢作用に優れる。
風熱 を散じ,熱を冷まし,下痢を止める。連翹 に比べ,表熱 の発散に優れ甘性だが胃を荒らさない。
清熱解毒 |
軽く浮き上がる性質があり,外表部の風熱を発散する。また裏熱を冷ます作用もある。温病初期(衛分)や気分,營分の各証に使用されるが,特に気分の治療に優れる。 |
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散癰消腫 |
清熱解毒作用があり,皮膚化膿症に使用される。外科(皮膚科)の常用薬。熱毒による皮膚化膿症や腸癰(虫垂炎)・肺癰などに使用される。外用も可。蒲公英・野菊花・紫花地丁・黄芩などと用いる。〔代表方剤:五味消毒飲,仙方活命飲〕。 |
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涼血止痢 |
血熱を冷まし下痢を止める 。熱性の下痢や膿血便に使用される 。葛根・黄連・白頭翁などと用いる。 |
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他 |
清熱解暑作用もあり,暑熱証にも用いられる。 |
(管理No.01-027)
枸杞子
[基原]ナス科クコやナガバクコの成熟果実。
[性・味]平・甘
[帰経]肝・腎
[用法]5~10g。丸 ・膏・酒剤,外用も可能。
補肝腎 の代表薬。山茱萸 とよく同時に配合される。明目 作用を有する。
補肝腎陰 |
山茱萸と同様に,肝血と腎精を滋養する。特に補肝陰作用に優れる。膩性は比較的弱く,作用は比較的温和である。また平性であり,腎陽虚証や血虚証にも使用される。
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養肝明目 |
良好な明目作用を有する。肝腎陰虚や陰虚内熱上浮などによる霧視・視力低下・眼球乾燥・流涙・飛蚊症などに使用される。菊花・山茱萸・熟地黄などと用いる。〔代表方剤:杞菊地黄丸〕。 |
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他 |
肺を潤し止咳する 。肺陰虚による慢性咳嗽(肺癆)などに使用される 。 麦門冬・知母・貝母・百部などと用いる。 |
[注意点]脾虚の下痢には使用しない。
(管理No.01-028)
苦参
[基原]マメ科クララの根。
[性・味]寒・苦
[帰経]大腸・肝・腎
[用法]3~10g。丸・散剤,外用も可。
祛湿 し利尿し,風熱 を除く。下焦湿熱 証や皮膚瘙痒症の多用薬。
清熱燥湿 |
清熱燥湿作用に優れ,湿熱の下痢や血便・黄疸に使用される。 |
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清熱利尿 |
清熱とともに比較的強い利尿作用を有する 。膀胱湿熱による小便不利・排尿困難 ・排尿痛や浮腫などに使用される 。蒲公英・沢瀉・車前子・貝母などと用いる。〔代表方剤:当帰貝母苦参丸〕 。 |
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殺虫止痒 |
祛風清熱することで瘙痒感を抑え,疥癬やトリコモナスの活動を抑制する(殺虫)。外用も使用可。 |
[注意点]苦寒性が比較的強く,胃を損傷しやすい。そのため多量や長期の服用は避ける。脾胃虚寒証には禁忌。伝統的に藜芦とは相反。
(管理No.01-029)
鶏血藤
[基原]マメ科ムラサキナッフジなどのつる性の茎。
[性・味]温・苦・微甘
[帰経]肝
[用法]10~30g。
舒筋活絡 を有する活血薬 。補血 作用も有し血虚証 にも使用される。
行血補血・ 舒筋活絡 |
活血と同時に補血作用を有し,筋を緩め経絡の流通を良好にする。瘀血・血虚証ともに使用可能。
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[注意点]過多月経には使用しない。
(管理No.01-030)
桂枝
[基原]クスノキ科ケイの若枝(嫩枝)。
[性・味]温・辛・甘
[帰経]心・ 肺・ 膀胱
[用法]3~10g。風湿痺証の疼痛には多量使用も可。丸・散剤も可。
表裏 の陽気 を温め,表邪 を除き,気血 を巡らせる。
発汗解表 |
体表部に作用し,よく温めて軽度に発汗させ表証を取り除く(解肌)。 風寒の外感表証に使用されるが,表実・表虚証,有汗・無汗にかかわらずともに使用可能。
(1)外感表虚証の自汗・悪風・脈浮緩や易感冒症などに使用される。白芍・生姜・大棗・甘草などと用いる。〔代表方剤:桂枝湯〕。 |
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温経 |
経絡を温めて血行を促進し(通経),風寒湿の邪を散じ,疼痛を緩和する。
(1)上肢肩関節など上部の風寒湿痺証に多用されるが,熱痺や寒熱錯雑の痺証にも使用される。 |
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通陽化気 |
陽気を温め活発にしてよく巡らせ(通陽),さらに痰湿を吸収し除く(化気)。以下の病態に使用される。
(1)肺や脾胃に痰飲が停滞し陽気が通りにくくなった病態。 |
[注意点]温性が強いため,陰虚証・温熱性の疼痛・出血症には禁忌。妊婦・月経過多症には慎重に用いる。
(管理No.01-031)
桂皮 ・肉桂
[基原]クスノキ科ケイの樹皮。
[別名]肉桂 ・官桂
[性・味]熱・辛・甘
[帰経]腎・脾・心
[用法]2~5g。多量には使用しない。後下または短時間煎じる。粉末の服用も可 (沖服)(1~2g/回) 。赤石脂を畏れる。
陽気 を温め鼓舞する。温裏 の重要薬。烏頭 ・附子 とよく同時に使用される。下焦虚冷 の重要薬。よく腎脾の陽を温補 する。附子 より温脾 作用に優れる。
温補腎陽 |
腎陽(命門の火)を温め補う作用に優れ,腎陽虚治療の重要薬。 |
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温経散寒 |
よく寒邪を散じ血脈を通じて止痛する。虚寒性,寒凝気滞,寒性瘀血などの疼痛に使用されるが,特に脾胃の温補止痛作用に優れる。下焦虚寒性腹痛の常用薬。
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温経通脈 |
気血を温め,血をよく通じさせる(温通)。また本作用により,他薬の作用をよく発揮させる(宣導百薬)。
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[注意点]陰虚火旺・実熱裏証・血熱妄行性出血には禁忌。
(管理No.01-032)
決明子
[基原]マメ科コエビスグサやエビスグサの成熟種子。
[別名]草決明 ・馬蹄決明
[性・味]微寒・甘・苦
[帰経]肝・大腸
[用法]10~15g。粉末を服用してもよい (3~6g/回)。生決明子は寒性が強く,清肝明目・発散風熱作用に優れ,実証に多用される。炒決明子はこれらの作用は弱くなる。
熄風 し明目 する眼科の重要薬。通便 ,明目 作用を兼ねる平肝熄風薬 。眼病の重要薬。蒺藜子 に比べ,明目 作用に優れ潤腸通便 作用を有する。
清肝明目 |
肝火を冷まし降ろし風熱を散じ,視力を明瞭にする。肝熱や風熱による眼瞼眼球充血・眼瞼の発赤腫脹(目赤)や疼痛・流涙・羞明・夜盲症などに使用される。 |
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平肝熄風 |
よく肝陽を抑え風を静める 。釣藤鈎や天麻より薬力は弱い。肝陽上亢や肝熱によるめまい・頭痛・痙攣・眼花などに使用される。特に眼部症状が伴う病症に多用される。また近年では降圧作用もあるとされる。蒺藜子・菊花・釣藤鈎・牡蛎・白芍薬・牛膝などと用いる。 |
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潤腸通便 |
潤腸通便作用がある。寒性のため熱結や腸燥便秘症に使用される。 麻子仁・当帰・生地黄などと用いる。 |
[注意点]寒性で潤腸通便作用があるため,脾虚証の下痢には禁忌。
(管理No.01-033)
玄参
[基原]ゴマノハグサ科ゲンジンの根。
[別名]黒参 ・元参
[性・味]寒・甘・苦・鹹
[帰経]肺・胃・腎
[用法]10~15g。時に多量(~30g) に使用される。
清熱滋陰 しよく瀉火 する。陰虚火旺証 によく適する。生地黄 に比べ,瀉火 作用に優れかつ解毒 ・散結 ・利咽 作用を有するが止血作用はない。
清熱滋陰 ・涼血 |
1) 血熱を冷まし,陰分を滋養し,軽度ながら津液を潤す。
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瀉火解毒 ・利咽 |
滋陰するとともに上炎の火をよく冷まし降ろす。またよく解毒し利咽する。咽頭腫脹の常用薬。
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解毒散結 |
清熱解毒滋陰するとともに痰熱による結実を除く。 |
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他 |
潤腸通便作用もあり,陰虚の便秘証にも使用される。生地黄・麦門冬などと用いる。〔代表方剤:増液湯〕。 |
[注意点]脾虚証で寒湿がある証には禁忌。藜芦とは配合禁忌。
(管理No.01-034)
紅花
[基原]キク科ベニバナの管状花。
[性・味]温・辛
[帰経]心・肝
[用法]3~10g。活血通経として使用時,酒を加えて煎じてもよい。
広範囲に使用される活血祛瘀 の重要常用薬。桃仁 とともによく配合される。養血 作用も有し通絡 作用に優れる活血薬 。桃仁 に比べ,通絡 作用に優れ外傷打撲・風湿痺証 ・皮膚湿疹など外表 四肢の疾患に多用される。温性であり寒性瘀血証 により適する。
活血通経 |
活血すると同時に経絡の流通を良好にし,月経調整作用(調経)を有する。また軽度の補血作用もある。瘀血証の常用薬。
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祛瘀止痛 |
活血することで止痛する。瘀血による外傷打撲・胸痛(狭心症など)・風湿痺証の関節痛など各種疼痛に使用される。 |
[注意点]妊婦や過多月経には禁忌。
(管理No.01-035)
香附子
[基原]カヤツリグサ科ハマスゲの根茎。
[別名]香附米
[性・味]平・辛・微苦
[帰経]肝
[用法]5~10g。丸・散剤も可。
寒熱両証 に使用可能な,偏りのない気血調整通利薬 。よく肝気 を巡らせ調経止痛 する。
疏肝理気 |
よく肝気を巡らせ,気の流れを調整し止痛する。平性(やや温に偏る)であり,寒熱両証に使用可能。 |
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調経止痛 |
気を巡らせることで血滞を除き,月経を調整して止痛する。“血中の気薬《湯液本草》”,“気病の総司,女科の主帥《本草綱目》”などといわれ,婦人疾患の常用薬。肝気鬱結による月経不調(特に不定期月経)や月経痛(特に月経開始時痛)に多用される。そのほか,月経前の乳房脹満感(痛)・曖気・胸部痞塞感など。四物湯(川芎・当帰・白芍薬・熟地黄)とよく配合される。そのほか, 柴胡・艾葉・蘇梗などと用いる。〔代表方剤:芎帰調血飲〕。 |
[注意点]気虚や陰虚血熱には禁忌。
(管理No.01-036)
厚朴
[基原]モクレン科カラホウなどの樹皮。日本産(和厚朴)はホウノキの樹皮。
[別名]烈朴 ・川朴
[性・味]温・苦・辛
[帰経]脾・胃・肺・大腸
[用法]3~10g。虚証の脹満には少量とする。姜厚朴は温中散寒作用に優れる。
湿阻中焦 治療の重要薬。気 を下げ巡らせ,湿滞 をよく除く。蒼朮 に比べ行気 作用に優れる。
行気燥湿・ 導滞 |
燥性が強く,またよく気を巡らせて(行気),よく脾胃の湿や食積を除く(導滞)。寒湿や食積による脹満感(痛)治療の重要薬。苦寒燥湿薬を加え湿熱証にも使用可能。
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下気平喘 |
肺の痰湿を除き,呼吸を流暢にする。湿痰阻肺や肺気上逆の白色粘性多痰・咳嗽・呼吸困難・厚膩苔などに使用される。 |
[注意点]温燥性が強いため,湿滞証を確かめて使用する。陰虚証には禁忌。妊婦には慎重に使用する。
(管理No.01-037)
牛黄
[基原]ウシの胆嚢中に形成される結石。
[性・味]涼・苦
[帰経]心・肝
[用法]0.15~0.3g。
痰証 の意識障害を回復し、混乱した精神状態を安定させる。
豁痰開竅 |
熱痰 を去り、気の通り道をひらき、意識を清明にする。熱性けいれんなどの意識障害などに、朱砂・犀角・黄連・山梔子などと用いる。〔代表方剤:牛黄清心丸, 安宮牛黄丸〕 |
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清熱解毒 |
熱毒をよく冷まし除く。頸部リンパ筋腫・しこり・肺化膿症・虫垂炎などに、乳香・没薬・麝香などと用いる。〔代表方剤:犀黄丸, 牛黄解毒丸〕 |
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熄風定驚 |
内風を鎮め、驚悸 (動悸や不安)を鎮める。痙攣・意識障害・高熱に、釣藤鈎・全蝎・朱砂などと使用する。 |
[注意点]
高価な生薬であり、偽物が多い。
用量を誤ると、吐き気や下痢などの副作用が起こることがある。
妊娠中や授乳中の使用は避ける。
[主治]
高熱、神志昏迷、痙攣、狂躁
心悸不安、失眠、多夢
中風、痰熱内阻
咽喉腫痛、口舌生瘡
癲癇、小児驚風
[用法・用量]
通常、粉末にして服用する。
量が少ないため、他の薬と配合して用いることが多い。
[代表的な配合剤]
牛黄清心丸
牛黄救心丸
六神丸
[西洋医学的作用機序]
牛黄の主成分は胆汁酸であり、中枢神経系に作用して鎮静効果を示す。
また、炎症を抑え、解熱作用もある。
[歴史と文化]
牛黄は古くから珍重され、中国では皇帝の薬として用いられてきた。
日本でも高価な薬として扱われ、江戸時代には牛黄を服用することで不老長寿を願う風習もあった。
(管理No.01-043)
黒豆衣
[基原]マメ科ダイズの黒色種子品種(クロマメ)の種皮
[別名]料豆衣 ・穭豆衣
[性・味]平・甘
[帰経]肝・腎
[用法]3~9g。煎服。
腎陰 を補い,養血平肝 し,益腎平肝 の効能をもつ。肝腎陰虚 ・血虚肝旺 による眩暈 ・頭痛などに適し,除虚熱 ・止盗汗 にも働くので陰虚盗汗 に有効である。
益腎平肝 |
肝腎陰虚・血虚肝旺による頭痛・眩暈に,天麻・女貞子・枸杞子・菊花などと用いる。 |
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清虚熱・ 止盗汗 |
陰虚の盗汗に、牡蛎・五味子・地骨皮・浮小麦・黄耆などと使用する。 |
(管理No.01-038)
牛膝
[基原]ヒユ科ヒナタノイノコズチなどの根。
[性・味]平・苦・酸
[帰経]肝・腎
[用法]6~15g。生牛膝は活血・利尿・引火下行に,酒炒牛膝は補肝腎強筋骨に優 れる。
性は善く下行すといわれ①下部疾患に多用,②上炎 の火熱 の下降,③諸薬を下部に導く,④下降症状には使用せず,などの特徴を有する。
活血祛瘀 |
月経痛・月経不調・閉経・産後腹痛・難産・外傷打撲(特に下半身)などに使用される。 |
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.補肝腎・ 強腰膝 |
肝腎を補い血を巡らせて,筋骨を強め関節運動を伸びやかにする。平性であり寒熱両証に使用可能。 |
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利尿通淋 |
尿を下に導きよく利尿させる。熱淋・血淋・石淋などの淋病や排尿痛・血尿・小便不利などに使用される。瞿麦・滑石・冬葵子などと用いる。〔代表方剤:牛膝湯〕。 |
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引血引火下行 |
血を下降させたり,上昇した熱(火)を下に導き降ろす。 |
[注意点]下行する性質のため,遺尿・脾虚の下痢・妊婦・過多月経には禁忌。
(管理No.01-039)
呉茱萸
[基原]ミカン科ゴシュユやホンゴシュユの未成熟果実。
[性・味]熱・辛・苦
[帰経]肝・脾・胃
[用法]1.5~5g。外用も可。漫然と多量に使用すべきでない。
温燥性 が強く肝経 に作用し,理気 とともに寒湿 の邪を温散する。肝経 治療の重要薬。
温中散寒・ 止痛 |
散寒・理気止痛・燥湿の各作用に優れる。特に肝経の寒邪をよく温め散ずる。寒邪や寒湿停滞による腹痛・寒性の仙痛・月経痛・下肢寒湿の疼痛(脚気など),転筋などに使用される。 |
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温中止瀉 |
脾胃を温め下痢をよく止める。脾虚寒証や脾腎両虚証の寒湿性の下痢・五更瀉(夜明けの下痢)・嘔吐などに使用される。補骨脂・肉豆蔲・五味子などと用いる。〔代表方剤:四神丸〕。 |
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疏肝降気 |
肝気の疏泄を良好にし気逆を治する。 |
[注意点]辛熱性が強いため,気を損傷し熱を生じやすい。陰虚火旺証には禁忌。
(管理No.01-040)
牛蒡子
[基原]キク科ゴボウの成熟果実。
[性・味]寒・辛・苦
[帰経]肺・胃・大腸
[用法]3~10g。丸・散剤も可。炒牛蒡子は寒性を弱め,中焦の陽気を損なわず, 虚弱者に使用される。
風熱 を散ずるとともによく解毒 する。薄荷 に比べ発汗力は弱いが,優れた清熱解毒 作用を有す。
発散風熱 ・清利咽頭 |
風熱を散じる。一般的な辛涼解表薬。
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清肺熱 |
肺熱を除き,肺気をよく流通させ(宣肺),痰の喀出を容易にし(祛痰),よく止咳する。風熱咳嗽のほか陰虚の咳嗽にも使用される。 |
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清熱解毒 |
優れた清熱解毒作用を有し,風熱や熱毒による咽頭腫脹(扁桃腺炎)や皮膚化膿症などに使用される。 |
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解毒透疹 |
薄荷・蟬退と同様に,風熱を散じるとともに熱毒を排出することにより,透疹させる。薄荷より解毒作用に優れる。麻疹の初期や湿疹が出切らないもの,風熱の発疹などに使用される。止痒作用もある。蟬退・薄荷・荊芥・葛根などと用いる。〔代表方剤:透疹湯,竹葉柳蒡湯〕。 |
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潤腸通便 |
便通を促進する 。便秘傾向のある風熱表証に用いるとよい。 |
[注意点]通便作用があるため,脾虚の下痢には禁忌。
(管理No.01-041)
五味子
[基原]マツブツ科チョウセンゴミシの成熟果実。
[性・味]温・酸
[帰経]肺・腎・心
[用法]2~6g。粉末も可 (1~3g/回)。砕いて使用。
補益 作用と潤性 を有する広範囲に使用可能な重要収斂薬。特に肺腎両虚証 に使用され,かつ虚脱証 にも使用可能。
収斂固澁 |
良好な収斂作用を有し,下記の広範囲な病態に使用される。
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益気生津 |
益気するとともに津液を潤し口渇を止める 。 |
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寧心安神 |
心陰を滋養し心神を安定させる。また補腎作用もある。心腎陰虚 による心神不安の動悸・不眠多夢・健忘などに使用される 人参・麦門冬・生 地黄・酸棗仁などと用いる。〔代表方剤:天王補心丹〕。 |
[注意点]表証を伴う病症・実熱証・初期の咳嗽などには使用しない。
(管理No.01-042)