薬草辞典-か行

 

艾葉がいよう

がいよう

[基原]キク科ヨモギなどの若い全草や葉。

[性・味]温・苦・辛

[帰経]肝・脾・腎

[用法]3~10g。外用も可。生艾葉は温経止痛,炒炭文葉は温経止血に優れる。咳嗽に使用するときは後下がよい。

下焦虚寒証げしょうきょかんしょうによる出血や疼痛を除く重要薬。

温経止血・
調経安胎


経絡を温めるとともに止血する 。また月経調整作用,安胎作用もある。特に下焦をよく温め下焦の虚寒症に多用される。
(1) 性器出血(崩漏)・過多月経・妊娠時不正出血などに多用される。熟地黄・阿膠・当帰などと用いる。〔代表方剤:芎帰膠艾湯〕。
(2)中焦虚寒の吐血などに使用される 。乾姜・側柏葉などと用いる。 〔代表方剤:柏葉湯〕 。
(3) 血熱妄行の吐血・鼻出血などに,反佐薬として使用される。鮮文葉・鮮地黄・鮮側柏葉などと用いる。〔代表方剤:四生丸〕。

散寒止痛

経絡・子宮を温め寒湿を除き止痛する。下焦虚寒性の腹痛 ・月経痛・白色や透明の帯下・月経不順・不妊などに多用される。単味の服用や熱した艾葉で局所を温めてもよい。
①下焦の虚寒には,香附子・肉桂・当帰・黄耆・続断 などと用いる。〔代表方剤:艾附暖宮丸)。
②脾胃虚寒の腹痛・下痢には,生姜・陳皮・呉茱萸・香附子などと用いる。〔代表方剤:艾姜丸〕。

除湿止痒・
平喘

温燥性であり,寒湿を除く。
(1)皮膚湿疹や瘙痒に使用される。煎薬で外洗する。地膚子・白癬皮などと用いる。
(2)肺中の寒痰を除く。寒性の透明多痰・咳嗽・呼吸困難などに使用される。

[注意点]温燥性であり,陰虚血熱証には慎重に使用する 。

(管理No.01-011)

 

夏枯草かごそう

かごそう

[基原]シソ科ウツボグサの花穂

[性・味]寒・苦・辛

[帰経]肝・胆

[用法]10~15g。膏剤,外用も可。

肝火かんかを冷まし明目めいもくし,結実けつじつを散じる。山梔子や竜胆の二薬に比べ,清肝火作用は弱いが肝陰不足にも使用可能。さらに消痰散結しょうたんさんけつ作用を有する。

清肝火・明目

肝火を冷まし,引き降ろす。また頭部や眼部をすっきりと明瞭にさせる(清頭目)。

(1) 肝火上炎や肝陰虚による肝陽上亢の頭痛・眼球結膜充血・眼痛・めまいなどに使用される。
①菊花・決明子・黄芩・石決明・柴胡などと用いる。〔代表方剤:竜胆瀉肝湯〕。
②肝陰虚証には当帰・生地黄・白芍薬などと用いる。
(2) 肝火による眼球結膜充血・羞明・流涙,肝陰虚による夜間や苦寒薬で増悪する眼球(目珠)の疼痛に使用される。菊花・枸杞子・白芍薬などと用いる。〔代表方剤:補血散〕。

消痰散結

痰火が鬱して生じた瘰癧・癭瘤・乳腺炎や乳腺腫・結実した皮膚化膿症・耳下腺腫〔痄腮〈ささい〉〕などに使用される。昆布・海藻・貝母・牡蛎などと用いる。〔代表方剤:夏枯草膏〕。

(管理No.01-012)

 

何首烏かしゅう

かしゅう

[基原]タデ科ツルドクダミの塊根。

[性・味]微温・甘・苦・澁

[帰経]肝・腎

[用法]10~20g。飲用・軟膏・酒剤・丸・散剤にも使用可。製何首烏は養血滋陰作用に,生何首烏は潤腸通便・截瘧解毒作用に優れる。

燥性そうせい粘膩性ねんじせいが弱い温和な補血薬ほけつやく

養血滋陰

陰血をよく補う。温性と燥性は弱く,熟地黄のような粘膩性も少なく,薬性の温和な補血薬。
(1)血虚証によるめまい・動悸・不眠などに使用される。当帰・白芍薬・熟地黄・川芎などと用いる。
(2)肝腎陰虚証による腰痛・腰下肢脱力感・耳鳴・遺精・月経不調などに使用さる。特に白髪に有効とされる。熟地黄・女貞子・菟絲子などと用いる。〔代表方剤:首烏延寿丹〕。

潤腸通便

腸を潤し気を降ろして排便を促進する。血虚や腸燥の便秘に使用される。当帰・麻子仁などと用いる。

截瘧・解毒・
止痒

(1)気血両虚証や陰虚証の慢性の瘧疾に使用される。人参・当帰・生姜・青蒿などと用いる。〔代表方剤:何人飲〕。
(2) 慢性化した陰虚証の皮膚化賑症・瘰癧などに使用される。
(3) 補血することで風湿邪を去り止痒する。血虚証の皮膚瘙痒症・湿疹などに使用される。荊芥・防風・苦参・金銀花・蒺藜子などと用いる。〔代表方剤:当帰飲子,何首烏散〕。

近年では,高脂血症・動脈硬化症・高血圧などにも応用されている。

[注意点]下痢や強い痰湿証には使用しない。

(管理No.01-013)

 

莪朮がじゅつ

がじゅつ

[基原]ショウガ科ガジュツの根茎。

[別名]蓬莪朮ほうがじゅつ

[性・味]温・辛・苦

[帰経]肝・脾

[用法]3~10g。醋炒莪朮は破血作用に,生莪朮は行気止痛作用に優れる。作用が強く,正気の損傷を防ぐために益気補血薬を配合すべきである。

破血行気止痛はけつこうきしつう作用と消腫作用を有する活血薬かっけつやく三稜さんりょうと薬効が類似し,よくともに配合される。温性で,“気中きちゅうけつを治す《本草網目ほんぞうこうもく》”といわれ,三稜さんりょうに比べ行気力こうきりょくに優れ良好な止痛消積しつうしょうせき作用を有する。

破血行気

気血を巡らせ瘀血を除き,腫塊や結実を散じ,止痛する。強い活血作用(破血)を有し,同時に良好な行気作用を有する。気滞瘀血による腹部腫瘍(癥瘕・積聚)・肝腫大・季肋部痛・腹痛・閉経などに使用される。特に有形で実体のある腫瘍(癥・積)に多用される。近年では子宮外妊娠の血腫にも使用される。
①癥瘕積聚・閉経には,牛膝・延胡索・川芎・鬱金などと用いる。〔代表方剤:三稜丸,三楂煎丸〕。
②虚証の瘀血には,人参・黄者・当帰などと用いる。
③子宮外妊娠に,丹参・乳香・没薬・当帰などと用いる。〔代表方剤:宮外孕方〕。

行気消積

気を巡らせ鬱滞を除き止痛する。気をよく巡らせ食積をよく緩和する。気滞が強い食積などによる腹部脹満痛 (感)・腹部痞塞悶絶感・曖気・呑酸・厚苔などに使用される。
①食積気滞には,青皮・麦芽・檳榔子・山楂子などと用いる。〔代表方剤:三稜煎,木香檳榔丸〕。
②脾胃虚証の食積には,人参・白朮などと用いる。

[注意点]月経過多・妊婦には禁忌。

(管理No.01-014)

 

滑石かっせき

かっせき

[基原]正品は天然の含水ケイ酸アルミニウムおよび二酸化ケイ素からなる粘土物質(加水ハロサイト・軟滑石)とされる 。中国では天然の含水ケイ酸マグネシウムである鉱物学上の滑石(タルク)を正品とする。

[性・味]寒・甘

[帰経]胃・膀胱

[用法]10~15g。包煎。外用も可。

寒性かんせい利水滲湿薬りすいしんしつやく車前子しゃぜんしに比べ,清熱せいねつ作用に優れ,解暑げしょ作用と収湿しゅうしつ作用を有する。

清熱利湿

清熱作用に優れ,寒性であり下焦の湿熱を尿より排泄し除く。湿熱による熱淋の排尿痛・褐色尿・頻尿・排尿困難・小便不利や浮腫などに使用さ れる。また石淋にも用いられる。
①熱淋には,車前子・木通・山梔子・沢瀉・瞿麦・茯苓などと用いる。〔代表方剤:五淋散,八正散〕。
②石淋には,海金沙・金銭草・石葦などと用いる。

清熱解暑

暑邪を冷まし湿邪を除く。
(1)暑湿証の口渇・煩躁・ほてり・小便不利・下痢などに使用される。甘草・白扁豆・佩蘭などと用いる。〔代表方剤:六一散〕。
(2) 湿温気分証の小便不利・濃縮尿・身体の重だるさ・午後の熱感などに使用される。黄芩・通草・薏苡仁・杏仁などと用いる。〔代表方剤:三仁湯,黄芩滑石湯〕。

収澁収湿

清熱すると同時に湿疹などの滲出液を抑制する。湿疹・汗庖(あせも) などに使用される。主に単味か煅石膏と炉甘石の混合粉末を塗布する。

(管理No.01-015)

 

藿香かっこう

かっこう

[基原]シソ科パチョリの全草。

[性・味]微温・辛

[帰経]脾・胃・肺

[用法]5~10g。長時間煎じない。後下が望ましい。藿香葉は解表,藿香梗は和中,鮮藿香は解暑の各作用にそれぞれ優れる。

代表的な芳香化湿薬ほうこうかしつやく化湿和中解暑かしつわちゅうげしょの重要薬。佩蘭はいらんに比べ,温燥性おんそうせいが強く止嘔・止痢作用に優れる。

化湿・
解表解暑


外感や内傷による脾胃の湿を除き,暑邪を散じる。また解表作用を有する。
(1)湿困脾胃の胃腹部脹満・悪心・嘔吐・下痢・食欲不振・身体の重だるさ・ 膩苔などに使用される。蒼朮・陳皮・厚朴などと用いる。〔代表方剤:不換金正気散〕。
(2)暑湿証に使用される。夏季の外感風寒や寒湿による悪寒発熱・頭痛頭重・胸苦しさ・腹痛・嘔吐・下痢・膩苔などの症状。紫蘇・厚朴・陳皮・茯苓などと用いる。〔代表方剤:藿香正気散〕。
(3)湿温証初期の悪寒発熱・頭重・身体の重だるさ・胸腹部痞悶感・腹部脹満・ 下痢・膩苔などに使用される。
①湿が熱より盛んで,身体の重だるさ・ロ内粘り感・無口渇などの症状には,半夏・厚朴・杏仁・茯苓などと用いる。〔代表方剤:藿朴夏苓湯)。同病態で腹部脹満・悪心・嘔吐などが強いときには,佩蘭・陳皮・半夏・大腹皮などと用いる。〔代表方剤:雷氏芳香化濁方〕。
②湿熱がともに盛んで熱感・濃縮尿などの症状には,菌蔯蒿・黄芩・滑石などと用いる。〔代表方剤:甘露消毒丹〕。

和中止嘔

湿を除き冑機能を整え止嘔する。湿邪による胃部痞塞・悪心・嘔吐・吃逆・膩苔などに使用される。寒熱証ともに使用可能だが,寒湿に適する。妊娠性嘔吐や小児の嘔吐下痢にも用いられる。
①寒湿嘔吐には,半夏・丁香・陳皮などと用いる。〔代表方剤:藿香半夏湯〕。
②湿熱性には,黄連・竹筎などと用いる。
③妊娠性嘔吐には,砂仁・半夏などと用いる。

鼻渊にも使用される。また煎液の含嗽で口臭を除く。

[注意点]暑温証や陰虚火旺には禁忌。

(管理No.01-016)

 

葛根かっこん

かっこん

[基原]マメ科クズの周皮を除いた根。

[性・味]平(やや涼)・甘・辛

[帰経]脾・胃

[用法]10~15g。煨葛根は昇陽止瀉作用に,生葛根は生津・透疹・解表に優れる。

浮性があり,外表がいひょうでは退熱たいねつ透疹とうしんにより表邪ひょうじゃを去り,内では昇陽しょうよう生津せいしんによりかつを止める。

解表退熱

軽度の発汗作用があり,鬱熱を発散させる。生津により筋を緩める作用があるため,項背の強ばり・ロ渇を伴う外感表証に多用される。そのほか,発熱悪寒・鼻腔乾燥・頭痛・四肢倦怠などにも用いられる。風寒・風熱の表証に使用可能。
①風寒表証には,桂枝・麻黄・白芍などと用いる。(代表方剤:葛根湯 )。
②風熱表証で鬱熱を帯びたための頭痛・熱感・微悪寒・眼痛などには,柴胡・黄芩・石膏 などと用いる。〔代表方剤:柴葛解肌湯〕

透疹

発散作用により鬱した毒を皮膚の表面に出したり,肌腠の熱邪を取り除く。発熱・ロ渇や下痢などを伴う麻疹の初期に多用される。升麻・芍薬・甘草などと用いる。〔代表方剤:升麻葛根湯 〕。

昇陽止潟

脾胃の気を上昇させることで下痢を止める。湿熱や脾虚の下痢に多用される。
①湿熱の腹痛・テネスムス・黄苔・ロ渇を伴う下痢には,黄芩・黄連などと用いる。〔代表方剤:葛根黄芩黄連湯)。
②脾虚の下痢には,人参・白朮・茯苓・黄者・木香 などと用いる。〔代表方剤:七味白朮散)

生津止渇

津液を潤し(生津)口渇を止める。口渇を伴う外感表証や消渇などに多用される 。麦門冬・天花粉・五味子などと用いる。〔代表方剤:麦門冬飲子〕。

[注意点]表虚の多汗には禁忌。

(管理No.01-017)

 

栝楼根かろこん

かろこん

[基原]ウリ科シナカラスウリなどの肥大根。

[別名]天花粉てんかふん・瓜蔞根・瓜呂根ともにかろこん・かろうこん花粉かふん

[性・味]寒・甘・微苦・酸

[帰経]肺・胃

[用法]10~15g。

胃熱いねつを冷まし,肺燥はいそうをよく潤す。清熱せいねつ作用は芦根ろこんより劣るが,生津作用に優れ,熱が盛んでかつ津液不足しんえきふそくの病証や消渇病しょうかちびょうに多用される 。

清熱生津・
潤燥


肺や胃の熱を冷まし,よく津液を潤し(生津)口渇を止める 。 生津作用はより優れる。〔代表方剤:柴胡桂枝乾姜湯〕
(1) 熱病や熱病後期の津液不足に使用される。
①熱盛時には,知母・石膏などと用いる。
②熱病後期には,麦門冬・生地黄・石斛・沙参などと用いる。
(2)温病気分証などの風熱表証で津液不足のため口渇を伴う病態に使用される。 芦根・菊花・薄荷・金銀花などと用いる。
(3) 消渇病にも使用される。知母・葛根・五味子などと用いる。〔代表方剤:玉液湯〕。

潤肺化痰

肺熱を冷ます(清肺)とともに肺燥を潤し,化痰して咳嗽を止める。肺熱の陰液不足による粘稠燥痰・乾咳・喀出困難な痰・血痰などに使用される。天門冬・麦門冬・生地黄・貝母・桑白皮などと用いる。〔代表方剤:沙参麦門冬湯,貝母栝楼散〕。

消腫排膿

清熱瀉火とともに膿を排泄し腫瘍を縮小させる。皮膚化膿症(排膿前,排膿後ともに可)・乳腺炎・外傷などに使用される。外用も可。連翹・金銀花・ 浙貝母・蒲公英などと用いる。〔代表方剤:仙方活命飲,復元活血湯〕。

[注意点]潤腸通便傾向にあるので,脾胃虚寒証や下痢には禁忌。

(管理No.01-018)

 

甘草かんぞう

かんぞう

[基原]マメ科のウラルカンゾウなどの根およびストロン。

[別名]国老こくろう

[性・味]平・甘

[帰経]脾・肺・心

[用法]2~6g。諸薬の調和には少量 (2~3g),心気虚証などの君薬としては中量 (5~10g),急性中毒の緩和には多量 (15~30g)を使用する。丸・散剤・外用も可。甘遂かんすい大戟たいげき芫花げんかとは相反そうはん

補気力ほきりょくは弱いが,広範囲に使用される潤性じゅんせい補気薬ほきやく大棗たいそうとよく同時に使用される緩和補気薬かんわほきやく

補気心脾

脾胃や心気の機能を補い,脾虚や心気不足を改善する。補気力は弱く,他の補気薬の補助として使用される。
(1) 脾胃気虚証の食欲不振 ・下痢・倦怠感などに使用される。人参 ・白朮・茯苓などと用いる。〔代表方剤:四君子湯〕。
(2) 心気虚の動悸・脈結代などに使用される。桂枝・麦門冬・五味子・阿膠などと用いる。 〔代表方剤:炙甘草湯〕。
(3) 心気を補い,心神を安定させる(養心安神)。心気虚証や臓躁証による精神情動失調に使用される。大棗・小麦・酸棗仁・柏子仁・竜骨・牡蛎などと用いる。〔代表方剤:甘麦大棗湯〕。

潤肺止咳

潤性があり,肺を潤し止咳する。薬性は緩和で平性のため,寒熱虚実・有痰無痰を問わず使用可能だが,特に燥痰・熱痰に適する。
①外感風寒の咳嗽には,麻黄・杏仁・生姜などと用いる。〔代表方剤:三拗湯〕。
②外感風熱の咳嗽には,桑葉・菊花・桔梗などと用いる。〔代表方剤:桑菊飲〕。
③肺熱の咳嗽には,麻黄・杏仁・石膏などと用いる。〔代表方剤:麻杏甘石湯〕。
④肺燥の咳嗽には,桑葉・貝母・沙参・杏仁・麦門冬などと用いる。〔代表方剤:桑杏湯〕。
⑤肺の寒飲停滞による咳嗽・透明多痰などには,乾姜・細辛などと用いる。〔代表方剤:小青竜湯,甘草乾姜湯〕。

緩急止痛

急迫症状を緩め(緩急)止痛する。
(1)胃部 ・腹部・季肋部などの痙攣性疼痛に使用される。
①腹部虚寒の腹痛には,桂枝・生姜・大棗などと用いる。〔代表方剤:小建中湯〕。
②気滞の季肋部痛には,柴胡・白芍・当帰・白朮などと用いる。〔代表方剤:加味逍遙散 ,四逆散〕。
(2)血虚による筋肉の痙攣や疼痛(転筋)を緩和する。芍薬・木瓜・鶏血藤などと用いる。〔代表方剤:芍薬甘草湯〕。

瀉火解毒

良好な解毒作用や薬性の緩和作用を有する。
(1)熱毒による咽頭の発赤腫脹疼痛に使用される。桔梗・玄参・牛蒡子・山豆根などと用いる。〔代表方剤:甘草湯,桔梗湯,甘桔湯〕。
(2)皮膚化膿症に使用される。熱証の外寒証の化膿症にも用いられる。
①熱証には,金銀花・連翹・蒲公英などと用いる。
②寒証には,熟地黄・肉桂・白芥子などと用いる。〔代表方剤:陽和湯〕。

調和

(1)他薬による脾胃の損傷を防止し保護する。脾胃虚弱者に多用される。
(2)薬性を緩和する。毒性薬や作用の強い薬物の薬性を緩和し,方剤中の諸薬を調和する。特に附子や乾姜の熱性や傷陰の緩和に適する。方剤中に配合され,薬物の強い薬性を緩和し脾胃の機能を調べることで,方剤中の薬物を協調させ方剤全体を調整する(諸薬の調和)。
(3)食中毒を緩和する

近年では消化性潰瘍に有効とされる。烏賊骨・瓦楞子・陳皮などと用いる。

[注意点]長期や多量の服用などで,低カリウム血症による浮腫・痙攣・四肢脱力無力感・しびれ・頭痛などが出現することがある。そのおそれがあるときや出現時には,沢瀉・茯苓などの利水薬や利水剤(五苓散など),あるいは西洋薬のカリウム補給剤を使用する。

(管理No.01-019)

 

旱蓮草かんれんそう

かんれんそう

[基原]キク科タカサブロウの全草。

[別名]墨旱蓮ぼくかんれん

[性・味]寒・甘・酸

[帰経]肝・腎

[用法]10~15g。丸 ・散・膏剤,外用も可。

薬性が温和な補肝腎薬ほかんじんやく熟地黄じゅくじおう山茱萸さんしゅゆ枸杞子くこしより補陰ほいん作用は劣る。よくともに配合される。女貞子じょていしより補肝腎ほかんじん作用は劣るが,涼血止血りょうけつしけつ作用を有する。

補肝腎陰

肝腎の陰を補う 。膩性が少なく作用は比較的温和。肝腎陰虚によ る頭重・めまい・耳鳴・腰下肢倦怠感・遺精・白髪などに使用される。特に陰虚内熱のものに適する。女貞子・熟地黄・黄精・菟絲子・枸杞子・何首烏などと用いる。

涼血止血

養陰すると同時に血熱を冷まし止血する。陰虚血熱による喀血・鼻出血・血尿・便血・崩漏・皮下出血などの各種出血症に多用される。生地黄・阿膠・蒲黄・車前草・茜草根などと用いる。〔代表方剤:二草丹〕。外傷出血や咽頭炎にも使用される。つぶして塗布する。

[注意点]寒性であり,脾胃虚寒証の下痢,腎陽虚証には使用しない。

(管理No.01-020)

 

桔梗ききょう

ききょう

[基原]キキョウ科キキョウの根。

[性・味]微温・苦・辛

[帰経]肺

[用法]3~6g。肺癰治療には多量(~10g)に使用する。

外感風熱咳嗽がいかんふうねつがいそうに多用される止咳薬。宣肺せんぱい作用に優れ昇散性が強い肺経気分はいけいきぶんの重要薬。排膿作用を有す。前胡ぜんごに比べ化痰かたん作用に優れ寒熱両証に使用される。

宣発化痰・
利咽


肺の宣発作用を高めて,咽頭を利し開音し,よく痰を除去し止咳する。また風熱を発散する。肺寒・肺熱両証の咳嗽多痰・胸部痞塞感,外感風寒の咳嗽や外感風熱の咳嗽.咽頭痛・嗄声などに使用される。
①外感風寒咳嗽には紫蘇葉・杏仁・陳皮などと用いる。〔代表方剤:杏蘇散〕。
②外感風熱咳嗽には,桑葉・菊花・牛蒡子などと用いる。〔代表方剤:桑菊飲〕。
③肺の気痰交結による胸部痞塞感には,枳殻・瓜萎などと用いる。
④咽頭痛と嗄声には,黄芩・甘草・蟬退などと用いる。〔代表方剤:清音丸〕。

排膿

良好な排膿作用があり,肺癰・咽頭炎・扁桃の化膿・皮膚化膿症などに使用される。
①咽頭炎には,薄荷・甘草・射干・板藍根・石膏・魚腥草などと用いる。〔代表方剤:桔梗湯 《金匱要略》,三物白散〕。
②肺癰には,甘草・敗醬草・桑白皮・薏苡仁などと用いる。 〔代表方剤:桔梗湯《外台秘要》〕。
③皮膚化膿症には,金銀花・連翹・枳実・柴胡などと用いる。〔代表方剤:排膿散及湯 ,十味敗毒湯 ,清上防風湯〕

開提肺気

(1)肺気の鬱滞を除くことで,表裏関係の大腸や胃の気を降ろしその機能を整える。 胃腸の気滞による下痢・裏急後重などに使用される 。
(2)肺気鬱滞を除き順調に巡らして通調水道作用を高めて利尿を促進する。排尿困難(癃閉)などに使用される。

“舟楫之剤”,“載諸薬上浮”といわれ,上昇する性質があり,諸薬をもち上げ上焦の病症に導く(引経薬)。また陽気の下降を防ぎ上昇させる。慢性下痢や呼吸困難などに使用される。〔代表方剤:参苓白朮散,昇陥湯〕。

[注意点]陰虚の慢性咳嗽や喀血には禁忌。多量の服用で悪心嘔吐を引き起こすことがある。

(管理No.01-021)

 

菊花きくか

きくか

[基原]キク科キクの頭花。

[性・味]微寒・甘・苦

[帰経]肝・肺

[用法]5~10g。丸剤も可。生菊花を擦り潰し患部に塗布してもよい。

風熱ふうねつを軽く散じるとともに清肝明目せいかんめいもく作用を有する。桑葉そうように比べ清肝せいかん作用に優れ,かつ清熱解毒せいねつげどく作用を有する。潤性じゅんせい桑葉そうようより強く、陰虚証いんきょしょうにも使用可能。肝火上炎かんかじょうえん肝陰不足証かんいんふそくしょうに多用される。

疎散風熱

発散力は弱く,風熱を軽く散らす(疏散)。風熱表証に用いられるが,作用を強化するため,他の疎散風熱薬と配合される。甘性であり潤す性質(潤性)があり,燥性の病態によく使用される。上焦の風熱を除き頭部を明瞭にする(清頭)。頭痛を伴う風熱表証や風熱に多用される。薄荷・連翹・芦根・桔梗などと用いられる。〔代表方剤:桑菊飲〕

清肝明目

肝経の熱を冷まして降ろし(清肝瀉火),視力を明瞭にする(明目)が,より清肝作用に優れる。
(1)肝火や風熱による頭痛・めまい・眼痛・結膜充血・眼花・羞明などに多用される。
①肝火上炎による結膜充血・眼部の腫脹疼痛には,桑葉・夏枯草・決明子・木賊・蒺藜子などと用いる。〔代表方剤:菊花散,菊花茶調散〕。
②肝陰不足による肝陽上亢証のめまい・頭痛・眼花には,桑葉・釣藤鈎・牡蛎・石決明・白芍薬など。〔代表方剤:釣藤散 〕。
③風熱による眼球結膜の充血・目の腫脹・頭痛・羞明などには,桑葉・ 決明子・車前子・薄荷・連翹 などと用いる。〔代表方剤:桑菊飲〕。
(2)甘性で陰を損傷しないため,肝腎陰虚証のめまい・眼花・羞明・霞目などに使用される。枸杞子・生地黄・女貞子・山茱萸・黒胡麻などと用いる。〔代表方剤:杞菊地黄丸〕。

清熱解毒

清熱解毒作用もあり,皮膚化膿症に使用される。本作用は野菊花がより強い。

(管理No.01-022)

 

枳実きじつ

きじつ

[基原]ミカン科酸橙などの幼果。

[性・味]寒・苦・辛

[帰経]脾・胃・大腸

[用法]3~10g。中気下陥の内蔵下垂などには 15g程度使用する。外用も可。

強力な行気こうき力を有し,凝縮停滞したたん食積しょくせきを取り除く寒性の理気薬りきやく熱証ねつしょうをはじめ,各種の気滞きたいにも多用される。枳殻きこくに比べ行気こうき力が強く,中下焦ちゅうげしょう(胃腹部) に主に作用する。

破気消積

強力に気を巡らせ脹満・停滞を除く 。気滞や食積に多用される。
(1) 気滞による胸部・心下部・季肋部・乳房の痞塞感や脹満痛・食欲不振・焦燥感・曖気・四肢冷感・月経痛などに使用される 。柴胡・芍薬・甘草・香附子などと用いる。〔代表方剤:四逆散〕。
(2) 食積気滞の腹部脹満感(痛)・腐臭性曖気などに使用される。食積には山楂子・神麴・麦芽などと用いる。
(3) 腹痛脹満を伴う気秘・熱秘などの便秘に使用される。大黄・厚朴などと用いる。 [代表方剤:大承気湯,小承気湯〕。
(4) 脾胃虚証の食積や気滞にも使用される。食後脹満感(痛)や心下痞塞感・曖気・食欲不振・倦怠感など。白朮・厚朴・半夏などと用いる。〔代表方剤:枳朮丸,枳実消痞丸〕。
(5) 熱性の気滞による心下痞塞感・熱感や寒熱往来・季肋部脹満痛(感)・嘔吐などに使用される。山楂子・豆鼓・柴胡・黄芩などと用いる。〔代表方剤:大柴胡湯,枳実梔子鼓湯〕。
(6) 瘀血気滞の腹部脹満感(痛)などにも使用される。桃仁・紅花・当帰・川芎などと用いる。〔代表方剤:通導散〕。

化痰除痞

行気作用により痰を除く。気と痰の鬱滞(気痰交結)に使用される。
(1) 痰熱の肺の停滞(痰熱結胸)による胸部や胃部痞塞感(痛)・黄色粘性痰・黄膩苔などに使用される。栝楼仁・黄連・半夏などと用いる。〔代表方剤:清気化痰丸〕。
(2)寒痰の肺の停滞(痰阻胸陽)による胸部痞塞感(痛)・呼吸困難・白膩苔などに使用される。薤白・栝楼仁・桂枝・厚朴などと用いる。〔代表方剤:枳実薤白桂枝湯〕。
(3) 痰熱や痰によるめまい・不眠・悪心・嘔吐・焦燥感・膩苔などに使用される。 半夏・竹筎・茯苓などと用いる。〔代表方剤:竹筎温胆湯,茯苓飲〕。
(4) 大腸湿熱の腹痛下痢・裏急後重などに使用される。大黄・黄連・黄芩などと用いる。〔代表方剤:枳実導滞丸〕。

中気下陥証にも使用される 。黄耆・柴胡や補中益気湯にも配合される。

[注意点]脾胃虚証・妊婦には慎重に使用する。

(管理No.01-023)

 

亀板きばん

きばん

[基原]イシガメ科クサガメなどの腹甲 。

[性・味]寒・甘・鹹

[帰経]肝・腎・心

[用法]10~30g。砕いて煎じる。先煎。

鼈甲べっこうに比べ滋陰力じいんりょくに優れ,また補腎健骨ほじんけんこつ滋陰止血じいんしけつ作用を有する。

滋陰潜陽

肝腎の陰を滋養し,肝腎陰虚のために上昇(上浮)した陽気を抑え(潜陽),また内風を静める。滋陰力に優れ,重度の陰虚や津液不足の病態に使用される。
①骨蒸潮熱には,知母・黄柏・生地・地黄などと用いる。〔代表方剤:大補陰丸〕。
②めまい・頭重・顔色紅潮などには,生地黄・石決明・菊花・牛膝・玄参・代諸石などと用いる。〔代表方剤:鎮肝熄風湯〕。
③陰虚内動には,鼈甲・牡蛎・白芍・阿膠・麦門冬・地黄などと用いる。〔代表方剤:三甲復脈湯,大定風珠〕。
(1) 肝腎陰虚・陰虚内熱・温熱病などの津液消耗による骨蒸潮熱・盗汗・夜間のほてり・微熱・羸痩,紅色乾燥舌・無苔などに使用される。
(2)陰虚内風による,四肢痙攣・ふるえ・めまいなどに使用される 。

益腎健骨

精血を補い,筋骨を強くする。
(1) 腎陰虚による腰部下肢の筋萎縮・筋倦怠無力,小児の大・小泉門閉鎖遅延・筋骨発育不全・成長不全などに使用される 。熟地黄・知母・白芍・虎骨・鎖陽などと用いる。〔代表方剤:虎潜丸〕。
(2) 腎陰陽両虚の遺精・視力低下・腰部下肢萎縮などに使用される。拘杞子・人参・鹿茸などと用いる。〔代表方剤:亀鹿二仙膠〕。

滋陰養血止血

滋陰養血し経絡からの血の漏れを防ぎ(固経)止血する。陰虚血熱による崩漏・過多月経などに使用される。黄柏・阿膠・茜草などと用いる。〔代表方剤:固経丸〕。

養血補心

血を補い心神を安定させる。血虚による心神不安の動悸・不眠・健忘などに使用される。竜骨・遠志・菖蒲などと用いる。〔代表方剤:孔聖枕中丹〕。

[注意点]脾虚寒による下痢・食欲不振・もたれなどには使用しない。

(管理No.01-024)

 

亀板膠きばんきょう

きばんきょう

[基原]イシガメ科クサガメなどの腹甲を煮詰めて膠にしたもの。

[性・味]寒・甘・鹹

[帰経]肝・腎・心

[用法]3~9g。溶解(烊化)。

亀板きばんに比べ滋陰じいん養血ようけつ止血しけつ作用に優れる。

滋陰潜陽

肝腎の陰を滋養し,肝腎陰虚のために上昇(上浮)した陽気を抑え(潜陽),また内風を静める。滋陰力に優れ,重度の陰虚や津液不足の病態に使用される。
①骨蒸潮熱には,知母・黄柏・生地・地黄などと用いる。〔代表方剤:大補陰丸〕。
②めまい・頭重・顔色紅潮などには,生地黄・石決明・菊花・牛膝・玄参・代諸石などと用いる。〔代表方剤:鎮肝熄風湯〕。
③陰虚内動には,鼈甲・牡蛎・白芍・阿膠・麦門冬・地黄などと用いる。〔代表方剤:三甲復脈湯,大定風珠〕。
(1) 肝腎陰虚・陰虚内熱・温熱病などの津液消耗による骨蒸潮熱・盗汗・夜間のほてり・微熱・羸痩,紅色乾燥舌・無苔などに使用される。
(2)陰虚内風による,四肢痙攣・ふるえ・めまいなどに使用される 。

益腎健骨

精血を補い,筋骨を強くする。
(1) 腎陰虚による腰部下肢の筋萎縮・筋倦怠無力,小児の大・小泉門閉鎖遅延・筋骨発育不全・成長不全などに使用される 。熟地黄・知母・白芍・虎骨・鎖陽などと用いる。〔代表方剤:虎潜丸〕。
(2) 腎陰陽両虚の遺精・視力低下・腰部下肢萎縮などに使用される。拘杞子・人参・鹿茸などと用いる。〔代表方剤:亀鹿二仙膠〕。

滋陰養血止血

滋陰養血し経絡からの血の漏れを防ぎ(固経)止血する。陰虚血熱による崩漏・過多月経などに使用される 。黄柏・阿膠・茜草などと用いる。〔代表方剤:固経丸〕。

養血補心

血を補い心神を安定させる。血虚による心神不安の動悸・不眠・健忘などに使用される。竜骨・遠志・菖蒲などと用いる。〔代表方剤:孔聖枕中丹〕。

[注意点]脾虚寒による下痢・食欲不振・もたれなどには使用しない。

(管理No.01-025)

 

杏仁きょうにん

きょうにん

[基原]バラ科ホンアンズやアンズなどの種子。

[性・味]温・苦・甘

[帰経]肺・大腸

[用法]3~10g。後下するほうがよい。砕いて煎じる。

温性の止咳薬。止咳平喘しがいへいぜんの需要薬。

止咳平喘

肺気を降ろし痰を巡らせて止咳し呼吸困難を緩和する(平喘)。各種の邪による肺気鬱滞のための咳嗽・呼吸困難・白色痰などに使用される。配合薬により寒・熱・虚・実証や肺燥など各種の病態に使用可能。
①風寒咳嗽には, 麻黄・甘草・蘇葉などと用いる。〔代表方剤:三拗湯,杏蘇散〕。
②風熱咳嗽には,桑葉・菊名・薄荷などと用いる。〔代表方剤:桑菊飲〕。
③肺熱の喘息には,麻黄・石膏・甘草などと用いる。〔代表方剤:麻杏甘石湯 ,五虎湯,神秘湯〕。
④燥熱の咳嗽には,桑葉・貝母・沙参などと用いる。〔代表方剤:桑杏湯〕。

潤腸通便

大腸の気を降ろし,同時に腸を潤して通便する。腸燥の便秘に使用される。麻子仁・郁李仁・当帰・桃仁 ・枳実などと用いる。〔代表方剤:麻子仁丸,潤腸湯,五仁丸〕。

肺気を流暢にすることで,水道通調作用を高め,軽度に利水する。湿証の 浮腫・重だるさ,湿温病初期の重だるさ・頭重・悪寒・胸部痞塞感 ・午後の発熱などに使用される。湿温病初期には,滑石 ・厚朴・薏苡仁などと用いる。〔三仁湯〕。

[注意点]軽度の毒性があり ,多量の服用で嘔吐・下痢 ・痙攣・呼吸困難などの副作用が出現することがある。

(管理No.01-026)

 

金銀花きんぎんか

きんぎんか

[基原]スイカズラ科スイカズラなどの花蕾。

[別名]忍冬花にんどうか双花そうか二宝花にほうか

[性・味]寒・甘

[帰経]肺・胃

[用法]10~15g。解表には少量 (5~10g),熱毒が強いときには多量 (~60g) を使用する。炒炭金銀花は涼血止痢作用に優れる。

風熱ふうねつを散じ,熱を冷まし,下痢を止める。連翹れんぎょうに比べ,表熱ひょうねつの発散に優れ甘性だが胃を荒らさない。

清熱解毒

軽く浮き上がる性質があり,外表部の風熱を発散する。また裏熱を冷ます作用もある。温病初期(衛分)や気分,營分の各証に使用されるが,特に気分の治療に優れる。
(1)温病の初期や肺衛分証の発熱・咽頭痛・ロ渇・咳嗽などに使用される。連翹・荊芥・薄荷・牛蒡子などと用いる。〔代表方剤:銀翹散〕
(2)温病気分証の壮熱・煩渇・脈洪大などに使用される。連翹・石膏・知母などと用いる。〔代表方剤:銀翹石膏湯〕。
(3)温病營分や血分証で,熱邪の発散にも使用される。牡丹皮・生地黄・玄参・丹参などと用いる。〔代表方剤:清営湯〕。

散癰消腫

清熱解毒作用があり,皮膚化膿症に使用される。外科(皮膚科)の常用薬。熱毒による皮膚化膿症や腸癰(虫垂炎)・肺癰などに使用される。外用も可。蒲公英・野菊花・紫花地丁・黄芩などと用いる。〔代表方剤:五味消毒飲,仙方活命飲〕。

涼血止痢

血熱を冷まし下痢を止める 。熱性の下痢や膿血便に使用される 。葛根・黄連・白頭翁などと用いる。

清熱解暑作用もあり,暑熱証にも用いられる。

(管理No.01-027)

 

枸杞子くこし

くこし

[基原]ナス科クコやナガバクコの成熟果実。

[性・味]平・甘

[帰経]肝・腎

[用法]5~10g。丸 ・膏・酒剤,外用も可能。

補肝腎ほかんじんの代表薬。山茱萸さんしゅゆとよく同時に配合される。明目めいもく作用を有する。

補肝腎陰

山茱萸と同様に,肝血と腎精を滋養する。特に補肝陰作用に優れる。膩性は比較的弱く,作用は比較的温和である。また平性であり,腎陽虚証や血虚証にも使用される。
(1) 肝腎陰虚のめまい・頭重・腰下肢倦怠感・耳鳴や腎陰陽両虚証の尿失禁・陽萎・遺精などに使用される。さらに視力低下などにも用いられる。山茱萸・山薬・熟地黄・菟絲子などと用いる。〔代表方剤:左帰丸〕。
(2) 腎陰陽両虚証の羸痩・視力低下・遺精・陽萎などに使用される。熟地黄・山茱萸・肉桂・附子などと用いる。 〔代表方剤:右帰丸,右帰飲〕。
(3)血虚証の不眠多夢・白髪・顔色不良など使用される。当帰・何首烏・菟絲子・黄精などと用いる。〔代表方剤:七宝美髯丹〕。
(4)補肝を通して生津止渇する。そのため,消渇・温熱病の津液消耗などに使用される。山薬・天花粉・黄耆・生地黄などと用いる。

養肝明目

良好な明目作用を有する。肝腎陰虚や陰虚内熱上浮などによる霧視・視力低下・眼球乾燥・流涙・飛蚊症などに使用される。菊花・山茱萸・熟地黄などと用いる。〔代表方剤:杞菊地黄丸〕。

肺を潤し止咳する 。肺陰虚による慢性咳嗽(肺癆)などに使用される 。 麦門冬・知母・貝母・百部などと用いる。

[注意点]脾虚の下痢には使用しない。

(管理No.01-028)

 

苦参くじん

くじん

[基原]マメ科クララの根。

[性・味]寒・苦

[帰経]大腸・肝・腎

[用法]3~10g。丸・散剤,外用も可。

祛湿きょしつし利尿し,風熱ふうねつを除く。下焦湿熱げしょうしつねつ証や皮膚瘙痒症の多用薬。

清熱燥湿

清熱燥湿作用に優れ,湿熱の下痢や血便・黄疸に使用される。
①下痢には,木香・黄芩・甘草などと用いる。〔代表方剤:香参丸〕 。
②黄疸には,山梔子・竜胆草・茵蔯蒿などと用いる。

清熱利尿

清熱とともに比較的強い利尿作用を有する 。膀胱湿熱による小便不利・排尿困難 ・排尿痛や浮腫などに使用される 。蒲公英・沢瀉・車前子・貝母などと用いる。〔代表方剤:当帰貝母苦参丸〕 。

殺虫止痒

祛風清熱することで瘙痒感を抑え,疥癬やトリコモナスの活動を抑制する(殺虫)。外用も使用可。
(1)風湿熱の皮膚瘙痒症や湿疹・疥癬 ・皮膚化膿症などに使用される。防風・荊芥・蟬退・白蘚皮などと用いる。〔代表方剤:消風散 〕。
(2)下焦湿熱の黄色帯下・陰部瘙痒症(トリコモナスなど)に使用される。蛇床子・黄芩・黄柏などと用いる。[代表方剤:苦参散〕。

[注意点]苦寒性が比較的強く,胃を損傷しやすい。そのため多量や長期の服用は避ける。脾胃虚寒証には禁忌。伝統的に藜芦とは相反。

(管理No.01-029)

 

鶏血藤けいけっとう

けいけっとう

[基原]マメ科ムラサキナッフジなどのつる性の茎。

[性・味]温・苦・微甘

[帰経]肝

[用法]10~30g。

舒筋活絡じょきんかつらくを有する活血薬かっけつやく補血ほけつ作用も有し血虚証けっきょしょうにも使用される。

行血補血・
舒筋活絡


活血と同時に補血作用を有し,筋を緩め経絡の流通を良好にする。瘀血・血虚証ともに使用可能。
(1)月経痛・月経不順(過少月経など)・閉経などに使用される。
①瘀血証には, 川芎・桃仁・香附子・益母草などと用いる。
②血虚証には熟地黄・当帰・川芎・続断などと用いる。
(2)血虚証や血虚を伴う瘀血証の風湿痺証や中風後遺症の関節痛・しびれ・筋肉マヒなどに使用される。
①風湿痺証には,防風・牛膝・威霊仙・海風藤などと用いる。〔代表方剤:鶏血藤湯〕。
②気血両虚証の片マヒには,黄耆・当帰・桂枝などと用いる。
(3) 皮膚瘙痒症や虚寒性の胃痛(鈍痛・喜温喜按など)にも使用される。

[注意点]過多月経には使用しない。

(管理No.01-030)

 

桂枝けいし

けいし

[基原]クスノキ科ケイの若枝(嫩枝)。

[性・味]温・辛・甘

[帰経]心・ 肺・ 膀胱

[用法]3~10g。風湿痺証の疼痛には多量使用も可。丸・散剤も可。

表裏ひょうり陽気ようきを温め,表邪ひょうじゃを除き,気血きけつを巡らせる。

発汗解表

体表部に作用し,よく温めて軽度に発汗させ表証を取り除く(解肌)。 風寒の外感表証に使用されるが,表実・表虚証,有汗・無汗にかかわらずともに使用可能。

(1)外感表虚証の自汗・悪風・脈浮緩や易感冒症などに使用される。白芍・生姜・大棗・甘草などと用いる。〔代表方剤:桂枝湯〕。
(2)無汗・悪寒・頭痛・身体痛・脈浮緊などの外感の表寒実証に用いられる。 麻黄・杏仁・葛根・白芍薬などと用いる。〔代表方剤:麻黄湯,葛根湯〕。

温経

経絡を温めて血行を促進し(通経),風寒湿の邪を散じ,疼痛を緩和する。

(1)上肢肩関節など上部の風寒湿痺証に多用されるが,熱痺や寒熱錯雑の痺証にも使用される。
①風寒湿痺証には,羗活・防風・附子などと用いる。〔代表方剤:桂枝加附子湯〕。
②熱痺・寒熱錯雑痺証には,石膏・知母などと用いる。〔代表方剤:白虎加桂枝湯,桂芍知母湯 〕。
(2)寒による血の停滞(寒凝血滞)のための,月経痛・無月経(閉経)・腫瘍・胃痛などに使用される。
①月経痛や無月経には,川芎・当帰・白芍・呉茱萸などと用いる。〔温経湯〕。
②四肢の冷感には,細辛・木通・当帰などと用いる。〔当帰四逆加呉茱萸生姜湯〕。
③脾胃虚寒証の胃痛には,白芍・飴糖などと用いる。〔代表方剤:小建中湯〕。
④温経活血するために,牡丹皮・桃仁・紅花などを配合する。〔代表方剤:桂枝茯苓丸 〕。

通陽化気

陽気を温め活発にしてよく巡らせ(通陽),さらに痰湿を吸収し除く(化気)。以下の病態に使用される。

(1)肺や脾胃に痰飲が停滞し陽気が通りにくくなった病態。
①肺の寒飲停滞による咳嗽・水様透明痰・悪寒・発熱・無汗・顔面の浮腫などには,麻黄・細辛・乾姜などと用いる。〔代表方剤:小青竜湯〕。
②脾胃の水飲停滞によるめまい・動悸・嘔吐などには,茯苓・白朮・甘草などと用いる。〔苓桂朮甘湯〕。
(2)膀胱の気化不全による小便不利・浮腫など。猪苓・沢瀉・白朮などと用いる。〔代表方剤:五苓散〕。
(3)心陽不振により陽気が巡らず,胸痛・痞満・動悸が出現した病態。
①胸痛や胸部痞塞感・胸悶などには,薤白・瓜萎・枳実・厚朴などと用いる。〔代表方剤:枳実薤白桂枝湯〕。
②動悸・脈結代があるときには,炎甘草・人参などと用いる。〔代表方剤:炙甘草湯〕。

[注意点]温性が強いため,陰虚証・温熱性の疼痛・出血症には禁忌。妊婦・月経過多症には慎重に用いる。

(管理No.01-031)

 

桂皮けいひ肉桂にくけい

けいひ

[基原]クスノキ科ケイの樹皮。

[別名]肉桂にっけい官桂かんけい

[性・味]熱・辛・甘

[帰経]腎・脾・心

[用法]2~5g。多量には使用しない。後下または短時間煎じる。粉末の服用も可 (沖服)(1~2g/回) 。赤石脂を畏れる。

陽気ようきを温め鼓舞する。温裏おんりの重要薬。烏頭うず附子ぶしとよく同時に使用される。下焦虚冷げしょうきょれいの重要薬。よく腎脾の陽を温補おんぽする。附子ぶしより温脾おんぴ作用に優れる。

温補腎陽

腎陽(命門の火)を温め補う作用に優れ,腎陽虚治療の重要薬。
(1) 腎陽虚の下肢や四肢冷感・腰部下肢の脱力感や疼痛・頻尿・夜間尿・陽萎・遺精・淡白苔・脈細遅などに多用される。また,浮腫・小便不利・下痢などに使用される。附子・山茱萸・熟地黄・拘杞子などと用いる。〔代表方剤:八味丸 ,牛車気丸 ,右帰丸,右帰飲〕。
(2) 腎陽が衰え,浮き上がった陽気(虚陽上浮)を腎に引き下ろす(引火帰原)。 虚陽上浮による上熱下寒状態,すなわち眩暈・顔色紅潮・咽頭腫脹疼痛・不眠・動悸・舌淡紫色(上熱),下肢冷感(下寒)などに使用される。不眠に,黄連などと用いる。〔代表方剤:交泰丸〕。
(3) 腎不納気証による呼吸困難・咳嗽・白痰などに使用される。蘇子・前胡・厚朴などと用いる。〔代表方剤:蘇子降気湯,黒錫丹〕。

温経散寒
・止痛

よく寒邪を散じ血脈を通じて止痛する。虚寒性,寒凝気滞,寒性瘀血などの疼痛に使用されるが,特に脾胃の温補止痛作用に優れる。下焦虚寒性腹痛の常用薬。
(1) 脾胃虚寒証や脾腎両虚証の胃部腹部の冷痛・食欲不振・嘔吐・下痢などに使用される 。乾姜・附子・肉豆蒄・白朮・茯苓などと用いる。〔代表方剤:五積散,安中散〕。
(2) 寒疝腹痛や寒性の季肋部痛に使用される。呉茱萸・茴香などと用いる。
(3) 月経痛や産後腹痛・閉経などに使用される。当帰・川芎・熟地黄などと用いる。 〔代表方剤:理陰煎,殿胞煎,女金丹〕。
(4) 寒湿痺証の疼痛・腰痛などに使用される。桑寄生・杜仲・独活などと用いる。

温経通脈

気血を温め,血をよく通じさせる(温通)。また本作用により,他薬の作用をよく発揮させる(宣導百薬)。
(1)温通作用により気血の生長を鼓舞する 。この目的のため少量を補気補血薬に配合する。〔代表方剤:十全大補湯,人参養栄湯〕。
(2)膀胱気化を促進する目的で,利尿薬に配合される。
(3)托裏補虚作用を促進する目的で,癰瘍薬に配合される。虚寒性や気血両虚の陰疽・陳旧性や難治性化膿症などに使用される。
①陰疽には,熟地黄・鹿角膠・麻黄・白芥子などと用いる。〔代表方剤:陽和湯〕。
②気血両虚証には黄者・当帰などと用いる。〔代表方剤:托裏黄蓍湯,托裏散〕。

[注意点]陰虚火旺・実熱裏証・血熱妄行性出血には禁忌。

(管理No.01-032)

 

決明子けつめいし

けつめいし

[基原]マメ科コエビスグサやエビスグサの成熟種子。

[別名]草決明そう けつめい馬蹄決明ばていけつめい

[性・味]微寒・甘・苦

[帰経]肝・大腸

[用法]10~15g。粉末を服用してもよい (3~6g/回)。生決明子は寒性が強く,清肝明目・発散風熱作用に優れ,実証に多用される。炒決明子はこれらの作用は弱くなる。

熄風そくふう明目めいもくする眼科の重要薬。通便つうべん明目めいもく作用を兼ねる平肝熄風薬へいかんそくふうやく。眼病の重要薬。蒺藜子しつりしに比べ,明目めいもく作用に優れ潤腸通便じゅんちょうつうべん作用を有する。

清肝明目

肝火を冷まし降ろし風熱を散じ,視力を明瞭にする。肝熱や風熱による眼瞼眼球充血・眼瞼の発赤腫脹(目赤)や疼痛・流涙・羞明・夜盲症などに使用される。
①風熱には,菊花・蔓荊子・木賊・桑葉などと用いる。〔代表方剤:決明子散〕。
②肝火証には,竜胆草・黄芩・夏枯草・山梔子などと用いる。
③肝腎両虚証による夜盲症・ 立ちくらみ・視力低下などには,菊花・山薬・生地黄・玄参・拘杞子などと用いる。〔代表方剤:決明丸〕。

平肝熄風

よく肝陽を抑え風を静める 。釣藤鈎や天麻より薬力は弱い。肝陽上亢や肝熱によるめまい・頭痛・痙攣・眼花などに使用される。特に眼部症状が伴う病症に多用される。また近年では降圧作用もあるとされる。蒺藜子・菊花・釣藤鈎・牡蛎・白芍薬・牛膝などと用いる。

潤腸通便

潤腸通便作用がある。寒性のため熱結や腸燥便秘症に使用される。 麻子仁・当帰・生地黄などと用いる。

[注意点]寒性で潤腸通便作用があるため,脾虚証の下痢には禁忌。

(管理No.01-033)

 

玄参げんじん

げんじん

[基原]ゴマノハグサ科ゲンジンの根。

[別名]黒参こくじん元参げんじん

[性・味]寒・甘・苦・鹹

[帰経]肺・胃・腎

[用法]10~15g。時に多量(~30g) に使用される。

清熱滋陰せいねつじいんしよく瀉火しゃかする。陰虚火旺証いんきょかおうしょうによく適する。生地黄しょうじおうに比べ,瀉火しゃか作用に優れかつ解毒げどく散結さんけつ利咽りいん作用を有するが止血作用はない。

清熱滋陰
・涼血


1) 血熱を冷まし,陰分を滋養し,軽度ながら津液を潤す。
(1)温熱病営血証の高熱・意識障害・口渇・発疹・発班・絳色舌などに使用される。犀角・黄連・牡丹皮・赤芍薬・生地黄などと用いる。〔代表方剤:清営湯〕。
2)温熱邪により津液や陰分が消耗したための,便秘・ロ渇・舌乾燥などに使用 される。生地黄・麦門冬などと用いる。〔代表方剤:増液湯〕。
(3)温病後期で余熱が退かず津液が消耗したための,夜間発熱・ほてり感・口燥・ 紅舌乾燥・少苔や無苔などに使用される。
(4)雑病陰虚内熱証の骨蒸潮熱・五心煩熱・便秘・ロ渇・腰部下肢の疼痛や脱力感・遺精・舌質紅などに使用される。生地黄・麦門冬・知母・地骨皮・鼈甲・青蒿などと用いる。〔代表方剤:青蒿鼈甲湯〕。
(5)陰虚火旺証の咽頭痛に使用される。生地黄・甘草・薄荷・山豆根などと用いる。


2)肺を潤し肺熱を冷ます(滋陰清肺)。
(1)肺陰虚による燥咳や喀出困難な少量黄色痰・乾咳・ロ渇・喀血・紅舌乾燥苔・少苔などに使用される。百合・生地黄・熟地黄・貝母・麦門冬などと用いる。〔代表方剤:百合固金湯,養陰清肺湯〕。
(2)肺実熱証にも使用される。射干・山豆根などと用いる。

瀉火解毒
・利咽

滋陰するとともに上炎の火をよく冷まし降ろす。またよく解毒し利咽する。咽頭腫脹の常用薬。
(1)外感風熱や陰虚火旺による咽頭の発赤腫脹疼痛や乾燥痛・扁桃腺化膿などに多用される。特に陰虚火旺証に適する。
①陰虚火旺には麦門冬・生地黄・地骨皮などと用いる。〔代表方剤:玄麦甘桔湯,養陰清肺湯〕。
②風熱証には,牛蒡子・薄荷・連翹・黄芩・黄連・板藍根などと用いる。〔代表方剤:普済消毒飲〕。

解毒散結

清熱解毒滋陰するとともに痰熱による結実を除く。
(1)痰核の瘰癧に使用される。貝母・牡蛎などと用いる。〔代表方剤:消瘰丸〕。
(2)慢性化した脱疸(血栓閉塞性血管炎)に使用される。金銀花・当帰・甘草 などと用いる。〔代表方剤:四妙勇安湯〕。
(3)皮膚化膿症に使用される。金銀花・連翹などと用いる。

潤腸通便作用もあり,陰虚の便秘証にも使用される。生地黄・麦門冬などと用いる。〔代表方剤:増液湯〕。

[注意点]脾虚証で寒湿がある証には禁忌。藜芦とは配合禁忌。

(管理No.01-034)

 

紅花こうか

こうか

[基原]キク科ベニバナの管状花。

[性・味]温・辛

[帰経]心・肝

[用法]3~10g。活血通経として使用時,酒を加えて煎じてもよい。

広範囲に使用される活血祛瘀かっけつきょおの重要常用薬。桃仁とうにんとともによく配合される。養血ようけつ作用も有し通絡つうらく作用に優れる活血薬かっけつやく桃仁とうにんに比べ,通絡つうらく作用に優れ外傷打撲・風湿痺証ふうしつひしょう・皮膚湿疹など外表がいひょう四肢の疾患に多用される。温性であり寒性瘀血証おけつしょうにより適する。

活血通経

活血すると同時に経絡の流通を良好にし,月経調整作用(調経)を有する。また軽度の補血作用もある。瘀血証の常用薬。
(1)月経痛・閉経・産後腹痛・瘀血腹痛・外傷打撲・腫瘍(癥瘕積聚)・風湿痺証 などの関節痛など各種の瘀血証に使用される。特に月経痛・閉経など婦人科疾患 に多用される。
①月経痛・閉経などには,桃仁・当帰・川芎・紅花などと用いる。〔代表方剤:通導散 ,桃紅四物湯,血府逐瘀湯〕。
②産後瘀血腹痛には,蒲黄・当帰・牡丹皮などと用いる。〔代表方剤:紅花散〕。
③癥瘕積聚には,桃仁・三稜・莪朮・枳殻などと用いる。〔代表方剤:隔下逐瘀湯〕。
④難産や胎児死亡の排泄不全には,川芎・当帰・牛膝などと用いる。〔代表方剤:脱紅煎〕。
⑤外傷打撲には,桃仁・当帰・穿山甲・赤芍薬などと用いる。〔代表方剤:復元活血湯〕。
⑥慢性の風湿痺証には,桃仁・秦艽・川芎・羗活などと用いる。〔代表方剤:身痛逐瘀湯〕。
(2) 血熱瘀血による赤褐色などの湿疹や皮膚斑・皮膚化膿症に使用される。当帰・紫草・大青草などと用いる。〔代表方剤:治頭瘡一方 ,当帰紅花飲〕。

祛瘀止痛

活血することで止痛する。瘀血による外傷打撲・胸痛(狭心症など)・風湿痺証の関節痛など各種疼痛に使用される。
①外傷打撲には類似点以外に, 蘇木・乳香などと用いる。紅花油を塗布してもよい。〔代表方剤:七厘散〕。
②胸痛には,桂枝・栝楼仁・丹参などと用いる。〔代表方剤:冠心Ⅱ号〕。

[注意点]妊婦や過多月経には禁忌。

(管理No.01-035)

 

香附子こうぶし

こうぶし

[基原]カヤツリグサ科ハマスゲの根茎。

[別名]香附米こうぶべい

[性・味]平・辛・微苦

[帰経]肝

[用法]5~10g。丸・散剤も可。

寒熱両証かんねつりょうしょうに使用可能な,偏りのない気血調整通利薬きけつちょうせいつうりやく。よく肝気かんきを巡らせ調経止痛ちょうけいしつうする。

疏肝理気

よく肝気を巡らせ,気の流れを調整し止痛する。平性(やや温に偏る)であり,寒熱両証に使用可能。
(1) 肝気鬱結の季肋部や乳房の脹満感(痛)・寒疝腹痛・不安感・焦燥感などに使用される。
①肝気鬱結証には,柴胡・青皮・白芍薬・枳殻などと用いる。〔代表方剤:柴胡疏肝散〕。
②寒疝腹痛には,烏薬・小茴香などと用いる。
(2) 肝と脾胃の不和に使用されるが,特に肝気犯胃の季肋部胃部の疼痛や不快感・胸部痞塞感・曖気などに多用される。
①木香・仏手・川芎・蒼朮などと用いる。〔代表方剤:越麴丸〕。
②寒性には高良姜・呉茱萸などと用いる。〔代表方剤:良附丸〕。
③熱性には山梔子・黄連などと用いる。

調経止痛

気を巡らせることで血滞を除き,月経を調整して止痛する。“血中の気薬《湯液本草》”,“気病の総司,女科の主帥《本草綱目》”などといわれ,婦人疾患の常用薬。肝気鬱結による月経不調(特に不定期月経)や月経痛(特に月経開始時痛)に多用される。そのほか,月経前の乳房脹満感(痛)・曖気・胸部痞塞感など。四物湯(川芎・当帰・白芍薬・熟地黄)とよく配合される。そのほか, 柴胡・艾葉・蘇梗などと用いる。〔代表方剤:芎帰調血飲〕。

[注意点]気虚や陰虚血熱には禁忌。

(管理No.01-036)

 

厚朴こうぼく

こうぼく

[基原]モクレン科カラホウなどの樹皮。日本産(和厚朴)はホウノキの樹皮。

[別名]烈朴れつぼく川朴せんぼく

[性・味]温・苦・辛

[帰経]脾・胃・肺・大腸

[用法]3~10g。虚証の脹満には少量とする。姜厚朴は温中散寒作用に優れる。

湿阻中焦しつそちゅうしょう治療の重要薬。を下げ巡らせ,湿滞しったいをよく除く。蒼朮そうじゅつに比べ行気こうき作用に優れる。

行気燥湿・
導滞


燥性が強く,またよく気を巡らせて(行気),よく脾胃の湿や食積を除く(導滞)。寒湿や食積による脹満感(痛)治療の重要薬。苦寒燥湿薬を加え湿熱証にも使用可能。
(1)湿困脾胃証の下痢・胃もたれ・腹部脹満感・悪心・嘔吐・身体の重だるさなどに使用される。湿困脾胃には蒼朮・陳皮・白朮・枳穀などと用いる。〔代表方剤:平胃散, 胃苓湯〕。
(2)脾胃などの気滞による胃部脹満感・腹胸部痞塞感など使用される。寒湿証に適 し,寒性の気滞証にも用いられる。
①寒には桂枝・附子・乾姜・木香などと用いる。〔代表方剤:厚朴温中湯〕。
②湿熱には黄連などと用いる。
③梅核気には半夏・紫蘇などと用いる。〔代表方剤:半夏厚朴湯〕。
(3)食積による腹部脹満・もたれ・腐臭性噯気・下痢・便秘・嘔吐・食欲不振などに使用される。
①食積には山楂子・麦芽・神麴などと用いる。
②ひどい食積の停滞による便秘・腹部脹満痛には,大黄・枳実などと用いる。〔代表方剤:大承気湯,小承気湯,厚朴三物湯〕。

下気平喘

肺の痰湿を除き,呼吸を流暢にする。湿痰阻肺や肺気上逆の白色粘性多痰・咳嗽・呼吸困難・厚膩苔などに使用される。
①蘇子・杏仁・麻黄・半夏などと用いる。〔代表方剤:厚朴麻黄湯,蘇子降気湯〕。
②痰熱証には,柴胡・黄芩などと用いる。〔代表方剤:柴朴湯〕

[注意点]温燥性が強いため,湿滞証を確かめて使用する。陰虚証には禁忌。妊婦には慎重に使用する。

(管理No.01-037)

 

黒豆衣こくずい

こくずい

[基原]マメ科ダイズの黒色種子品種(クロマメ)の種皮

[別名]料豆衣りょうずい穭豆衣りょずい

[性・味]平・甘

[帰経]肝・腎

[用法]3~9g。煎服。

腎陰じんいんを補い,養血平肝ようけつへいかんし,益腎平肝えきじんへいかんの効能をもつ。肝腎陰虚かんじんいんきょ血虚肝旺けっきょかんおうによる眩暈めまい・頭痛などに適し,除虚熱じょきょねつ止盗汗しとうかんにも働くので陰虚盗汗いんきょとうかんに有効である。

益腎平肝

肝腎陰虚・血虚肝旺による頭痛・眩暈に,天麻・女貞子・枸杞子・菊花などと用いる。

清虚熱・
止盗汗

陰虚の盗汗に、牡蛎・五味子・地骨皮・浮小麦・黄耆などと使用する。

(管理No.01-038)

 

牛膝ごしつ

ごしつ

[基原]ヒユ科ヒナタノイノコズチなどの根。

[性・味]平・苦・酸

[帰経]肝・腎

[用法]6~15g。生牛膝は活血・利尿・引火下行に,酒炒牛膝は補肝腎強筋骨に優 れる。

性は善く下行すといわれ①下部疾患に多用,②上炎じょうえん火熱かねつの下降,③諸薬を下部に導く,④下降症状には使用せず,などの特徴を有する。

活血祛瘀

月経痛・月経不調・閉経・産後腹痛・難産・外傷打撲(特に下半身)などに使用される。
①紅花・桃仁・当帰・延胡索・枳実などと用いる。〔代表方剤:血府逐瘀湯〕。
②外傷には当帰・川芎・続断・乳香・没薬などと用いる。

.補肝腎・
強腰膝

肝腎を補い血を巡らせて,筋骨を強め関節運動を伸びやかにする。平性であり寒熱両証に使用可能。
(1) 肝腎両虚証や痺証などの腰部膝関節の疼痛や脱力倦怠感,下部関節運動不利・軽度の浮腫などに使用される。
①肝腎両虚証には,杜仲・熟地黄・亀板などと用いる。〔代表方剤:虎潜丸〕。
②肝腎両虚証を伴う慢性痺証には,桑寄生・杜仲・亀板・続断などと用いる。〔代表方剤:大防風湯,牛車腎気丸,独活寄生湯〕。
③寒性痺証には,独活・羗活・防風・ 細辛などと用いる。〔代表方剤:疎経活血湯〕
(2) 湿熱を下に導き,下肢関節運動を流暢にする効能を利用し,湿熱下注による下肢倦怠無力感・発赤腫脹疼痛・浮腫などに使用される。蒼朮・黄柏・薏苡仁などと用いる。〔代表方剤:三妙丸,四妙散〕。

利尿通淋

尿を下に導きよく利尿させる。熱淋・血淋・石淋などの淋病や排尿痛・血尿・小便不利などに使用される。瞿麦・滑石・冬葵子などと用いる。〔代表方剤:牛膝湯〕。

引血引火下行

血を下降させたり,上昇した熱(火)を下に導き降ろす。
(1) 止血清熱薬として,上部の血熱による鼻出血・吐血・歯痛・ロ内炎などに用いる。陰虚内熱証にも使用される。
①胃火上炎の口内炎・舌炎・歯齦腫脹疼痛などには,生地黄・石膏・知母・麦門冬などと用いる。〔代表方剤:玉女煎,清胃散〕。
②気火上逆による吐血・鼻出血などには,茅根・代赫石・山梔子などと用いる。
(2) 清熱下降薬として,肝陽上亢・肝火上炎・肝風などの頭痛・めまい・頭部熱感・冷えのぼせなどに使用される。
①肝陽上亢には,代赫石・石決明・牡蛎・竜骨・白芍薬などと用いる。〔代表方剤:鎮肝熄風湯,天麻鈎藤飲〕。

[注意点]下行する性質のため,遺尿・脾虚の下痢・妊婦・過多月経には禁忌。

(管理No.01-039)

 

呉茱萸ごしゅゆ

ごしゅゆ

[基原]ミカン科ゴシュユやホンゴシュユの未成熟果実。

[性・味]熱・辛・苦

[帰経]肝・脾・胃

[用法]1.5~5g。外用も可。漫然と多量に使用すべきでない。

温燥性おんそうせいが強く肝経かんけいに作用し,理気りきとともに寒湿かんしつの邪を温散する。肝経かんけい治療の重要薬。

温中散寒・
止痛


散寒・理気止痛・燥湿の各作用に優れる。特に肝経の寒邪をよく温め散ずる。寒邪や寒湿停滞による腹痛・寒性の仙痛・月経痛・下肢寒湿の疼痛(脚気など),転筋などに使用される。
①脾胃の寒性痛には桂枝・乾姜などと用いる。
②四肢冷感や寒疝腹痛には烏薬・小茴香・木香などと用いる。〔代表方剤:当帰四逆加呉茱萸生姜湯〕。
③月経痛には,当帰・川芎・艾葉・香附子などと用いる。〔代表方剤:温経湯,艾附暖宮丸〕。
④脚気には木瓜・檳榔子・木香などと用いる。

温中止瀉

脾胃を温め下痢をよく止める。脾虚寒証や脾腎両虚証の寒湿性の下痢・五更瀉(夜明けの下痢)・嘔吐などに使用される。補骨脂・肉豆蔲・五味子などと用いる。〔代表方剤:四神丸〕。

疏肝降気

肝気の疏泄を良好にし気逆を治する。
(1) 降気しよく止嘔する。肝胃不和などの嘔吐・呑酸・曖気・季肋部脹満痛などに使用される。寒熱証ともに使用可能。
①寒証には乾姜などと用いる。
②肝気鬱結化火には黄連などと用いる。〔代表方剤:左金丸)。
(2) 寒飲上逆の頭痛〔特に頭頂部や眼部(痰厥頭痛)〕・嘔吐などに使用される。 人参・生姜などと用いる。〔代表方剤:呉茱萸湯〕。
(3)粉末を酢で練り足底に貼付すると,上部の火を下降させる。また口内炎に使用される。近年では高血圧にも有効とされる。

[注意点]辛熱性が強いため,気を損傷し熱を生じやすい。陰虚火旺証には禁忌。

(管理No.01-040)

 

牛蒡子ごぼうし

ごぼうし

[基原]キク科ゴボウの成熟果実。

[性・味]寒・辛・苦

[帰経]肺・胃・大腸

[用法]3~10g。丸・散剤も可。炒牛蒡子は寒性を弱め,中焦の陽気を損なわず, 虚弱者に使用される。

風熱ふうねつを散ずるとともによく解毒げどくする。薄荷はっかに比べ発汗力は弱いが,優れた清熱解毒せいねつげどく作用を有す。

発散風熱
・清利咽頭


風熱を散じる。一般的な辛涼解表薬。
(1)風熱表証の熱感・軽度悪寒・咽頭痛・微発汗などに使用される。
(2)咽頭の熱を冷まし流暢に呼吸させる。また解毒作用もあり,風熱による咽頭の発赤腫脹・疼痛などに多用される。また嗄声などにも使用される。金銀花・連翹・薄荷・桔梗などと用いる。〔代表方剤:銀翹散,牛蒡湯〕。

清肺熱

肺熱を除き,肺気をよく流通させ(宣肺),痰の喀出を容易にし(祛痰),よく止咳する。風熱咳嗽のほか陰虚の咳嗽にも使用される。
①喀出困難な痰を伴う風熱の咳嗽には,麻黄・石膏・杏仁・黄芩などと用いる。
②陰虚や肺陰火旺による咳嗽・喀血痰・喀出困難な痰には,阿膠・杏仁などと用いる。〔代表方剤:補肺阿膠湯〕

清熱解毒

優れた清熱解毒作用を有し,風熱や熱毒による咽頭腫脹(扁桃腺炎)や皮膚化膿症などに使用される。
①咽頭の腫脹疼痛には連翹・金銀花・桔梗・薄荷などと用いる。〔代表方剤:銀翹馬勃散,牛蒡湯,普済消毒飲〕 。
②皮膚化膿症には,黄連・ 黄芩・玄参などと用いる。〔代表方剤:普済消毒飲〕。

解毒透疹

薄荷・蟬退と同様に,風熱を散じるとともに熱毒を排出することにより,透疹させる。薄荷より解毒作用に優れる。麻疹の初期や湿疹が出切らないもの,風熱の発疹などに使用される。止痒作用もある。蟬退・薄荷・荊芥・葛根などと用いる。〔代表方剤:透疹湯,竹葉柳蒡湯〕。

潤腸通便

便通を促進する 。便秘傾向のある風熱表証に用いるとよい。

[注意点]通便作用があるため,脾虚の下痢には禁忌。

(管理No.01-041)

 

五味子ごみし

ごみし

[基原]マツブツ科チョウセンゴミシの成熟果実。

[性・味]温・酸

[帰経]肺・腎・心

[用法]2~6g。粉末も可 (1~3g/回)。砕いて使用。

補益ほえき作用と潤性じゅんせいを有する広範囲に使用可能な重要収斂薬。特に肺腎両虚証はいじんりょうきょしょうに使用され,かつ虚脱証きょだつしょうにも使用可能。

収斂固澁

良好な収斂作用を有し,下記の広範囲な病態に使用される。
(1)斂肺止嗽 ・・・上逆した肺気を収めることで,咳嗽を止め,呼吸困難や促迫を改善する(平喘)。また補陰し滋養する作用もあり,肺気虚や肺腎両虚の咳嗽に使用される 。
①肺虚証や肺腎両虚には人参・麦門冬・熟地黄・山茱萸などと用いる。〔代表方剤:都気丸〕。
②宣肺散寒薬による肺気の消耗を防ぐ作用もあり,寒飲や外感風寒の咳嗽・水様性痰・呼吸困難・喘息などに使用される。麻黄・細辛・乾姜などと用いる。〔代表方剤:小青竜湯 〕。
(2) 澁精縮尿・・・ 遺精や頻尿.尿失禁などに使用される。竜骨・桑螵蛸・菟絲子などと用いる。〔代表方剤:桑螵蛸丸〕。
(3) 澁腸止瀉 ・・・ 大腸よりの便の漏れを防ぎ(澁腸),下痢を止める。脾腎陽虚の慢性下痢・冷えで増悪する下痢・五更瀉などに使用される。補骨脂・呉茱萸・肉豆蔲などと用いる。〔代表方剤:四神丸〕 。
(4) 斂汗・・・皮膚を引き締めることで汗を止める。陰陽両虚のいずれの自汗や盗汗にも使用可能。牡蛎・麻黄根・浮小麦などと用いる。〔代表方剤:柏子仁丸〕。

益気生津

益気するとともに津液を潤し口渇を止める 。
(1) 温熱病や暑邪による気陰両虚証や陽気虚脱(亡陽)の多汗・ロ渇・脈微・倦怠感などに使用される 。人参・麦門冬・黄耆・白朮などと用いる。〔代表方剤:生脈散,清暑益気湯〕。
(2) 気陰両虚の消渇病にも使用される。知母・天門冬・黄耆・生地黄などと用いる。〔代表方剤:玉液湯〕。

寧心安神

心陰を滋養し心神を安定させる。また補腎作用もある。心腎陰虚 による心神不安の動悸・不眠多夢・健忘などに使用される 人参・麦門冬・生 地黄・酸棗仁などと用いる。〔代表方剤:天王補心丹〕。

[注意点]表証を伴う病症・実熱証・初期の咳嗽などには使用しない。

(管理No.01-042)