薬草辞典-た行

 

大黄だいおう

だいおう

[基原]タデ科ダイオウ類の根茎および根。

[別名]将軍しょうぐん川軍せんぐん錦紋大黄きんもんだいおう

[性・味]寒・苦

[帰経]脾・胃・大腸・肝・心包

[用法]5~10g。粉末は0.5~2g/回。外用も可。重症で急ぎ下す場合には15~20gを使用する。長時間の煎じで瀉下作用は弱まる。瀉下作用を期待するときには,後下するか粉末を服用する。生大黄は瀉下作用,炭大黄は止血作用が強まる。制大黄は瀉下力が弱まり活血作用が強まる。酒大黄は火邪上炎に使用される。

滞積たいせき実火じっか熱毒ねつどく瘀血おけつを除去し止血する瀉下薬しゃげやく芒硝ぼうしょうとよく配合される。

瀉下攻積

大腸に滞積した便を洗滌除去し,鬱熱を冷ます。
(1)腹部脹満感(痛)・腹痛拒按などの実証便秘に多用される。実証で熱性の便秘 (熱結便秘)によく適する。
①温熱病の高熱・意識障害,熱性気滞の便秘には, 芒硝・厚朴・枳実などと用いる。〔代表方剤:大承気湯〕。
②気血両虚証の熱性便秘には,人参・当帰などと用いる。〔代表方剤:黄竜湯〕。
③陰虚の熱性便秘には,生地黄・玄参・麦門冬などと用いる。〔代表方剤:増液承気湯〕。
④腸燥の便秘には,麻子仁・杏仁・厚朴などと用いる。〔代表方剤:麻子仁丸〕。
⑤脾陽虚証の寒性の便秘(冷積便秘)には,附子・乾姜などと用いる。〔代表方剤:大黄附子湯,温脾湯〕。
(2)湿熱の積滞を取り除く。いまだ積滞した便が残存する湿熱の腐臭性で残便感がある下痢・血痢・裏急後重・排便後の腹痛持続などに使用される(通因通用)。単味の服用も可。黄芩・黄連・木香・白芍などと用いる。〔代表方剤:芍薬湯〕。

瀉火解毒

排便することで,裏熱を冷まし降ろしかつ解毒する。便秘を伴うものに適するが,便秘がなくても使用される。
(1)火邪上炎の頭痛・目赤・咽頭痛・ロ内炎・歯齦炎(痛)などに使用される。
①上中焦(肺胃)実熱証の口内炎・咽頭痛などに,芒硝・山梔子・黄芩などと用いる。 〔代表方剤:涼隔散〕。
②肝火上炎の頭痛・易怒・焦燥感・痙攣などには,竜胆草・山梔子・夏枯草などと用いる。
(2)湿熱を冷ます。湿熱黄疸や熱淋に使用される。
①黄疸には,茵蔯蒿・山梔子などと用いる。〔代表方剤:茵蔯蒿湯〕。
②熱淋には,車前子・木通・山梔子・滑石などと用いる。〔代表方剤:八正散〕。
(3)熱毒の皮膚化膿症,火傷などに使用される。粉末の塗布も可。
①実熱証の 皮膚化膿症には,金銀花・連翹・白芷などと用いる。〔代表方剤:宣毒散〕。
②腸癰には,芒硝・牡丹皮・桃仁などと用いる。〔代表方剤:大黄牡丹皮湯〕。
③火傷には,粉末を地楡粉などと配合し塗布。

瀉火止血

血熱を冷まし止血する。活血作用もあり,止血するも血をとどめない。血熱妄行の吐血・鼻出血・瘀血性出血などに使用される。単味粉末の塗布も可。黄芩・黄連・生地黄などと用いる。〔代表方剤:瀉心湯〕。

活血化瘀

優れた活血作用があり,瘀血をよく改善する。熱性瘀血に適する。瘀血性の閉経や月経痛・産後悪露排泄不全・癥瘕・外傷打撲などに使用される。
①水蛭・䗪虫・紅花・桃仁などと用いる。〔代表方剤:桃核承気湯,抵当丸〕。
②長期の服用による正気の損傷を防ぐために,人参・阿膠などを配合する。

[注意点]妊婦・月経期・虚弱者には,禁忌か慎重に使用する。母乳に排泄され,小児の下痢を引き起こすことがあるので注意が必要。胃弱者には禁忌。

(管理No.01-091)

 

大棗たいそう

たいそう

[基原]クロウメモドキ科ナツメなどの果実。

[別名]紅棗 こうそうなつめ

[性・味]温・甘

[帰経]脾・胃

[用法]5~10g。あるいは 2~8個。

甘草かんぞうとよく同時に使用される緩和補気薬かんわほきやく甘草かんぞうに比べ補脾ほひ作用と養血ようけつ作用に優れるが,緩急止痛かんきゅうしつうじゃ弱く瀉火解毒しゃかげどく潤肺じゅんぱい作用はない。

補気補脾

脾胃の機能を補う。薬力は弱く,他の健脾薬の補助として使用される。甘草に比べ脾を温め機能を高める。また養血作用に優れる。脾胃虚証の食欲不振・下痢・倦怠感などに使用される。人参・白朮・茯苓などと用いる。〔代表方剤:参棗丸〕。

養血安神

補気とともに血を補い,心神を安定させ,肝経の急迫を治する。
(1)血虚証の羸痩・顔色不良・頭重・視力低下・霧視・めまい・過少月経・閉経などに使用される。黄耆・白朮・酸棗仁・当帰・阿膠などと用いる。〔代表方剤:帰脾湯〕。
(2) 心気を補い,心神を安定させる。心気虚証や臓躁証,さらには心虚肝鬱証・ 臓躁証などの精神情動失調・精神不安・不眠・焦燥感などに使用される。甘草・小麦・酸棗仁・柏子仁・竜骨・牡蛎などと用いる。〔代表方剤:甘麦大棗湯〕。

薬性緩和

(1)他薬による脾胃の損傷を防止し保護する。脾胃虚弱者に多用される。
(2)薬性を緩和する。毒性薬や作用の強い薬物の薬性を緩和し,方剤中の諸薬を調和する。 方剤中に配合され,薬物の強い薬性を緩和し脾胃の機能を調べることで,方剤中の薬物を協調させ方剤全体を調整する(諸薬の調和)。
(3)解表薬に配合され,脾胃の機能を調整し止汗による傷陰を防ぐ。生姜などと用いる。〔代表方剤:桂枝湯〕。

[注意点]湿気を増長させるので,湿証・胸腹部・気滞証・嘔吐者には,慎重に使用するか禁忌。潤性と熱性があるので,痰熱や湿熱証には使用しない。

(管理No.01-092)

 

大腹皮だいふくひ

だいふくひ

[基原]ヤシ科ビンロウの成熟果皮。

[別名]檳榔皮びんろうひ

[性・味]微温・辛

[帰経]脾・胃・大腸・小腸

[用法]5~10g。

檳榔子びんろうじに比べ行気力こうきりょく化痰力かたんりょくは弱く,駆虫作用はない。

行気利水

気を巡らせ湿滞を除き利尿する。凝固した痰ではなく,主に気滞湿阻証に使用される。
(1)脾胃気滞による胃部腹部脹満痛(感)や痞塞感・残便感のある下痢や便秘などに使用される。厚朴・陳皮・枳実などと用いる。〔代表方剤:藿香正気散〕。
(2)皮膚や下肢の浮腫・小便不利・脚気などに使用される。
①浮腫には茯苓皮・桑白皮・生姜皮・冬瓜皮などと用いる。〔代表方剤:五皮散〕。
②脚気の腫脹疼痛には,木瓜・檳榔子・蘇葉・莱菔子などと用いる。〔代表方剤:大腹皮散〕。

[注意点]檳榔子と同様に,気を消耗しやすいので気虚証には禁忌。

(管理No.01-093)

 

沢瀉たくしゃ

たくしゃ

[基原]オモダカ科サジオモダカの塊茎。

[性・味]寒・甘・淡

[帰経]腎・膀胱

[用法]5~10g。痰飲のめまいにはやや多量(~15g)を使用する。

寒性かんせいで強力な利湿りしつ薬。下焦湿熱げしょうしつねつに多用される。茯苓ぶくりょう猪苓ちょれい沢瀉たくしゃの三薬中,利尿力は最も強い 。

利水滲湿

強力な利尿作用により,体内の水湿や痰飲を利水により取り除く。だが健脾作用はない。寒性のため湿熱証に適する。めまい・帯下・熱淋に多用される。
(1)水湿停留による小便不利・浮腫・腹水・下肢の重だるさ,中焦の湿による下痢に使用される。
①膀胱気化不利には茯苓・猪苓・桂枝・蒼朮・白朮 などと用いる。〔代表方剤:五苓散 〕。
②湿熱性,または寒性が著明でない浮腫・下痢・帯下な どには,茯苓・猪苓・白朮などと用いる。〔代表方剤:四苓湯 〕。
(2)下焦湿熱による淋病や,下焦内湿による帯下に多用される。湿熱の熱淋による排尿痛・頻尿・排尿困難・尿混濁などには,木通・滑石・車前子などと用いる。〔代表方剤:五淋散 〕。
(3)痰飲の頭部上擾によるめまい・頭重感などに使用される。天麻・白朮・茯苓・半夏・猪苓などと用いる。〔代表方剤:半夏白朮天麻湯 ,沢瀉湯〕。

清腎火

腎陰虚による虚火を冷まし降ろす。腎陰虚の遺精や陰虚火旺などに使用される。山薬・山茱萸・黄柏・生地黄などと用いる。〔代表方剤:六味地黄丸 , 知柏地黄丸〕。

(管理No.01-094)

 

沢蘭たくらん

たくらん

[基原]シソ科シロネの全草。

[性・味]微温・苦・辛

[帰経]肝・脾

[用法]10~15g。外用も可。

利水りすい作用を有する活血薬かっけつやく。婦人科の常用薬。温性おんせいであり,益母草やくもうそうに比べ利水りすい力は弱いが,薬性は緩和で正気せいきを傷つけない。また補血ほけつ作用はないが疏肝そかん作用を有する。

活血通経

(1)血を巡らせ,経絡の流通を良好にする(通経)。薬効は強くなく薬性は温和 である。月経痛・閉経・産後の腹痛や悪露排泄不全・浮腫,外傷などに使用される。特に月経諸病や産後の諸症状に多用される。
①当帰・川芎・香附子などと用いる。〔代表方剤:沢蘭湯〕。
②外傷打撲には当帰・䗪虫・乳香・紅花などと用いる。
(2)活血により肝気の巡りを良好にする。胸痛や季肋部痛にも使用される。丹参・鬱金・香附子などと用いる。

利水消腫

活血するとともに水分をも巡らせる。利水力は弱く他の利水薬の補助薬として使用される。気滞瘀血に伴う浮腫に適し,産後や月経時の浮腫・腹水・顔面浮腫などに使用される。
①産後浮腫・頻尿などには,防已などと用いる。
②腹水には, 防已・茯苓・沢瀉などと用いる。

皮膚化膿症に使用される。金銀花・当帰・甘草など。新鮮品の汁を塗布してもよい。

[注意点]非瘀血証や血虚証には慎重に使用する。

(管理No.01-095)

 

丹参たんじん

たんじん

[基原]シソ科タンジンの根。

[別名]赤参せきじん紫丹参したんじん

[性・味]微寒・苦

[帰経]心・心包・肝

[用法]6~15g。重度な癥瘕や瘀血性疼痛には多量(~30g)を使用する。粉末も可(2~3g/回)。

安神あんじん作用を有する血熱瘀血証けつねつおけつしょうの常用薬。各種瘀血おけつの病態に多用される。

活血祛瘀

血熱を冷まし血をよく巡らせる。熱性の瘀血に適する。
(1)血熱瘀血証や気滞瘀血証の月経痛・月経失調・閉経・産後の瘀血性腹痛・腫瘍(癥瘕積聚)・胸痺の胸痛・腹痛などに使用される。
①月経痛・月経失調・産後腹痛には,当帰・益母草・川芎・桃仁・紅花などと用いる。
②癥瘕積聚には,三棱・莪朮・沢蘭・鼈甲などと用いる。
③胸痛・腹痛には,檀香・砂仁などと用いる。〔代表方剤:丹参飲,冠心Ⅱ号〕。
④寒証の瘀血には,呉茱萸・肉桂を配合し使用される。
(2)風湿痺証の四肢関節痛や半身マヒなどにも使用される。熱痺証に適する。防風・赤芍薬・桑枝・忍冬藤などと用いる。
(3)外傷打撲にも使用される。川芎・紅花などと用いる。

安神養血

心神を安定させ(安神)煩躁を緩和する。
(1)温熱病の営血分熱証の不眠・煩躁・譫語・動悸・発疹などに使用される。生地黄・黄連・竹葉などと用いる。〔代表方剤:清営湯〕。
(2)軽度の養血作用もあり,心血不足証の不眠・動悸・煩躁などにも使用される。 酸棗仁・生地黄・柏子仁などと用いる。〔代表方剤:天王補心丹〕。

涼血消癰

血熱と瘀熱を冷まし癰腫を除く。ただし涼血作用は弱い。皮膚化膿症・乳癰・湿疹などに使用される。金銀花・連翹などと用いる。

[注意点]伝統的に藜芦とは相反。

(管理No.01-096)

 

竹葉ちくよう

ちくよう

[基原]イネ科のハチクの葉。

[性・味]寒・淡・甘

[帰経]心・肺・胃

[用法]6~15g。

心・胃の熱を尿より排泄し煩躁はんそうを静める。淡竹葉たんちくように比べ除煩じょはん作用に優れ,気陰両虚証きんりょうきょしょうや熱病後期などに多用される。

清熱除煩

心火を冷まし心神を安定させ,胃熱を冷まし津液を潤す(生津)。小児の熱性痙攣にも,釣藤鈎・蟬退などと使用される。
(1)熱病後期や気陰両虚証の煩熱・ロ渇・焦燥感・不眠などに使用される。
①熱病後期や気陰両虚証には,石膏・人参・麦門冬・芦根など用いる。〔代表方剤:竹葉石膏湯〕。
②心火上炎には,木通・生地黄・甘草などと用いる。〔代表方剤:導赤散〕。
(2)上焦気分の熱を冷まし,咽頭の乾燥発赤腫脹を緩和する。風熱表証に使用される。連翹・金銀花・薄荷・牛蒡子などと用いる。〔代表方剤:銀翹散,竹葉柳蒡湯〕。
(3)心火上炎による口内炎・舌炎などに使用される。

清心利尿

利尿作用により心火(熱)を尿より排泄する 。熱淋や血淋による排尿痛・ 頻尿・赤色や黄色尿などに使用される。口内炎や心煩不眠を伴うものに適する。淡竹葉よりは作用が弱い。車前子・木通・生地黄・滑石などと用いる。〔代表方剤:導赤散,小薊飲子〕

(管理No.01-097)

 

知母ちも

ちも

[基原]ユリ科ハナスゲの根茎。

[性・味]寒・苦・甘

[帰経]肺・胃・腎

[用法]6~12g。生知母は清熱瀉火に,塩水炒知母は滋陰降火に優れる。

苦寒くかんにしてじゅん”といわれ,滋陰潤燥じいんじゅんそう作用を有する清熱瀉火せいねつしゃか薬。

清熱瀉火

優れた清熱作用を有する。潤性のため津液不足傾向や虚熱証にも用いられる。
(1)肺胃の熱を冷ます。陽明気分証の大熱・大汗・大渇・脈洪大などに使用される。〔代表方剤:白虎湯〕。気虚証を伴うものには人参を配合する。〔代表方剤:白虎加人参湯〕。
(2)邪が気血まで深入し,高熱・発斑疹・出血など呈するときに使用される。犀角・牡丹皮・玄参・赤芍薬などと用いる。〔代表方剤:化斑湯〕。
(3)肺熱を除くこと(清肺熱)で肺気を流暢にする。だが止咳平喘作用はない。肺実熱の咳嗽・呼吸困難や促迫・気管支喘息・黄色痰などに使用される。
(4)胃熱を冷ます〔代表方剤:清胃散〕。胃火亢進の嘔吐・頭痛・歯痛・歯齦炎・ロ内炎などに使用される。口内炎には生地黄・牛膝・石斛・白芷・升麻などと用いる。〔代表方剤:玉女煎〕。
(5)熱痺証にも使用される。寒熱錯雑の痺証にも使用される。
①熱痺証には,桂枝・防風・蒼朮・独活などと用いる。
②寒熱錯雑の痺証には,桂枝・附子・羗活・独活などと用いる。〔代表方剤:桂芍知母湯〕。

滋陰降火潤燥

肺・腎・胃の陰を潤し,虚熱を冷まし止渇する。以下の各病態 に使用される。
(1)腎陰虚などの陰虚火旺証によるほてり・骨蒸潮熱・盗汗・遺精・口燥・ 顔面紅潮などの症状。黄柏・地骨皮・牡丹皮・麦門冬・生地黄などと用いる。〔代表方剤:知柏地黄丸,大補陰丸,秦艽鼈甲散〕。
(2)心血虚証による不眠・多夢・ほてり・動悸などの症状。酸棗仁・川芎・茯神などと用いる。〔代表方剤:酸棗仁湯〕。
(3)肺陰不足や肺熱証による乾咳や粘稠黄色の喀出困難な痰などの症状。貝母〔二母散〕・阿膠・沙参・天花粉・黄芩・桑白皮などと用いる。〔代表方剤:清金化痰湯,滋陰降火湯,滋陰至宝湯〕。
(4)津液を生じ、燥熱による口渇を止める。また軽度の潤腸通便作用もある。熱病後期や消渇病などの津液不足状態に使用される。特に便秘傾向のものに適する。天花粉・五味子・生地黄・麦門冬などと用いる。〔代表方剤:玉液湯〕。

[注意点]潤腸通便傾向があり,脾虚寒や下痢を伴う腎陽虚証には禁忌。

(管理No.01-098)

 

地楡ちゆ

ちゆ

[基原]バラ科ワレモコウの根茎。

[性・味]寒・苦・酸

[帰経]肝・胃・大腸

[用法]10~15g。炒炭地楡は止血作用に,生地楡は解毒作用に優れる。外用も可。

清腸止血に優れ,下部の出血症に多用される。下部に作用し,解毒生肌げどくせいき作用を有す涼血止血薬りょうけつしけつやく

涼血止血

血熱をよく冷ますと同時に収斂作用もあり,優れた止血作用を有する。血熱妄行による各種の出血症に使用される。大腸の血熱を冷まし止血する作用(清腸止血)に優れ,下血・血痢・痔出血に多用され,また吐血・鼻出血・喀血にも使用される。特に下血・血痢によく適し,さらに性器出血にも多用される。単味の服用も可。
①下血・痔出血には,槐花・当帰・黄芩などと用いる。〔代表方剤:約営煎〕。
②性器出血には,牡丹皮・仙鶴草・生地黄などと用いる 。
③血痢には,黄連・白芍薬・木香などと用いる。 〔代表方剤:地楡丸〕。

清熱解毒
・斂瘡

解毒作用とともによく熱性創傷の修復を早める(生肌)。火傷・湿疹・皮膚糜爛・皮膚化膿症などに使用される。単味の粉末塗布や外用としてもよい。

[注意点]虚寒性の出血症・下痢には慎重に使用する。

(管理No.01-099)

 

釣藤ちょうとう

ちょうとう

[基原]アカネ科カギカズラ,トウカギカツラなどのトゲを含む茎枝。

[別名]双鈎藤そうこうとう釣藤鈎ちょうこうとう鈎藤こうとう

[性・味]寒・甘

[帰経]肝・心包

[用法]10~15g。長時間の煎じで効力が消失するとされ後下がよい。または,短時間(20分以内)の煎じとすべきである。

平肝熄風へいかんそくふうの重要薬。天麻てんまとともによく配合される。よく肝熱かんねつを冷まし熄風そくふうし,頭目を涼爽明瞭にする。風火ふうか治療の重要薬。

清肝熄風

寒性で,よく肝と心包の熱を冷まし,よく肝陽を抑え内風を静める(熄風)。肝陽上亢,肝火上炎,肝風内動,熱の極度の高まりによる内風(熱極生風)などの熱性の病態に多用される。左記病態の頭痛・めまい・痙攣・耳鳴・眼花,さらには焦燥感・易怒・小児の熱性痙攣や夜泣き・破傷風などに使用される 。 近年では降圧作用もあるとされる。
①天麻・石決明・黄芩・山梔子・牛膝・代赭石・夏枯草・菊花などと用いる。〔代表方剤:天麻鈎藤飲,釣藤散〕。
②熱極生風による痙攣・高熱などには,菊花・竜胆草・羚羊角・桑葉・白芍などを配合する。〔代表方剤:鈎藤飲〕。
③肝気鬱結化火による焦燥感・易怒・痙攣などには,柴胡・茯神・当帰・枳実などと用いる。〔代表方剤:抑肝散〕。

清熱平肝
・清頭目

熱を冷ますとともに平肝して頭や眼部をすっきりさせる(清頭目)。肝経有熱や風熱外感証の頭痛・頭重・眼瞼や眼球結膜の充血・流涙・眼花・めまいなどに使用される。また透発が不十分な斑や発疹にも補助薬として使用される。
①肝熱には,夏枯草・黄芩・菊花・白芍薬などと用いる。〔代表方剤:七物降下湯 〕。
②外感風熱には,薄荷・荊芥・菊花・蟬退などと用いる。

(管理No.01-100)

 

丁子ちょうじ

ちょうじ

[基原]フトモモ科チョウジの蕾。

[別名]丁香ちょうこう

[性・味]温・辛

[帰経]脾・胃・腎

[用法]2~5g。

降逆止嘔こうぎゃくしおうに優れる温中理気薬おんちゅうりきやく

温中理気・
降逆

芳香性があり中焦の気をよく巡らせる。小茴香と同様の作用だが,降逆止嘔作用により優れ,胃寒の嘔吐・噦逆などに多用される。腹部冷痛などにも用いられる。
①虚寒性の噦逆には,柿蔕・人参・生姜などと用いる。〔代表方剤:丁香柿蔕湯〕
②脾陽虚証の嘔吐には,半夏・陳皮などと用いる。
③寒性の腹痛・下痢・嘔吐には,呉茱萸・肉豆蔲などと用いる。

温腎陽

腎陽虚による陽萎・腰痛・少腹冷痛などに使用される。肉桂とともに粉末とし塗布する。

[注意点]熱証,陰虚内熱証には禁忌。鬱金を畏れる 。

(管理No.01-101)

 

陳皮ちんぴ

ちんぴ

[基原]ミカン科ウンシュウミカンなどの成熟果皮。

[別名]橘皮きっぴ

[性・味]温・辛・苦

[帰経]脾・胃・肺

[用法]3~10g。

肺胃のをよく巡らせ整え化痰燥湿かたんそうしつする。行気燥湿こうきそうしつの常用薬。薬力は強くなく,比較的軽度な病態に使用される。青皮せいひに比べ行気こうき作用は温和で,脾胃気滞証ひいきたいしょうに多用される 。

行気健脾

気を巡らせ脾胃作用を整える。湿や食積による脾胃気滞証によく適する。虚実両証に使用可能だが,健脾作用は弱く,脾虚証治療には他の健脾薬を配合する必要がある。
(1)脾胃気滞による腹部脹満感・脹満痛・食欲不振・もたれ・下痢などに使用される。
①湿や食積には,蒼朮・厚朴などと用いる。〔代表方剤:平胃散〕。
②脾胃虚証には,人参・白朮・茯苓・炙甘草などと用いる。〔代表方剤:六君子湯〕。
③気滞の疼痛には,枳実・木香などと用いる。
④脾虚気滞による腹痛・下痢には,白朮・防風・白芍などと用いる。〔代表方剤:痛瀉要方〕。
(2)補薬の滋膩による胃腸障害を予防し,補薬中に配合され補薬の作用を高める。また健脾・化痰・燥湿薬などの補助薬として多用される。

和胃止嘔

胃気を降ろし整える 。胃気不和の悪心・嘔吐・噯気・吃逆などに使用される。胃熱・痰熱・寒証などにも使用可能。
①寒性には半夏・生姜などと用いる。〔代表方剤:橘皮湯〕。
②熱性には竹筎・枇杷葉などと用いる。〔代表方剤:橘皮竹筎湯〕。

燥湿化痰

行気とともに湿痰を除去する。湿痰治療の重要薬。湿熱証にも使用可能。
(1)湿困脾胃証の腹部脹満・食欲不振・下痢・もたれ・重だるさ・厚膩苔などに使用される。半夏・茯苓などと用いる。〔代表方剤:二陳湯〕。
(2)肺中の痰湿を取り除き,肺気を流暢に流す。痰湿壅肺の白色多痰・咳嗽・胸部痞塞感などに使用される。麻黄・杏仁・厚朴などと用いる。〔代表方剤:神秘湯〕。
(3)痰気交結による胸痺の胸部痞塞感や悶絶感・息切れなどに使用される。枳実などと用いる。

[注意点]実熱証・陰虚証には慎重に使用する。

(管理No.01-102)

 

田七末でんしちまつ

でんしちまつ

[基原]ウコギ科サンシチニンジンの根。

[別名]三七さんしち田三七でんさんしち人参三七にんじんさんしち金不換きんふかん山漆さんしつ

[性・味]温・甘・微苦

[帰経]肝・胃

[用法]多くは粉末を冲服などで服用(1~1.5g/回)する。煎薬も可。丸・散剤・外用も可。

“止血の神薬≪本草新編ほんぞうしんぺん≫”といわれ,一切の血証けつしょうに使用可能な止血・化瘀かお・止痛の重要薬。

化瘀止血

止血とともに瘀血を散じ血を巡らせる。止血しても血を停滞させず,血を散じても正気を傷つけず新血を生じる。寒熱虚実各証や内外各種の出血症に使用されるが,特に瘀血証を兼ねる病証に適する。吐血・鼻出血・喀血・血便・性器出血(崩漏)・産後の出血・外傷性出血・皮膚化膿症の糜爛性出血などに使用される。単味粉末の服用も可。外傷性出血には局部の塗布も可。吐血・鼻出血などには,血余炭・花芯石・茅根・竜骨などと用いる。〔代表方剤:化血丹〕

活血止痛

よく瘀血を散じ腫脹を消失させ止痛する。単味粉末の服用や塗布も可。
(1)気滞瘀血を伴う外傷・打撲・骨折・捻挫などの内出血・腫脹疼痛・血腫などに使用される。乳香・没薬・冰片・麝香などと用いる。〔代表方剤:黎洞丸,七宝散〕
(2) 皮膚化膿症や皮膚糜爛にも使用される。
(3)また近年では狭心症や心筋梗塞にも使用される。

[注意点]温性であり陰虚内熱証や妊婦には慎重に使用する。

(管理No.01-103)

 

天麻てんま

てんま

[基原]ラン科オニノヤガラの塊茎。

[別名]赤箭せきせん定風草ていふうそう

[性・味]平・甘

[帰経]肝

[用法]3~10g。粉末を服用してもよい(1~1.5g/回)。

平肝熄風へいかんそくふうの重要薬。釣藤鈎ちょうとうこうとともによく配合される。祛湿きょしつ作用を有し,寒熱虚実証かんねつきょじつしょうに使用可能な肝風内動かんふうないどうの常用薬。

平肝熄風

内風を静め(熄風)痙攣を緩和する(止痙)良好な作用があり,肝風による頭痛・めまい・痙攣・耳鳴・眼花,さらには破傷風・しびれ・四肢マヒなどに使用される。特にめまいに多用される。平性であり寒熱両証,虚実両証に使用可能。また祛湿作用もあり,痰飲が合併した肝風証(肝風挟痰,風痰上擾)によるめまい・頭痛などにも多用される。
①釣藤鈎・石決明・黄芩・山梔子・牛膝・代赭石・夏枯草・菊花などと用いる。〔代表方剤:天麻鈎藤飲,釣藤散〕
②風痰上擾のめまい・嘔吐・悪心・頭痛などには,半夏・白朮・茯苓などと用いる。〔代表方剤:半夏白朮天麻湯〕
③肝風による頭痛・頭重・立ちくらみ・ふらつきなどには,川芎・蒺藜子などと用いる。
④小児の熱性痙攣には,釣藤鈎・犀角・全蠍などと用いる。〔代表方剤:醒脾丸〕
⑤破傷風の痙攣・角弓反張などには,天南星・防風・白附子などと用いる。〔代表方剤:玉真散,五虎追風湯〕
⑥偏頭痛には川芎などと用いる。〔代表方剤:天麻丸〕

祛風湿

風湿を去り経絡を通じさせ止痛する(通絡止痛)。風湿痺証による関節痛・四肢無カ・しびれ・四肢マヒなどに使用される。秦艽・羗活・牛膝・当帰などと用いる。〔代表方剤:天麻丸≪景岳全書≫〕

 

(管理No.01-104)

 

天門冬てんもんどう

てんもんどう

[基原]ユリ科クサスギカズラの塊根。

[性・味]寒・甘・苦

[帰経]肺・腎

[用法]6~15g。丸 ・散・膏剤にも使用可。

よく肺陰はいいんを滋養する。麦門冬ばくもんどうに比べ寒性かんせい滋陰潤燥じいんじゅんそう作用が強く,また腎陰じんいんを滋養する。だが養心清心火ようしんせいしんか作用はなく養胃陰よういいん作用も弱い。

養陰清肺

肺陰を滋養し,肺熱を冷まし降ろす。麦門冬より,より熱性や燥性が強い病態(燥邪化火)に適する。肺陰虚証や肺燥・肺熱・肺癆などによる乾咳・無痰や粘性少痰・血痰・喀出困難な痰,少苔・無苔・乾燥舌・紅色舌などに使用される。
①肺熱肺乾の咳嗽には,桑葉・沙参・杏仁・貝母・知母などと用いる。〔代表方剤:滋陰降火湯,二冬膏,天門冬膏〕
②肺陰虚の肺癆の喀血・咳嗽には,麦門冬・生地黄・沙参・百部・阿膠などと用いる。〔代表方剤:月華丸〕

滋補腎陰

よく腎陰を滋養し熱を冷まし降ろす(降火)。
(1) 腎陰虚火旺による潮熱・消渇・遺精,腎陰虚の咳嗽などに使用される。知母・黄柏・熟地黄・玄参・石斛・人参などと用いる。〔代表方剤:三才封髄丹〕
(2)消渇病の口渇・倦怠感・息切れなどに使用される。上消・中消のほか,下消(腎虚証の消喝)にも用いられる。人参・乾地黄・麦門冬・石斛などと用いる。〔代表方剤:三才湯〕。

腸を潤し排便を促進する(潤腸通便)。だが薬力は弱く,他の補助薬として使用される。熱証を伴う腸燥便秘に使用される。玄参・麦門冬・乾地黄・当帰・白芍薬・何首烏などと用いる。

(1) 清熱作用があり,咽頭発赤・咽頭炎・扁桃腺炎などに使用される。
(2) 清熱作用があり,さらに解毒作用も有する。肺熱による咽頭炎や扁桃腺炎に使用される。桔梗・山豆根・板藍根・生甘草などと用いる。

[注意点]風寒感冒や風寒,湿性の咳嗽,脾胃虚寒証の下痢には禁忌。

(管理No.01-105)

 

当帰とうき

とうき

[基原]セリ科トウキの根。

[性・味]温・甘・辛・苦

[帰経]肝・心・脾

[用法]5~15g。丸・散剤・軟膏,外用にも使用可。酒炒当帰は活血作用に優れる。

活血かっけつ止痛に優れる補血ほけつの重要薬。婦人病の常用薬。

補血

滋潤性があり,優れた補血作用を有し,特に心と肝の血をよく補う。一切の血虚証に使用されるが,心血虚証や肝血虚証に多用される。めまい・頭重・動悸・健忘・不眠・羸痩・顔色不良などの症状に用いられる。
①心肝血虚症には,熟地黄・白芍薬・川芎などと用いる。〔代表方剤:四物湯〕。
②気血両虚証には,黄耆・人参・ 白朮などと用いる。〔代表方剤:人参養栄湯,芎帰調血飲,当帰補血湯〕。
③心脾両虚証には,人参・白朮・竜眼肉・酸棗仁・黄耆などと用いる。〔代表方剤:帰脾湯〕。
④肝腎両虚で虚火上炎の更年期障害などには,仙茅・知母・黄柏・巴戟天などと用いる。〔代表方剤:二仙湯〕。

活血調経
・止痛

補血とともによく血を巡らせ,月経を調整(調経)し止痛する。血虚証のほか,瘀血・気滞などに使用される。寒証に適する。
(1)調経の重要薬といわれ,血虚・瘀血・気滞などの月経不順・閉経・月経痛・崩漏・産後の腹痛などに使用される。
①気滞瘀血証には,桃仁・紅花・香附子・川芎などと用いる。〔代表方剤:桃紅四物湯〕。
②血虚寒証には,肉桂・艾葉・呉茱萸・人参・桂枝などと用いる。〔代表方剤:温経湯 〕。
③脾虚証を伴う血虚証には,白朮・茯苓・桂枝・沢瀉などと用いる。〔代表方剤:当帰芍薬散〕。
④血虚血熱気滞証には,牡丹皮・赤芍薬・山梔子・白朮などと用いる。 〔代表方剤:加味逍逝散〕。
(2)活血し寒邪を散じてよく止痛する。気滞瘀血証・血虚証などの頭痛・胸痛・腹痛・季肋部痛などに多用される。そのほか,風湿痺証・筋肉痛・外傷打撲・血痢腹痛など種々の疼痛にも使用される。
①頭痛には,川芎・白芷などと用いる。
②胸痛季肋部痛などには,川芎・鬱金などと用いる。
③虚寒血虚の腹痛には,桂枝・白芍・膠飴・生姜などと用いる。 〔代表方剤:当帰建中湯 〕。
④血虚寒証の四肢冷感疼痛には,桂枝・白芍・細辛・木通・呉茱萸などと用いる。〔代表方剤:当帰四逆加呉茱萸生姜湯〕。
⑤風湿痺痛には,羗活・独活・桂枝・秦艽・姜黄・黄耆などと用いる。〔代表方剤:独活寄生丸〕。
⑥血痢には,黄芩・黄連・木香などと用いる。
(3)腫脹を緩和し止痛し,排膿を促進して傷口修復を促進(生肌)する。気虚証や血虚証の化膿遅滞・排膿後の傷口回復不良などに使用される。外科の常用薬。
①皮膚化膿症の初期には,金銀花・連翹・穿山甲・天花粉・貝母などと用いる。〔代表方剤:仙方活命飲〕。
②皮膚化膿症後期には,黄耆・肉桂・皀角剌などと用いる。〔代表方剤:当帰飲子〕。

潤腸通便

潤性があり,血虚証や虚弱体質・老人・産後などの腸燥や虚秘の便秘に使用される。肉蓯蓉・麻子仁・柏子仁・桃仁・牛膝などと用いる。〔代表方剤:潤腸湯〕。

止咳平喘作用があり,慢性の咳嗽や喘息などに使用される。半夏・蘇子・ 厚朴・陳皮などと用いる。〔代表方剤:蘇子降気湯,金水六君煎〕。

[注意点]甘味で潤腸作用があり,湿証・胃腸虚弱者・脾虚証の下痢には禁忌。

(管理No.01-106)

 

党参とうじん

とうじん

[基原]キキョウ科ヒカゲノツルニンジンやトウジンなどの根。

[性・味]温・甘・微苦

[帰経]心・脾・肺

[用法]10~15g。多量の使用も可(~30g)。伝統的に五霊脂を畏れ,藜芦に反する。

一切の気虚証ききょしょうに使用可能な人参の代用薬。特に肺脾気虚証はいひききょしょうに多用される。

補気益脾肺

脾胃と肺の気を補う。膩性・燥性ともに弱く,薬性は温和。気虚証全般に使用されるが,特に脾・肺の気虚証に多用される。
①脾胃虚証の倦怠感・食欲不振・下痢などには,黄耆・白朮・枳実・山楂子・陳皮などと用いる。〔代表方剤:健脾丸〕。
②肺気虚の咳嗽・息切れ・易感冒・易汗などには,黄耆・五味子・紫苑などと用いる。

補気生血生津・扶正祛邪などの作用があり,人参と同様に使用される。だが薬力は弱い。

[注意点]実熱証には使用しない。

(管理No.01-107)

 

冬虫夏草とうちゅうかそう

とうちゅうかそう

[基原]コウモリガ科などの幼虫にバッカクキン科フユムシナツクサタケが寄生し子実体を形成したもの。

[別名]冬虫草とうちゅうそう

[性・味]温・甘

[帰経]肺・腎

[用法]5~10g。丸・散剤も可。食品として調理してもよい。

腎の陰陽とともに肺も補う薬性温和な補腎薬ほじんやく温性おんせいだが燥性そうせいは弱く,陰陽両虚いんようりょうきょ気虚ききょ陰虚いんきょにも使用可能。

補腎壮陽益精

腎陽を補うとともに腎精をも補う。腎虚による陽萎・不妊・遺精・腰下肢痛倦怠・耳鳴・健忘・痴呆などに使用される。また病気の体力回復にも用いられる。淫羊藿・杜仲・巴戟天・亀板・鹿茸膠などと用いる。

補肺腎・平喘

肺と腎を補い,肺陰を滋養し,肺気を収め流暢にし,咳嗽を止め, 呼吸困難などを緩和する。止血化痰作用もある。
(1)軽度喀血や痰を伴う癆咳に多用される。沙参・阿膠・貝母・麦門冬・百合などと用いる。
(2)肺腎両虚証の慢性の咳嗽・息切れ・呼吸困難・喘息・労咳などに使用される。 虚喘には,人参・胡桃肉・臍帯・五味子・蛤蛉などと用いる。
(3) 虚寒の自汗にも用いられる。

[注意点]表実証には禁忌。

(管理No.01-108)

 

桃仁とうにん

とうにん

[基原]バラ科モモやノモモなどの成熟種子。

[性・味]平・苦

[帰経]心・肝・肺・大腸

[用法]6~10g。

広範囲に使用される活血祛瘀かっけつきょおの重要常用薬。紅花こうかとともによく配合される。平性へいせい瘀血おけつ常用薬。紅花こうかに比べ,潤腸通便じゅんちょうつうべん止嗽しそう作用を有する。

活血祛瘀

血をよく巡らせる。活血力に優れ各種瘀血証に使用される。平性であり血熱瘀血にも使用可能。紅花と同様に,瘀血証の常用薬で,月経痛・閉経・産後腹痛・瘀血腹痛・外傷打撲・腫瘍(癥瘕積聚)・風湿痺証などの関節痛・血熱瘀血による皮膚化膿症や斑疹など各種の瘀血証に使用される。さらに肺癰(肺炎など)や腸癰などにも用いられる。
①月経痛・閉経などには,紅花・当帰・川芎などと用いる。〔代表方剤:桃核承気湯,通導散,桃紅四物湯,血府逐瘀湯,生化湯〕
②慢性重症瘀血には,水蛭・虻虫・大黄などと用いる。 〔代表方剤:抵当湯,抵当丸〕③外傷打撲には,紅花・当帰・穿山甲・赤芍薬などと用いる。〔代表方剤:復元活血湯〕
④癥瘕積聚には,紅花・三稜・莪朮・枳殻などと用いる。〔代表方剤:隔下逐瘀湯〕
⑤慢性の風湿痺証には,紅花・秦艽・川芎・羗活などと用いる。〔代表方剤:身痛逐瘀湯〕
⑥皮膚化膿症には,金銀花・連翹・蒲公英などと用いる。他の清熱解毒薬の補助薬として使用。
⑦肺癰には,冬瓜子・葦茎・薏苡仁・芦根などと用いる。〔代表方剤:葦茎湯〕
⑧腸癰には,大黄・牡丹皮・芒硝などと用いる。〔代表方剤:大黄牡丹皮湯,腸癰湯 〕

潤腸通便

大腸の気を降ろすとともに潤性があり潤腸通便する。腸燥便秘に使用される。柏子仁・杏仁・鬱李仁などと用いる。〔代表方剤:潤腸湯,五仁丸〕

止咳平喘

肺気を流暢にし止咳する。咳嗽や呼吸困難の補助薬として使用される。杏仁などと用いる。〔代表方剤:双仁丸〕

[注意点]血虚証には慎重に使用する。

(管理No.01-109)

 

菟絲子としし

としし

[基原]ヒルガオ科マメダオシやネナシカズラなどの成熟種子。

[性・味]平(やや温)・辛・甘

[帰経]肝・腎

[用法]10~15g。

薬性温和な平補肝腎薬へいほかんじんやく潼蒺藜どうしつりに比べ,補腎固摂ほじんこせつ作用に優れ,止瀉ししゃ作用を有する。よく肝腎を平補へいほする。

補腎固精

陰液を滋養し潤す性質があり,腎陽を補うとともに肝腎の精血も滋養する。膩性は少なく薬性は温和で,腎陽虚・腎陰虚の両証に使用可能。潼蒺藜に比べ,平性でより補腎固摂作用に優れ,よく精液や尿・帯下の漏れを防ぎ〔代表方剤:固精縮尿〕。よく腎陰腎陽を補う 。腎虚の腰痛・遺精・頻尿・尿失禁・白色帯下などに使用される。
①腰下肢痛・倦怠には,杜仲・枸杞子・桑寄生・山茱萸などと用いる。〔代表方剤:鹿角菟絲子丸〕。
②陽萎・遺精には,枸杞子・五味子・覆盆子などと用いる。〔代表方剤:五子衍宗丸〕。
③尿失禁・夜間尿・頻尿などには,桑螵蛸・五味子・肉豆蔲・牡蛎などと用いる。〔代表方剤:菟絲子丸〕。
④白色帯下には茯苓・蓮子肉・芡実などと用いる。

養肝明目

肝の陰血を養い明目する 。肝腎不足による視力減退・霧視・眼花・ 眼球乾燥・めまいなどに使用される。熟地黄・車前子・枸杞子・女貞子などと用いる。〔代表方剤:駐景丸〕。

止瀉

脾を補い止瀉する。脾虚や脾腎両虚の下痢・食欲不振などに使用される。補骨脂・黄耆・白朮・山薬・人参・茯苓などと用いる。

(1)腎虚の消渇にも使用される。生地黄・知母などと用いる。
(2)安胎作用もあるとされ,腎虚の妊娠不正出血や胎動不安などに使用される。 桑寄生・続断などと用いる。

[注意点]平性だがやや温性に傾いており,陰虚火旺・燥性便秘・湿熱証には使用しない。

(管理No.01-110)

 

杜仲とちゅう

とちゅう

[基原]トチュウ科トチュウの樹皮。

[性・味]温・甘・微辛

[帰経]肝・腎

[用法]10~15g。散・丸剤も可。炒杜仲は補肝腎力に優れる。

補腎強健筋骨安胎ほじんきょうけんきんこつあんたいの重要薬。続断ぞくだんとともによく配合される。続断ぞくだんに比べ補肝腎力ほかんじんりょくが強い。

補肝腎 ・
強健筋骨

よく肝腎を補うことで筋骨を強健にする。
(1)補腎力が強く腎虚の腰痛・筋無力に多用される。そのほか,肝腎不足の腰痛・腰下肢倦怠無力や筋委縮などにも用いられる。
①腎虚腰痛には,補骨脂・胡桃肉などと用いる。〔代表方剤:青娥丸〕
②肝腎両虚の腰膝関節痛やだるさには,続断・熟地黄・牛膝などと用いる。
(2)腎虚の耳嗚・めまいにも使用される。熟地黄・天麻・磁石などと用いる。
(3)腎陽虚の頻尿・尿失禁・陽萎などにも使用される。山茱萸・菟絲子・補骨脂などと用いる。

補腎安胎

肝腎を補うことで妊娠をよく継続させる。腎虚による胎動不安・習慣性流産・妊娠性出血などに使用される。安胎の重要薬。続断・白朮・山薬などと用いる。〔代表方剤:杜仲丸〕

[注意点]陰虚火旺には慎重に使用する。

(管理No.01-111)