漢方薬辞典-ま行

 

麻黄湯まおうとう

効能効果

感冒、鼻かぜ

配合生薬

麻黄(マオウ)、杏仁(キョウニン)、桂皮(ケイヒ)、甘草(カンゾウ)

出典

《傷寒論》に「太陽病(病邪が体表や体の上部を侵す病で,項がこわばり脈が浮き,頭痛,悪寒がするもの),頭痛発熱,身疼腰痛(体が痛み腰痛があり),骨節疼痛(節々が痛み),悪風(寒気がして),汗なくして喘するもの(汗をかかず呼吸が苦しいもの),麻黄湯これを主る」とある。

方意と構成

太陽病の表熱実証に使うもので、普段から丈夫な体質で体力が充実したものに用いる。悪寒・発熱・頭痛・咳・発熱に伴う諸関節痛・腰痛などの症候のあるものを目標とする。

主薬の麻黄は桂枝とともに、血行を盛んにして発汗解熱を促し邪を散らす。これに、気を降ろし咳を止める杏仁、諸薬を調和し正気(体を守る力)の消耗を防ぐ甘草が加わっている。

(管理No.02-191)

 

麻黄附子細辛湯まおうぶしさいしんとう

効能効果

感冒、アレルギー性鼻炎、気管支炎、気管支ぜんそく、神経痛

配合生薬

麻黄(マオウ)、細辛(サイシン)、炮附子(ホウブシ)

出典

《傷寒論》に「少陰病(脈が微細でただ寝ていたいというもので),始め之を得て,反って発熱し,脈沈のものは(少陰病であるのに発病初期に発熱して沈脈であるものは),麻黄附子細辛湯を主る」とある。

方意と構成

体が虚弱であり、悪寒ばかりで熱感がなく、微熱・倦怠・無気力・脈が沈で力がないなど、陰証の感冒の初期に用いられる。

本方は陽気を助け、太陽・少陰の病邪を散らす働きがある。体表の風寒邪(風邪と寒邪が合わさった病邪)を発散する麻黄と、陽気を養い寒邪を散らす附子が、少陰の陽気を補うとともに寒邪を駆除する。細辛は温経散寒(経絡を温め寒邪を発散する)により麻黄と附子を助ける。

(管理No.02-196)

 

麻杏甘石湯まきょうかんせきとう

効能効果

咳が激しく、発作時に喘鳴や頭部発汗を伴うもの。気管支喘息、気管支炎。

配合生薬

麻黄(マオウ)、杏仁(キョウニン)、甘草(カンゾウ)、石膏(セッコウ)

出典

《傷寒論》に「発汗後,喘家(喘息もち)には,さらに桂枝湯を行るべらず。汗出で喘し(汗が出て呼吸が苦しく),大熱(体表部の熱)なきものは麻杏甘石湯を与うべし」とある。

方意と構成

喘咳が強く、口渇があり、熱感を訴えるものに適用し、気管支炎・気管支喘息・感冒・肺炎・百日咳などに用いる。

主薬は麻黄と石膏で、麻黄は鎮咳に、石膏は清肺熱(肺の熱を抑える)に働く。これに肺気を降ろして咳を止める杏仁、諸薬を調和する炙甘草が加わっている。

(管理No.02-192)

 

麻杏薏甘湯まきょうよくかんとう

効能効果

関節痛、神経痛、筋肉痛

配合生薬

麻黄(マオウ)、杏仁(キョウニン)、薏苡仁(ヨクイニン)、甘草(カンゾウ)

出典

《金匱要略》に「病者の一身(全身)尽く疼み発熱し,日哺所(夕方)に激しき者を風湿と名づく(風湿の邪気によるものである)。この病は汗出でて風に当たりて傷られ(汗をかいた後に風に当たって傷つき),あるいは久しく冷を取りて傷られ致す(長い間冷たいものをとって傷つく)ところなり。麻黄杏仁薏苡甘草湯を与うべし」とある。

方意と構成

本方は「麻杏甘石湯」の石膏の代わりに薏苡仁を加えたもので、水毒の停滞を疎通して鎮痛する効能がある。筋肉リウマチ・関節リウマチ・神経痛・イボ・手掌角化症・水虫などの他、麻痺・湿疹・喘息に適用する。

麻黄・杏仁は体表の風湿邪(風邪と湿邪が合わさった病邪)を発散し、経絡を通じて全身の痛みをとると伴に、喘咳を鎮め熱を解す。薏苡仁は健胃・利湿・消炎・排膿などの効能があり、筋肉の攣縮を緩和し、炙甘草と伴に痛みを止める。

(管理No.02-193)

 

麻子仁丸ましにんがん

効能効果

便秘

配合生薬

麻子仁(マシニン)、芍薬(シャクヤク)、枳実(キジツ)、厚朴(コウボク)、大黄(ダイオウ)、杏仁(キョウニン)

出典

《傷寒論》に「趺陽の脈浮にして濇(陽明胃経にある衝陽穴で拍動する脈が浮脈であり濇脈),浮なればすなわち胃気強(浮脈は胃気が亢進していることを示し),濇なればすなわち小便数(濇ならば陰液不足で脾虚があり小便の回数が増え腸燥を引き起こす),浮濇相搏たば,大便すなわち鞕し(浮濇の脈が盛んであると大便は硬くなり),その脾は約をなす(胃が強く脾が弱いため津液を布散することが出来なくなる),麻子仁丸これを主る」とある。

方意と構成

腸内の水分が欠乏し、大便が乾燥して硬いもの、体力が衰えた年配者や虚弱者の常習便秘に用いる。

主薬は麻子仁で、気を降ろして大腸を通じる杏仁、陰血を養う芍薬とともに腸の乾燥を癒して滑りを良くし便通を改善する。大黄・枳実・厚朴の「小承気湯」は気を巡らせて腸胃の燥熱を取るとともに通便を補助する。丸剤では蜂蜜を使用しており、腸の乾燥を潤す役割がある。

(管理No.02-194)

 

味麦地黄丸みばくじおうがん

効能効果

下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、呼吸困難、頻尿、むくみ、息切れ、からぜき

配合生薬

地黄(ジオウ)、山茱萸(サンシュユ)、山薬(サンヤク)、沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)、牡丹皮(ボタンピ)、麦門冬(バクモンドウ)、五味子(ゴミシ)

出典

中国清代に著された《医級》に記載がある。

方意と構成

腎陰虚証(腎における体液不足)に肺陰虚(肺における体液不足)の症状を伴う場合に適用する。乾咳・息切れ・吸気性呼吸困難・無痰あるいは粘痰・時に痰に血が混じる・口渇などの症候を伴うものに用いる。

本方は腎の液を養う「六味地黄丸」に、気を納め呼吸状態を安定する五味子、肺を潤し咳を止める麦門冬が加わっている。

(管理No.02-195)

 

木防已湯もくぼういとう

効能効果

動悸、息切れ、気管支ぜんそく、むくみ

配合生薬

防已(ボウイ)、石膏(セッコウ)、桂皮(ケイヒ)、人参(ニンジン)

出典

《金匱要略》に「膈間の支飲にして(胸膈内に水滞があり),喘満し(呼吸が極めて切迫し),心下痞堅(心下部が硬く痞え),面色黎黒(煤煙ですすけたように黒い顔色で),其の脈沈緊(脈は沈緊で),これを得て数十日,醫これを吐下して癒えざるは(この状態が数十日続き、医者がこれを吐き下して治らないものは),木防已湯これを主る」とある。

方意と構成

肺胃に停留した水滞が化熱したものを解す。動悸や咳嗽、気管支喘息の他、腎炎・ネフローゼ・妊娠腎・心臓弁膜症・心筋炎・心不全・心臓ぜんそくなどにも用いられる。

水を巡らせて水を排出する木防已が主薬で、陽気を通じさせて水を代謝する桂枝がこれを補助する。石膏は化熱を清すると伴に桂枝の温性を抑える。人参は気を養い、水飲が新しく生まれるのを防ぐ。

(管理No.02-197)