漢方薬辞典-な行

 

二朮湯にじゅつとう

効能効果

五十肩

配合生薬

白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、陳皮(チンピ)、香附子(コウブシ)、黄芩(オウゴン)、蒼朮(ソウジュツ)、天南星(テンナンショウ)、威霊仙(イレイセン)、羌活(キョウカツ)、半夏(ハンゲ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)

出典

《万病回春》に「痰飲(水や痰の停滞),双臂(両腕)痛むを治す。又,手臂(手首)痛むを治す。これ上焦に湿痰あり(体の上部に水湿や痰があるためである),経絡中を横行し痛みをなすなり」とある。

方意と構成

五十肩の薬方である。水毒性の体質で筋肉にしまりがなく、胃腸のあまり強くない人で、腕や肩の痛むものに用いる。

主薬の白朮と蒼朮は余分な水湿を去り,消化機能を良くする効能がある。痰飲を去る「二陳湯」に、上焦の風痰(風と痰が合わさったもの)をとる天南星、気の鬱滞を開く香附子、風寒湿の邪気(風邪・寒邪・湿邪が合わさったもの)を取り去る羌活、湿痰による腰膝の痛みをとる威霊仙、湿熱(水分代謝が悪く熱がこもった状態)を解す黄芩を加えている。

(管理No.02-161)

 

二陳湯にちんとう

効能効果

悪心、嘔吐

配合生薬

半夏(ハンゲ)、茯苓(ブクリョウ)、陳皮(チンピ)、生姜(ショウキョウ)、甘草(カンゾウ)

出典

《和剤局方》痰飲門に「痰飲(痰や水の停滞)が患をなし,あるいは嘔吐悪心,あるいは頭眩心悸(めまい・動悸),あるいは中脘快からず(心下部が不快で),あるいは発して寒熱をなし,あるいは生冷(生ものや冷性食品)を食うに因り,脾胃和せざる(胃腸の働きの不調和)を治す」とある。

方意と構成

脾胃虚弱で痰を生じている様々な疾患の基本処方として用いられ、胃腸の機能を良くして痰を消す代表的な処方である。

主薬は半夏で燥湿化痰(水が澱んで濁り水や痰が停滞した状態を改善)し、嘔吐や吐き気を止める。陳皮は気を巡らせて痰飲を取り去り半夏を補佐する。これに胃腸の機能を高めて水の代謝を良くする茯苓、脾胃を温め新たな痰の生成を防ぐ生姜、諸薬の調和をする甘草を加えたものである。

(管理No.02-162)

 

女神散にょしんさん安栄湯あんえいとう

効能効果

産前産後の神経症、月経不順、血の道症

配合生薬

当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、白朮(ビャクジュツ)、香附子(コウブシ)、桂皮(ケイヒ)、黄芩(オウゴン)、人参(ニンジン)、檳榔子(ビンロウジ)、黄連(オウレン)、木香(モッコウ)、丁子(チョウジ)、甘草(カンゾウ)、大黄(ダイオウ)

出典

《勿誤薬室方函口訣》に「血証(血の道症で)上衝(気が下から上に突き上げるもの)眩暈を治す,産前後通治の剤なり」とある。

方意と構成

陰血を養い疏泄(気血の巡りを伸びやかにする働き)を強めて気機(気の昇り降りをする運動)を調節し、同時に上部の熱を抑え下肢を温める働きがある。

疏肝の香附子・木香・檳榔子・川芎および温めて経絡通じる桂枝により肝の気を巡らせる。血を養う当帰と気を養う人参・白朮はこれを補佐する。黄芩・黄連は上部の熱を取り去り、大黄は便を出すことで上部の熱を下方に導いて排出する。腎を温める丁香と肝を温める当帰・川芎は下肢の冷えをとる。

(管理No.02-163)

 

人参湯にんじんとう理中丸りちゅうがん

効能効果

胃腸虚弱、胃アトニー、下痢、嘔吐、胃痛

配合生薬

人参(ニンジン)、甘草(カンゾウ)、白朮(ビャクジュツ)、乾姜(カンキョウ)

出典

《金匱要略》胸痺篇に「胸痺(呼吸が苦しく胸に痛みがあり),心中痞留(心下部が痞え),気結在留(気が胸に結滞し),脇下逆槍心(脇の下から突き上げるように痛みがくるのは),枳実薤白桂枝湯主之,人参湯亦主之(枳実薤白桂枝湯の主治である,人参湯もまた主治である)」とある。

方意と構成

本方は胃の機能を高め、もたれを去り、血行を良くして新陳代謝を盛んにする。

主薬は乾姜で、胃腸を温めて陽気を補い冷えを除く。脾胃(胃腸)の気を養う人参、胃腸の働きを高め余分な水湿を排出する茯苓、諸薬を調和する甘草からなる。

(管理No.02-164)

 

人参養栄湯にんじんようえいとう

効能効果

病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血

配合生薬

人参(ニンジン)、当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、地黄(ジオウ)、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、桂皮(ケイヒ)、黄耆(オウギ)、陳皮(チンピ)、遠志(オンジ)、五味子(ゴミシ)、甘草(カンゾウ)

出典

《和剤局方》痼冷門に「積労虚損(長年の心身の疲労衰弱が積み重なり),四肢沈滞(手足が重だるく),骨肉酸疼(骨や筋肉がだるく傷み),吸吸少気(浅薄呼吸),行動喘啜(労作性呼吸困難),小腹拘急(下腹部がひきつれ),腰背強背(腰や背中がつよく痛み),心虚驚悸(ちょっとしたことで驚き動悸する),咽乾唇燥(のどや唇が渇いて),飲食味なく(飲食しても味がなく),陰陽衰弱(陰も陽も衰弱して),悲憂滲戚(悲しみ・憂いがあり),臥多起少(横になることが多く起きることが少ない),久しきものは積年(久しいものは長い年月),急なるものは百日,漸く痩削に至り(だんだんと痩せ衰え),五臓の気竭き(五臓の気がなくなり),振復すること難きを治す(復活することが難しいのを治す)とある」

方意と構成

気血両虚(気と血の両方が不足しているもの)で、不眠・動悸・不安などの精神不安症状や、慢性の咳・呼吸困難・息ぎれなど肺の気が下りない症候を伴うものに用いる。

“温補気血(気と血の両方を補い体を温める)”の「十全大補湯」から川芎を抜いて、咳を止める五味子、痰を取り去る陳皮、精神を安定する遠志を加え、脾・肺を補う力をつよめた処方である。

(管理No.02-165)