体質で考える「男性不妊」

更新日:2023.11.13

 

 

男性不妊とは?

体質で考える「男性不妊」

体質で考える「男性不妊」

妊娠を望むご夫婦が避妊することなく1年間夫婦生活を行っても妊娠に至らない場合、不妊症の可能性があります。WHO(世界保健機関)が発表した不妊症原因の統計では、48%が男性因子によるものとされており、特に35歳以降は精子の遺伝子が傷ついて老化しやすくなるため、精子側の原因も重要であると考えられています。

 

 
体質で考える「男性不妊」

男性不妊の原因

体質で考える「男性不妊」

① 造精機能障害(82.4%)
最も多いタイプで原因不明が多く、精子を製造する機能に問題がある状態です。精子の状態によって乏精子症、非閉塞性無精子症、精子無力症、精子奇形症の4つがあります。
乏精子症:精子濃度が正常値以下の状態
無精子症:精子が1匹もいないかそれに近い状態
精子無力症:精子はいるが動きが弱かったり全く動いていない状態
精子奇形症:奇形率が正常値より高い状態
※実際には上記が組み合わさって起きることが多いです。

② 精路通過障害(3.9%)
精路の狭窄や機能的閉塞のために詰まっている状態です。

③ 性機能障害(13.5%)
勃起障害(ED)や射精障害、性欲の低下、性嫌悪症などがあります。

 

 


加齢や生活習慣による精子への影響

① 精液所見の悪化
加齢により活発な精子の数が減少します。40歳以上になると精子遺伝子の損傷が増え、精子の遺伝子の異常は1歳加齢するごとに2個増えるとされています。

② 妊娠率及び生児獲得率の低下
35歳以上の女性で、男性が5歳以上年上の場合、妊娠率が10%減少します。妊娠に至る期間が男性が40歳~44歳の場合、20代と比べて2.5倍、45歳以上だと5倍近くかかります。

③ 流産率の増加
男性の年齢が高齢化すると、流産率が上がります。男性20-29歳と比べて35-39歳で1.31倍、40-46歳で1.8倍近くになります。

 


男性不妊の治療

乏精子症、精子無力症の治療
精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)がある場合は手術が推奨されています。精索静脈瘤がない場合は、サプリメントやクロミフェンの内服になります。下垂体ホルモン(LHおよびFSH)や男性ホルモンの分泌が低下している方では、下垂体ホルモンや男性ホルモンの注射を行います。

ED、膣内射精障害の治療
勃起障害では心理カウンセリングやED治療薬を使用します。また、カップに精液を取って、注射器で膣内に注入するシリンジ法などが提案されます。

 

 
体質で考える「男性不妊」

漢方で考える男性不妊

体質で考える「男性不妊」

男性不妊の原因は“腎虚(じんきょ)”が基本になります。腎虚とは中医学でいう五臓六腑のうちの“腎”の機能が弱った状態です。腎の役割は生命エネルギーである精(せい)を蓄え、成長・発育・老化をはじめ、生殖などの働きを司り、精子の質やホルモンバランスに最も深い関わりがあります。 男性は8の倍数で変化するとされており、40歳以降加齢や生活習慣の悪化で腎の働きが低下しすると、精子の質も衰えてきます。そのため、中医学では腎の働きを高める“補腎法(ほじんほう)“を基本治療とするのです。精子が出来上がるまで最低1ヶ月半から3ヶ月は必要であるため、早めに取り組むようにしましょう。

 

 

中医学体質別治療法

① 腎陽虚(じんようきょ)体質
慢性病による体力消耗や加齢で見られ、勃起不能、勃起してもあまり固くならない、精液が薄く量が少ないなどの症状が見られる。
随伴症状:手足の冷え、寒がり、足腰のだるさ、倦怠感、物忘れ、耳鳴り、白髪など。
冷えが強く、エネルギーとなる陽気が不足したタイプです。体を温められないと、精子の造精機能が低下するため、精子数が減少します。

 

漢方

八味地黄丸、牛車腎気丸など

ツボ

関元、太谿など ※お灸を多用

食材

黒豆、くるみ、もち米、羊肉、エビ、栗など

 

 

② 腎陰虚(じんいんきょ)体質
慢性病による体力消耗や加齢で見られ、勃起しても持続しない、早漏、性的に興奮しやすいなどの症状が見られる。
随伴症状:足腰がだるい、倦怠感、便秘、ほてり、のぼせ、動悸、寝汗、便秘、白髪など。
身体に必要な陰分(体液)が減ることで相対的に熱が強くなるため、精子を殺してしまい精子の数が少なくなります。

 

漢方

六味地黄丸、知柏補腎丸など

ツボ

復溜、照海など

食材

黒豆、黒きくらげ、アスパラガス、山芋、卵、ホタテ、牡蠣、豚肉など

 

 

③ 気滞血瘀(きたいけつお)体質
ストレスや精神的緊張により、勃起不能や下腹部の痛みなどの症状が見られる。
随伴症状:肩こり、頭痛、イライラ、憂うつ感、喉のつまり、便秘など。
ストレスなどで自律神経のバランスが崩れ、ホルモンの分泌や生殖機能に悪影響を及ぼし、骨盤内の血流も悪化します。長時間のデスクワークも血液が滞る原因になります。

 

漢方

加味逍遙散、血府逐瘀湯など

ツボ

太衝、内関、三陰交など

食材

ミント、ジャスミン、春菊、三つ葉、みかんの皮、バラの花など

 

 

④ 湿熱下注(しつねつかちゅう)体質
食生活の不摂生や肥満があり、勃起不全、精液が漏れやすい、精液が白濁しているなどの症状が見られる。
随伴症状:身体が重だるい、のぼせ、口の渇き、口臭、多汗、尿が黄色など。
体内で停滞している水分に熱が加わった状態で、炎症の原因にもなり生殖機能を悪化させます。過度な飲酒、辛いものや脂質をとりすぎる肥満傾向の男性に多いです。

 

漢方

竜胆瀉肝湯、温胆湯など

ツボ

豊隆、陰陵泉など

食材

ハトムギ、とうもろこし、冬瓜、緑豆、きゅうり、クチナシの実など

 

 

 

男性不妊の鍼灸治療

下腹部と骨盤に鍼灸をすることで、精巣動脈を刺激して精巣に血液や栄養、酸素を集めることができます。また、頭や首に刺激することで、脳下垂体から男性ホルモンの分泌を促します。鍼灸治療において、体のこりを緩めて肉体的ストレスを解消し、自律神経の働きを整えて心身共にリラックスすることができます。その結果として、自律神経や男性ホルモンの分泌が整い、活性酸素の発生を抑えながら血流を増加させることより造精機能を改善させます。

 

暮らしのアドバイス

・座りっぱなしは避けましょう
・ 睡眠時間を6時間半~7時間とりましょう
・ 禁煙しましょう
・ 禁欲しすぎないようにしましょう
・暴飲暴食を避けましょう
・ストレスを上手に発散しましょう
・携帯をズボンのポケットに入れたり、パソコンを長時間使用しないようにしましょう
・ぴったりした下着を避けましょう


※参考資料
・内閣府「妊娠適齢期を意識したライフプランニング」
・不妊治療Q&A医学書院
・メディカルビュー社「データから考える不妊症・不育治療」
・あなたの精子力は大丈夫?ニッポン精子力クライシス NHK放送
・Hum Reprod 2005 sep Michael S.Nesl

 

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