体質で考える「胃がん」

体質で考える「胃がん」

体質で考える「胃がん」

更新日:2023.11.21

 

 

 

胃ガンとは?

胃ガンとは、胃の粘膜の細胞がガン化してできる悪性腫瘍のことで、中高年以上の男性によく見られます。初期症状としては腹痛が主ですが、胃ガンのほとんどは無症状で進行し、働き盛りの人の命を突然襲う恐ろしいガンです。しかし、胃ガンの臨床研究や治療法は進んでおり、早期発見と適切な治療を受ければ完治する例も増えてきています。

 

胃がんの原因と治療

様々な原因がありますが、喫煙や飲酒、熱いものや辛いものの過剰摂取、ピロリ菌の感染、胃潰瘍や慢性胃炎からの進行により生じるとされています。

治療方法は、ガンの病期(TNM分類)や、進行の程度(Ⅰ期~Ⅳ期)に応じて内視鏡治療、外科手術、薬物療法から選択していきます。

 

漢方で考える胃ガン

中医学には“扶正祛邪(ふせいきょじゃ)”という治療原則があり、その意味は“不足しているものを補い、身体にとって有害なものを取り除く”というものです。ガン細胞を化学薬品や放射線などで攻撃したり外科的手術で取り除く(祛邪)だけでなく、もともと持っている身体の免疫を回復させて自らを守る力(扶正)を養うことでQOL(生活の質)を高めることができます。

 

 

 

中医学体質別治療法

① 肝胃不和(かんいふわ)体質
ストレスなどの精神刺激により胃腸に負担がかかる。
随伴症状:胃痛、腹痛、食欲不振、お腹や胸の張り、イライラ、憂うつ感、喉のつまりなど。
イライラしたり、怒りっぽくなることで自律神経の働きが乱れ、胃腸の働きが弱りやすくなります。

 

漢方

柴胡疎肝散、大柴胡湯など

ツボ

合谷、太白など

食材

ミント、ジャスミン、三つ葉、みかんの皮、大豆製品、きのこ類など

 

 

② 胃陰虚(いいんきょ)体質
飲酒や辛いものの食べすぎ、慢性胃炎などにより胃腸に負担がかかる。
随伴症状:シクシクとした鈍痛、胸苦しく胃がつかえる、灼熱感、口の渇き、寝汗など。
胃粘液の分泌不足や粘膜の萎縮などが起き、胃腸の働きが弱ります。空腹感はありますが、食べるとすぐお腹いっぱいになる傾向があります。

 

漢方

清暑益気湯、麦門冬湯など

ツボ

三陰交、太谿など

食材

アスパラガス、白きくらげ、牡蠣、豚肉、卵、豆腐、梨など

 

 

③ 脾胃虚寒(ひいきょかん)体質
胃腸がもともと弱く、生ものや冷たいものの飲食などにより負担がかかる。
随伴症状:シクシクとした鈍痛、胃部の冷え、腹痛、疲労倦怠感、むくみ、下痢など。
飲食の不摂生や身体を冷やすことで胃腸の働きが弱りやすくなります。

 

漢方

人参湯、黄耆建中湯など

ツボ

中脘、胃兪など ※お灸を多用

食材

豆腐や湯葉などの大豆製品、山芋、玉ねぎ、ニラ、鶏肉、くるみなど

 

 

④ 血瘀(けつお)体質
慢性胃炎など、症状の長期化により血行不良が生じて胃腸に負担がかかる。
随伴症状:吐血、肩こり、頭痛、唇の色が悪い、シミやくすみが目立つ、冷えのぼせなど。
血の滞りにより痛みが生じやすくなります。長引きやすく治りにくい傾向があります。

 

漢方

安中散、桂枝茯苓丸など

ツボ

血海、三陰交など

食材

紅花、シナモン、黒糖、生姜、ネギ、玉ねぎなど

 

 

 

胃がんの鍼灸治療

ガンにおける鍼灸治療では、術後のしびれや痛みを緩和したり、抗ガン剤投与にともなう吐き気や嘔吐、食欲不振、下痢といった副作用症状を軽減させてQOL(生活の質)を高める効果が期待されます。また、ガンとたたかうための “正気(病邪に対する人体の抵抗力)”を養ったり、神経系統を刺激して身体が本来持っている鎮痛物質を分泌させることで、ストレスを緩和させていきます。

 

暮らしのアドバイス

・消化のよいものをとりましょう
・喫煙やアルコールは避けましょう
・熱いものや辛いものなと粘膜に刺激になるものは避けましょう
・ストレスをうまく発散しましょう
・適度な運動をして血行をよくしましょう

 

大谷孝枝

監修 大谷孝枝

薬剤師・鍼灸師・国際中医専門員・中医薬膳師

中国漢方普及協会 学術委員

株式会社 誠心堂薬局 営業部課長


北里大学薬学部薬科卒

東京医療福祉専門学校鍼灸科卒