体質で考える「つわり」
更新日:2023.5.11
つわりはいつからいつまで?
妊娠した喜びから間もなくして始まることの多い「つわり」。
一般的には子宮の中に赤ちゃんを包む袋(胎嚢)が見える5週頃から始まります。
つわりの原因は解明されていませんが、後に胎盤になる部分から分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)と呼ばれるホルモンの影響によるものだと推察されています。
hCGの分泌がピークを迎える8週から11週頃につわりの症状が最も辛く、その後hCGの分泌が減る16週頃には症状が落ち着つくのが一般的です。
つわりは妊婦さんの80%近くに起こると言われていますが、症状の程度は個人差が大きく、全くない人もいれば点滴や入院が必要になるほど重症な人もいます。
つわりの症状は?
代表的な症状としては、胃や胸のむかつき・胃もたれ・吐き気・嘔吐・食欲不振・においに敏感になる・喉がつかえる・よだれが増えるなどがあります。
まれに妊娠悪阻とよばれる重篤なつわりの症状が出る方もいますがその場合は注意が必要です。
1日中続く頻繁な嘔吐、食事や水分をとることが出来ない、体重が5%以上減少したなどは脱水や飢餓状態の可能性があり、病院を受診する目安となります。
中医学で考えるつわりの原因と改善方法
中医学では、つわりは「脾胃 」「肝 」と深い関わり合いがあります。
「胃」には食べ物を受け取り、消化し、消化後の残りカスを腸へと運ぶ役割(下降させる役割)があります。「脾」には「胃」の消化を助け、栄養素を作り出し、全身に運ぶ役割(上昇させる役割)があります。脾胃はお互いに協力しながら、下降と上昇とういう相反する作用によって消化機能を正常に保っています。
「肝」は精神活動や情緒を司っており、脾胃の働きや、血液の流れの調整も司っています。
従って、「脾胃」「肝」の働きが失調すると、食欲がわいたり、食べ物をおいしく食べたり、食べた物を消化・吸収・排泄することが上手くいかなくなってしまいます。
またそれ以外にも、つわりは「気 」「血 」「津液 」の流れの停滞、または過不足により引き起こされると考えます。
「気」はエネルギー。身体を温める力、代謝力、免疫力、血液・体液・内臓をあるべき場所に保持したり動かす力のことです。
「血」は血液。全身を栄養して、精神活動を支えるものです。
「津液」は血液以外の体液。身体を潤すものです。
この「気」「血」「津液」のどこに問題があるかを見極め、漢方薬や鍼灸による治療を行います。
漢方で考えるつわりの治療方法
①気の不足体質
<<脾胃虚弱
>>
身体の状態:元々妊娠前から脾胃の働きが弱く、エネルギーが不足しているタイプの方に起こりやすい症状です。妊娠により月経が停止し、胎児を養うための経絡の気が旺盛になり、その気が上逆しやすくなっています。上逆した気は、元々弱っている胃の下降させる働きと脾の上昇させる働きを乱してしまっています。
治療方法:脾胃の働きを高め、不足している気を補う「健脾和胃 」「降逆止嘔 」治療を行います。
漢方 |
香砂六君子湯、六君子湯、人参湯など |
ツボ |
足三里、脾兪、太白など |
②気の滞り体質
<<肝胃不和
>>
身体の状態:元々妊娠前からストレスやプレッシャーが強く、イライラしたり落ち込んだり、怒りっぽかったりと、肝の働きが失調し、エネルギーが滞っているタイプの方に起こりやすいで症状です。妊娠により胎児を養うための血が下腹部に集まり、肝の血が不足しています。肝の血の不足により、気を巡らせる働きは低下し、気の滞りを悪化させています。停滞した気は上逆し、上逆した気は胃の下降させる働きを乱してしまっています。
治療方法:肝の働きを改善し、気の流れを正常にする「抑肝和胃 」「和胃降逆 」の治療を行います。
漢方 |
半夏厚朴湯、茯苓飲合半夏厚朴湯、香蘇散など |
ツボ |
足三里、内関、百会など |
③津液の滞り体質
<<痰湿阻滞
>>
身体の状態:元々妊娠前から脾胃の働きが弱いため、体液の流れが悪く、ネバネバした老廃物(痰湿)がたまっている方に起こりやすい症状です。妊娠により月経が停止し、排出機能が休止状態になるため、より痰湿が発生しやすくなっています。痰湿が脾胃にたまり、脾胃の働きを低下させてしまっています。
治療方法:脾胃の働きを高め、たまった痰湿を取り除く「化痰徐湿 」「降逆止嘔 」の治療を行います。
漢方 |
二陳湯、温胆湯、小半夏茯苓湯など |
ツボ |
陰陵泉、豊隆、足三里など |
④気と津液の不足体質
<<気陰両虚
>>
身体の状態:嘔吐が長期間続いたことで、全身のエネルギーと潤いが不足し、身体が衰弱している状態です。
治療方法:不足している全身の気と津液を補う「益気養陰」「和胃止嘔 」の治療を行います。
漢方 |
生脈散、瓊玉膏など |
ツボ |
内関・足三里・復溜 |
生活養生
食事の改善:つわりの症状を軽減するためには、食事の内容やタイミングに注意が必要です。胃を刺激するような油っこいもの、甘いもの、辛いもの、匂いのきついものを避け、消化の良い食材を中心に摂るようにします。また、1回の食事量を少なくして、こまめに摂るようにすると吐き気が軽減される場合があります。また、食事前に水分を摂ることも大切です。
足りない栄養素の補充:つわりで食欲不振になると、必要な栄養素を摂取できなくなることがあります。栄養バランスの良い食事を心がけると共に、必要に応じてサプリメントなどで栄養素の補充を行うことも考えましょう。
適度な運動:つわりで体調が優れないときは、適度な運動を行うことでリフレッシュできる場合もあります。軽いストレッチや散歩など自分に合った運動を試してみましょう。ただし、過度な運動は避け無理をしないようにしましょう。
心のケア:ストレスや不安がたまるとつわりがひどくなることがあるため心のケアも大切です。ストレスや不安をご主人や友人に話したり、リラックスするために音楽を聴いたり、お風呂に浸かったり、自然の中を散歩したり、マタニティヨガなどのプログラムを試してみることも良いでしょう。
日本全国よりご相談を頂いております。
|