体質で考える「切迫流産」

更新日:2024.1.15

 

 

妊娠初期の腹痛って大丈夫?

体質で考える「切迫流産」

体質で考える「切迫流産」

妊娠をするとママの身体は日々変化していきます。その大きな変化は身体に様々な不調をもたらすことがあります。その中でも妊娠初期に起こりがちな腹痛は「赤ちゃんは大丈夫?」と心配や不安になる方が多いのではないでしょうか。

妊娠初期とは15週までの時期を指しますが、この時期におきる腹痛には、生理的で問題がない腹痛とそうではない腹痛があります。

 

生理的で問題がない腹痛

□チクチクするような痛み

□お腹が引っ張られるような痛み

□重いような痛み

□ギュッと締め付けられるような痛み

このような痛みの場合、多くはお腹の中の赤ちゃんが成長するにつれて子宮の筋肉がひきのばされている、子宮を支える靭帯が引っ張られている、ホルモン分泌の変化やつわりなどによって便秘になっているなどが原因です。安静にすれば落ち着く痛み、我慢できないという程の痛みでなければ、生理的で問題がなく心配がいらないケースが殆どです。

 

注意すべき腹痛

□我慢できない程の痛みを感じる

□1時間に何度も痛みを感じる

□眠れないほどの痛みを感じる

□痛み止めを飲みたいほどの痛みを感じる

□上記のような痛みが継続している

□出血がある

このような痛みや、おりもの程度でも出血がある場合、切迫流産、進行流産、子宮外妊娠などの可能性があります。このような症状がある場合、診察してみないと分からないためすぐに産婦人科を受診するようにしましょう。

 

 

切迫流産と診断されたら

切迫流産とは妊娠22週未満で下腹部痛や出血があり、赤ちゃんが子宮内で生きているけれど流産のリスクがある状態のことをいいます。

切迫流産の際の下腹部痛の多くは子宮の異常収縮によるものです。また出血は、赤ちゃんを包む膜のうち胎盤を作るための絨毛膜が子宮から部分的に剥がれたり、胎盤が子宮から部分的に剥がれたりすることで起こるケースが多いです。

切迫流産と診断された場合、西洋医学では基本的に治療方法がなく安静にするしかありません。お腹に力が入るような動き、重い物をもつ、長時間立つなどは避け、横になる、椅子に座るなどしてなるべく安静にします。

 
 

漢方で考える切迫流産の原因と改善方法

中医学では、妊娠初期に少量の出血が現れることを「胎漏 たいろう 」、それにプラスしてお腹や腰の痛みが現れることを「胎動不安 たいどうふあん 」と呼んでおり、これらに対する数多くの臨床経験と治療方法は「金匱要略 きんきようりゃく 」や「脈経 みゃくけい 」などをはじめ多くの医学書に記載されています。

 

中医学での切迫流産の治療は、切迫流産にならないための妊娠前・妊娠中からの予防的治療と、切迫流産と診断されてからの治療があります。

予防的治療においても、治療においても、切迫流産は「 じん 」と深い関わり合いがあります。

「腎」は生命エネルギーの根源である「 せい 」を貯蔵し、成長・発育・老化を司り、ホルモン分泌に影響を与えています。従って、胎児をお腹の中に留めて守る力、成長発育を促す力は、「腎」の状態に大きく左右されます。

また、切迫流産になりやすい人は「腎」だけでなく「 」「 けつ 」「津液 しんえき 」の流れの停滞、または過不足が深く関わってきます。

「気」はエネルギーとして、体液や血液を巡らせ、身体を温める力、内臓をあるべき場所に保持する力、代謝力、免疫力のことです。また、血液や体液が外に漏れないようにしており、気の不足により、出血や汗が止まらないなどの症状が出やすくなると考えられています。

 

「血」は血液。全身を栄養して、精神活動を支えるものです。また、血の巡りが悪いとしびれや痛みが出やすくなると考えられ、気の巡りが滞ったり不足することによって引き起こされることがあります。

 

「津液」は血液以外の体液。身体を潤すものです。津液が作られ、身体を巡り、排泄されていく過程に気・血や五臓六腑の働きが関わっています。

 

この「腎」「気」「血」「津液」のどこに原因があるかを見極め、漢方薬や鍼灸による治療を行います。

 

①腎の虚弱体質
<<腎気不固 じんきふこ >>

 

身体の状態:生まれつきの虚弱体質、過労、慢性病、老化、性生活の過多などによって、生命エネルギーである腎の気が不足し、胎児をお腹に留めて守る力、胎児を成長発育させる力が弱っている状態です。

治療方法:不足している腎の気を補う「補腎固渋 ほじんこじゅう 」「補気安胎 ほきあんたい 」治療を行います。

 

漢方

亀鹿二仙丸、菟絲子、続断、杜仲、白朮、阿膠など

ツボ

関元・太谿・腎兪

 

 

気と血の不足体質
<<気血両虚 きけつりょうきょ >>

 

身体の状態:生まれつきの虚弱体質、飲食の偏りや栄養不足、胃腸虚弱、過労、出血性の病気、慢性病などにより、胎児をお腹に留めて守る力や、胎児を成長発育させるために必要な栄養が不足している状態です。

治療方法:不足している気と血を補う「補気補血 ほきほけつ 」「安胎 あんたい 」の治療を行います。

 

漢方

補中益気湯、芎帰膠艾湯、芍薬、熟地黄、人参、白朮など

ツボ

足三里・脾兪・肝兪

 

 

津液の不足体質
<<陰虚血熱 いんきょけつねつ >>

 

身体の状態:精神的緊張・ストレス・プレッシャーが長期間続いたことや、睡眠不足の生活、老化、過労、飲酒過多、性生活の過多などにより、胎児を成長発育させるために必要な潤いが不足している状態です。また潤いが不足しているために身体に過剰な熱が生じ、出血を起こしやすくなっています。

治療方法:不足している潤いを補い、過剰な熱を取り除く「滋陰清熱安胎 じいんせいねつあんたい 」の治療を行います。

 

漢方

知柏地黄丸、四物湯、黄芩、知母、生地黄、天門冬など

ツボ

復溜・照海・腎兪

 

 

 

 

生活養生

・下腹部の痛みや出血がある時はトイレや着替えなど以外は横になって安静にしましょう。

・仕事をされている方は、主治医や上司に相談をしましょう。

・上のお子様がいる場合、ご主人様、ご両親、ベビーシッターなどにお願いし、安静にするための環境を整えましょう。または一緒にお布団でお話しをしたり、絵本を読んだり、絵をかいたりなど身体に負担のかからない過ごし方をしましょう。

・栄養バランスの良い食事を心掛けましょう。

・心配はつきないかもしれませんが、好きな本を読んだり、映画を見たり、少しでもリラックスして過ごしましょう。

 

 

 

 

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