体質で考える「切迫早産」

更新日:2024.1.15

 

 

切迫早産とは

体質で考える「切迫早産」

体質で考える「切迫早産」

切迫早産とは赤ちゃんが早く生まれてしまう危険性が高い状態のことです。出産はその時期によって正期産・早産・流産・過期産の4つに分類されています。妊娠37週0日から妊娠41週6日の間に出産することを正期産、妊娠22週0日から妊娠36週6日の間に出産することを早産、妊娠22週より前に出産することを流産、妊娠42週以降に出産することを過期産と呼んでいます。つまり切迫早産とは、妊娠22週以降37週未満の時期に赤ちゃんが生まれてしまう危険性が高い状態のことです。

症状としては下腹部の異常な張りと腹痛や腰痛(子宮収縮)、出血、時には子宮口が開きかけて破水してしまうこともあります。厚生労働省の調べによると全妊婦の約5%に早産、約14%に切迫早産が発生しています。

早産が問題となる理由は、赤ちゃんの臓器が未熟なために呼吸不全、網膜症、頭蓋内出血、髄膜炎などの病気を引き起こしたり、障害が残る危険性があるためです。

 
 

切迫早産の原因

① 絨毛膜羊膜炎(卵膜炎)

切迫早産の原因として最も多いのが子宮内感染です。膣の善玉菌と悪玉菌のバランスの崩れや免疫力の低下により、膣内で細菌の増殖が起こりやすくなります。細菌感染により引き起こされた膣の炎症が子宮頸管、さらに赤ちゃんを包む卵膜にまで広がると絨毛膜羊膜炎となります。炎症により活性化した物質は、卵膜の脆弱化(赤ちゃんを包む膜が弱くなる)や子宮頸管熟化(頸管の状態が出産に近づく)、子宮収縮(陣痛)、破水を誘発してしまいます。

② 子宮頸管無力症

下腹部痛や出血などの自覚症状がなく、子宮頸管が短くなり、子宮口がゆるんで開いてきてしまう状態です。子宮頸管手術の既往や体質などが関係しています。

③ 多胎妊娠

胎児が2人以上お腹にいる場合、子宮が通常よりも大きくなるため子宮収縮が起こりやすくなります。

④ ライフスタイルの乱れ

無理なダイエットによる痩せすぎ、妊娠中の喫煙、ストレスなどは早産になりやすいことが知られています。

 

 

切迫早産の西洋学的治療

切迫早産の治療の基本は安静にすることです。軽度の場合は自宅安静、重度の場合は入院が必要となります。子宮収縮を抑制する薬の使用や、細菌感染が疑われる場合は抗菌薬の使用、子宮頸管無力症の場合には子宮頸管を縛る手術をする場合もあります。

 

 

 

漢方で考える切迫早産の治療方法

中医学での切迫早産の治療は、切迫早産にならないための妊娠前・妊娠中からの予防的治療と、切迫早産と診断されてからの治療があります。

予防的治療においても、治療においても、切迫早産は「じん 」と深い関わり合いがあります。「腎」は生命エネルギーの根源である「せい 」を貯蔵し、成長・発育・老化を司り、ホルモン分泌に影響を与えています。従って、胎児をお腹の中に留めて守る力、胎児の成長発育を促す力は、「腎」の状態に大きく左右されます。また、切迫早産は「  」「けつ 」「津液しんえき  」の流れの停滞、または過不足と深い関わり合いがあります。

「気」はエネルギー。身体を温める力、血液・体液・内臓をあるべき場所に保持する力、代謝力、免疫力のことです。

「血」は血液。全身を栄養して、精神活動を支えるものです。

「津液」は血液以外の体液。身体を潤すものです。

この「腎」「気」「血」「津液」のどこに問題があるかを見極め、漢方薬や鍼灸による治療を行います。

 

 

①腎の虚弱体質
<<腎気不固 じんきふこ >>

 

身体の状態:生まれつきの虚弱体質、過労、慢性病、老化、性生活の過多などによって、生命エネルギーである腎の気が不足し、胎児をお腹に留めて守る力、胎児を成長発育させる力が弱っている状態です。

治療方法:不足している腎の気を補う「補腎固渋 ほじんこじゅう 」「補気安胎 ほきあんたい 」治療を行います。

 

漢方

亀鹿二仙丸、菟絲子、続断、杜仲、白朮、阿膠など

ツボ

太谿・腎兪

 

 

気と血の不足体質
<<気血両虚 きけつりょうきょ >>

 

身体の状態:生まれつきの虚弱体質、飲食の偏りや栄養不足、胃腸虚弱、過労、出血性の病気、慢性病などにより、免疫力が低下し感染症にかかりやすい状態です。また胎児をお腹に留めて守る力や、胎児を成長発育させるために必要な栄養が不足している状態です。

治療方法:不足している気と血を補う「補気補血 ほきほけつ 」「安胎 あんたい 」の治療を行います。

 

漢方

補中益気湯、芎帰膠艾湯、芍薬、熟地黄、人参、白朮など

ツボ

太谿・腎兪・足三里

 

 

津液の不足体質
<<陰虚血熱 いんきょけつねつ >>

 

身体の状態:精神的緊張・ストレス・プレッシャーが長期間続いたことや、睡眠不足の生活、老化、過労、飲酒過多、性生活の過多などにより、潤いが不足し身体に過剰な熱が生じている状態です。過剰な熱は炎症や出血を引き起こしやすく、子宮や胎児にダメージを与えやすくなります。

治療方法:不足している潤いを補い、過剰な熱を取り除く「滋陰清熱安胎 じいんせいねつあんたい 」の治療を行います。

 

漢方

知柏地黄丸、四物湯、黄芩、知母、生地黄、天門冬など

ツボ

太谿・腎兪・復溜

 

 

 

 

生活養生

切迫早産にならないために以下のことに気をつけましょう。

・禁煙をしましょう。

・妊娠中の性行為の際には衛生面に気を付け、必ずコンドームを使用し細菌感染を予防しましょう。精液中には細菌が含まれています。

・膣を過剰に洗いすぎないようにしましょう。膣を清潔に保つことは大切ですが、洗い過ぎると善玉菌を減少させ細菌感染を起こしやすくなります。

・バランスの良い食事を心掛けましょう。

・睡眠は7時間を目安に早寝早起きを心掛け、身体に疲れが溜まらないようにしましょう。

・入浴、映画鑑賞、読書、旅行、レジャーなど、自分に適した方法でストレスを発散しましょう。

 

 

 

 

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