体質で考える「下痢」

体質で考える「下痢」

体質で考える「下痢」

更新日:2023.11.21

 

 

 

下痢とは?

下痢とは、便の水分が多すぎる状態のことをいいます。水分の割合は、理想的とされるバナナ状の普通便が7~8割に対して、軟便が8~9割、水様便が9割以上です。昨今では研究が進み、腸内環境がアレルギー疾患の発症と関係しているなど、腸と脳との関係が注目されています。

 

下痢の原因と治療

浸透圧性下痢
腸からの水分吸収が妨げられるもので、人工甘味料のとりすぎや乳糖不耐性の下痢で見られます。

分泌性下痢
腸からの水分分泌量が増えるもので、細菌による毒素やホルモンの影響で起こります。

ぜん動運動性下痢
腸の通過時間が短くなるもので、過敏性腸症候群やバセドウ病が代表的です。ストレスによる過敏性腸症候群は慢性の下痢の大半を占め、人口の1割以上がかかっているといわれています。

浸出性下痢
炎症により浸出液が増えるもので、クローン病や潰瘍性大腸炎などで見られます。

下痢を止める薬には、その作用メカニズムによって様々なタイプがあり、原因に応じた治療を行っていきます。食中毒など感染症による下痢の場合は、感染源に応じた抗菌薬を使用します。ほかにも、腸のぜん動運動を抑える薬、便の中の水分を吸収して便を固める薬、乳酸菌などを含む整腸薬などがあります。

 
体質で考える「下痢」

漢方で考える下痢

体質で考える「下痢」

中医学において、下痢は胃腸機能を担当する“脾(ひ)”と“胃”の働きが低下することで引き起こされます。脾胃は食べたものを消化吸収し、栄養を全身に行き渡らせる働きがあり、その機能に支障がでると消化や吸収ができず、未消化のまま体外に出されます。特に“湿(身体にとって有害な老廃物)”は、脾胃の働きを低下させやすく、もともと胃腸が弱いタイプや、暴飲暴食などで消化に負担をかけると飲食物をうまく消化できないため、腸内に老廃物を生み下痢を引き起こします。梅雨や夏の時期は外気の湿度が高いため、人体も外界から湿気の影響を受けやすくなります。最近では、夏場の冷房や冷たい飲みものの飲みすぎで、身体の冷えと外気の湿気とが組み合わさって胃腸の働きが悪くなる方が増えています。

 

中医学体質別治療法

① 外邪(がいじゃ)体質
外邪(人体に悪影響を与える自然環境の変化)が身体に侵入して下痢が生じる。
随伴症状:悪寒、発熱、鼻水、鼻づまり、咳、痰など。
寒湿邪(かんしつじゃ)は“冷たい性質の湿の邪気”のことで、軟便、お腹の張り、悪寒発熱、節々の痛みなどの症状が生じ、湿熱邪(しつねつじゃ)は“熱い性質の湿の邪気”のことで、しぶり腹、便の色が黄褐色で臭い、肛門に灼熱感、口の渇きなどの症状が生じます。

 

漢方

藿香正気散、柴苓湯など

ツボ

天枢、陰陵泉など

食材

寒湿邪なら ネギ、生姜、シナモン、紫蘇、玉ねぎ、山椒、とうもろこしなど
湿熱邪なら 苦瓜、冬瓜、きゅうり、たけのこ、蓮根、ハトムギ、くちなしの実など

 

 

② 脾胃気虚(ひいききょ)体質
もともと胃腸が弱く、わずかでも脂っこいものを食べると下痢をする。
随伴症状:食欲不振、お腹の張り、腹痛、倦怠感、疲れやすい、むくみ、めまいなど。
過労や胃腸虚弱により、水分代謝がうまくいかず、腸に水があふれ下痢をしやすくなります。軟便や水様便であることが多く、未消化物が混じることがあります。

 

漢方

六君子湯、参苓白朮散など

ツボ

足三里、陰陵泉など

食材

豆腐や湯葉などの大豆製品、卵、いんげん豆、山芋、きのこ類など

 

 

③ 食滞(しょくたい)体質
消化不良によるもので、下痢には未消化物が混じる。
随伴症状:胸苦しく胃がつかえる、腹痛、腹鳴、食欲不振、腐酸臭のゲップなど。
暴飲暴食や、脂っこいものや甘いもの、味の濃いものの食べすぎで未消化物が停滞し、下痢を引き起こします。

 

漢方

平胃散、二陳湯など

ツボ

中脘、上巨虚など

食材

大根、カブ、白菜、玉ねぎ、紫蘇、とうもろこし、ハトムギなど

 

 

④ 肝脾不和(かんぴふわ)体質
ストレスなどの精神刺激により下痢が生じる。
随伴症状:胃痛、腹痛、お腹や胸の張り、イライラ、憂うつ感、ゲップが多いなど。
自律神経の働きがストレスにより乱れると、胃腸機能に影響して下痢をします。過敏性腸症候群では、便秘と下痢を繰り返す場合もあります。

 

漢方

桂枝加芍薬湯、当帰芍薬散など

ツボ

太衝、内関など

食材

ミント、ジャスミン、春菊、三つ葉、みかんの皮、イカなど

 

 

⑤腎陽虚(じんようきょ)体質
加齢や虚弱体質により生じ、明け方に下痢をしやすい。
随伴症状:手足の冷え、寒がり、足腰のだるさ、倦怠感、物忘れ、耳鳴り、白髪など。
胃腸虚弱の状態が長引くと、水を司る腎の働きも弱るようになります。全身を巡り戻ってきた水分の回収が追い付かず腸にあふれ、下痢をしやすくなります。

 

漢方

真武湯、八味地黄丸など

ツボ

腎兪、関元 ※命門にお灸を加える

食材

黒豆、くるみ、もち米、羊肉、エビ、栗など

 

 

 

下痢の鍼灸治療

治療の基本は、胃腸の働きを助けることと、老廃物である“湿(しつ)”を体内から取り除くことです。具体的には、消化機能を整える足のツボやお腹のツボに鍼やお灸をしていきます。特に、胃腸が弱い方や、冷え症で明け方に下痢する方は、お臍や下腹部にお灸をじっくりと行い温めることで、下痢の改善や予防をします。鍼灸治療を続けると柔らかく温かいお腹になっていきます。

下痢で使う代表的なツボ
天枢(てんすう)、陰陵泉(いんりょうせん)、梁丘(りょうきゅう)など。

 

暮らしのアドバイス

・暴飲暴食、生ものや冷たいものを避けましょう
・消化のよいものをとりましょう
・ハトムギ茶など胃腸の働きを助けるお茶を飲みましょう
・身体を冷やさないようにしましょう
・おしゃべりや趣味を楽しんでストレスを発散しましょう

 

大谷孝枝

監修 大谷孝枝

薬剤師・鍼灸師・国際中医専門員・中医薬膳師

中国漢方普及協会 学術委員

株式会社 誠心堂薬局 営業部課長


北里大学薬学部薬科卒

東京医療福祉専門学校鍼灸科卒