体質で考える「子宮内膜症」

体質で考える「子宮内膜症」

体質で考える「子宮内膜症」

更新日:2023.11.21

 

 

 

子宮内膜症とは?

子宮内膜症は、子宮内膜とよく似た組織が、腹膜・卵巣・卵管・ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)・腸・肺など子宮の外側で増殖してしまう病気です。 この中でも、卵巣内に子宮内膜症が発生した状態を卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)、子宮の筋層内で発生した状態を子宮腺筋症と呼んでいます。

子宮内膜とは本来、受精卵が着床するための組織で、赤ちゃんが育つためのベッドにあたります。毎月排卵に備えて厚く増殖し、妊娠しないと不要になり、剥がれ落ちて月経血として排出されます。子宮の外側で生じた子宮内膜組織は月経の度に増殖・剥離を繰り返し、月経血の様に外に排出されないために、少しずつ貯留していきます。
排出されないために貯留した子宮内膜組織は、炎症や周囲の組織との癒着を引き起こします。

 

症状

子宮内膜症の初期は月経時以外に強い症状はみられません。代表的な症状としては、月経を重ねるごとに強くなる月経痛、下腹痛、腰痛、骨盤痛、性交痛、排便痛などです。悪化すると、日常生活に影響するほどの激しい痛みを引き起こし、QOLの低下につながることが多くみられます。

 

 

 

検査と診断

内診にて、腫大した子宮に触れます。子宮が大きくなるため、お腹が出たり、膀胱や大腸を圧迫し、不調が伴うこともあります。検査では、エコーやMRIを実施し、血液検査でCA125の上昇が認められることがあります。

 

 

 

子宮内膜症と不妊症の関係

子宮内膜症が卵巣に発生した場合、卵巣に慢性的な炎症が起こり、正常な卵巣組織にも悪影響があることが知られています。その結果、卵巣機能が低下し、排卵障害、卵子の質の低下を引き起こすことがあります。 また、慢性的な炎症が卵巣・卵管・卵管采の癒着を引き起こし、不妊の原因となります。 それ以外にも、原因不明の不妊の女性に腹腔鏡検査を行うと、約2割~3割の方で、腹膜の子宮内膜症病変が発見されるため、腹膜の子宮内膜症病変が不妊に影響していると考えられています。

 

 

 

原因

原因はまだはっきりと分かっていませんが、一番有力な説は月経血が卵管を通り腹腔内へ逆流し生着してしまうというものです。月経血の逆流はほとんどの女性に起こり、通常はこの逆流した経血は免疫細胞により処理されます。しかし一部の女性では、免疫細胞の能力低下や、子宮内膜組織が生着しやすい炎症性骨盤内環境により、子宮内膜症が発生すると考えられています。 子宮内膜症は、子宮内膜様組織がエストロゲンにより増殖することで発症するため、エストロゲン分泌量の多い20~30代によく見られます。また、初潮を迎える年齢の低年齢化、晩婚化、出産回数の減少などにより、女性ホルモン(エストロゲン)が分泌される期間が増えたため、子宮内膜症の発生・進行のリスクが高まっています。

 

 

 

検査と診断

自覚症状のある場合の多くは、ダグラス窩もしくは卵巣にある内膜症です。ダグラス窩に病変がある場合、子宮が後屈し、排便痛や性交痛などの痛みが出やすく、内診・直腸診、エコーなどで発見しやすく、卵巣に発生するチョコレート嚢胞は、エコーやMRIで診断できます。それに対して、腹膜病変の場合は、自覚症状がないことが多く検査でも発見しにくいため、原因不明の不妊がある際に、腹腔鏡下手術を行い、確定診断を兼ねた治療を行うことが一般的になります。補助的検査として、血液検査にてCA125の値が高くなることがあります。

 
 

漢方で考える子宮内膜症の原因と治療方法

子宮内膜症は、子宮の外側に子宮内膜組織が貯留している状態です。 中医学では「」「けつ」「津液しんえき」の流れの停滞、または過不足により引き起こされると考えます。 「気」はエネルギー。身体を温める力、代謝力、免疫力、血液・体液・内臓をあるべき場所に保持したり動かす力のことです。 「血」は血液。全身を栄養して、精神活動を支えるものです。 「津液」は血液以外の体液。身体を潤すものです。 この「気」「血」「津液」のどこに問題があるかを見極め、漢方薬や鍼灸による治療を行います。

 

冷えと血の滞り体質
<<寒凝血瘀かんぎょうけつお>>

 

身体の状態:冷えにより血の流れが緩慢で滞っている状態です。

治療方法:身体を温めながら全身の血の巡りを改善する「散寒活血化瘀さんかんかっけつかお」の治療をします。そして局所的な血の停滞を解消し、子宮の外側に発生した子宮内膜組織が処理されやすいようにしていきます。

 

漢方

温経湯、桂枝茯苓丸、芎帰調血飲、烏薬、艾葉など

ツボ

血海・三陰交・陰陵泉・次りょう(お灸で温める)など

 

 

熱と血の滞り体質
<<瘀熱おねつ>>

 

身体の状態:自律神経や脳の興奮などにより身体の一部分は血管が膨らみ充血し、他の部分では虚血状態となり血の流れが滞っている状態です。

治療方法:自律神経や脳の興奮を静め、血の巡りの偏りを改善する「清熱活血化瘀せいねつかっけつかお」の治療をします。そして局所的な血の停滞を解消し、子宮の外側に発生した子宮内膜組織が処理されやすいようにしていきます。

 

漢方

血府逐瘀湯、桃核承気湯、丹参、川玉金など

ツボ

内関・血海・行間など

 

 

津液の滞り体質
<<痰湿瘀阻たんしつおそ>>

 

身体の状態:胃腸機能の低下・食生活の乱れによる胃腸への負荷などにより、余分な水分や老廃物が体内に停滞したことで、気や血の流れが滞っている状態です。

治療方法:食生活改善のアドバイスと共に、胃腸機能を回復し、余分な水分や老廃物の排出を高めつつ、血の巡りを改善する目的で「化痰除湿かたんじょしつ活血化瘀かっけつかお」の治療をします。そして局所的な血の停滞を解消し、子宮の外側に発生した子宮内膜組織が処理されやすいようにしていきます。

 

漢方

桂枝茯苓丸加ヨクイニン、二陳湯、平胃散、益母草など

ツボ

陰陵泉・豊隆・足三里・三陰交など

 

 

気の不足体質
<<腎気虚じんききょ>>

 

身体の状態:身体を温める力、代謝力、免疫力、血液・体液・内臓をあるべき場所に保持したり動かす力と関わる気が不足している状態です。

治療方法:不足している気を補い、気の働きが発揮できるように、「補腎調経ほじんちょうけい」の治療を行います。そして子宮の外側に発生した子宮内膜組織が処理されやすいようにしていきます。また、生殖・ホルモンと関わりの深い「腎」の気を補うことで、妊娠しやすい身体作りも可能です。

 

漢方

八味地黄丸、亀鹿二仙、続断、菟絲子など

ツボ

三陰交、腎兪、関元、湧泉など

 

 

 

生活養生

・食事では、冷たいものや生もの、脂っぽいものを避けましょう。香りのよい食材や色の濃い野菜などがお勧めです。一日の水分摂取量も意識して1~1.5Lを目安にとりましょう。

・月経中や不正出血の際の性交渉は避けましょう。

・疲れない程度の適度な運動を継続します。ウォーキング、ストレッチ、ヨガなど。

 

 

 

子宮内膜症でお悩みの方へ

漢方薬の服用や鍼灸の施術では、自分の体質をきちんと確認しましょう。同じ子宮内膜症のお悩みの方でも体質が異なれば、適した治療方法や治療方針が異なります。自分にあった漢方薬や鍼灸治療を選択するために、まずは専門家としっかり相談しましょう。

誠心堂薬局での漢方相談、鍼灸治療では、病院の診断や自覚症状だけでなく、舌や脈、顔色などといった客観的な情報なども考慮して、総合的に体質を確認します。体質についての説明や治療方針について納得してから漢方薬・鍼灸治療を始められます。つらい症状を我慢せず、早めにご相談ください。

 

日本全国よりご相談を頂いております。
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杉本 雅樹

監修 杉本 雅樹

医師

医療法人社団 マザー・キー 理事長


筑波大学医学群卒

筑波大学附属病院などの勤務を経て、平成17年9月、千葉県館山市にファミール産院を開院

現在は千葉県内にて複数の産婦人科診療所を運営

井上桜

監修 井上桜

薬剤師

国際中医師認定A級(現国際中医専門員)

北里大学薬学部製薬学科卒

上原康嗣

監修 上原 康嗣

鍼灸師・誠心堂式三焦調整法認定鍼灸師


琉球大学医学部保健学科卒業

早稲田医療福祉専門学校鍼灸科卒業

早稲田医療専門学校鍼灸科卒業後は整形外科に勤務を経て2005年誠心堂薬局入社

西葛西院長、新浦安店、妙典店院長、行徳接骨院院長を経て、現在は船橋店で院長を務める