体質で考える「高血圧」

体質で考える「高血圧」

体質で考える「高血圧」

更新日:2023.11.17

 

 

 

高血圧とは?

高血圧は、原因を定めることができない“本態性高血圧”と、原因が明らかな“二次性高血圧”に分類され、高血圧の8~9割が本態性高血圧です。放っておくと動脈硬化が進み、脳、心臓、腎臓、目などに影響して様々な病気を引き起こします。

 

高血圧の原因と治療

原因は、家族性の要因が約6割あり、これには遺伝的要因と、家族で似た生活環境にある環境要因の両方が関係していると考えられています。その他にも、喫煙、ストレス、アルコールは高血圧になりやすいことが分かっています。 一般的な治療は、75歳未満は病院で測定する血圧で130/80mmHg未満を、75歳以上では140/90mmHg未満を目指し、生活習慣の修正(減塩、肥満の予防、節酒、禁煙、ストレスコントロール等)と降圧薬が用いられます。

 
体質で考える「高血圧」

漢方で考える高血圧

体質で考える「高血圧」

中医学では、血圧そのものを下げるのではなく、身体全体を調整して高血圧にともなう頭痛やめまい、耳鳴り、動悸といった不快な症状を改善していきます。五臓のうちでは、主に“心(しん)”、“肝(かん)”、“腎(じん)”が関連しており、血行不良の状態である“瘀血(おけつ)”も関係しています。

 


しん

中医学でいうところの“心(しん)”は西洋医学と同じ血液ポンプとしての役目があり、過労などによりその働きが弱ったり、ストレスなどにより心臓に負荷がかかることで血流がうまく運ばれなくなり、瘀血という血行不良の状態を引き起こします。


かん

中医学でいう肝は、自律神経の働きのバランスを調整して全身の血液循環もコントロールしているため、血圧の問題に関わってくることが多いです。目や神経の使いすぎ、ストレス、寝不足、過労などは肝を消耗させることに繋がります。


じん

加齢にともない血圧が高くなっている場合は腎による影響を考えます。中医学でいう腎は、泌尿器だけでなく、内分泌、免疫、生殖、骨、脳、耳、腰などと関係しており、腎の機能が衰えると老化症状が出やすくなるとされています。下半身の血流も悪くなるため全身の血行不良にも繋がり、血圧だけでなく不眠、めまい、のぼせ、不眠、動悸などが起こりやすくなります。

 

 


中医学体質別治療法

① 肝火上炎(かんかじょうえん)体質
急激な怒りや、長期にわたるストレスにより炎症が起こり血圧が高くなる。
随伴症状:せっかちな性格、頭痛、赤ら顔、目の充血、口の苦みや渇き、不眠など。
イライラや怒りなど情動が変化したときに気の流れに詰まりが生じ、熱が生まれて身体の上部をうっ血させ、血圧を上昇させます。

 

漢方

竜胆瀉肝湯、柴胡加竜骨牡蛎湯など

ツボ

風池、行間など

食材

ミント、ジャスミン、緑茶、セロリ、紫蘇、クチナシの実など

 

 

② 陰虚陽亢(いんきょようこう)体質
身体に必要な陰血(体液や血)が不足して相対的に熱が強くなるため、血圧が高くなる。
随伴症状:足腰がだるい、倦怠感、目の疲れ、筋肉のつり、便秘、ほてり、イライラなど。
肝火上炎タイプの長期化や、加齢による陰血不足が起きることで、体内の陽気をコントロールできず、熱がこもることで血圧を上昇させます。

 

漢方

釣藤散、七物降下湯など

ツボ

腎兪、復溜など

食材

黒豆、黒きくらげ、アスパラガス、山芋、卵、人参、ほうれん草など

 

 

③ 痰湿阻滞(たんしつそたい)体質
体内に余分な水分がたまることで血行が悪くなり、血圧が高くなる。
随伴症状:身体が重だるい、頭重、むくみ、めまい、食欲不振、胸苦しい、軟便など。
多くは飲食の不摂生により、胃腸の働きが衰えて水分代謝が滞っています。脂っこいものや味の濃いものをとり続けると太りやすくなるとともに、体内に老廃物がたまり血行不良を引き起こします。

 

漢方

二陳湯、平胃散など

ツボ

陰陵泉、豊隆など

食材

緑豆などの豆類、冬瓜、とうもろこし、ハトムギ、もやしなど

 

 

④ 気虚血瘀(ききょけつお)体質
身体のエネルギーとなる気が不足して血流が滞り、血圧が高くなる。
随伴症状:食欲不振、お腹の張り、倦怠感、疲れやすい、動悸、頭痛など。
過労や胃腸虚弱により気が不足して血を血管内に巡らせることができず、滞りが生まれやすくなります。また、過労により悪化する特徴があります。

 

漢方

補陽環五湯、補中益気湯など

ツボ

足三里、三陰交など

食材

豆腐などの大豆製品、いんげん豆、山芋などの芋類、紅花、玉ねぎなど

 

 

 

高血圧の鍼灸治療

鍼灸治療では、ツボを刺激することで臓腑の働きを助け、血流や水分代謝の改善を促します。また、肩こりや首のこりが強い場合、頭部への血流障害や自律神経の働きにも影響するため、首や肩のこりに対するアプローチも同時に行い、自律神経の働きを整えます。

高血圧で使う代表的なツボ
人迎(じんげい)、天柱(てんちゅう)、合谷(ごうこく)など。

 

暮らしのアドバイス

・一日二回血圧を測定しましょう
・野菜や果物、魚などに含まれる多価飽和脂肪酸を積極的にとりましょう
・喫煙は控えましょう
・アルコールの飲みすぎに気をつけましょう
・ストレスを上手に発散しましょう

 

大谷孝枝

監修 大谷孝枝

薬剤師・鍼灸師・国際中医専門員・中医薬膳師

中国漢方普及協会 学術委員

株式会社 誠心堂薬局 営業部課長


北里大学薬学部薬科卒

東京医療福祉専門学校鍼灸科卒