体質で考える「バセドウ病（甲状腺機能亢進症）」

更新日：2023.5.11

• 目次

• バセドウ病（甲状腺機能亢進症）とは？
• 症状
• バセドウ病（甲状腺機能亢進症）と妊娠
• 中医学で考えるバセドウ病（甲状腺機能亢進症）の体質と治療
• 生活養生
• 中医学で考えるバセドウ病（甲状腺機能亢進症）でお悩みの方へ

バセドウ病（甲状腺機能亢進症）とは？

バセドウ病は自己免疫性疾患の一つです。免疫の異常により甲状腺を異物と勘違いして自己抗体を作ってしまいます。この自己抗体が自身の甲状腺細胞を刺激し、過剰に甲状腺ホルモンを分泌させてしまいます。その結果、甲状腺機能亢進症を引き起こします。

甲状腺は、のどぼとけの下にある蝶が羽を広げた形をした臓器で、甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンは、血液の流れにのって様々な臓器に運ばれ、身体の新陳代謝を盛んにする重要な役割があります。

症状

バセドウ病（甲状腺機能亢進症）は、甲状腺ホルモンの過剰分泌により全身の新陳代謝が異常に高まり、また自律神経の一つである交感神経の働きが異常に活性化されます。その結果、体重減少、食欲過剰、頻脈、動悸、暑がり、発汗、手の震え、イライラ、落ち着きがなくなるなどの症状が引き起されます。また、目の眼球突出やまぶたが吊り上がったりすることで顔つきに影響が出ることもあります。

バセドウ病（甲状腺機能亢進症）と妊娠

バセドウ病（甲状腺機能亢進症）は、不妊や流産、早産、妊娠高血圧症候群などのリスクを高めます。

甲状腺ホルモンは、卵胞や黄体、子宮内膜にも働きかけると言われており、女性ホルモンや月経に影響しています。そのため、甲状腺ホルモンと女性ホルモンは関係が深く、過剰になると生理周期の短縮、生理量の減少、排卵障害を引き起こすことがあり不妊の原因となります。

また、妊娠の維持や胎児の成長にも重要なホルモンで、過剰になると胎児の発育不全や、流産、早産、妊娠高血圧症候群の原因となります。

漢方で考えるバセドウ病（甲状腺機能亢進症）の体質と治療

バセドウ病は、自己抗体が甲状腺細胞を刺激し、過剰に甲状腺ホルモンを分泌させてしまう自己免疫性疾患です。中医学では「気（き）」「血（けつ）」「津液（しんえき）」の流れの停滞、または過不足により引き起こされると考えます。

「気」はエネルギー。身体を温める力、代謝力、免疫力、血液・体液・内臓をあるべき場所に保持したり動かす力のことです。

「血」は血液。全身を栄養して、精神活動を支えるものです。

「津液」は血液以外の体液。身体を潤すものです。

この「気」「血」「津液」のどこに問題があるかを見極め、漢方薬や鍼灸による治療を行います。

①気の滞り不足体質
＜＜気鬱化火（きうつかか）＞＞

身体の状態：精神的緊張、ストレス、プレッシャー、食べすぎ、飲みすぎなどが長期間続いたことで、気の流れが滞り、身体に過剰な熱が生じた状態です。

治療方法：全身の気の巡りを改善し、身体の過剰な熱を取り除く「疏肝解鬱清熱（そかんげうつせいねつ）」の治療をします。この治療により全身の症状を楽にしていきます。また免疫の異常を整え、自己抗体を正常化していきます。

②津液の不足体質
＜＜陰虚陽亢（いんきょようこう）＞＞

身体の状態：精神的緊張、ストレス、プレッシャーが長期間続いたことや、新陳代謝の異常亢進が長期間に及んだことで、津液が消耗している状態です。潤いである津液が不足しているため、身体は乾燥し、相対的に身体の熱が過剰になっています。

治療方法：不足している津液を補い、相対的に過剰になっている熱を取り除く、「滋陰潜陽（じいんせんよう） 」の治療をします。この治療により全身の症状を楽にしていきます。また免疫の異常を整え、自己抗体を正常化していきます。

③気と津液の不足体質
＜＜気陰両虚（きいんりょうきょ）＞＞

身体の状態：新陳代謝の異常亢進が長期間に及んだことで、身体の気と津液が消耗している状態です。バセドウ病の中でも甲状腺の腫れと眼球突出の症状のみ目立つ方が多いです。

治療方法：不足している気と津液を補う「気陰双補（きいんそうほ）」の治療をします。この治療により全身の症状を楽にしていきます。また免疫の異常を整え、自己抗体を正常化していきます。

生活養生

・水分を毎日１L～1.5Lを目安に摂りましょう。
カフェインやアルコールなどは控えましょう。

・辛い食品や料理は控えましょう。
薬膳では食材に性質があります。唐辛子・ネギなどの「辛味」や、シナモン・羊肉・胡椒などの極端に体を温める「熱性」のものは、身体を温めて代謝を促進するため摂りすぎないようにしましょう。

・23時には就寝しましょう。
睡眠不足は体がほてりやすくなります。質の良い睡眠をとるため、夜はスマホやパソコンなどは控えましょう。

バセドウ病（甲状腺機能亢進症）でお悩みの方へ

病院での治療と並行して、漢方薬や鍼灸で体質改善していきましょう。同じバセドウ病のお悩みでも体質が異なれば、適した漢方薬やツボが異なります。自分にあった漢方薬や鍼灸治療を選択するために、まずは専門家としっかり相談しましょう。

誠心堂薬局での漢方相談、鍼灸治療では、病院の診断や検査結果を確認した上で、自覚症状、舌や脈、顔色などといった情報を考慮して、総合的に体質を判断します。体質や治療方針についてご説明をしますので、納得してから漢方薬や鍼灸の施術を始められます。辛い不調を我慢せずに、ぜひご相談ください。

監修　井上桜

薬剤師

国際中医師認定A級（現国際中医専門員）

北里大学薬学部製薬学科卒

監修　上原 康嗣

鍼灸師・誠心堂式三焦調整法認定鍼灸師

琉球大学医学部保健学科卒業

早稲田医療福祉専門学校鍼灸科卒業

早稲田医療専門学校鍼灸科卒業後は整形外科に勤務を経て2005年誠心堂薬局入社

西葛西院長、新浦安店、妙典店院長、行徳接骨院院長を経て、現在は船橋店で院長を務める