体質で考える「更年期障害」

体質で考える「更年期障害」

体質で考える「更年期障害」

更新日:2023.11.13

 

 

 

更年期障害とは?

更年期といえば女性特有のものと思われがちですが、男性にも存在します。更年期になると、身体の衰えとともにホルモンの分泌が急激に減少するため、これを増やそうと脳が働き続け、オーバーワーク状態になります。これが自律神経にも影響して身体や精神面に様々な不調が現れ、日常生活に支障を来すようになります。更年期障害と思っていても他の病気だったということもあるため、自己判断せずに専門家に診てもらうことが大切です。

 

更年期障害の原因と治療

加齢、ストレス、不規則な生活、激しい運動、肥満、過激なダイエット、喫煙などが原因でホルモンバランスを乱していることが多いようです。男性の場合は、重度のストレスや環境の変化などにより男性ホルモンが急激に減少することで生じています。

治療では、減少したホルモンを直接的に補うホルモン補充療法(HRT)がよく用いられます。また、不安やイライラなど精神症状が強い場合には精神安定剤や睡眠導入剤、鎮静剤による処方が行われています。

 
体質で考える「更年期障害」

漢方で考える更年期障害

体質で考える「更年期障害」

中医学における五臓のうちの“腎(じん)”は、成長・発育・老化を司り、ホルモン分泌とも関係しています。そのため、腎はホルモン分泌が低下した更年期の状態とも深い関わりがあるのです。中医学では女性は7年周期、男性は8年周期で身体が変化すると考えられているため、女性は42歳、男性は48歳あたりから衰えが出て更年期症状が出やすくなるといえるでしょう。 また、更年期ではホルモンの乱れにより身体が非常にアンバランスな状態になりますが、これには自律神経を司る “肝(かん)”の異常や、“血(けつ)”の汚れによる血行不良も関係しています。

 

 

中医学体質別治療法

① 肝腎陰虚(かんじんいんきょ)体質
性ホルモンの働きが低下して必要な陰血(体液や血)が不足するため、相対的に熱が強くなる。
随伴症状:足腰がだるい、倦怠感、目の疲れ、筋肉のつり、便秘、ほてり、イライラなど。
中医学において、腎は生命エネルギーである精(せい)を貯蔵し、肝は血を貯蔵します。この精と血はお互いに栄養し合い、必要に応じて精は血に、血は精に変化します。“肝腎要”といわれるように、この2つの臓腑の働きが弱ることで更年期症状が生じます。

 

漢方

杞菊地黄丸、二至丸合六味丸など

ツボ

太谿、三陰交など

食材

黒豆、黒きくらげ、アスパラガス、山芋、卵、人参、ほうれん草など

 

 

② 腎陽虚(じんようきょ)体質
エネルギーとなる陽気が不足しており、身体が冷えて血行が悪くなっている。
随伴症状:手足の冷え、寒がり、足腰のだるさ、倦怠感、物忘れ、耳鳴、白髪など。
疲労や加齢によって身体全体を温める働きが落ちるため、冷え症状が多く見られます。

漢方

八味地黄丸、牛車腎気丸など

ツボ

腎兪、命門(めいもん)など ※お灸を多用

食材

黒豆、くるみ、もち米、羊肉、エビ、栗など

 

 

③ 肝鬱気滞(かんうつきたい)タイプ
精神刺激などのストレスにより、イライラや憂うつ感など精神症状が起こる。
随伴症状:肩こり、頭痛、お腹や胸の張り、イライラ、憂うつ感、喉のつまりなど。
自律神経の働きがストレスなどにより乱れると、情緒のバランスが不安定になったり、体調の不調が現れます。気の流れがスムーズでなくなると、血までも滞るようになります。

漢方

四逆散、加味逍遙散など

ツボ

太衝、内関など

食材

ミント、ジャスミン、春菊、三つ葉、みかんの皮、イカなど

 

 

④ 痰湿阻絡(たんしつそらく)体質
余分な水分が体内に停滞し、むくみやだるさといった症状が生じる。
随伴症状: 身体が重だるい、頭重、むくみ、めまい、食欲不振、胸苦しい、軟便など。
胃腸の働きが悪く水分代謝の働きが低下するため、食べたものが栄養物質にならずネバネバとした老廃物となり停滞します。
温胆湯、六君子湯など
豊隆、陰陵泉など
緑豆などの豆類、冬瓜、とうもろこし、ハトムギ、もやしなど

 

漢方

温胆湯、六君子湯など

ツボ

豊隆、陰陵泉など

食材

緑豆などの豆類、冬瓜、とうもろこし、ハトムギ、もやしなど

 

 

 

更年期障害の鍼灸治療

ホルモン分泌を司る腎の働きを高める“補腎法(ほじんほう)”と、血行循環をよくする“活血法(かっけつほう)”を組み合わせます。また、更年期による様々な不調の原因を追究し、一人ひとりの体質に合わせたツボを使うことにより、根本的な原因にアプローチして改善に導きます。

 

暮らしのアドバイス

・睡眠を十分にとりましょう
・大豆イソフラボンを含む大豆食品を積極的にとりましょう
・長時間座りっぱなしの場合は30分に1度立ち上がって歩いたり屈伸運動をしましょう
・適度に身体を動かして血行をよくしましょう
・趣味など自分の楽しみの時間を持ちましょう

 

日本全国よりご相談を頂いております。
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杉本 雅樹

監修 杉本 雅樹

医師

医療法人社団 マザー・キー 理事長


筑波大学医学群卒

筑波大学附属病院などの勤務を経て、平成17年9月、千葉県館山市にファミール産院を開院

現在は千葉県内にて複数の産婦人科診療所を運営

大谷孝枝

監修 大谷孝枝

薬剤師・鍼灸師・国際中医専門員・中医薬膳師

中国漢方普及協会 学術委員

株式会社 誠心堂薬局 営業部課長


北里大学薬学部薬科卒

東京医療福祉専門学校鍼灸科卒