体質で考える「卵巣嚢腫」

体質で考える「卵巣嚢腫」

体質で考える「卵巣嚢腫」

更新日:2023.11.21

 

 

 

卵巣嚢腫とは?

卵巣嚢腫とは卵巣にできる腫瘍のことで、内容物が入った袋のような形をした腫瘍です。90%くらいは良性ですが、悪性の可能性がないというわけではありません。内容物の種類によって漿液性嚢胞腺腫、粘液性嚢胞腺腫、成熟奇形腫(皮様嚢腫)、卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)に分類されます。

・漿液性嚢胞腺腫:サラサラした液体がたまるもの。

・粘液性嚢胞腺腫:ドロドロした液体がたまるもの。

・成熟奇形腫(皮様嚢腫):脂肪や歯、皮膚や髪の毛など他の組織がドロドロになりたまったもの。

・卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞):子宮内膜症が卵巣内に発生したもの。

 
 

症状

腫瘍が大きくなるまで自覚症状がほとんどないのが特徴です。

大きくなるとお腹が張った感じがする腹部膨満感や、腰痛・下腹部痛といった痛み、便秘、頻尿といった泌尿器の症状などが見られます。

腫瘍が4~5㎝を超えると、卵巣の根元がねじれる茎捻転けいねんてんを起こす可能性があります。

 

 

 
 

漢方で考える子宮内膜症の原因と治療方法

卵巣嚢腫は卵巣に液体、粘液、組織がたまっている状態です。中医学では「」「けつ」「津液しんえき」の流れの停滞、または過不足により引き起こされると考えます。

「気」はエネルギー。身体を温める力、代謝力、免疫力、血液・体液・内臓をあるべき場所に保持したり動かす力のことです。

「血」は血液。全身を栄養して、精神活動を支えるものです。

「津液」は血液以外の体液。身体を潤すものです。

この「気」「血」「津液」のどこに問題があるかを見極め、漢方薬や鍼灸による治療を行います。以下に卵巣嚢腫になりやすい人の主な体質について説明します。

 

①津液の滞り体質
<<痰湿瘀阻たんしつおそ>>

 

身体の状態:胃腸機能の低下・食生活の乱れによる胃腸への負荷などにより、余分な水分や老廃物が体内に停滞したことで、気や血の流れが滞っている状態です。

治療方法:食生活改善のアドバイスと共に、胃腸機能を回復し、余分な水分や老廃物の排出を高めつつ、血の巡りを改善する目的で「化痰徐湿かたんじょしつ活血化瘀かっけつかお」の治療をします。そして局所的な津液の停滞を解消し、卵巣内に液体・粘液がたまらないようにします。卵巣嚢腫が大きくなったり、再発しないように防いでいきます。

 

漢方

二陳湯、温胆湯、益母草、牛膝など

ツボ

陰陵泉・豊隆・三陰交など

 

 

気の滞り体質
<<肝鬱気滞かんうつきたい>>

 

身体の状態:精神的緊張やストレス、プレッシャー、食べすぎ、飲みすぎなどにより、気の流れが滞っている状態です。気の流れが滞ると、内臓が正常に動かなくなり、血や津液の停滞にもつながります。

治療方法:気の巡りをコントロールしている「肝」の働きを正常にし、全身の気の巡りを改善する「疏肝解鬱そかんげうつ」の治療をします。そして血や津液の停滞も解消していき、卵巣内に液体・粘液がたまらないようにします。卵巣嚢腫が大きくなったり、再発しないように防いでいきます。

 

漢方

四逆散、逍遥散、香附子、川楝子など

ツボ

間使・三陰交・肝兪など

 

 

気の不足体質
<<腎陽虚じんようきょ>>

 

身体の状態:身体を温める力、代謝力、免疫力、血液・体液・内臓をあるべき場所に保持したり動かす力と関わる気が不足している状態です。気が不足すると津液を押し流す力が弱くなり、津液が停滞しやすくなります。

治療方法:不足している気を補いながら、津液の停滞も解消する「補腎壮陽利水ほじんそうようりすい」の治療を行います。そして局所的な津液の停滞を解消し、卵巣内に液体・粘液がたまらないようにします。卵巣嚢腫が大きくなったり、再発しないように防いでいきます。

 

漢方

牛車腎気丸、真武湯、淫羊藿、巴戟天など

ツボ

関元・三陰交・腎兪・湧泉(お灸を加える)など

 

 

 

生活養生

・水分を毎日1L~1.5Lを目安に摂りましょう。
ただし摂りすぎも禁物です。運動などで汗をかく方はその分多めにとりますが、そうでない方は食事からとれる水分もありますので、考慮して水分摂取をしましょう。

・胃腸の負担を軽減しましょう。
老廃物が溜まりにくくなります。消化を助けてくれる食材、大根、かぶ、山芋などを積極的に摂り入れましょう。肉料理を食べる際には、パイナップル、いちじく、梨、お酢、山査子(さんざし)などを適度にとるといいでしょう。
消化の負担になる、肉の脂、バターや生クリーム、冷たいもの、生ものなどは食べすぎないようにしましょう。

・夜はリラックスした時間をもちましょう。
スマホやパソコンなどは控えましょう。好きな音楽を聴いたり、写真集や絵本などをみたり、ストレッチをするなどがおすすめです。入浴はお湯につかり、お好きなアロマや入浴剤を使うのもいいでしょう。

・睡眠のとり方を工夫し、質のよい睡眠をとるようにしましょう。夢をみる、途中に起きてしまう、トイレに起きる、早く目が覚めてしまうといった方は、体質改善がお勧めです。

 

 

 

卵巣嚢腫でお悩みの方へ

漢方薬の服用や鍼灸の施術では、自分の体質をきちんと確認しましょう。同じ卵巣嚢腫のお悩みの方でも体質が異なれば、適した治療方法や治療方針が異なります。自分にあった漢方薬や鍼灸治療を選択するために、まずは専門家としっかり相談しましょう。

誠心堂薬局での漢方相談、鍼灸治療では、病院の診断や自覚症状だけでなく、舌や脈、顔色などといった客観的な情報なども考慮して、総合的に体質を確認します。体質についての説明や治療方針について納得してから漢方薬・鍼灸治療を始められます。治療のための目的を共有して、アドバイスいたします。まずは一度ご相談ください。

 

日本全国よりご相談を頂いております。
※ご予約の流れについてはこちら →

 

杉本 雅樹

監修 杉本 雅樹

医師

医療法人社団 マザー・キー 理事長


筑波大学医学群卒

筑波大学附属病院などの勤務を経て、平成17年9月、千葉県館山市にファミール産院を開院

現在は千葉県内にて複数の産婦人科診療所を運営

井上桜

監修 井上桜

薬剤師

国際中医師認定A級(現国際中医専門員)

北里大学薬学部製薬学科卒

上原康嗣

監修 上原 康嗣

鍼灸師・誠心堂式三焦調整法認定鍼灸師


琉球大学医学部保健学科卒業

早稲田医療福祉専門学校鍼灸科卒業

早稲田医療専門学校鍼灸科卒業後は整形外科に勤務を経て2005年誠心堂薬局入社

西葛西院長、新浦安店、妙典店院長、行徳接骨院院長を経て、現在は船橋店で院長を務める