体質で考える「関節リウマチ」

体質で考える「関節リウマチ」

体質で考える「関節リウマチ」

更新日:2023.11.20

 

 

 

関節リウマチとは?

30~50歳代の女性がなりやすく、様々な関節で炎症を引き起こす自己免疫疾患です。症状は、まず手指や足趾などの小さい関節に左右対称性に炎症が起きます。場合によっては肩や膝など全身の大きな関節におよび、関節の破壊や変形に進行します。関節の破壊が進むと、日常生活や家事、仕事など生活をするうえで支障が生じるようになります。他にも、微熱、体重減少、貧血、リンパ節の腫れ、目や口の渇き、視力の低下、口内炎、息切れ、空咳、疲れなどを感じることがあります。

 

関節リウマチの原因と治療

リウマチは生まれ持った遺伝的素因に喫煙やストレスなどの環境因子が加わることで起こると考えられていますが、はっきりとしたことは分かっていません。治療では、関節の炎症や痛みをやわらげる消炎鎮痛剤や抗リウマチ薬(DMARDS)、ステロイドなどが使用され、必要に応じて関節の破壊を防ぐ生物学的製剤も用いられます。こうした薬を中心に、リハビリテーション、手術などを組み合わせて治療していきます。

かつて、関節リウマチは症状がゆっくりと進行し、10年以上経過してから関節の破壊が生じると考えられていましたが、近年発症後早期より急速に起こることが分かってきました。関節の腫れや痛みがひどくなくても、関節の内部では炎症が続き関節の破壊が進行していることがあるため、早期発見・早期治療することが重要となります。

 

漢方で考える関節リウマチ

中医学において、関節炎は外界からの邪気(人体に悪影響を与える自然環境の変化)が身体に侵入して、経絡(気血の通り道)の流れを滞らせることで、関節に痛みや腫れ、重だるさを生じさせると考えられています。この気血の流れが閉塞して痛みが出ることを、中医学では“不通則痛(通じざれば則ち痛む)”と呼んでおり、治療としては“通則不痛(通じれば則ち痛まず)”が原則です。また、外邪の侵入の原因となっている根本的な体質を見極め、改善していくことがとても重要になります。

 

中医学体質別治療法

① 風邪(ふうじゃ)体質
風の邪気によるもので、痛みの部位が移動する。
随伴症状:悪風(風に当たるのを嫌う)、鼻づまり、喉の痒み、咳、蕁麻疹、めまい、痙攣など。
痛みの場所が一定せず多関節にまたがったり、上半身の痛みが出やすくなります。邪気の影響が身体の奥までおよんでいないため、治りが早い特徴があります。

 

漢方

疎経活血湯、大防風湯など

ツボ

風門、血海など

食材

ネギ、生姜、薄荷、菊の花、桑の葉、くず粉など

 

 

② 湿邪(しつじゃ)体質
湿気の邪気が原因となり、しつこく定着しやすい。
随伴症状:身体が重だるい、頭重、むくみ、めまい、食欲不振、胸苦しい、軟便など。
重だるい痺れや腫れが出やすく、特に下半身の症状が多い特徴があります。湿気の多い環境や生ものや冷たいものの飲食で悪化する傾向があります。

 

漢方

麻杏薏甘湯、薏苡仁湯など

ツボ

陰陵泉、三陰交など

食材

ネギ、生姜、シナモン、ハトムギ、とうもろこし、冬瓜、もやしなど

 

 

③ 熱邪(ねつじゃ)体質
熱の邪気によるもので、腫れて熱感が強い。
随伴症状:のぼせ、ほてり、イライラ、口の渇き、尿が黄色、便秘など。
関節に赤みや腫れ、熱感、痛みが出やすく、急速に症状が進むのが特徴です。触れると痛みが増し、冷やすと一時的に軽減します。辛いものを食べたり、風邪やストレスなどにより悪化する傾向があります。

 

漢方

白虎湯、越婢加朮湯など

ツボ

曲池、合谷など

食材

苦瓜、冬瓜、きゅうり、たけのこ、蓮根、くちなしの実など

 

 

④ 寒邪(かんじゃ)体質
寒さの邪気によるもので、固定した場所に痛みがある。
随伴症状:筋肉のひきつり、腰痛、冷え、むくみなど。
ズキズキとした強い痛みをともない、冷えによって激しく痛みます。加齢や冷え、冷たいものの飲食も悪化させる要因の一つです。

 

漢方

桂枝加朮附湯、五積散など

ツボ

関元、太谿など ※お灸を多用

食材

ネギ、生姜、シナモン、紫蘇、玉ねぎ、山椒など

 

 

 

関節リウマチの鍼灸治療

鍼灸治療では、痛みの性質と症状が出ている経絡を特定することから始まります。痛みや腫れのある関節部分に鍼やお灸をすることで滞りを解消し、組織の再生をうながします。また、吸玉施術(カッピング)を組み合わせて痛みの原因となる邪気を取り除き、気血の巡りをよくして痛みの鎮静をはかります。関節リウマチは難病ですが、鍼灸治療はつらい症状を取り除いたり、病状の進行を遅らせたりすることが可能です。

 

暮らしのアドバイス

・適正体重を意識しましょう
・適度な運動をしましょう
・十分な休息をとりましょう
・喫煙は控えましょう
・体を冷やさないようにしましょう

 

大谷孝枝

監修 大谷孝枝

薬剤師・鍼灸師・国際中医専門員・中医薬膳師

中国漢方普及協会 学術委員

株式会社 誠心堂薬局 営業部課長


北里大学薬学部薬科卒

東京医療福祉専門学校鍼灸科卒