体質で考える「肩こり」

体質で考える「肩こり」

体質で考える「肩こり」

更新日:2023.11.20

 

 

 

肩こりとは?

日本人の国民病とも言えるのが「肩こり」。特に男性よりも女性のほうが肩こりの症状を訴える人が多く、肩こりは女性のお悩みの第1位、男性では第2位となっています。

※厚生労働省の平成22年国民生活調査調べ

 

肩こりは主に僧帽筋という筋肉に起こる症状で、肩だけでなく首もこることが多く、ひどいと頭痛や吐き気などをともないます。肩こりは男性よりも女性に多い傾向があり、これは男性よりも筋肉量が少なかったり、女性に多い冷え症による血行不良が関係しているためです。肩や首の周りを刺激して一時期的にこりや痛みが楽になったとしても、新しく栄養に富んだ血液が運ばれないと筋肉や神経が再生されにくく、また新たな肩こりが発生します。

 

肩こりの原因と治療

長時間同じ姿勢をとり続けたり、姿勢が悪かったり、冷房や寒さによる緊張、運動不足、ストレスなどにより筋肉が硬くなり、血管が圧迫されて血行が悪くなります。老廃物や疲労物質がたまると、これが刺激となり痛みを繰り返す悪循環となります。病気が原因となって起こる肩こりには医療機関での診察が必要です。思い当たる場合は速やかに医師に相談しましょう。 肩こりの治療には、ビタミン剤の内服や痛くてつらい症状には消炎鎮痛成分を配合した湿布剤などが使われます。

 

漢方で考える肩こり

中医学において、肩こりや首のこりは“瘀血(おけつ)”という血の滞りにより引き起こされます。肩周辺の経絡(気血の通り道)が巡らず、いわゆる“不通則痛(通じざれば則ち痛む)”という状態となっているのです。不通則痛は、中医学における痛みに対する基本的な考え方であり、治療としては、“通則不痛(通じれば則ち痛まず)”が原則です。また、瘀血の原因となっている根本的な体質を見極め、改善していくことがとても重要になります。

 

中医学体質別治療法

① 風寒(ふうかん)体質
冷たい空気やクーラーなどにさらされて肩こりになる。
随伴症状:筋肉のひきつり、頭痛、関節痛、腰痛、無汗、冷えなど。
冷えにより気血の流れが滞るため血行不良となります。患部を触ると冷たく感じ、温めると一時的に和らぐ傾向があります。悪寒発熱、鼻水、咳などの風邪症状をともなう場合があります。

 

漢方

桂枝加葛根湯、葛根湯など

ツボ

大椎、風門など ※お灸を多用

食材

ネギ、生姜、シナモン、紫蘇、玉ねぎ、ニンニク、山椒、ニラ、酢など

 

 

② 血瘀(けつお)体質
長期間の姿勢不良や外傷により肩こりになる。
随伴症状:頭痛、唇の色が悪い、シミやくすみが目立つ、冷えのぼせなど。
肩こりの場所は一定であり、朝起きた時や座った状態が長く続くと悪化します。刺すような痛みが出やすく、治りにくい傾向があります。

 

漢方

疎経活血湯、桂枝茯苓丸など

ツボ

血海、三陰交など

食材

紅花、シナモン、黒糖、生姜、ネギ、玉ねぎなど

 

 

③ 痰湿(たんしつ)体質
水分代謝が悪い状態で、肩こりは重だるく痛む。
随伴症状:身体が重だるい、頭重、むくみ、めまい、食欲不振、胸苦しい、軟便など。
体に余分な水がたまることで、血行が悪くなります。湿気が多くなるとひどくなるほか、冷たいもの、生もの、アルコールのとりすぎなど胃腸を弱らせると悪化しやすくなります。

 

漢方

五苓散、二陳湯など

ツボ

陰陵泉、豊隆など

食材

緑豆などの豆類、冬瓜、とうもろこし、ハトムギ、もやしなど

 

 

④ 肝鬱(かんうつ)体質
ストレスなどの精神刺激により肩こりになる。
随伴症状:頭痛、お腹や胸の張り、イライラ、憂うつ感、喉のつまりなど。
イライラしたり、怒りっぽくなることで気を巡らせる働きが落ちるため、血流をスムーズに保てなくなります。

 

漢方

四逆散、加味逍遥散など

ツボ

太衝、内関など

食材

ミント、ジャスミン、春菊、三つ葉、みかんの皮、イカなど

 

 

⑤ 気血両虚(きけつりょうきょ)体質
身体のエネルギーとなる気や体内に栄養を与える血(けつ)やが不足して肩こりになる。
随伴症状:倦怠感、食欲不振、不眠、顔色が白い、めまい、眼精疲労、動悸、脱毛など。
過労や胃腸虚弱、栄養失調などにより気や血が不足すると、血管内を巡る物質がなくなるため滞りが生まれやすくなります。

 

漢方

十全大補湯、人参養栄湯など

ツボ

足三里、三陰交など

食材

豆腐や湯葉などの大豆製品、卵、いんげん豆、山芋、人参、ほうれん草など

 

 

 

肩こりの鍼灸治療

鍼灸では、こりや痛みのある部位は反応点であり、重要な治療点と考えます。まずは身体に走っている経絡のうち、どの部分に障害を受けているかを判断して治療していきます。内臓や筋肉などは経絡を通じてつながり機能しているため、鍼やお灸を行うことで気血の流れをよくし、こりや痛みなどをとっていくことができます。低周波治療器気(電気パルス)を使って痛みの鎮静をはかったり、眼精疲労も感じている方には目の周りの鍼によって肩こりへの効果が期待できます。

肩こりで使う代表的なツボ
肩井(けんせい)、肩中兪(けんちゅうゆ)、肩外兪(けんがいゆ)、外関(がいかん)、合谷(ごうこく)、後渓(こうけい)など。

 

暮らしのアドバイス

・入浴で肩や首を温めて筋肉をほぐしましょう
・長時間のスマホやパソコン作業は控えましょう
・座りっぱなしのときは時間を決めて休憩をはさみ軽くストレッチをしましょう
・ストレスをうまく発散させましょう
・腕を回して肩甲骨を動かしましょう

 

大谷孝枝

監修 大谷孝枝

薬剤師・鍼灸師・国際中医専門員・中医薬膳師

中国漢方普及協会 学術委員

株式会社 誠心堂薬局 営業部課長


北里大学薬学部薬科卒

東京医療福祉専門学校鍼灸科卒