体質で考える「むくみ」

体質で考える「むくみ」

体質で考える「むくみ」

更新日:2023.11.17

 

 

 

むくみとは?

身体の約6割は水分でできており、その水分の3分の2は細胞の中、残り3分の1は細胞の外に存在します。細胞の外では、血液に含まれる水分(血漿やリンパ液)と、細胞の間を埋めている水分(間質液)に分けられます。これらの水分は細胞や血管の中を行き来して、栄養を送ったり、老廃物を除去したりしていますが、基本的に体内の水分バランスが変わることはありません。しかし、このバランスが崩れ、細胞の間に水分が滞ってしまったり、血液中の水分が血管の外に異常に漏れてしまうことがあり、それがむくみに繋がるのです。

 

むくみの原因と治療

むくみの特徴として大きく2つに分けると、指で数秒押して放したとき、へこんだまま痕が戻らないのが“圧痕性(あっこんせい)”、すぐに痕が戻るのが“非圧痕性(ひあっこんせい)”といいます。例えば、夕方以降など、靴下の痕が残っているのが圧痕性といえます。むくみが足だけでなく、他に身体の不調があれば何らか内臓の病気が隠れている可能性もあります。

 

圧痕性のむくみ
代表的なものに心臓、肝臓、腎臓由来があります。心臓は全身の血液循環に関与しており、その循環機能が低下してしまうと全身に血液が送れなくなり、水分が停滞してむくみが現れます。肝臓はアルブミンというタンパク質を作る臓器で、アルブミンは血液中のタンパク質の約6割を占め、血液中の水分を一定に保つ役割があります。肝臓の機能が低下してアルブミンが少なくなると、血液中の水分が血管の外へ出やすくなり、むくみが現れます。腎臓は身体の水分量を調節し、老廃物を尿として排泄します。腎臓の機能が低下すると、身体の中の余分な水分を尿として排出できなくなり、それによりむくみが現れます。

非圧痕性のむくみ
非圧痕性のものでは甲状腺機能低下症があります。甲状腺ホルモンの産生や分泌が低下し、寒がりになる、皮膚の乾燥、汗をかきにくくなる、便秘、むくみ、体重増加、眠たくなるなどの症状をきたす病気です。異常なむくみを感じたら、医師に相談することをおすすめします。
病気以外に不快を感じる程度のむくみには、やはり血行をよくすることが大切です。マッサージやストレッチ、むくんだ部分を心臓の位置より高く上げるなどすれば自然に解消していきます。軽い運動を日常的に取り入れ、毎日湯船に浸かって血行を促進し、食事では塩分を控えてカリウムを多く含む食材を摂っていくと良いでしょう。弾性ストッキングを着用するのもいいですが、過度な締め付けになるようなものは避けましょう。

 
体質で考える「むくみ」

漢方で考えるむくみ

体質で考える「むくみ」

中医学において、むくみは“肺(はい)”・“脾(ひ)”・“腎(じん)”に深い関わりがあります。 飲食をすると、胃腸機能と関係がある“脾”が栄養になるものと老廃物とを分け、必要な水分を身体の上部へと送り、それを“肺”が全身にくまなく散布して身体を潤します(一部は汗として排出)。その後、全身を巡った水分を“腎”が回収し、いらないものは膀胱へ、必要なものは再利用します。なんらかの原因でこれら内臓の働きが悪くなるとむくみが発生します。

 

中医学体質別治療法

① 脾虚(ひきょ)体質
もともと胃腸が弱く、水分代謝がうまくいかないため、身体全体がむくみ、疲労で悪化する。
随伴症状:食欲不振、お腹の張り、腹痛、倦怠感、疲れやすい、めまいなど。
過労や胃腸虚弱により身体に必要な気が不足するため、水分を推し進めて流すことができず、むくみやすくなります。

 

漢方

六君子湯、防已黄耆湯など

ツボ

足三里、気海、陰陵泉など

食材

豆腐や湯葉などの大豆製品、卵、いんげん豆、山芋、きのこ類など

 


② 肺熱(はいねつ)体質
風邪など外界からの邪気(人体に悪影響を与える自然環境の変化)によって生じ、顔面や上半身がむくみやすい。
随伴症状:発熱、鼻づまり、咳、痰、のぼせ、口の渇き、皮膚炎、便秘など。
肺に炎症が起きると、全身に水分を巡らせることが出来ず、むくみやすくなります。

 

漢方

越婢加朮湯、麻杏甘石湯など

ツボ

大椎、風門など

食材

蓮根、カブ、白菜、大根、ナス、豆腐、梨、林檎など

 


③ 腎虚(じんきょ)体質
加齢や虚弱体質により生じ、顔面または下半身が特にむくみ、指で押した痕がすぐに戻らない。
随伴症状:足腰がだるい、物忘れ、耳鳴り、頻尿、白髪、難聴、精力減退など。
加齢や過労などにより水を司る腎の働きが弱ると、全身を巡り戻ってきた水の回収が追い付かず、むくみやすくなります。

 

漢方

六味地黄丸、八味地黄丸など

ツボ

腎兪、太渓など ※冷えをともなう場合は、命門にお灸を加える

食材

黒豆、黒きくらげ、黒ごま、山芋、卵、くるみ、アーモンドなど

 


④ 痰湿(たんしつ)体質
外気の湿気や水分の過剰摂取により生じ、身体全体にむくみが起きる。
随伴症状:体が重だるい、痰が多い、食欲不振、胸苦しく胃がつかえる、下痢など。
梅雨の時期や雨天時に特にむくみやすくなります。また、暴飲暴食などによる胃腸の不調で水分代謝が悪くなり、リンパ液の循環に影響してむくみを引き起こします。

 

漢方

五苓散、平胃散など

ツボ

陰陵泉、豊隆など

食材

緑豆などの豆類、冬瓜、とうもろこし、ハトムギ、もやしなど

 


⑤ 血瘀(けつお)体質
血行不良により水も巡らなくなり、むくみが生じる。
随伴症状:肩こり、頭痛、唇の色が悪い、シミやくすみが目立つ、冷えのぼせなど。
運動不足や座りっぱなしなど、血(けつ)の巡りが悪くなることで、むくみを引き起こします。

 

漢方

桂枝茯苓丸加薏苡仁、当帰芍薬散など

ツボ

血海、三陰交など

食材

紅花、シナモン、黒糖、生姜、ネギ、玉ねぎなど

 

 

 

むくみの鍼灸治療

体質と原因に合わせた全身の施術が基本です。血やリンパ液の巡りをよくして、むくみを解消していきます。
むくみで使う代表的なツボ:足三里(あしさんり)、陰陵泉(いんりょうせん)、豊隆(ほうりゅう)、脾兪(ひゆ)、腎兪(じんゆ)など。

 

暮らしのアドバイス

・塩分の多いものを食べすぎないようにしましょう
・水分のとりすぎに気をつけましょう
・ストレッチやマッサージ、適度な運動をして血行をよくしましょう
・入浴により適度に発汗しましょう
・体を冷やさないようにしましょう

 

大谷孝枝

監修 大谷孝枝

薬剤師・鍼灸師・国際中医専門員・中医薬膳師

中国漢方普及協会 学術委員

株式会社 誠心堂薬局 営業部課長


北里大学薬学部薬科卒

東京医療福祉専門学校鍼灸科卒