中医美容



中医美容の歴史

専門分野としての分科

孫思邈
写真出典元: 「孫思邈」(2022年5月10日 (火) 11:57 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』

中医学とは、数千年以上の歴史の中で積み重ねられてきた臨床経験と、陰陽五行論とよばれる哲学理論に基づき発展してきた中国伝統医学のことです。

中医美容は、中医学の理論に基づいて、身体の内外両面を重要視する思想のもと、美しい肌やからだつき、美しい爪や髪などを手に入れるための、美容に焦点を当てた学問です。
今も昔も、いつまでも若々しく美しく、健康でありたいと願う人々のために発展してきました。

春秋時代から戦国時代までの臨床経験と学術をまとめ、前漢時代に著された、中国最古の医学書である「黄帝内経霊枢こうていだいけいれいすう」には、既に「美」に関しての記述があります。美の象徴である「眉」について以下のように記載されています。

「足太陽之上、血気盛則美眉、眉有毫毛。血多気少則悪眉、面多少理。血少気多則面多肉、血気和則美色」
訳:足の太陽経に血気が充足していると、眉の中に毫毛が生え、眉毛は美しくなる。血が多く気が少なければ、眉毛は薄くなり、顔にはシワが多く現れる。血が少なく気が多ければ、顔面は肉厚になる。気血が調和していると、顔面がきれいになる。
その後、美容は唐の時代に最も大きく発展しました。
唐代の医家、孫思邈そんしばくが著した「千金要方せんきんようほうや「千金翼方せんきんよくほう」には、「面薬」「婦人面薬」「薫衣浥衣香」「生髪黒髪」など、顔に塗る薬、身体や衣服の香りを良くする薬、髪を黒くする薬などが記載されています。
また、王燾おうとうが著した「外台秘要方げだいひようほう」には、ニキビ、しみ、そばかす、ほくろ、脱毛、白髪など美容にまつわる悩みを解決する薬が記載されています。
さらに、唐・宋・明の三代王朝時代には、皇帝が若さを求め、若返りの秘薬か数々誕生しましました。
現代において美容への意識はますます高まり、美容専門の研究部門が次々と立ち上げられ、今なお発展し続けています。





中医美容の治療の特徴

1.内外両面からの治療を重視する

1.内外両面からの治療を重視する

現代医学では、レーザーやボトックスなどの美容施術や整形手術などによって、局所的に外面を美しくする事が可能になりました。ですが、内面的な美容を行わなければ、得られた効果を長く維持することができません。 中医美容では、主に内外両面からの5つの手法によって、気血津液(きけつしんえき)を充足・調和させ、臓腑機能を調整することで、美しい肌やからだつき、美しい爪や髪などを作り上げていきます。

中医美容における5つの手法

① 中薬:植物、動物、鉱物などを原料にした生薬を内服、もしくは外用として使用。美容ではローションやクリーム、パックとしても使用する。
② 鍼灸:鍼や灸を用いて全身の機能を調整する治療方法
③ 薬膳:薬食同源に基づき、それぞれの食材の効能を組み合わせて行う食事療法
④ 推拿:筋肉、筋膜、靭帯などの軟部組織や神経、骨格などに働きかける手技療法
⑤ 気功:気(エネルギー)と意識を調和させて、全身の機能を調整する方法


2.気・血・津液を調整する

2.気・血・津液を調整する

3.五臓六腑を調整する

3.五臓六腑を調整する



気・血・津液を調整する


◆ 気と美容

気は人体の生命活動を促進するエネルギーであり、人体を構成し生命活動を維持する物質の基盤です。気は、身体を温める力、代謝力、免疫力、血液・体液・内臓をあるべき場所に保持したり動かす力のことです。

症状

肥満・むくみ・皮膚のたるみ・毛穴の開き・くすみ・髪が抜ける・にきび・赤ら顔・敏感肌など

漢方方剤

防已黄耆湯・補中益気湯・加味逍遥散・大棗・黄耆・柴胡など

ツボ

足三里・合谷・中脘・百会・三陰交・太衝・肺兪・脾兪


◆ 血と美容

血は皮膚、筋肉、髪、骨など人間を構成するものに栄養を与え、精神活動を支える物質を指します。

症状

肌の乾燥・唇の乾燥・顔の黄ばみ・しわ・しみ・クマ・髪のパサつき・白髪・爪が割れるなど

漢方方剤

四物湯・当帰芍薬散・桂枝茯苓丸・竜眼肉・何烏首・丹参など

ツボ

足三里・三陰交・太衝・血海・膈兪・肝兪・脾兪


◆ 津液と美容

津液は血液以外の体液のことで、人間を構成するものに潤いを与える物質を指します。

症状

肥満・むくみ・肌の乾燥・唇の乾燥・やつれ・しわ・髪が細くなる・髪のパサつきなど

漢方方剤

五苓散・六味地黄丸・麦門冬湯・蒼朮・枸杞子・女貞子など

ツボ

足三里・三陰交・太衝・血海・膈兪・肝兪・脾兪・腎兪

五臓六腑を調整する


◆ 心と美容

「心主血脈、主神志、在体合脈、其華在面」
心は血液循環と精神を司り、全身の血脈は心に属し、心の機能は顔面部に表れます。心の機能が正常だと、栄養素・酸素・水分・熱などの必要なものを身体の隅々にまで届け、また二酸化炭素や老廃物などを体外に排泄することができます。

症状

赤ら顔・ニキビ・しみ・くすみ・クマ・血色が青白い・むくみなど

漢方方剤

黄連解毒湯・血府逐瘀湯・帰脾湯・桃仁・丹参・竜眼肉など

ツボ

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◆ 肺と美容

「肺主気、主宣発粛降、通調水道、在体合皮、其華在毛」
肺は呼吸を司り、胃で消化吸収された滋養物質を全身に散布し、不要になったものは下降させ、排泄します。体液を皮膚や毛に供給し潤し、不要な体液は汗や尿になることを促します。皮膚は肺によって防御・滋養され、肺の機能は皮膚や毛に表れます。

症状

肌の乾燥・毛髪の乾燥・爪の乾燥・きめが粗い・にきび・吹き出物・むくみなど

漢方方剤

辛夷清肺湯・清肺湯・瓊玉膏・麦門冬・党参・沙参など

ツボ

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◆ 脾と美容

「脾主運化、気血生化之源、在体合肌肉、主四肢、其華在口唇」
脾は消化吸収運搬を司り、気血津液の栄養物質を作り出し全身に運び、不要になった物質は体外に排泄します。全身の筋肉は脾により栄養され、脾の機能が正常だと、全身が豊満で四肢も正常に活動します。脾の機能は口唇に表れます。

症状

肥満・痩せ・むくみ・皮膚や体のたるみ・皮膚に艶がない・にきび・吹き出ものなど

漢方方剤

平胃散・六君子湯・山楂子・白朮・茯苓など

ツボ

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◆ 肝と美容

「肝主疏泄、蔵血、在体合筋、其華在爪」
肝は全身の気の流れ(昇降出入運動)を司り、血液を貯蔵し、全身への血液の供給量を調整しています。肝の貯蔵している血液によって、筋肉の弛緩と収縮が調整され、肝の機能は爪に表れます。

症状

肝斑・しみ・くすみ・顔のしわ・爪が割れる・爪が薄くなる・抜け毛・髪のパサつき など

漢方方剤

当帰芍薬散・加味逍遙散合四物湯・地黄・香附子・柴胡など

ツボ

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◆ 腎と美容

「腎主成長、発育、生殖、蔵精、生髄、在体合骨、其華在髪」
腎は成長、発育、生殖を司り、老化ととても深い関わりがあります。腎は成長、発育、生殖能力を左右する精(エッセンス)を貯蔵し、男性と女性に性的特徴、曲線美、若々しい美しさを持たせます。精は髄を生み、髄が骨を満たすことで骨や歯の健康を保ち、腎の機能は髪に表れます。

症状

顔がやつれる・皮膚の黒ずみ・しみ・そばかす・白髪・抜け毛・薄毛・むくみなど

漢方方剤

六味地黄丸・牛車腎気丸・亀鹿二仙丸・熟地黄・旱蓮草・紫河車など

ツボ

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これらの治療方法は、弁証論治をもとに単独で用いたり相互に配合して用いたりしながら、個々の病状に対処していくことになります。
誠心堂では、中医師(中国で中医学を専門とする医師)、国際中医専門員が多数在籍しており、国内でもトップクラスの中医治療を受けることが出来ます。