薬草辞典-あ行

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出典元

〔新装版〕実践漢薬学 三浦 於菟 (著)
ISBN-13 978-4904224144
出版者 東洋学術出版社 出版日 2011/3/15

〔新装版〕中医臨床のための中薬学 神戸中医学研究会編著
ISBN 978-4-904224-16-8
出版社 東洋学術出版社 出版日2011/9/15

アキョウ

 

阿膠あきょう

あきょう

[基原]ウマ科ロバの毛を除去した皮を煮て膠〈にかわ〉にしたもの。

[別名]驢皮膠ろひきょう

[性・味]平・甘

[帰経]肺・肝・腎

[用法]5~10g。溶解(烊化)または冲服。丸・散剤も可。

止血潤肺しけつじゅんぱい作用を有する優れた補血薬ほけつやく熟地黄じゅくじおうに比べより膩性じせいであり,潤肺じゅんぱい止血しけつ作用を有する。

補血止血

優れた補血作用とともに,良好な収斂止血作用を有する。
(1) 心肝などの血虚証に使用される。めまい・動悸・顔色不良・不眠 ・羸痩〈るいそう〉・月経後期・過少月経・閉経,さらに煩躁などに使用される。(配合生薬)黄者・当帰・白芍薬・熟地黄など。〔代表方剤:阿膠四物湯〕。
(2) 吐血・喀血・崩漏・過多月経・血尿など一切の出血症に使用される。陰虚火旺や虚寒証など各種の病態に使用可能だが,特に陰血虚の出血に適する。(配合生薬)①虚寒性の崩漏・過多月経には,蒲黄・乾地黄・艾葉・白芍薬など。〔代表方剤:芎帰膠艾湯〉。②脾陽虚証の各種出血には,乾地黄・灶心土・白朮・附子など。〔代表方剤:黄土湯〕。
(3) 養血止血安胎作用もあり,妊婦の下血・胎動不安などに使用される。(配合生薬)続断・苧麻根など。

滋陰潤燥

肝・腎・肺の陰を補い乾燥を潤す(潤燥)。
(1) 熱病の陰液消耗や肝腎陰虚の煩躁不眠・動悸・四肢のほてり・倦怠感などに使用される。黄連・黄芩・白芍薬・鶏子黄・炙甘草・麦門冬などと用いる。〔代表方剤:炙甘草湯,黄連阿膠湯〉。
(2) 陰虚内風による痙攣などに使用される。乾地黄・亀板・牡蛎・鼈甲などと用いる。〔代表方剤:大定風珠〕。
(3) 肺陰虚や肺燥による乾咳・粘性少量痰・鼻腔乾燥などに使用される。麦門冬・天門冬・沙参・貝母・桑葉などと用いる。〔代表方剤:清燥救肺湯,補肺阿膠湯〕。

潤腸通便作用があり,腸燥便秘に使用される。通便力は弱く,他薬の補助薬として用いられる。麻子仁・杏仁・桃仁・熟地黄・当帰などと用いる。〔代表方剤:潤腸湯〕。

[注意点]粘膩性であり消化器の障害を起こしやすい。脾胃虚弱証の食欲不振,痰湿証の嘔吐・下痢などには使用しない。

(管理No.01-001)

インチンコウ

 

茵蔯蒿いんちんこう

いんちんこう

[基原]キク科カワラヨモギの幼苗。

[別名]茵蔯いんちん

[性・味]微寒・苦

[帰経]脾・胃・肝・胆

[用法]10~15g。外用も可。

清熱利湿せいねつりしつ退黄たいおうの重要薬。

清熱利湿・
退黄

(1)利湿により黄疸を除く。微寒性であり湿熱性の黄疸(陽黄)に適するが,温裏薬などの配合により寒湿性の黄疸(陰黄)にも使用される。
①湿熱性黄疸には,山梔子・大黄・黄柏・金銭草などと用いる。〔代表方剤:茵蔯蒿湯 〕。
②熱より湿邪が盛んな下痢・浮腫・悪心などを伴う黄疸には,白朮・茯苓・猪苓などと用いる。〔代表方剤:茵蔯五苓散〕。
③寒湿性黄疸には,乾姜・附子・白朮などと用いる。〔代表方剤:茵蔯四逆湯,茵蔯朮附湯〕。
(2)黄疸がない肝胆の湿熱証の季肋部痛(痞塞感)・ロ苦・焦燥感・褐色尿・黄膩苔などにも使用される。そのほか,肝胆湿熱の胆嚢炎・胆嚢ジスキネジー・胆石症にも用いられる。柴胡・金銭草・鬱金・大黄などと用いる。〔代表方剤:清胆利湿湯〕。
(3)湿疹・疥癬・蕁麻疹・皮膚瘙痒症・滲出液を伴う皮膚化膿症などの湿熱性皮膚疾患(特に下肢)にも使用される。単味の外用も可。黄柏・土茯苓・白蘚皮・ 地膚子などと用いる。〔代表方剤:茵蔯蒿散〕。
(4) 湿と熱がともに盛んな湿温証初期に使用される。滑石・黄芩・白豆蔲・藿香などと用いる。〔代表方剤:甘露消毒丹,一加減正気散〕。

軽度の疏肝作用を有し,陰虚の肝気鬱結に使用される。〔代表方剤:鎮肝熄風湯〕。

(管理No.01-002)

インヨウカク

 

淫羊藿いんようかく

いんようかく

[基原]メギ科シロバナイカリソウやホザキイカリソウなどの葉。

[別名]仙霊脾れいせんひ

[性・味]温・辛・甘

[帰経]肝・腎

[用法]5~10g。丸・散・膏・酒剤にも使用可。

温燥おんそう性が強く,祛風湿きょふうしつ作用を有する温腎壮陽おんじんそうよう薬。補陽ほよう力は肉蓯蓉にくじゅよう巴戟天はげきてん鎖陽さようより優れるが,燥性が強く温和さに欠ける。仙茅せんぼうに比べ壮陽そうよう作用に優れる。

温腎壮陽

温性が強く,よく腎陽を補い命門の火を温め,壮陽作用を有する。
(1) 腎陽虚証の下肢冷感・腰下肢関節痛などに仙茅とともに使用される。腎陰陽両虚証で,ほてり・焦燥感などには,仙茅・知母・黄柏などと用いる。〔代表方剤:二仙湯〕。
(2) 腎陽虚による陽萎・不妊・頻尿・腰部下肢倦怠無力感などにも使用される。熟地黄・拘杞子などと用いる。〔代表方剤:贊育丹〕。

強健筋骨
・祛風湿

腎とともに肝をも補い筋骨を強健にし,温性と燥性が強く,陽気を温め通じて風湿寒の邪をよく除く。風寒湿痺証の疼痛・しびれ,中風の筋拘縮・片マヒなどに使用される。特に腎陽虚証を伴うものによい。そのほか,小児マヒの後遺症にも使用される。威霊仙・当帰・桑寄生・川芎など。〔代表方剤:仙霊脾散〕。

肺腎虚証の老人の咳嗽や呼吸困難,歯痛などにも使用される。

[注意点]陰虚火旺には使用しない。

 

(管理No.01-003)

ウコン(キョウオウ)

 

姜黄うこん

うこん

[基原]ショウガ科ウコンやハルウコンの根茎。

[別名]中国ではショウガ科のウコンやハルウコン,ガジュツの乾燥した塊根を鬱金と呼び,ウコンやハルウコンの乾燥した根茎を姜黄と呼ぶ。これに対し,わが国の生薬名である鬱金は,ウコンの乾燥した根茎,つまり中国でいう姜黄のことである。また中国の鬱金は,わが国では川玉金せんぎょくきん玉金ぎょくきんと通称される。このように,中国とわが国ではその呼び方が逆となるので注意が必要である。

[性・味]温・辛・苦

[帰経]肝・脾

[用法]3~9g。外用も可。

気中きちゅう血薬けつやくといわれ,活血かっけつしよく止痛する。温性おんせいであり,鬱金うこんに比べ,活血力かっけつりょくに優れ肢体にも作用する。

行気活血

良好な活血力を有し,同時に気も巡らせ止痛する。瘀血気滞証に多用される。温性であり寒性の気滞瘀血証に適する。肝気鬱結や瘀血による胸部腹部季肋部痛・月経痛・閉経などに使用される。さらに胃痛や歯痛にも用いられる。
①心痛には当帰・木香・烏薬などと用いる。〔代表方剤:姜黄散〕。
②季肋部痛には枳殻・桂心・烏薬などと用いる。〔代表方剤:推気散〕。
③閉経・産後腹痛には,当帰・川芎・紅花・延胡索などと用いる。
④外傷打撲には,桃仁・蘇木・乳香などと用いる。〔代表方剤:姜黄湯〕。

通経止痛

気血を巡らせるとともに風寒の邪を散じ,経絡を通じさせる 。寒性の瘀血を伴う風湿痺証に使用される。特に上肢肩部の痺証に常用される。羗活・ 防風・当帰などと用いる。〔代表方剤:蠲痺湯,舒筋湯〕。

消腫止痛の作用があり,熱毒が盛んな瘀血気滞による皮膚化膿症などに使用される。粉末を外用する。大黄・天花粉・白芷などと用いる。〔代表方剤:如意金黄散〕。

[注意点]妊婦には慎重に使用する 。

 

(管理No.01-004)

エンゴサク

 

延胡索えんごさく

えんごさく

[基原]ケシ科エンゴサクの塊茎。

[別名]元胡げんこ玄胡索げんごさく

[性・味]温・辛・苦

[帰経]肝・脾・心

[用法]3~10g。粉末の服用も可 (1.5~3g/回)。醋炒延胡索は止痛作用が優れる。

気血きけつを巡らせ,全身の各種疼痛を止める。気滞瘀血きたいおけつ性疼痛の常用薬。

行気活血・
止痛

気とともに血もよく巡らせ,瘀血を散じ,良好な止痛作用を有する。気滞瘀血性の疼痛に多用される。そのほか,配合薬によって寒性の疼痛(寒凝気滞証)・熱証の疼痛・肝気鬱結・風湿痺証・外傷痛などに使用される。腹痛・胸痛・季肋部痛・疝気痛・月経痛・四肢痛・外傷性痛など,各種の病態や広範囲の疼痛(特に臓腑性の疼痛)に用いられる。
①胸痛(胸痺など)には,薤白・栝楼仁・丹参・赤芍薬などと用いる。
②気滞の季肋部痛や胃痛には枳殻・鬱金などと用いる。瘀血性疼痛には,桃仁・紅花などと用いる。〔代表方剤:血府逐瘀湯〕。熱証疼痛には,川楝子・山梔子などと用いる。 〔代表方剤:金鈴子散〕。寒証疼痛には,香附子・高良姜などと用いる。〔代表方剤:安中散〕。
③寒性疝痛には, 小茴香・呉茱萸などと用いる。
④月経痛や産後の瘀血性の腹痛には,当帰・川芎・五霊脂・蒲黄などと用いる。〔代表方剤:少腹逐瘀湯,延胡索散〕。⑤外傷打撲痛や風湿痺証には,乳香・没薬・桂枝・秦艽などと用いる。

 

(管理No.01-005)