薬草辞典-は行
■ハイショウ
敗醬
[基原]オミナエシ科オミナエシやオトコエシなどの全草や根。
[別名]全草は敗醬草。根は敗醬根。
[性・味]微寒・辛・苦
[帰経]大腸・肝
[用法]敗醬草:6~15g。敗醤根:3~20g。外用も可。
活血作用を有する清熱解毒薬。腸癰治療の重要薬。有膿・無膿を問わず応用してよい。
清熱解毒・ 排膿 |
熱毒を冷ますとともに湿を除き,瘀血を去る。熱毒と湿・気・血が結び出現した腸癰に多用される。そのほか,排膿作用を有し,配合薬により皮膚などの化膿症の初期から化膿期まで使用される。肺癰(肺炎や熱邪蘊肺証)にも使用される。塗布も可。 |
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活血化瘀 |
紅藤と同様に,血を巡らせ疼痛を去る。瘀血による産後の腹痛や月経痛・胸腹疼痛などに使用される。単味服用も可。当帰・川芎・五霊脂・香附子などと用いる。 |
[注意点]血瘀であっても熱毒によらない場合には用いない。
■バイモ
貝母
[基原]ユリ科アミガサユリ属植物の鱗茎。
[性・味]平(川貝母)・寒(浙貝母)・甘(川貝母)・苦(浙貝母)
[帰経]肺・心
[用法]3~5g。粉末も可 (1~1.5g/回)。川貝母は高値であり,粉末で服用してもよい。
寒性と潤性があり,清熱潤燥作用を有し,熱痰・燥痰ともに使用可能な化痰薬。栝楼に比べ清熱化痰作用に優れる。
清熱化痰 ・止咳 |
よく肺熱を冷まし,痰を除去し止咳する。潤性・寒性は貝母の種類によって異なる。栝楼と同様に,肺熱鬱滞による粘性痰・黄色痰・乾燥黄膩苔・紅色舌,肺の津液不足や肺陰虚内熱による粘性少痰・喀出困難の痰・咽頭乾燥・少苔や無苔・紅色舌などに使用される。さらに,外感風熱の咳嗽にも用いられる。 |
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清熱散結 |
熱を冷まし解毒し痰熱などの鬱結や結実を除く。浙貝母が優れる。肺癰・乳癰・腸癰・瘰癧・甲状腺腫(癭瘤)・皮膚化膿症状の初期(未潰) などに使用される。特に初期に使用される。 |
[注意点]基本的には寒性であり,寒痰証には禁忌。伝統的に烏頭とは相反。
■バクガ
麦芽
[基原]イネ科オオムギの発芽した穂先の果実。
[別名]麦糵
[性・味]平・甘
[帰経]脾・胃・肝
[用法]10~15g。丸・散剤も可。回乳には生麦芽を大量に使用する(30~60g)。生麦芽は健脾開胃,炒麦芽は消食作用に優れる。
和中作用を有する消食薬。山楂子や神麹に比べ消食力は弱いが,健脾開胃作用を有する。穀芽に比べ,消食力に優れる。
消食和中 |
消化力に優れ,消化作用を促進することで脾胃の機能を助ける。特に米・芋・小麦などの澱粉類の消化作用に優れる。食積や脾胃虚証によるもたれ・胃部脹満感・食欲不振,さらには嘔吐などに使用される。特に脾胃虚証に食積を伴う証に多用される。また健脾薬と併用してその胃腸障害を防ぐ。軽症には単味の服用も可。 |
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回乳 |
乳汁の分泌を抑制する。断乳や乳汁鬱滞による乳房脹満感(痛)などに使用される。単味の使用も可。神麹などと用いる。 |
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疏肝解鬱 |
肝気を流通に流す。胸部季肋部脹満感・曖気・めまいなどを呈する 肝鬱気滞証や肝陽上亢証・肝脾不和証の補助薬として使用される。肝気鬱結に食積を伴う証によく適する。川楝子・芍薬・菌蔯蒿などと用いる。〔代表方剤:鎮肝熄風湯〕 |
[注意点]授乳期には禁忌。
■ハクセンピ
白蘚皮
[基原]ミカン科ハクセンの根皮。
[性・味]寒・苦
[帰経]脾・胃
[用法]5~10g。外用も可。
瘙痒を伴う湿熱瘡瘍の常用薬。
清熱解毒 ・除湿止痒 |
清熱解毒と同時に湿を除き祛風して瘙痒感を緩和する。 (2)湿熱黄疸・湿熱痺症などにも使用される。 |
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■ハクヘンズ
白扁豆
[基原]マメ科フジマメの成熟種子。
[別名]扁豆
[性・味]微温・甘・苦
[帰経]脾・胃
[用法]10~30g。丸・散剤も可。炒白扁豆は健脾止瀉に,生白扁豆は祛暑化湿に優れる。
補気健脾力は山薬・白朮に劣るが,祛暑化湿作用を有する補気薬。
健脾化湿 |
脾胃の気を補いその機能を高めて補気する。だが健脾カ・燥性ともに弱く,化湿するも乾燥させず温和である。芳香性があり,湿を除き脾胃機能を調整する(化湿和中)。白朮・人参などの補助薬として使用される 。 |
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祛暑化湿 |
健脾するとともによく暑湿の邪を除く。夏季の暑湿邪による腹痛下痢・嘔吐・腹部脹満感などに使用される。単品を服用してもよい。香薷・厚朴・藿香などと用いる。〔代表方剤:香薷散〕。 |
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解酒毒 |
解毒作用があり酒毒・食肉中毒などに使用される。 |
■バクモンドウ
麦門冬
[基原]ユリ科ジャノヒゲの塊根。
[性・味]寒・甘・微苦
[帰経]心・肺・胃
[用法]10~15g。丸・散・膏剤にも使用可。
よく肺陰を滋養する。天門冬に比べ滋陰作用は弱いが,養心陰・清心火・養胃陰作用を有する。
養陰潤肺 |
肺陰を滋養し肺を潤すが,天門冬に比べ滋陰作用は弱い。肺陰虚証や肺燥,肺熱,肺癆などによる乾咳・無痰や粘性少痰・血痰・喀出困難な痰,少苔・無苔・乾燥舌・紅色舌など,天門冬と同様の病態症状に使用される。そのほか,気逆性の乾咳にも使用される。 |
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養胃生津 |
胃陰を潤し津液を生じよみがえらせ,胃熱を去り,渇を止める。薬性が温和で,胃陰を補う良品。 |
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養心陰・ 清心火 |
心陰を滋養し心火を冷まし,心神を安定させる。 |
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他 |
(1)腸を潤し排便を促進する(軽度の潤腸通便)。だが薬力は天門冬より弱く,他の補助薬として使用される。熱性燥性の腸燥便秘に使用される。玄参・乾地黄などと用いる。〔代表方剤:増液湯〕 |
[注意点]風寒感冒や風寒,湿性の咳嗽,脾胃虚寒証の下痢には禁忌。
■ハゲキテン
巴戟天
[基原]アカネ科ヤエヤマアオキの根。
[性・味]温・辛・甘
[帰経]腎
[用法]10~15g。丸・散剤も可。
潤性の温腎壮陽薬。肉蓯蓉・鎖陽と同時によく使用される。祛風寒湿作用を兼ねる温腎壮陽薬。
温腎壮陽 |
よく腎陽を補い先天の気を盛んにする。さらに壮陽作用を有し,精血を補う。潤性であり乾燥させず傷陰の弊害が少ない。腎陽虚の陽萎・不妊・腰痛・腰下肢の脱力倦怠感などに使用される。また腎陽虚による尿失禁などにも使用される。 |
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強健筋骨 ・祛風湿 |
腎陽を補いながら筋骨を強健にし,風湿を除き痺痛を止める 。腎陽虚を伴う下半身の風湿寒痺証に多用される。腰下肢関節痛・筋肉痛・屈伸不利など。杜仲・牛膝・五加皮・肉桂・附子などと用いる。〔代表方剤:金剛丸〕。 |
[注意点]陰虚火旺や湿熱の痺証には使用しない。