薬草辞典-は行
■バシケン
馬歯莧
[基原]スベリヒユ科スベリヒユの全草
[性・味]寒・酸
[帰経]大腸
[用法]9~15g。下痢には多量(30~60g)に使用する。食用も可。
薬性が温和な湿熱下痢の常用薬。酸性であり,地錦草に比べ止痢作用に優れる。
清熱解毒 ・止痢 |
清熱解毒とともに止痢作用があり,胃腸の湿熱毒邪を冷まし下痢を止 める(清腸止瀉)。 |
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涼血止血 ・通淋 |
血熱を冷まし止血し,利尿通淋する。 |
[注意点]脾虚や寒証の下痢には禁忌。
■ハッカ
薄荷
[基原]シソ科ハッカの地上部や葉。
[性・味]涼・辛
[帰経]肺・肝
[用法] 2~6g。芳香性であり後下する 。
風熱の邪を透散する。芳香性で軽く浮いて上昇し頭部疾患に多用される。
発散風熱 |
最も一般的な辛涼解表薬で,風熱を散じる。辛涼解表薬中,発汗解表力は最も強い。風熱表証の熱感・軽度悪寒・咽頭痛・微発汗などに使用される。 原則として実証に使用される。荊芥・金銀花・連翹・牛蒡子などと用いる。〔代表方剤:銀翹散,桑菊飲〕。 |
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清頭目 |
頭や眼の熱を冷まし明瞭にする。 |
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清利咽頭 |
咽頭の熱を冷まし流暢に呼吸させる。風熱による咽頭の発赤腫脹・疼痛・嗄声などに使用される。牛蒡子・桔梗・荊芥など。〔代表方剤:六味湯〕。 |
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透疹 |
風熱を散じるとともに熱毒を排出することにより,透疹させる。麻疹の初期や湿疹が出切らないもの,風熱の発疹などに使用される。止痒作用もある。蟬退・牛蒡子・荊芥・葛根などと用いる。〔代表方剤:透疹湯,竹葉柳蒡湯〕。 |
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疏肝解鬱 |
芳香発散性により気を巡らせて鬱を開く。薬力は弱い。肝気鬱結証に対し補助的に使用される。柴胡・白芍・当帰などと用いる。〔代表方剤:加味逍遙散〕。 |
[注意点]発汗性が強く,陰虚火旺証や表虚証の自汗には禁忌。
■ハトムギ(ヨクイニン)
薏苡仁
[基原]イネ科ハトムギの成熟種子。
[別名]薏米・苡仁
[性・味]微寒・甘・淡
[帰経]脾・胃・肺
[用法]10~30g。丸・散剤に可。食品としても使用可。炒薏苡仁は健脾作用に優れる。
薬性が温和で補益性があり,各種の作用を有する利水滲湿薬。
利湿健脾 |
湿を除くと同時に脾の機能を高める(健脾)。脾虚証に湿が加わっ た病態(脾虚湿盛)に多用される。作用は茯苓と類似し,標本兼治の薬物といえる。 |
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利湿除痺 |
利湿と同時に筋を緩め(舒筋)関節や筋肉痛を緩和する 。風湿痺証 や筋の痙攣(転筋)に使用される。特に湿邪が強い病態に適する。 |
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清熱排膿 |
熱を冷まし膿を排泄する。肺癰・腸癰・皮膚化膿症などに使用される。また生肌作用も有する。 |
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他 |
単味を尋常性疣贅(イボ)に使用する。 |
■ハンゲ
半夏
[基原]サトイモ科カラスビシャクの塊茎。
[性・味]温・辛
[帰経]脾・胃・肺
[用法]5~10g。内服には主に製半夏を使用する。外用も可。
化痰の重要薬。天南星とともによく配合される。治痰の要薬といわれ,湿痰を除去し和胃降逆止嘔する化痰の重要薬。天南星に比べ体内,特に脾胃の湿痰をよく除き,かつ止嘔作用を有する。
燥湿化痰 |
温燥の性質があり,よく化痰しかつ咳嗽を止める 。痰湿による多痰・咳嗽・胸部痞塞感・呼吸困難などに使用される。主に寒性の湿痰に使用するが,炮製や清熱化痰薬との配合で熱痰にも用いられる。 |
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降逆止嘔 |
化痰と同時に胃気を降ろし(胃気降逆),悪心・嘔吐を止める。止嘔の重要薬。痰飲による嘔吐,特に顔面蒼白・腹部喜温・淡白舌などの寒性痰飲による嘔吐に適する。また他薬との配合で,各種病態の悪心・嘔吐に使用される。 |
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消痞散結 |
化痰と同時に気も巡らせ,痞を除き痰結を散じる。痰と気が結び停滞した胸部胃部の痞塞感・梅核気・癭瘤・痰核などに使用される。厚朴・蘇梗・薄荷などと用いる。〔代表方剤:半夏厚朴湯〕。 |
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消腫止痛 |
腫脹や腫瘍をやわらげ止痛する。皮膚化膿症・毒蛇の咬傷などに使用される。生半夏や新鮮な半夏の粉末を塗布する。毒性があり主に炮製して使用される。 |
[注意点]温燥の性質があり,陰虚の乾咳・津液不足による口渇,熱証には禁忌あるいは慎重に使用する。伝統的に烏頭とは相反。
■バンランコン
板藍根
[基原]アブラナ科ホソバタイセイなどの根。
[性・味]寒・苦
[帰経]心・胃
[用法]10~15g。散剤も可。
解毒の重要薬。大青葉と同様の薬効だが,解毒力にやや優れ頭部疾患に多用される。
清熱解毒 ・涼血利咽 |
強力な清熱解毒作用を有する 。寒性が強く,よく気血の熱を冷まし斑を消失させる。燥性は弱い。特に熱邪が強い温病気分証,熱邪が営・血分に深入したときに多用される。衛分証にも用いられる。皮膚化膿症・ウイルス性肺炎などもに使用される。大頭痙(顔面丹毒)・耳下腺炎・咽頭炎・扁桃腺炎などの咽頭頭部疾患に多用される。そのほか,温病の気・血・営分証の高熱・煩躁・譫言・発斑・皮下出血などに使用される。 |
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■ビャクジュツ
白朮
[基原]キク科オオバナオケラの根茎。
[性・味]温・甘・苦
[帰経]脾・胃
[用法]5~15g。通便には多量(~60g)を使用。生白朮は燥湿利水に,炒白朮は補気健脾に,炒焦白朮は健脾止瀉にそれぞれ優れる。
最も一般的かつ重要な補気健脾薬。山薬・白扁豆とともによく配合される。良好な補気健脾作用を有する。補気健脾の重要薬。白朮・山薬・白扁豆の三薬中,最も燥湿健脾作用に優れる。
補気健脾 |
脾胃の気をよく補いその機能を高めてよく補気し,またよく燥湿する。補気健牌の基本的かつ重要薬で,一般的な脾虚証に多用される。 |
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健脾・ 燥湿利水 |
燥性があり,健脾作用により体内停滞の湿・痰飲を除く。 |
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補気止汗 |
補気健脾作用により固表止汗する。気虚の自汗や陰虚の盗汗などに使用される。単味を服用してもよい。黄耆・浮小麦・防風・牡蛎などと用いる。〔代表方剤:玉屏風散〕。 |
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補気安胎 |
補気することで流産を防止する(安胎)。脾虚証や気虚証などの胎動不安に使用される。 |
[注意点]燥湿作用があり傷陰しやすい。そのため,陰虚内熱証や陰虚証には使用しない。
■ビャクゴウ
百合
[基原]ユリ科ユリなどの鱗茎の鱗片。
[性・味]微寒・甘・微苦
[帰経]心・肺
[用法]10~30g。食用も可。
安神作用を有する滋陰潤肺止咳薬。
養陰潤肺・ 止咳 |
肺陰を滋養し肺気を降ろし,肺熱を冷まして止咳する 。肺陰虚証や陰虚内熱による慢性咳嗽(肺癆咳嗽)に多用される。乾咳・粘性少痰や無痰・喀血,乾燥舌・少苔無苔などの症状に用いられる。 |
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清心安神 |
心を潤し熱を除き,心神を安定させる 。熱病後期の余熱や心陰虚内熱などによる心神不安証の,不眠多夢・動悸・虚熱煩躁・焦燥不安感・異常行動・精神不安などに使用される。知母・生地黄・酸棗仁などと用いる。〔代表方剤:百合地黄湯,百合知母湯〕。 |
[注意点]寒証の下痢には禁忌。