薬草辞典-は行
■ビワヨウ
枇杷葉
[基原]バラ科ビワの葉。
[性・味]微寒・苦・辛
[帰経]肺・胃
[用法]5~10g。蜜炙枇杷葉は止咳に,生姜汁で炙ると止嘔作用に優れる。
寒性の止咳降気薬。肺と胃の熱を冷まし降ろす。桑白皮に比べ降気作用に優れ,肺熱・肺燥の咳嗽に多用される。
清肺止嗽 |
降気作用に優れ,肺熱を冷まし肺気を降ろすことで止咳し呼吸困難を静める(平喘)。風熱や燥熱の粘稠黄色痰・黄色少痰,黄膩苔などに多用される。 |
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清胃止嘔 |
胃熱を冷まし,胃気の上逆を抑える 。 |
[注意点]寒性の咳嗽,胃寒性の嘔吐には使用しない。
■ビンロウジ
檳榔子
[基原]ヤシ科ビンロウの成熟種子。
[別名]大腹子・海南子
[性・味]温・辛・苦
[帰経]胃・大腸
[用法]6~15g。条虫・姜片虫治療には多量(60~90g)を使用する。
行気し凝固した痰湿(有形の痰)を除き,優れた消食作用を有する駆虫薬。大腹皮に比べ行気力・化痰力に優れる。
駆虫 |
条虫・姜片虫・蛔虫・蟯虫などの広範囲な寄生虫に使用される 。特に条虫・姜片虫に適する。単味粉末の服用も可。 |
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行気消積 |
よく気を巡らせ消化を促進し,痰湿の停滞を除く。軽度の瀉下作用もある。大腹皮と同様に,気と湿の停滞による病態に使用される。 |
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利水化湿 |
凝固した痰湿を除き,利尿を図る。実証の浮腫や寒湿証による脚気・ 下肢浮腫・下肢腫脹疼痛などに使用される。 |
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他 |
截瘧作用もあり,瘧疾に使用される。常山・草果などと用いる。〔代表方剤:截瘧七宝飲〕。 |
[注意点]大腹皮と同様に,気を消耗しやすいので気虚証には禁忌。脾虚証の下痢には使用しない。
■ブクリョウ
茯苓
[基原]サルノコシカケ科マツホドの菌核。
[性・味]平・甘・淡
[帰経]心・脾・腎
[用法]10~15g。朱茯苓(朱砂で撹拌)は安神作用に優れる。
健脾作用を有する薬性温和で広範囲に使用可能な利湿の重要薬 。利尿力は茯苓・猪苓・沢瀉の三薬中で一番弱い 。
利水滲湿 |
体内の水湿や痰飲を利水により取り除く。利水するも正気を損傷せず,体表・体内を問わず痰・湿・飲のいずれの病態にも使用される。また平性で虚・実・寒・熱各証に使用可能。健脾作用があり,特に脾虚のため湿を生じた病態(脾虚生湿)によく適する。水湿や痰飲停留の実証のほか,虚証にも使用される。 |
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健脾利湿 |
湿の除去と同時に脾の機能を高める(健脾)。脾虚証に湿が加わった 病態(脾虚湿盛)に多用される。標本兼治薬といえるが,健脾作用はあまり強くなく,他の健脾薬の補助として使用される。下痢・食欲不振・腹鳴・倦怠感などの症状に使用される。人参・白朮・陳皮・半夏・縮砂などと用いる。〔代表方剤:四君子湯,六君子湯,啓脾湯,参苓白朮散〕。 |
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安神 |
心神を安定させる。脾虚や痰飲による心神不安の動悸・不眠・不安感などに使用される。 |
■ブシ
附子
[基原]キンポウゲ科カラトリカブトの子根。
[性・味]大熱・大辛
[帰経]腎・心・脾
[用法]3~15g。一般には,炮製した附子(炮附子)を使用する。生附子や炮附子を多量に使用するときには,先煎(30~60分)により毒性を軽減する 。
陽気を温め鼓舞する。温裏の重要薬。烏頭・肉桂とよく同時に使用される。全身の陽気を温補する。回陽救逆や各種陽虚証,寒性疼痛の重要治療薬。
回陽救逆 |
心陽を助けて脈をよく通じ(通脈),腎陽を温め補うこと(益火)で喪失しつつある元陽の力を挽回する。亡陽証の重要薬。四肢厥冷・冷汗・微呼吸・顔面蒼白・脈微などの亡陽証に使用される。 |
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温陽 |
よく陽気を温め補い高める。特に腎陽,次いで心陽をよく補う。各種の陽虚証に使用される。また虚喘などにも使用される。 |
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散寒止痛 |
経絡を温め寒を除き止痛する。特に寒湿除去作用に優れる。寒湿による痺証に多用される。桂枝・白朮など。〔代表方剤:桂枝加朮附湯,甘草附子湯〕。 |
[注意点]毒性があり中毒に注意する。陰虚火旺・真熱仮寒などには禁忌。
■ブッシュカン
仏手柑
[基原]ミカン科ブッシュカンの成熟果実。
[別名]仏手
[性・味]温・辛・苦
[帰経]肝・脾・肺
[用法]5~10g。
香櫞に比べ行気力・化痰力は弱いが,薬性は温和で脾胃の気をよく調理する。
行気止痛 |
脾・胃・肝の気(特に脾胃)を巡らせ止痛する。だが止痛力は強くない。 芳香性で薬性は温和,肝胃気滞証の軽症に多用される。肝胃不和による上腹部脹満感(痛)・噯気・悪心・嘔吐・食欲不振などに使用される。そのほか,脾胃気滞証・肝気鬱結証などにも用いられる。蘇梗・陳皮・香附子・木香・枳実などと用いる。 |
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行気化痰 |
行気により痰を除く。慢性痰湿阻肺の多痰・咳嗽・胸部痞塞感・胸痛・呼吸困難などに使用される。感冒初期にはあまり使用されない。枇杷葉・鬱金などと用いる。 |
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他 |
裏急後重を伴う下痢にも使用される。 |
[注意点]陰虚火旺には慎重に使用する。
■ベニバナ(コウカ)
紅花
[基原]キク科ベニバナの管状花。
[性・味]温・辛
[帰経]心・肝
[用法]3~10g。活血通経として使用時,酒を加えて煎じてもよい。
広範囲に使用される活血祛瘀の重要常用薬。桃仁とともによく配合される。養血作用も有し通経作用に優れる活血薬。桃仁に比べ,通絡作用に優れ外傷打撲・風湿痺証・皮膚湿疹などの外表四肢の疾患に多用される。温性であり寒性瘀血証により適する。
活血通経 |
活血すると同時に経絡の流通を良好にし,月経調整作用(調経)を有する。また軽度の補血作用もある。瘀血証の常用薬。 |
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祛瘀止痛 |
活血することで止痛する 。瘀血による外傷打撲・胸痛(狭心症など)・風湿痺証の関節痛など各種疼痛に使用される。 |
[注意点]過多月経には禁忌。
■ボウイ
防已
[基原]ツヅラフジ科シマハスノハカズラの根。
[性・味]寒・苦・辛
[帰経]膀胱
[用法]5~10g。
寒性の祛風湿止痛薬。祛湿作用に優れ,浮腫・風湿熱痺証の重要薬。よく下部に作用する。豨蘞草に比べ祛湿作用に優れる。
祛風湿 |
祛湿作用に優れ,祛風止痛作用を有し,身体下部によく作用する。 |
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利水消腫 |
下行性があり,水分を除き熱を冷ます。湿熱の浮腫・腹水・肺内水腫・関節水腫などに使用される。特に下肢の浮腫によく適する。虚・実,寒・熱 の各証に使用可能。 |
[注意点]苦寒性が比較的強く,多量の使用で胃を損傷するおそれがある。そのため,多量には使用しない。また脾胃虚証,無湿熱証,陰虚証には禁忌。