薬草辞典-か行
■ケイヒ
桂皮
[基原]クスノキ科ケイの樹皮。
[別名]肉桂・官桂
[性・味]熱・辛・甘
[帰経]腎・脾・心
[用法]2~5g。多量には使用しない。後下または短時間煎じる。粉末の服用も可 (沖服)(1~2g/回) 。赤石脂を畏れる。
陽気を温め鼓舞する。温裏の重要薬。烏頭・附子とよく同時に使用される。下焦虚冷の重要薬。よく腎脾の陽を温補する。附子より温脾作用に優れる。
温補腎陽 |
腎陽(命門の火)を温め補う作用に優れ,腎陽虚治療の重要薬。 |
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温経散寒 |
よく寒邪を散じ血脈を通じて止痛する。虚寒性,寒凝気滞,寒性瘀血などの疼痛に使用されるが,特に脾胃の温補止痛作用に優れる。下焦虚寒性腹痛の常用薬。 |
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温経通脈 |
気血を温め,血をよく通じさせる(温通)。また本作用により,他薬の作用をよく発揮させる(宣導百薬)。 |
[注意点]陰虚火旺・実熱裏証・血熱妄行性出血には禁忌。
■ケツメイシ
決明子
[基原]マメ科コエビスグサやエビスグサの成熟種子。
[別名]草決明・馬蹄決明
[性・味]微寒・甘・苦
[帰経]肝・大腸
[用法]10~15g。粉末を服用してもよい (3~6g/回)。生決明子は寒性が強く,清肝明目・発散風熱作用に優れ,実証に多用される。炒決明子はこれらの作用は弱くなる。
熄風し明目する眼科の重要薬。通便,明目作用を兼ねる平肝熄風薬。眼病の重要薬。蒺藜子に比べ,明目作用に優れ潤腸通便作用を有する。
清肝明目 |
肝火を冷まし降ろし風熱を散じ,視力を明瞭にする。肝熱や風熱による眼瞼眼球充血・眼瞼の発赤腫脹(目赤)や疼痛・流涙・羞明・夜盲症などに使用される。 |
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平肝熄風 |
よく肝陽を抑え風を静める 。釣藤鈎や天麻より薬力は弱い。肝陽上亢や肝熱によるめまい・頭痛・痙攣・眼花などに使用される。特に眼部症状が伴う病症に多用される。また近年では降圧作用もあるとされる。蒺藜子・菊花・釣藤鈎・牡蛎・白芍薬・牛膝などと用いる。 |
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潤腸通便 |
潤腸通便作用がある。寒性のため熱結や腸燥便秘症に使用される。 麻子仁・当帰・生地黄などと用いる。 |
[注意点]寒性で潤腸通便作用があるため,脾虚証の下痢には禁忌。
■ゲンジン
玄参
[基原]ゴマノハグサ科ゲンジンの根。
[別名]黒参・元参
[性・味]寒・甘・苦・鹹
[帰経]肺・胃・腎
[用法]10~15g。時に多量(~30g) に使用される。
清熱滋陰しよく瀉火する。陰虚火旺証によく適する。生地黄に比べ,瀉火作用に優れかつ解毒・散結・利咽作用を有するが止血作用はない。
清熱滋陰 ・涼血 |
1) 血熱を冷まし,陰分を滋養し,軽度ながら津液を潤す。
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瀉火解毒 ・利咽 |
滋陰するとともに上炎の火をよく冷まし降ろす。またよく解毒し利咽する。咽頭腫脹の常用薬。 |
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解毒散結 |
清熱解毒滋陰するとともに痰熱による結実を除く。 |
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他 |
潤腸通便作用もあり,陰虚の便秘証にも使用される。生地黄・麦門冬などと用いる。〔代表方剤:増液湯〕。 |
[注意点]脾虚証で寒湿がある証には禁忌。藜芦とは配合禁忌。
■コウカ
紅花
[基原]キク科ベニバナの管状花。
[性・味]温・辛
[帰経]心・肝
[用法]3~10g。活血通経として使用時,酒を加えて煎じてもよい。
広範囲に使用される活血祛瘀の重要常用薬。桃仁とともによく配合される。養血作用も有し通絡作用に優れる活血薬。桃仁に比べ,通絡作用に優れ外傷打撲・風湿痺証・皮膚湿疹など外表四肢の疾患に多用される。温性であり寒性瘀血証により適する。
活血通経 |
活血すると同時に経絡の流通を良好にし,月経調整作用(調経)を有する。また軽度の補血作用もある。瘀血証の常用薬。 |
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祛瘀止痛 |
活血することで止痛する。瘀血による外傷打撲・胸痛(狭心症など)・風湿痺証の関節痛など各種疼痛に使用される。 |
[注意点]妊婦や過多月経には禁忌。
■コウブシ
香附子
[基原]カヤツリグサ科ハマスゲの根茎。
[別名]香附米
[性・味]平・辛・微苦
[帰経]肝
[用法]5~10g。丸・散剤も可。
寒熱両証に使用可能な,偏りのない気血調整通利薬。よく肝気を巡らせ調経止痛する。
疏肝理気 |
よく肝気を巡らせ,気の流れを調整し止痛する。平性(やや温に偏る)であり,寒熱両証に使用可能。 |
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調経止痛 |
気を巡らせることで血滞を除き,月経を調整して止痛する。“血中の気薬《湯液本草》”,“気病の総司,女科の主帥《本草綱目》”などといわれ,婦人疾患の常用薬。肝気鬱結による月経不調(特に不定期月経)や月経痛(特に月経開始時痛)に多用される。そのほか,月経前の乳房脹満感(痛)・曖気・胸部痞塞感など。四物湯(川芎・当帰・白芍薬・熟地黄)とよく配合される。そのほか, 柴胡・艾葉・蘇梗などと用いる。〔代表方剤:芎帰調血飲〕。 |
[注意点]気虚や陰虚血熱には禁忌。
■コウボク
厚朴
[基原]モクレン科カラホウなどの樹皮。日本産(和厚朴)はホウノキの樹皮。
[別名]烈朴・川朴
[性・味]温・苦・辛
[帰経]脾・胃・肺・大腸
[用法]3~10g。虚証の脹満には少量とする。姜厚朴は温中散寒作用に優れる。
湿阻中焦治療の重要薬。気を下げ巡らせ,湿滞をよく除く。蒼朮に比べ行気作用に優れる。
行気燥湿・ 導滞 |
燥性が強く,またよく気を巡らせて(行気),よく脾胃の湿や食積を除く(導滞)。寒湿や食積による脹満感(痛)治療の重要薬。苦寒燥湿薬を加え湿熱証にも使用可能。 |
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下気平喘 |
肺の痰湿を除き,呼吸を流暢にする。湿痰阻肺や肺気上逆の白色粘性多痰・咳嗽・呼吸困難・厚膩苔などに使用される。 |
[注意点]温燥性が強いため,湿滞証を確かめて使用する。陰虚証には禁忌。妊婦には慎重に使用する。
■コクズイ
黒豆衣
[基原]マメ科ダイズの黒色種子品種(クロマメ)の種皮
[別名]料豆衣・穭豆衣
[性・味]平・甘
[帰経]肝・腎
[用法]3~9g。煎服。
腎陰を補い,養血平肝し,益腎平肝の効能をもつ。肝腎陰虚・血虚肝旺による眩暈・頭痛などに適し,除虚熱・止盗汗にも働くので陰虚盗汗に有効である。
益腎平肝 |
肝腎陰虚・血虚肝旺による頭痛・眩暈に,天麻・女貞子・枸杞子・菊花などと用いる。 |
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清虚熱・ 止盗汗 |
陰虚の盗汗に、牡蛎・五味子・地骨皮・浮小麦・黄耆などと使用する。 |