薬草辞典-ま行
■マオウ
麻黄
[基原]マオウ科シナマオウなどの地上茎。
[性・味]温・辛・微苦
[帰経]肺・膀胱
[用法]1.5~10g。発汗解表には少量,平喘利水には多量を用いる。生麻黄は発汗力が強い。炙麻黄は発汗力は弱まり平喘止咳作用が強まる。蜜炙麻黄は発汗力は弱まり,潤肺平喘作用に優れる。
“肺経の専薬(専門薬)”といわれ,肺に働きかけることで,解表発汗・宣肺利水の各作用を行う。
発汗解表 |
腠理を開き発汗させ,風寒の邪を強力に散らして,表証を治癒させる(解表)。無汗・悪寒・頭痛・身体痛・脈浮緊などの外感の表寒実証に用いられる。麻黄・杏仁・葛根・白芍薬などと用いる。〔代表方剤:麻黄湯,葛根湯〕。 |
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宣肺平喘 |
寒飲や熱邪のために閉塞され詰まった肺気を,宣肺作用を高めることで流暢にさせる。咳嗽・喘息などの呼吸困難(気喘)に用いられる。 |
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利水消腫 |
肺の通調水道を強めることで,利水作用を起こさせる。悪風・脈浮など表症を伴う浮腫・風水・上半身の浮腫などに用いられる。 |
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他 |
(1)透疹:麻疹の初期や湿疹に使用される。他の透疹薬の補助として用いられる。薄荷・蟬退・葛根などと用いる。 |
[注意点]発汗力が強いため,表虚証の自汗や陰虚の盗汗,腎虚の咳嗽(腎不納気証) には禁忌。
■マシニン
麻子仁
[基原]クワ科のアサの種子。
[別名]火麻仁
[性・味]平・甘
[帰経]脾・胃・大腸
[用法]10~15g。砕いて使用する。外用も可。
通便力は郁李仁より弱い。
潤腸通便 |
大腸を潤し便を軟化させて排便を促進する。津液不足・虚証の便秘(虚秘)・熱病回復期・老人など腸燥便秘に使用される。 |
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養血・ 生津潤燥 |
熱病回復期などの陰虚や気陰両虚証などに使用される。他の補血補陰薬の補助薬として用いられる。地黄・阿膠・白芍薬・麦門冬・鼈甲など。〔代表方剤:灸甘草湯,加減復脈湯〕。 |
[注意点]多量の服用で,悪心・嘔吐・下痢・しびれ・痙攣などの中毒が出現することがる。
■マンケイシ
蔓荊子
[基原]クマツヅラ科ハヌゴウやミツバハヌゴウの成熟果実。
[性・味]微寒・苦・辛
[帰経]肝・膀胱
[用法]5~10g。丸・散・酒剤も可。
頭部顔面の風熱を散じ,よく止痛する。
散風止痛・ 清頭目 |
風熱を散じ,軽く浮き上がり頭部や顔面に作用し,頭部と視力を明瞭にする(清頭目)。 |
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祛風止痛 |
祛風止痛作用と除湿作用もあり,風湿痺証の関節痛・筋拘縮・しび れなどに使用される。防風・木瓜・秦艽・羗活・防風などと用いる。〔代表方剤:羗活勝湿湯〕。 |
[注意点]血虚頭痛や陰虚火旺証には使用しない。
■モクツウ
木通
[基原]アケビ科アケビなどの蔓性茎
[性・味]大寒・大苦
[帰経]心・小腸・膀胱
[用法]3~6g。
強力な降火利尿作用とともに心火を冷まし,かつ経絡を通じる。
清熱利湿通淋 |
強い利尿力を有し,利尿によりよく湿熱を去る 。 |
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瀉心火 |
心火や小腸の熱を利尿することで冷まし降ろす(心火下泄)。心火上炎 の口内炎・舌炎・煩躁・ほてり・ロ渇・不眠・濃縮尿などに使用される。生地黄・竹葉・甘草などと用いる。〔代表方剤:導赤散〕。 |
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清熱通絡 |
熱を冷ますことにより経絡を通じさせる 。熱湿痺証の関節発赤腫脹疼痛・関節運動障害などに使用される。防已・秦艽・絡石藤・忍冬藤などと用いる。 |
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下乳 |
乳汁排泄を促進する。産後の乳汁分泌不全・乳房脹満感などに使用される。通草・王不留行・穿山甲などと用いる。 |
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通経 |
血をよく巡らせる 。 |
[注意点]“大に心腎之気を泄す”といわれ,毒性があり多量の服用で中毒を起こす可能性がある。そのため少量を使用する。妊婦・(西洋医学の)心や腎の機能不全者には禁忌。
■モッコウ
木香
[基原]キク科モッコウの根。
[性・味]温・辛・苦
[帰経]脾・胃・大腸
[用法]3~10g。丸・散剤にも可。長時間は煎じない。生木香は行気止痛に,煨木香は止瀉作用に優れる。
脾胃の気を巡らせ,止痛止瀉する。中焦の気の調整作用に優れる辛温理気薬。
行気止痛・ 調中 |
強い芳香性を有し温性であり,気をよく巡らせ止痛し,脾胃の作用を整える。特に脾胃・大腸の胃腹部脹満痛などの気滞証に多用される。 |
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[注意点]燥性が強く,陰虚火旺には慎重に使用する 。
■モツヤク
没薬
[基原]カンラン科ミルラノキの樹脂。
[性・味]平・辛・苦
[帰経]心・肝・脾
[用法]3~10g。煎じると混濁し独特の臭気がある。外用も可。
強い止痛力を有する温性の活血薬。薬効は乳香とほぼ同等で,ともによく配合される。乳香に比べ活血作用に優れる。
活血止痛 |
走散性が強く,血とともに気をもよく巡らせ瘀血を去り止痛する。各種の瘀血性疼痛,特に瘀血気滞の疼痛に多用される。また風湿痺証にも用いられる。 |
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祛腐生肌 |
血を巡らせ腫脹や結節・化膿症を緩和し,化膿巣や傷口の修復を早め(祛腐生肌),かつ止痛する。外科の常用薬。皮膚化膿症・皮膚潰瘍・外傷・腸癰などに使用される。特に傷口の修復不全に多用される。 |
[注意点]多量の服用で悪心・嘔吐を引き起こすことがあるので,胃弱者には慎重に使用する。非瘀血証や妊婦には使用しない。