薬草辞典-さ行
■サイコ
柴胡
[基原]セリ科ミシマサイコなどの根。
[性・味]微寒・苦・辛
[帰経]肝・胆
[用法]3~10g。退熱には多量(10~15g)を,疏泄や升陽には少量(3~5g)を使用する。醋炒柴胡は疏肝解鬱に,生柴胡は退熱作用に優れる。
陽気を引き上げ,気を巡らせ,鬱熱を去る。葛根より昇陽作用に優れる。
解表退熱 |
気を巡らせて(疏泄),鬱熱を発散し取り除く(退熱)。軽度の発汗作用もある。 |
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疏肝解鬱 |
肝気をよく伸びやかに巡らせ,気滞を除く。肝気鬱結のための胸腹部痞満・季肋部脹満痛・乳房のしこり・経前乳房脹満・抑鬱気分・焦燥感・月経不調・月経痛などに使用される。 |
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昇堤陽気 |
清陽の気を上らせることで,下に墜ちた気(下陥の気)を引き上げる。 脾虚中気下陥証による脱肛・子宮脱・慢性の下痢・めまい・立ちくらみ・下垂感・ 倦怠感・息切れ・頻尿・ほてり感などに使用される。升麻・黄者・人参・白朮・芍薬などと用いる。〔代表方剤:補中益気湯,昇陥湯,乙字湯〕。 |
[注意点]昇散の性質が強く,陰や気を消耗しやすい。そのため過度の陰虚証や陰虚火旺証,肝陽上充証,気逆証には禁忌。また,適時滋陰補血薬や柔肝薬(白芍・ 当帰など)を配合すべきである。
■サイシン
細辛
[基原]〕ウマノスズクサ科ウスバサイシンの全草(中国),または根および根茎(日本)
[性・味]温・辛
[帰経]肺・腎・心
[用法]1~3g。“辛は銭(3g)を過ぎず”といわれ多量には使用しない。散剤・外用も可。藜芦と相反。
よく寒飲を温め去る。辛性で走性が強く,祛風し散寒止痛し水飲を去る。乾姜と比べ止痛作用に優れる。
祛風散寒・止痛 |
よく風寒を温め散じ止痛する。寒性疼痛の常用薬。 |
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温肺化飲 |
肺中の寒飲(寒飲伏肺)を温めて除去する。乾姜と同様だが,薬カはより優れる。寒飲伏肺の呼吸困難・水様性多痰・咳嗽・背部や四肢の冷感・白滑苔などに使用される。乾姜・麻黄・五味子・杏仁などと用いる。〔代表方剤:小青竜湯,苓甘姜味辛夏仁湯,苓甘五味姜辛湯〕。 |
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宣通鼻窮 |
辛性で走竄性があり鼻腔(鼻窮)に入り,温めて湿邪を除き閉塞した鼻腔を通じさせる(宣通)。 |
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風火歯痛 |
清熱瀉火薬を配合して,熱証の歯痛・舌炎・ロ内炎などにも使用さ れる。 |
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他 |
浮熱を散じる作用もあり,外感風寒・外寒内熱・裏熱証・陰虚などの熱による咽頭痛に使用される。 |
[注意点]辛性が強く,気や陰液を消耗しやすい。気血両虚証・陰虚証には禁忌。
■サンザシ
山楂子
[基原]バラ科オウミサンザシやサンザシの成熟果実。
[別名]酸楂
[性・味]微温・酸・甘
[帰経]脾・胃・肝
[用法]5~10g。炒山楂子は消食,生山楂子は活血作用にそれぞれ優れる。
肉類の消化作用に優れ,活血作用 を有する消食薬。
消食化積 |
消化を促進し,下痢を止める。特に肉類や脂肪,母乳の消化作用に優れる。肉・脂肪類などの食積によるもたれ・胃部や腹部脹満感(痛)・下痢,母乳の消化不良(乳積)による下痢,慢性下痢などに使用される。単味の服用も 可。 |
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活血化瘀 |
血分に作用し活血して瘀血を散じる。新血の産生を妨げないとされる。産後の瘀血腹痛や悪露停滞 ・瘀血の月経失調や月経痛,さらには肝などの腫瘍に使用される。当帰・川芎・益母草・紅花・烏薬などと用いる。〔代表方剤:帰芎山楂湯,通瘀煎〕。 |
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他 |
(1)仙気痛・陰嚢腫大などに使用される。小茴香・橘核などと用いる。 |
[注意点]多食で歯を痛めるので,齲歯には多量に使用しない。
■サンシシ
山梔子
[基原]アカネ科クチナシなどの成熟果実。
[性・味]寒・苦
[帰経]心・肺・肝・胃・三焦
[用法]5~10g。外用も可。生山梔子は清熱瀉火作用に,焦炭山梔子は涼血止血作用に優れる。焦山栖子は苦寒の性質が弱まる。
瀉火除煩作用があり,特に清心肝火作用に優れる。夏枯草や竜胆の二薬に比べ,広範囲な実熱証に使用され,利湿・涼血止血作用を有する。
清熱瀉火 ・除煩 |
鬱熱を冷まし取り去り,煩躁を除き,解毒する。“三焦の熱を冷ます”といわれ,広範囲の実熱証に使用されるが,特に心・肝の火をよく冷 ます。 |
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清熱利湿 |
利尿作用があり熱を小便より排泄する 。燥性はあまり強くない。湿熱の黄疸や膀胱湿熱の熱淋に使用される。 |
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涼血止血 |
止血作用があり,血熱による吐血・鼻出血・血尿や温病血分証の皮下出血などに使用される。生地黄・牡丹皮・大薊・小薊・茅根などと用いる。〔代表方剤:十灰散〕。 |
[注意点]潤腸通便傾向があり,脾胃虚寒証や脾虚証の下痢・食欲不振などには禁忌。
■サンシュユ
山茱萸
[基原]ミズキ科サンシュユの成熟果肉。
[別名]棗皮
[性・味]微温・酸・澁
[帰経]肝・腎
[用法]5~10g。亡陽などの重症には多量(~30g) に使用してもよい。
補肝腎の代表薬。枸杞子とよく同時に配合される。収斂作用を有する。
補肝腎陰 |
肝血と腎精を滋養する。補肝陰作用に優れるが,微温性であり腎精の補充を通して腎陽をも補う。肝腎陰虚のめまい・頭重・腰下肢倦怠感・耳鳴や陰陽両虚証の尿失禁・陽萎・遣精などに使用される。また肝腎陰虚の骨蒸潮熱などにも用いられる。 |
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収斂固澁 |
良好な収斂固澁作用を有する。主に下焦の滑脱症に使用される。 |
[注意点]収斂作用があり湿熱証や小便不利,実証には慎重に使用する。
■サンヤク
山薬
[基原]ヤマイモ科ナガイモの根茎。
[別名]薯蕷
[性・味]平・甘
[帰経]脾・肺・腎
[用法]10~30g。粉末の服用(6~10g/回)や多量(60~200g)も可。生山薬は補陰に,炒山薬は健脾止瀉作用に優れる。
補気作用のほか,潤燥作用と澁性を有し,肺・腎の陰も補う補気健脾薬。白朮に比べ,甘平性で潤性があり肺腎陰虚にも使用される。
補気健脾・ 養陰 |
脾胃の気を補いその機能を高めて補気する。潤性があり,脾気とともに脾陰も補い,また澁性がありよく止瀉・止帯する。 一般的な脾胃虚証に使用されるが,特に脾虚証の慢性下痢や配合薬により種々の帯下,小児の栄養不良などに使用される。 |
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補益肺陰 |
肺気を補うとともに肺陰をも補う。肺虚証,特に肺陰虚の慢性咳嗽・息切れ・軽度呼吸困難・少痰・無痰・粘性痰・少苔などに使用される。麦門冬・五味子・玄参・鶏内金などと用いる。〔代表方剤:資生湯〕。 |
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補腎陰 |
腎陰を補う。腎虚による遺精・頻尿・腰下肢倦怠無カ・めまい・ほてり・盗汗や白色帯下,消渇などに使用される。薬力は弱く他の補腎薬を配合する。 |
[注意点]養陰作用があり湿を助長しやすい。そのため脾胃湿証や食積には単独使用しない。実熱証には禁忌。
■サンリョウ
三棱
[基原]ミクリ科ミクリの塊根。
[性・味]平・苦・辛
[帰経]肝・脾
[用法]3~10g。醋炒三棱は止痛作用に優れる。作用が強く,正気の損傷を防ぐために益気補血薬を配合すべきである。
破血行気止痛作用と消腫作用を有する活血薬。莪朮と薬効が類似し,よくともに配合される。平性であり,莪朮に比べ活血力に優れる。
破血行気 |
気血を巡らせ瘀血を除き,腫塊や結実を散じ,止痛する。強い活血作用(破血)を有し,同時に良好な行気作用を有する。気滞瘀血による腹部腫瘍(癥瘕・積聚)・ 肝腫大・季肋部痛・腹痛・閉経・外傷打撲などに使用される。特に有形で実体のある腫瘍(癥・積) に多用される。近年では子宮外妊娠の血腫にも使用される。 |
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行気消積 |
気を巡らせ鬱滞を除き止痛する。気滞が強い食積などによる腹部脹満痛 (感)・腹部痞塞悶絶感・噯気・呑酸・厚苔などに使用される。 |
[注意点]月経過多・妊婦には禁忌。