薬草辞典-さ行

センナ

センナ

せんな

[基原]マメ科チンネベリーセンナやアレキサンドリアセンナの小葉。

[別名]番瀉葉ばんしゃよう

[性・味]寒・甘・苦

[帰経]大腸

[用法]緩下には1.5~3g,攻下には5~10gを使用する。粉末の冲服か後下して使用する。

大黄だいおうに類似した瀉下しゃげ作用を有するが,瀉火しゃか活血かっけつ止血しけつ作用はない。

瀉下攻積

大腸の滞積便を洗浄除去し,鬱熱を冷ます。熱証の便秘(熱結便秘)に適するが,食積の便秘や腹痛にも用いられる。単味の服用も可。枳実・厚朴・莱菔子・陳皮などと用いる。

[注意点]妊婦・虚弱者・月経期・哺乳期には禁忌か慎重に使用する 。多量の服用で腹痛・悪心嘔吐などが出現することがある。

センレンシ

川楝子せんれんし

せんれんし

[基原]センダン科トウセンダンの成熟果実。

[別名]金鈴子きんれいし楝実れんじつ

[性・味]寒・苦

[帰経]肝

[用法]5~10g。丸・散剤や外用も可。

熱性気滞ねつせいきたいの常用薬。

疏肝理気
・止痛

肝気をよく巡らせ止痛するとともに,寒性であり鬱熱を除く。熱証を伴う肝気鬱結証によく適する。
(1)肝気鬱結や肝鬱化火・肝胃不和などによる季肋部や腹部の脹満痛(感)などに多用される。肝腎陰虚の気滞証にも用いられる。辛温理気薬の配合で寒証にも使用可能。
①肝鬱化火犯胃の季肋部痛や胃痛・曖気・口苦・黄苔などには,延胡索・木香などと用いる。〔代表方剤:金鈴子散〕。
②肝気鬱結の季肋部痛には,枳殻・鬱金などと用いる。
③肝鬱陰虚の季肋部胃部の疼痛・ロ乾・紅色乾燥舌・少苔や無苔などには,生地黄・北沙参・枸杞子・麦門冬などと用いる。〔代表方剤:一貫煎〕。
(2)下腹部の疝痛などに使用される。
①青皮・陳皮などと用いる。
②寒性の疝痛には, 呉茱萸・小茴香・木香などと用いる。〔代表方剤:導気湯,天台烏薬散〕。

駆虫止痛

寄生虫による腹痛に使用される。特に蛔虫の腹痛に適する。檳榔子・使君子などと用いる。

(1)外用で頭部の湿疹に使用される。
(2)寒性と降気作用があるところより,肝腎陰虚による内風のめまい・痙攣・顔面 のほてりなどに補助的に使用される。代赭石・竜骨・天麻などと用いる。〔代表方剤:鎮肝熄風湯〕。

[注意点]悪心・嘔吐・下痢・呼吸困難などが出現することがある。苦寒性であり脾胃虚寒証には使用しない。

 

ソウカクシ

皂角刺そうかくし

そうかくし

[基原]マメ科トウサイカチの棘刺。

[別名]皂刺そうし皂針そうしん

[性・味]温・辛

[帰経]肺・大腸・肝・胃

[用法]6~9g。煎服。

辛散温通しんさんおんつうする薬力が鋭利であり,病変部に直達する。

消腫排膿

辛散温通し,廱疸腫毒(皮膚化膿症)の潰破する前に,穿山甲・当帰・黄耆などと用いる。

捜風殺虫

疥癬・麻風(癩病)などにも使用する。

[注意点]廱疸腫毒の潰破後および妊婦には禁忌。

 

ソウジシ

蒼耳子そうじし

そうじし

[基原]キク科オナモミの成熟果実。

[性・味]温・苦・辛

[帰経]肺

[用法]3~10g。

通鼻し皮膚の湿しつを除く。鼻渊びえん頭痛の重要薬。辛夷しんいに比べ,祛風除湿きょふうじょしつ作用が強く,鼻渊びえん以外にも使用される。鼻渊びえんの常用薬。解表薬げひょうやくとしてはあまり使用されない。

通鼻・
散風寒

鼻腔の通気を良好にする(通鼻)。鼻渊・鼻閉・粘性鼻汁・無臭,さらに風寒性の頭痛に多用される。寒熱両証に使用可能だが,特に風寒証の病態に適する。
①寒証鼻渊や頭痛には,細辛・防風・白芷・藳本などと用いる。
②熱証鼻渊には,薄荷・黄芩・連翹・石膏などと用いる。

祛風湿止痛

祛風とともに湿を除き止痛する。
(1)風湿痺証の関節筋肉痛・筋拘縮に使用される。威霊仙・川芎・秦艽・蒼朮・肉桂などと用いる。
(2)止痒作用もあり,湿疹にも用いられる。蒺藜子・蟬退・地膚子・荊芥などと用いられる。

[注意点]多量の使用で嘔吐・腹痛・下痢などを引き起こすことがある 。多量には使用しない。副作用防止のため炒蒼耳子を使用するとよい。陰虚火旺には禁忌。

ソウジュツ

蒼朮そうじゅつ

そうじゅつ

[基原]キク科ホソバオケラやシナオケラの根茎。

[性・味]温・辛・苦

[帰経]脾・胃

[用法]5~10g。生蒼朮は燥性が強く,炒蒼朮は燥性が弱まる。

湿阻中焦しつそちゅうしょう治療の重要薬。脾胃ひい外表がいひょう湿しつを除く。寒・熱両証,体の内外上下の広範囲に使用される化湿かしつの重要薬。厚朴こうぼくに比べ,燥湿そうしつ作用に優れる。

燥湿健脾

強い芳香性を有し燥性が強く,除湿作用に優れ,脾胃の湿を除いてその機能を回復させる(健脾)。だが補益作用はない。厚朴と同様に主に寒湿証に使用されるが,苦寒燥湿薬を加え湿熱証にも使用可能。湿困脾胃証の下痢・嘔吐・白膩苔に多用され,浮腫にも使用される。そのほか,胃もたれ・腹部脹満感・悪心・身体の重だるさなどにも使用される。湿困脾胃には厚朴・陳皮・白朮・枳穀などと用いる。〔代表方剤:平胃散 ,胃苓湯,越鞠丸〕。

祛風湿

外表の風湿を除く。湿邪が強い痺証に多用される 。
(1)寒湿痺証に使用される。特に筋関節の重だるい疼痛に適する。
①湿邪が強い痺証には,防已・薏苡仁・羗活などと用いる。〔代表方剤:二朮湯〕。
②寒湿ともに強い痺証には, 附子・桂枝などと用いる。〔代表方剤:桂枝加朮附湯,大防風湯〕。
(2)湿熱痺証の関節の重だるい熱感痛・発赤腫脹に使用される。石膏・知母・薏苡仁 ・防已などと用いる。〔代表方剤:白虎加蒼朮湯〕。
(3)湿熱下注による下肢関節筋の重だるい疼痛・熱感・腫脹,あるいは筋萎縮無カ・歩行困難,さらに白色帯下などに使用される。黄柏・牛膝・薏苡仁・菌蔯蒿などに使用される。〔代表方剤:二妙散,三妙丸,四妙散,当帰拈痛湯〕。
(4)風寒湿外邪による外感表証の悪寒・筋関節のこりや重だるい疼痛・頭痛などに使用される。羗活・防風・細辛・白芷・川芎などと用いる。〔代表方剤:神朮散〕。
(5)湿疹,特に下肢の湿疹に使用される。

目明

視力を明瞭にする。夜盲症や内障・外障などの視力低下などに使用される。胡麻などと用いる。

[注意点]陰虚内熱,気虚の多汗には禁忌。

ソウジンシ

桑椹子そうじんし

そうじんし

[基原]クワ科マグワなどの成熟集合果。

[別名]桑椹そうじん

[性・味]寒・甘

[帰経]肝・腎

[用法]10~15g。膏・酒・丸・散剤に使用可。

薬性が温和で補血ほけつ潤腸じゅんちょう作用を有する補陰薬ほいんやく。胡麻に比べ,補肝腎ほかんじん作用に優れ,生津止渇せいしんしかつ作用を有する。

補肝腎陰・
養血

肝腎の陰を滋養し血も補う。膩性は少なく薬性は温和であるが,薬力はやや弱い。陰虚や血虚による頭重・めまい・視力低下・霧視・白髪などに使用される。そのほか,耳鳴・不眠・遺精などにも使用される。単味の服用も可。墨旱蓮・何首烏・女貞子などと用いる。〔代表方剤:首烏延寿丹〕

生津止瀉

津液を潤し口渇を止める。温和で胃の障害は少ないが,薬力は弱く他の生津薬とともに用いられる。津液消耗や陰虚内熱の消渇病などに使用される。麦門冬・天花粉・石膏・知母などと用いる。

補血潤腸

津液を潤し血を補い排便を促す。陰虚や血虚による腸燥の便秘に使用される。だが作用は弱く,他の通便薬の補助として使用される。麻子仁・何首烏・胡麻・枳実などと用いる。

[注意点]脾虚寒証の下痢には使用し ない。

ソウハクヒ

桑白皮そうはくひ

そうはくひ

[基原]クワ科マグワの根皮。

[性・味]寒・甘

[帰経]肺

[用法]5~15g。生桑白皮は瀉肺清熱と利水に優れ,蜜炙桑白皮は肺虚の咳嗽に適する。

寒性かんせい止咳降気薬しがいこうきやく。肺中の火と水気をしゃす。枇杷葉びわように比べ清肺熱せいはいねつ作用に優れ,利水作用を有する。

瀉肺清熱
・平喘

よく肺火を瀉し(瀉肺清熱)肺気を降ろすことで,止咳し呼吸困難を静める(平喘)。肺の実熱証の咳嗽・喘息に多用されるが,肺虚証にも使用される。
(1)肺熱の黄色粘性多痰・咳嗽・呼吸困難・黄膩苔などに使用される。地骨皮 ・黄芩・知母・石膏・杏仁・貝母・芦根などと用いる。〔代表方剤:瀉白散,清肺湯,五虎湯,定喘湯〕。
(2)肺虚有熱の咳嗽・自汗盗汗・タ方や夜間の発熱・息切れなどに使用される。黄耆・人参・熟地黄・蘇子・沈香などと用いる。〔代表方剤:補肺湯,喘四君子湯〕。
(3)利水作用もあり,肺中の水飲停滞による呼吸困難・胸部脹満感などに使用される。麻黄・杏仁・細辛・乾姜などと用いる。

利尿消腫

肺気を流暢に降ろすことにより通調水道を高め,利水する。顔面などの浮腫・小便不利などに使用される。茯苓皮・生姜皮・大腹皮・陳皮などと用いる。 〔代表方剤:五皮飲〕。

近年では降圧作用もあるとされ,肝陽上亢などの高血圧にも応用されている。夏枯草・決明子・黄芩・釣藤鈎などと用いる。

[注意点]外感風寒の咳嗽には禁忌。