薬草辞典-た行
■チモ
知母
[基原]ユリ科ハナスゲの根茎。
[性・味]寒・苦・甘
[帰経]肺・胃・腎
[用法]6~12g。生知母は清熱瀉火に,塩水炒知母は滋陰降火に優れる。
“苦寒にして潤”といわれ,滋陰潤燥作用を有する清熱瀉火薬。
清熱瀉火 |
優れた清熱作用を有する。潤性のため津液不足傾向や虚熱証にも用いられる。 |
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滋陰降火潤燥 |
肺・腎・胃の陰を潤し,虚熱を冷まし止渇する。以下の各病態 に使用される。 |
[注意点]潤腸通便傾向があり,脾虚寒や下痢を伴う腎陽虚証には禁忌。
■チユ
地楡
[基原]バラ科ワレモコウの根茎。
[性・味]寒・苦・酸
[帰経]肝・胃・大腸
[用法]10~15g。炒炭地楡は止血作用に,生地楡は解毒作用に優れる。外用も可。
清腸止血に優れ,下部の出血症に多用される。下部に作用し,解毒生肌作用を有す涼血止血薬。
涼血止血 |
血熱をよく冷ますと同時に収斂作用もあり,優れた止血作用を有する。血熱妄行による各種の出血症に使用される。大腸の血熱を冷まし止血する作用(清腸止血)に優れ,下血・血痢・痔出血に多用され,また吐血・鼻出血・喀血にも使用される。特に下血・血痢によく適し,さらに性器出血にも多用される。単味の服用も可。 |
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清熱解毒 ・斂瘡 |
解毒作用とともによく熱性創傷の修復を早める(生肌)。火傷・湿疹・皮膚糜爛・皮膚化膿症などに使用される。単味の粉末塗布や外用としてもよい。 |
[注意点]虚寒性の出血症・下痢には慎重に使用する。
■チョウトウ
釣藤
[基原]アカネ科カギカズラ,トウカギカツラなどのトゲを含む茎枝。
[別名]双鈎藤・釣藤鈎・鈎藤
[性・味]寒・甘
[帰経]肝・心包
[用法]10~15g。長時間の煎じで効力が消失するとされ後下がよい。または,短時間(20分以内)の煎じとすべきである。
平肝熄風の重要薬。天麻とともによく配合される。よく肝熱を冷まし熄風し,頭目を涼爽明瞭にする。風火治療の重要薬。
清肝熄風 |
寒性で,よく肝と心包の熱を冷まし,よく肝陽を抑え内風を静める(熄風)。肝陽上亢,肝火上炎,肝風内動,熱の極度の高まりによる内風(熱極生風)などの熱性の病態に多用される。左記病態の頭痛・めまい・痙攣・耳鳴・眼花,さらには焦燥感・易怒・小児の熱性痙攣や夜泣き・破傷風などに使用される 。 近年では降圧作用もあるとされる。 |
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清熱平肝 ・清頭目 |
熱を冷ますとともに平肝して頭や眼部をすっきりさせる(清頭目)。肝経有熱や風熱外感証の頭痛・頭重・眼瞼や眼球結膜の充血・流涙・眼花・めまいなどに使用される。また透発が不十分な斑や発疹にも補助薬として使用される。 |
■チョウジ
丁子
[基原]フトモモ科チョウジの蕾。
[別名]丁香
[性・味]温・辛
[帰経]脾・胃・腎
[用法]2~5g。
降逆止嘔に優れる温中理気薬。
温中理気・ 降逆 |
芳香性があり中焦の気をよく巡らせる。小茴香と同様の作用だが,降逆止嘔作用により優れ,胃寒の嘔吐・噦逆などに多用される。腹部冷痛などにも用いられる。 |
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温腎陽 |
腎陽虚による陽萎・腰痛・少腹冷痛などに使用される。肉桂とともに粉末とし塗布する。 |
[注意点]熱証,陰虚内熱証には禁忌。鬱金を畏れる 。
■チンピ
陳皮
[基原]ミカン科ウンシュウミカンなどの成熟果皮。
[別名]橘皮
[性・味]温・辛・苦
[帰経]脾・胃・肺
[用法]3~10g。
肺胃の気をよく巡らせ整え化痰燥湿する。行気燥湿の常用薬。薬力は強くなく,比較的軽度な病態に使用される。青皮に比べ行気作用は温和で,脾胃気滞証に多用される 。
行気健脾 |
気を巡らせ脾胃作用を整える。湿や食積による脾胃気滞証によく適する。虚実両証に使用可能だが,健脾作用は弱く,脾虚証治療には他の健脾薬を配合する必要がある。 |
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和胃止嘔 |
胃気を降ろし整える 。胃気不和の悪心・嘔吐・噯気・吃逆などに使用される。胃熱・痰熱・寒証などにも使用可能。 |
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燥湿化痰 |
行気とともに湿痰を除去する。湿痰治療の重要薬。湿熱証にも使用可能。 |
[注意点]実熱証・陰虚証には慎重に使用する。
■デンシチ末
田七末
[基原]ウコギ科サンシチニンジンの根。
[別名]三七・田三七・人参三七・金不換・山漆
[性・味]温・甘・微苦
[帰経]肝・胃
[用法]多くは粉末を冲服などで服用(1~1.5g/回)する。煎薬も可。丸・散剤・外用も可。
“止血の神薬≪本草新編≫”といわれ,一切の血証に使用可能な止血・化瘀・止痛の重要薬。
化瘀止血 |
止血とともに瘀血を散じ血を巡らせる。止血しても血を停滞させず,血を散じても正気を傷つけず新血を生じる。寒熱虚実各証や内外各種の出血症に使用されるが,特に瘀血証を兼ねる病証に適する。吐血・鼻出血・喀血・血便・性器出血(崩漏)・産後の出血・外傷性出血・皮膚化膿症の糜爛性出血などに使用される。単味粉末の服用も可。外傷性出血には局部の塗布も可。吐血・鼻出血などには,血余炭・花芯石・茅根・竜骨などと用いる。〔代表方剤:化血丹〕 |
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活血止痛 |
よく瘀血を散じ腫脹を消失させ止痛する。単味粉末の服用や塗布も可。 |
[注意点]温性であり陰虚内熱証や妊婦には慎重に使用する。
■テンマ
天麻
[基原]ラン科オニノヤガラの塊茎。
[別名]赤箭・定風草
[性・味]平・甘
[帰経]肝
[用法]3~10g。粉末を服用してもよい(1~1.5g/回)。
平肝熄風の重要薬。釣藤鈎とともによく配合される。祛湿作用を有し,寒熱虚実証に使用可能な肝風内動の常用薬。
平肝熄風 |
内風を静め(熄風)痙攣を緩和する(止痙)良好な作用があり,肝風による頭痛・めまい・痙攣・耳鳴・眼花,さらには破傷風・しびれ・四肢マヒなどに使用される。特にめまいに多用される。平性であり寒熱両証,虚実両証に使用可能。また祛湿作用もあり,痰飲が合併した肝風証(肝風挟痰,風痰上擾)によるめまい・頭痛などにも多用される。 |
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祛風湿 |
風湿を去り経絡を通じさせ止痛する(通絡止痛)。風湿痺証による関節痛・四肢無カ・しびれ・四肢マヒなどに使用される。秦艽・羗活・牛膝・当帰などと用いる。〔代表方剤:天麻丸≪景岳全書≫〕 |