薬草辞典-た行
■テンモンドウ
天門冬
[基原]ユリ科クサスギカズラの塊根。
[性・味]寒・甘・苦
[帰経]肺・腎
[用法]6~15g。丸 ・散・膏剤にも使用可。
よく肺陰を滋養する。麦門冬に比べ寒性と滋陰潤燥作用が強く,また腎陰を滋養する。だが養心清心火作用はなく養胃陰作用も弱い。
養陰清肺 |
肺陰を滋養し,肺熱を冷まし降ろす。麦門冬より,より熱性や燥性が強い病態(燥邪化火)に適する。肺陰虚証や肺燥・肺熱・肺癆などによる乾咳・無痰や粘性少痰・血痰・喀出困難な痰,少苔・無苔・乾燥舌・紅色舌などに使用される。 |
||
---|---|---|---|
滋補腎陰 |
よく腎陰を滋養し熱を冷まし降ろす(降火)。 |
||
他 |
腸を潤し排便を促進する(潤腸通便)。だが薬力は弱く,他の補助薬として使用される。熱証を伴う腸燥便秘に使用される。玄参・麦門冬・乾地黄・当帰・白芍薬・何首烏などと用いる。 |
||
他 |
(1) 清熱作用があり,咽頭発赤・咽頭炎・扁桃腺炎などに使用される。 |
[注意点]風寒感冒や風寒,湿性の咳嗽,脾胃虚寒証の下痢には禁忌。
■トウキ
当帰
[基原]セリ科トウキの根。
[性・味]温・甘・辛・苦
[帰経]肝・心・脾
[用法]5~15g。丸・散剤・軟膏,外用にも使用可。酒炒当帰は活血作用に優れる。
活血止痛に優れる補血の重要薬。婦人病の常用薬。
補血 |
滋潤性があり,優れた補血作用を有し,特に心と肝の血をよく補う。一切の血虚証に使用されるが,心血虚証や肝血虚証に多用される。めまい・頭重・動悸・健忘・不眠・羸痩・顔色不良などの症状に用いられる。 |
||
---|---|---|---|
活血調経 ・止痛 |
補血とともによく血を巡らせ,月経を調整(調経)し止痛する。血虚証のほか,瘀血・気滞などに使用される。寒証に適する。 |
||
潤腸通便 |
潤性があり,血虚証や虚弱体質・老人・産後などの腸燥や虚秘の便秘に使用される。肉蓯蓉・麻子仁・柏子仁・桃仁・牛膝などと用いる。〔代表方剤:潤腸湯〕。 |
||
他 |
止咳平喘作用があり,慢性の咳嗽や喘息などに使用される。半夏・蘇子・ 厚朴・陳皮などと用いる。〔代表方剤:蘇子降気湯,金水六君煎〕。 |
[注意点]甘味で潤腸作用があり,湿証・胃腸虚弱者・脾虚証の下痢には禁忌。
■トウジン
党参
[基原]キキョウ科ヒカゲノツルニンジンやトウジンなどの根。
[性・味]温・甘・微苦
[帰経]心・脾・肺
[用法]10~15g。多量の使用も可(~30g)。伝統的に五霊脂を畏れ,藜芦に反する。
一切の気虚証に使用可能な人参の代用薬。特に肺脾気虚証に多用される。
補気益脾肺 |
脾胃と肺の気を補う。膩性・燥性ともに弱く,薬性は温和。気虚証全般に使用されるが,特に脾・肺の気虚証に多用される。 |
||
---|---|---|---|
他 |
補気生血生津・扶正祛邪などの作用があり,人参と同様に使用される。だが薬力は弱い。 |
[注意点]実熱証には使用しない。
■トウチュウカソウ
冬虫夏草
[基原]コウモリガ科などの幼虫にバッカクキン科フユムシナツクサタケが寄生し子実体を形成したもの。
[別名]冬虫草
[性・味]温・甘
[帰経]肺・腎
[用法]5~10g。丸・散剤も可。食品として調理してもよい。
腎の陰陽とともに肺も補う薬性温和な補腎薬。温性だが燥性は弱く,陰陽両虚・気虚・陰虚にも使用可能。
補腎壮陽益精 |
腎陽を補うとともに腎精をも補う。腎虚による陽萎・不妊・遺精・腰下肢痛倦怠・耳鳴・健忘・痴呆などに使用される。また病気の体力回復にも用いられる。淫羊藿・杜仲・巴戟天・亀板・鹿茸膠などと用いる。 |
||
---|---|---|---|
補肺腎・平喘 |
肺と腎を補い,肺陰を滋養し,肺気を収め流暢にし,咳嗽を止め, 呼吸困難などを緩和する。止血化痰作用もある。 |
[注意点]表実証には禁忌。
■トウニン
桃仁
[基原]バラ科モモやノモモなどの成熟種子。
[性・味]平・苦
[帰経]心・肝・肺・大腸
[用法]6~10g。
広範囲に使用される活血祛瘀の重要常用薬。紅花とともによく配合される。平性の瘀血常用薬。紅花に比べ,潤腸通便・止嗽作用を有する。
活血祛瘀 |
血をよく巡らせる。活血力に優れ各種瘀血証に使用される。平性であり血熱瘀血にも使用可能。紅花と同様に,瘀血証の常用薬で,月経痛・閉経・産後腹痛・瘀血腹痛・外傷打撲・腫瘍(癥瘕積聚)・風湿痺証などの関節痛・血熱瘀血による皮膚化膿症や斑疹など各種の瘀血証に使用される。さらに肺癰(肺炎など)や腸癰などにも用いられる。 |
||
---|---|---|---|
潤腸通便 |
大腸の気を降ろすとともに潤性があり潤腸通便する。腸燥便秘に使用される。柏子仁・杏仁・鬱李仁などと用いる。〔代表方剤:潤腸湯,五仁丸〕 |
||
止咳平喘 |
肺気を流暢にし止咳する。咳嗽や呼吸困難の補助薬として使用される。杏仁などと用いる。〔代表方剤:双仁丸〕 |
[注意点]血虚証には慎重に使用する。
■トシシ
菟絲子
[基原]ヒルガオ科マメダオシやネナシカズラなどの成熟種子。
[性・味]平(やや温)・辛・甘
[帰経]肝・腎
[用法]10~15g。
薬性温和な平補肝腎薬。潼蒺藜に比べ,補腎固摂作用に優れ,止瀉作用を有する。よく肝腎を平補する。
補腎固精 |
陰液を滋養し潤す性質があり,腎陽を補うとともに肝腎の精血も滋養する。膩性は少なく薬性は温和で,腎陽虚・腎陰虚の両証に使用可能。潼蒺藜に比べ,平性でより補腎固摂作用に優れ,よく精液や尿・帯下の漏れを防ぎ〔代表方剤:固精縮尿〕。よく腎陰腎陽を補う 。腎虚の腰痛・遺精・頻尿・尿失禁・白色帯下などに使用される。 |
||
---|---|---|---|
養肝明目 |
肝の陰血を養い明目する 。肝腎不足による視力減退・霧視・眼花・ 眼球乾燥・めまいなどに使用される。熟地黄・車前子・枸杞子・女貞子などと用いる。〔代表方剤:駐景丸〕。 |
||
止瀉 |
脾を補い止瀉する。脾虚や脾腎両虚の下痢・食欲不振などに使用される。補骨脂・黄耆・白朮・山薬・人参・茯苓などと用いる。 |
||
他 |
(1)腎虚の消渇にも使用される。生地黄・知母などと用いる。 |
[注意点]平性だがやや温性に傾いており,陰虚火旺・燥性便秘・湿熱証には使用しない。
■トチュウ
杜仲
[基原]トチュウ科トチュウの樹皮。
[性・味]温・甘・微辛
[帰経]肝・腎
[用法]10~15g。散・丸剤も可。炒杜仲は補肝腎力に優れる。
補腎強健筋骨安胎の重要薬。続断とともによく配合される。続断に比べ補肝腎力が強い。
補肝腎 ・ 強健筋骨 |
よく肝腎を補うことで筋骨を強健にする。 |
||
---|---|---|---|
補腎安胎 |
肝腎を補うことで妊娠をよく継続させる。腎虚による胎動不安・習慣性流産・妊娠性出血などに使用される。安胎の重要薬。続断・白朮・山薬などと用いる。〔代表方剤:杜仲丸〕 |
[注意点]陰虚火旺には慎重に使用する。