慢性腎臓病(CKD)とは

◆中国医学書「景岳全書」に基づく慢性腎臓病(CKD)の中医学的アプローチ

「景岳全書」(明代、張介賓)における慢性腎臓病(CKD)の治療法に関する記述は、中医学における体液(水)の管理と内臓器官(肺、脾、腎)の相互作用を説明しています。

以下は、この記述を基にした中医治療の考え方を解説します。

《景岳全书》:“凡水肿等证,乃肺、脾、肾三脏相干之病。盖水为至阴,故其本在肾; 水化于气,故其标在肺;水惟畏土,故其制在脾。今肺虚则气不化精而化水,脾虚则土 不制水而反克,肾虚则水无所主而妄行。”

中医学における体液管理
「景岳全書」は、慢性腎臓病(CKD)に関連する体液(水)の不均衡を、肺、脾、腎の三つの臓器の相互作用として説明しています。

中医学において、水は「至阴」(極めて陰性の要素)とされ、その管理は主に腎に依存します。

肺、脾、腎の役割

水は気に変化するため、その標(表れ)は肺にあります。
肺が虚弱だと、気は水を化さず、水が体内に留まります。

土(脾)は水を制御しますが、脾が虚弱になると、水を制御できず、反対に水に克服されます。

腎は水の主であり、腎が虚弱になると、水はどこにも留まらずに妄行(無秩序に動き回る)します。



治療の方針
CKDの治療においては、これら三つの臓器のバランスを取り戻すことが重要です。
肺の虚弱を補い、脾の機能を強化し、腎の弱さを改善することによって、体内の水分代謝を正常化させます。

これには、以下の治療法が用いられます。

補腎

腎の機能を強化し、体液の管理を効果的に行います。


健脾

脾の機能を強化し、水分代謝における土の役割を正常に保ちます。


補肺

肺の機能を強化し、気の生成と水の代謝を促進します。



風景画像

◆中医学におけるCKDの考え方

CKDに対する中医学の包括的なお話をさせていただきます。

中医学における治療法は、西洋医学のアプローチとは異なり、体全体の調和とバランスの維持に重点を置いています。

慢性腎臓病の複雑な病態に対する、このような全体的な治療法は、症状の緩和と病態の進行を抑えるために重要な役割を果たします。

◇蛋白尿の原因
蛋白尿(白尿)は、水穀の精微(栄養素)や腎精の漏れ(身体にとってとても重要な栄養成分の漏出)として解釈され、腎と脾の機能不全が主な原因とされます。


1. 腎気不固と脾気虚弱

腎は体内の精(ホルモンなど)を封じ込める機能を持ち、脾は水穀の運化(栄養素の運搬変化)を行います。
腎気が低下し脾気(内臓機能)が虚弱だと、体液が腎に留まらず、栄養素が体外に漏れやすくなります。


2. 腎絡の損傷と瘀血

長期の病態では、腎絡(腎に関連する経絡)が損傷し、瘀血(血の滞り)が腎臓の代謝を妨げることがあります。
これは顔色の変化や腰痛、舌の下の静脈の変化として現れることがあります。



◇血尿
血尿は蛋白尿を随伴することが多いですが。原因は主に以下の二つがあります。

1. 陰虚火旺、迫血妄行の場合

腰膝酸軟、眩暈耳鳴、手足心熱、舌紅少苔などの症状がみられやすいです。


2. 脾腎両虚、血失固渉の場合

疲れやすい、眠たい、食欲不振、下痢、などの症状がみられやすいです。


もし、大量の血尿と少量の蛋白尿の場合はIgA 腎症の可能性が高いです。



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更新日:2024-02-07