慢性腎臓病(CKD)とは

◆中医学の治療

  • ①弁証分型治療
  • ②ステージ別を結合して治療します。

1. ステージⅠとⅡの場合

併発疾患を中心に治療します。
例えば、慢性糸球体腎炎、高血圧、糖尿病、全身性エリテマトーデス、腫瘍などです。


2. ステージⅢの場合

核心病機を中心にします。
腎虚、血瘀、湿熱、濁毒などです。


3. ステージⅣとⅤの場合

合併症を中心にします。
腎性貧血、骨病、皮膚病などです。



李明権先生の経験によるとステージⅡとⅢの段階で漢方の効果が良いです。

よく使われている方剤

①防已黄耆湯

太って皮膚が白いか黄色、筋肉が弛緩、お腹が大きくて柔らかい。
浮腫み、特に下半身が浮腫みやすい。
汗が出やすい、疲れやすい。腰や足の痛みなどの体質。


②越婢加朮湯

体、顔、目が黄色で腫れている、小便不利、汗が出る、口が乾く、関節が腫れて痛む体質。


③真武湯

極度の疲労感、四肢が重くて痛い、体重増加。
寒がり、常に眠たい、記憶力減退、反応が遅い。
男性は性欲減退、女性は月経不順。
眩暈、心悸、振戦、下痢、浮腫み、腹水や胸水の体質。


④桂枝茯苓丸

血流の巡りが悪い、下腹痛、肩こり、頭痛などの体質。



血瘀はCKDの最初から最後までに存在する病理因子なので活血化淤の効能をもつ桂枝茯苓丸がCKDに適します。

現代医学的にも、桂枝茯苓丸は糸球体の硬化や腎間質の線維化を抑制し、抗動脈粥状硬化、抗血栓、心脳血管合併症の予防の効果の報告があります。

他によく使用方剤

  • ・蛋白尿……玉屏風散
  • ・陰虚火旺……六味地黄丸
  • ・腎性脳病……天麻鈎藤飲
なども使用されています。



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◆よく使われている中薬

①黄耆

黄耆は腎臓病に一番よく使われている中薬です。

特に、蛋白尿の場合に使用されやすく、その用量はかなり多いです。

(30gから毎日を使う先生もいれば、100gから毎日を使う先生もいます)。

CKDの根本原因である脾腎虚弱には補脾腎益気の黄耆が適します。黄煌教授がまとめた黄耆の主治は汗が出て浮腫む、筋無力です。

黄耆の現状医学的な作用は利尿、強壮、血圧降下、末梢血管拡張、抗アレルギー作用などがあって疲労倦怠・胃腸虚弱・内臓下垂・皮膚化膿症などに用いられます。

伏見医師らの臨床報告における黄蓍末の使用経験によると、病院治療しているCKD患者22名に単剤の生薬の黄耆を2~9g/日を使用しました(弁証はしてないです)。

その使用期間は最短2ヶ月から1年3ヶ月です。

結果は全ての患者においてクレアチニンの低下とeGFRの改善傾向を確認しました。

CKDの重症度、原因疾患に関係なく有効で、また安全に使用できる可能性が明らかとなりました。


②川芎

活血化瘀としてよく使われています。補腎活血として黄耆と一緒に使用されることが多いです。

腎臓中医学専門の張大寧先生の経験によると、24時間蛋白尿が0.8g以下の場合、大量の黄耆と中量の川芎の組み合わせは効果があるが、0.8g以上になったら別の中薬の追加をする必要があるそうです。

よく使ったのは補気(大量の黄耆)+活血(中量の川芎)+固渉(芡実)+昇陽(升麻)です。

《名医別録》逐五脏间恶血,补丈夫虚损,五劳羸瘦。止渴,益气,利阴气。
《本草纲目》补诸虚不足,一也;益元气,二也;壮脾胃,三也;去肌热,四也;排脓之痛,活血生血。


③大黄

大黄は駆瘀血、通利(利尿、通便)、清熱瀉火の効果あり、クレアチニンが上昇する時に降濁排毒の効能としてよく使われています。

大黄の現代薬理学的にも、瀉下作用、抗菌作用、向精神作用、鎮痛・消炎作用、腎不全改善作用など、多彩な作用とその成分に関する多くの報告があります。

《神農本草経》下瘀血,血闭,寒热,破症瘕积聚,推陈致新,通利水杀,安和五脏。


④附子

温陽利水、特に水湿溜まりやい体質に使用します。

そして、瘢を破ってかたまりを柔らげる効果もあります。

附子の現代薬理学的にも、強心、降圧、消炎鎮痛、蛋白尿減少、腎機能悪化抑制の作用の報告があります。

《神農本草経》主风寒咳逆邪气,温中,金创,破症坚积聚,血瘕,寒温。


⑤他によく使われている中薬

丹参、三七、水蛭、麻黄、柴胡などもあります。



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更新日:2024-02-07